A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記871 『染+ わたしにまつわるそめのはなし』

2014-04-30 23:13:38 | 書物
タイトル:染+ わたしにまつわるそめのはなし
並列書名:SOME plus +: the tales of SOME around us
発行:[出版地不明] : 「染+ わたしにまつわるそめのはなし」出品者
撮影:矢野誠
発行日:2014.3
形態:[16]p ; 21cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 2013年11月1日-11月24日:染・清流館
   監修:三橋遵
   出展作家:樫尾聡美/柏井裕香子/小林亜弥香/むらたちひろ
内容:
「樫尾聡美、柏井裕香子、小林亜弥香、むらたちひろの仕事にみる良質な光」三橋遵(京都市立芸術大学)
樫尾聡美
柏井裕香子
小林亜弥香
むらたちひろ
「非定型の染色」深萱真穂(フリーライター)
作家略歴

頂いた日:2014年4月30日
 出品者の方よりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
会場は染色・染織の美術館だが、いわゆる着物などは出ていない。染色分野を専攻した作家たちによる染色の可能性が随所に試みられた展示であった。なかでも柏井裕香子の地図的なイメージと山稜を思わせる作品展示は興味深かった。布ならではの可変・非定型な試みは、他の素材・形式ではこうはいかないだろう。
 また、むらたちひろのカーテンの作品は、日常へと接続する展示形式であった。そこに窓がないにも関わらず、カーテンがあるという異質感も効果的だった。パネルによる絵画(?)も、滲みと余白が美しかった。
 会期終了後でもこのような記録集・カタログを制作するのは、とても有益だと思う。少部数でも写真とテキストが掲載された冊子があると資料として残る。また、展覧会を見た者には思い返す機会になり、見れなかった者には、展覧会の概要を知る機会となる。

memorandum 149 文学の任務

2014-04-29 23:01:42 | ことば
 文学の任務のひとつは、問いを提出して、支配的なもろもろの信念に対抗する表明を構築することです。芸術が何かに対抗するためのものではないとしても、それは支配的なものと対照をなす方向へと傾いていきます。文学は対話であり、反応の行き交いです。複数の文化が進化し相互作用するのにともなって、活気を得ていくもの、また、消滅していくもの。それらに対する人間の反応の歴史が文学です。
スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、pp.291-292


未読日記870 『東京昭和十一年』

2014-04-28 23:48:32 | 書物
タイトル:東京昭和十一年―桑原甲子雄写真集 (1974年)
著者:桑原甲子雄
ブックデザイン:平野甲賀
発行:東京 : 晶文社
発行日:1974.4
形態:255p(おもに図) ; 27cm
内容:
雪の2.26、真夏の阿部定事件に彩られた昭和11年と、
この年を中心とする1930年代の東京下町――
「私の写真は、記録とか報道とかいったよそゆきの製品ではなく、
私と対象とのあいだの親密な出会いと交情による、
ごく私的な記念写真だと思っている。」

池波正太郎
この写真を見ていると、桑原さんが私を撮ったような気がする。下町の人びとは、どのような貧乏暮しをしていても、それなりのたのしみがあって、いつも活気をうしなわなかった。町々の道はすべて子供たちの遊び場であり、大人たちの社交場だった。

佐多稲子
古い東京の写真はまずなつかしい。写っている女の姿に自分の若い日の姿が重なる。しかしこのころは、一般にいわゆる暗い時代であった。写真の市電にぶらさがる男たちの表情に明るさはない。女たちのつつましさも何かを押さえている。時局のゆくえを自分の上において、その不安を黙っているしかない表情にみえてしまう。

写真を読む わたしの東京
私の東京 芥川比呂志
浅草六区 池波正太郎
三館共通の写真がでてきた 植草甚一
大勝館 北村太郎
雪の六区 北村太郎
昭和の一銭蒸気 小林信彦
エゴイスティック・カメラ 鈴木志郎康
一本胴 谷川俊太郎
路傍の商い 小沢昭一
市電にぶらさがる人たちの背景 佐多稲子
時間潰し 佐藤信
夢を見る前 佐藤信
鏡の中の三〇年代を愁い顔して振り返るな 中平卓馬
時に撮られた子供 谷川俊太郎
下町の少年 池波正太郎

桑原甲子雄の人と仕事
キネさん・桑原甲子雄 濱谷浩
孤独な人間の後ろ姿 多木浩二
現像しつつ興奮した 荒木経惟
おぞましい記憶 桑原甲子雄

索引
あとがき

購入日:2014年4月26日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 家族の記念写真が収録されていると知り、家族写真の参考文献として購入。
 本書を知ったのは、IMA vol.1「特集:家族の肖像」だった。家族写真の比重は少ないが、当時の家族像を知る上で興味深い。
 それにしてもページをめくって驚くのが、昭和11(1936)年の日本がいまとまったく違うことである。人も街もこんなに変わる(変わってしまう)ことに途方に暮れる。

memorandum 148 折り合い

2014-04-27 23:39:29 | 書物
 内面生活では新しいものに不信をいだくきらいがあります。頑強に仕立て上げられた内面生活になるほど、新しいものへの抵抗がとりわけ強くなります。旧か新か、どちらかを選べ、と私たちは言われます。じつは、両方を選ばなければならないのです。新旧の折り合いをつけることの連続がなかったら、人生はいったい何でしょう。この一筋縄ではいかない相克を超えるべく、つねに自問し続けていかなければならないように思えます。
スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、p.290




