竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

案山子たつれば群雀空にしづまらず  飯田蛇笏

2019-08-26 | 今日の季語


案山子たつれば群雀空にしづまらず  飯田蛇笏

憎っくき雀どもよ、来るなら来てみろ。ほとんど自分が案山子(かかし)になりきって、はったと天をにらんでいる図。まことに恰好がよろしい。風格がある。農家の子供だったので、私にも作者の気持ちはよくわかる。一方、清崎敏郎に「頼りなくあれど頼りの案山子かな」(『系譜』所収)という句がある。ここで蛇笏と敏郎は、ほぼ同じシチュエーションをうたっている。されど、この落差。才能の差ではない。俳句もまた人生の演出の場と捉えれば、その方法の差でしかないだろう。どちらが好ましいか。それは、読者が自らの人生に照らして決めることだ。『山盧集』所収。(清水哲男)



【案山子】 かがし
◇「かかし」 ◇「捨案山子」
農作物を鳥獣の害から避けるための手段。人形に蓑や笠を着せたりした、一本足の棒で田畑に立てる。古くは鳥獣の肉や毛を焼き、その悪臭を嗅がせて追い払ったことから「嗅(か)がし」と言った。

例句 作者
流行の黒づくめなる案山子かな 松木幸子
倒れたる案山子の顔の上に天 西東三鬼
捨案山子いのちの棒を横たへて 中村明子
あたたかな案山子を抱いて捨てにゆく 内藤吐天
捨案山子こんなに空が広いとは 黒崎かずこ
停年の案山子を棒に戻しやる 高橋 良
傭兵の如くなびける種案山子 小林貴子
仆れたる案山子に強き泥の耀り 桂 信子
蒲生野の案山子は袖を振りゐたり 佐久間慧子


コメント    この記事についてブログを書く
« 流星やいのちはいのち生みつ... | トップ | 山ばかりつづくしこ名や草相... »

コメントを投稿

今日の季語」カテゴリの最新記事