・薄明のわが意識にてきこえくる青杉を焚く音と思いき
「歩道」所収。
「薄明」は薄明り。この場合は夜明けであろう。目が覚めるか覚めないか微妙な瞬間だ。この瞬間に作者は音を聞いた。聞いた気がしたのかも知れない。「青杉を焚く」とあるから、枯葉ではなくてまだ青々とした杉の葉だろう。
どのように聞こえたのか。乾燥した「チリチリ」という音だろう。
この一首を読んで感じるのは。感覚の鋭さだ。薄明で意識が鮮明でないのも関わらず、感覚が鋭敏である。曖昧模糊とした印象がない。
また音楽性の高さ。音感・語感が心地良い。
佐藤佐太郎の代表作である。