A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記176 「VALLEYS」

2008-03-10 23:58:56 | 書物
タイトル:若林奮-VALLEYS
編集:横須賀美術館
   日野原清水、原田光
発行:横須賀美術館
金額:2000円
内容:
2008年2月16日(土)-3月16日(日)まで神奈川県横須賀市の横須賀美術館において開催された<若林奮-VALLEYS展>の展覧会図録。

Ⅰ 若林奮-VALLEYS展
「一本の彫刻」市川政憲(茨城県近代美術館長)
「若林奮-≪Valleys≫についての感想」酒井忠康(世田谷美術館館長)
図版
立体
ドローイング、版画
「VALLEYS・谷へ」淀井彩子(画家、若林夫人)
若林奮 略歴
若林奮 文献目録(抄)
出品作品リスト

Ⅱ ドキュメント"Valleys"再生
「VALLEYS」若林奮
「"VALLEYS"について」若林奮
「"VALLEYS"再生」原田光(横須賀美術館副館長)
「Valleys設置 クロニクル」日野原清水(編)
(本書目次より)

購入日:2008年3月9日
購入店:横須賀美術館 ミュージアムショップ
購入理由:
開館当初から行く機会をうかがっていた山本理顕設計による横須賀美術館。年間スケジュールで見た<若林奮展>の4文字が春になったらこの美術館に行こうと決心させた。そして先日<若林奮-VALLEYS展>に行ってきた。1年前に感じた思いそのままに、春を感じさせる快晴の一日だったが、展覧会と美術館も天気同様すがすがしい内容のものだった。借景としてガラス越しに見える海を取り込んだり、建物内部のあちらこちらに開けられた円形の窓から差し込む光はけっして大きくはない展示室に奥行きをもたらしている。その開放感のある空間で若林奮の彫刻と向き合っていると、じわじわと確実になにか充たされていくものを感じた。もう何度も若林奮展はさまざまな場所で見ているのだが、いつもわからなさを感じていた。だが、今回初めて何か触れたというか、魂と魂で会話できたような気がした。まだまだ見たりない思いも残るし、言葉にできる段階ではない、だが、一陣の風が吹き抜けたように身体の内部が清浄になった思いがある。それは、作品のせいかもしれないし、風変わりな建築のせいかもしれないし、あるいは目の前にひろがる空と海のせいかもしれない。あるいは、そんな「変容」こそ若林奮が考えていたことなのもしれない。

最後にカタログについて。この横須賀美術館には若林奮の≪Valleys≫が広場に設置されている。この彫刻作品が設置されているために、今回の展覧会は開催されたといっていい。だが、残念ながら若林奮はこの作品の設置計画が動き出した矢先、その完成を見ることなく亡くなってしまった。つまり、若林にとってこの≪Valleys≫設置は最晩年の仕事だった。そのため、このカタログは展覧会と≪Valleys≫設置のドキュメントによる2部構成となっている。不思議なのは、カタログのどこにも展覧会会期が明記されていない。展覧会終了後も所蔵品カタログとして販売するのだろうか。
こんな遠くの辺鄙な場所に行ってみたいという酔狂な人には京浜急行線の馬堀海岸駅で下車してみてはいかがだろうか。駅前の西友隣にある郵便局からは観音崎京急ホテルへの無料送迎バスがでている。これに乗車すれば終点の京急ホテルから横須賀美術館へはほんのわずかなのだ。路線バスを使うと400円かかるところ無料である。天気のいい日、花粉症でない方にはおすすめしたい美術館です。