選択肢はどちらかひとつではなく、ふたつの折り合いをつけることと考えてみる。

【ご案内】SlideShowStudies(SSS) vol.3 宮本博史「M家の場合」

2014-04-26 10:52:49 | お知らせ
 スライドショーを新たな作品発表の形式として模索・研究するスタディーイベントSlideShowStudies(SSS)の第3回目を開催いたします。今回はアーティスト・宮本博史(とご両親)を招き、「M家の場合」と題して家族写真をテーマにスライド&トークショーを行います。新緑の季節、ぜひお出かけください。

タイトル:SlideShowStudies(SSS) vol.3 Next Slide...宮本博史「M家の場合」
開催日時:2014年5月10日(土)午後6時~(午後5時45分開場)
出演:宮本亘(自営業)×宮本伸子(専業主婦)×宮本博史(アーティスト)×平田剛志(SlideShowStudies)
会場:つくるビル2階 マルニアトリエカフェ
京都市下京区五条通新町西入西錺屋町25番地
tel: 075-352-3514
URL: http://www.tukuru.me/
チャージ:1,000円(高校生以下、18歳未満および65歳以上は無料[証明できるものをご提示下さい])
定員:35名
企画:SlideShowStudies
主催:SlideShowStudies、つくるビル
お問合せ・ご予約:slideshowstudies.info@gmail.com
Facebookページ:https://www.facebook.com/slideshowstudies

 宮本博史は、自己と他者、人や物の関係性や記憶、存在をテーマに、記録や収集物をもとにインスタレーションやパフォーマンス、映像、音作品、アートプロジェクト型作品を制作・発表してきました。

 宮本作品において、これまで一貫して素材となってきたのが「家族」です。宮本は、自身や家族にまつわる生活の痕跡や営みを記録・収集し、それらを素材に作品発表を行ってきました。近年は、他の家族も巻き込み、家族の会話やおふくろの味の収集・記録にも取り組んでいます。私事と公共の境界を越えた作品は、哲学的、文化人類学的なアプローチも相まって、家族(観)の多様さを浮かび上がらせます。家族(観)を取り巻く環境や社会制度、在り様が変化、崩壊している現代だからこそ、家族とは何なのか見る者に投げかけています。

SSS vol.3「M家の場合」では、M家の家族写真をM家の人々の語りとともにスライドショーを行います。M家の家族写真を、他者である観客とともに見ること。その時見る写真は、M家の写真でありながら、わたしやあなたの家族写真なのかもしれません。母の日の前日、ご家族揃ってお越しください。M家とともにお待ちしております。

宮本博史 MIYAMOTO Hiroshi
1978年 大阪生まれ、大阪・東京在住。
人々の営みに関するで有ろう様々なことがらの関係性やそれらのかたちを、てつがく的観点で捉えようと試みている。例えば、ホームムービーの発掘と公開→保存→活用、自宅での展覧会、障がいのある人とのコラボレーション等々を通じて。「どこからどこまでが私事の範囲なのか、気になっています。」

主なグループ展
2013年 「アートピクニックvol.3 マイホームユアホーム」(芦屋市立美術博物館/兵庫)
2012~14年「HAPPY SPOT NARA」(奈良県文化会館/奈良)
2010年 「Art Court Frontier 2010 #8」(ARTCOURT Gallery/大阪)
2009年 「福岡アジア美術トリエンナーレ2009」(福岡アジア美術館/福岡)
※AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]にて参加
2008年 「犬島時間」(犬島/岡山)

関連情報:
宮本博史 個展
self community 家族について (box archive) など
2014年4月26日(土)~5月11日(日) 火休
午前11時30分~午後7時
[5月10日(土)は17時まで]
つくるビル 1階

未読日記869 『仁王と月』

2014-04-25 23:21:38 | 書物
タイトル:浅井眞人詩集 仁王と月
著者:浅井眞人
装丁:和兎
発行:調布 : ふらんす堂
発行日:2014.4
形態:98p ; 22cm.
内容:
暗い蛍光灯は肩が凝ると 毘沙門天が言いにきた

俗と聖が渾然一体となり
ファンタジックな身ぶりのなかに
ユーモラスな異界のものたちによる厳粛にして
不穏な世界(コスモス)が現出する。

月の満ち欠けは仁王の呼吸によっている
それは交互に繰り返して
この世で一度も途切れたことがない
阿吽(あうん)の像は 月の満ち欠けをあらわす
阿形が満ちる月 吽形が欠ける月
村人は 時折ここに来て手を合わすが
仁王は 今裏山で桃に袋をつけている

頂いた日:2014年4月25日
 出版社よりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
 少し読み始めて、仁王の振る舞いがユーモラスで、近所のおじさんの日常を読んでいるような気になってくる。凡そ日常では発しない単語「仁王」が、「山に腰掛けて炭焼きをした」り、反り橋を架け替えたり、日常的なしぐさや日曜大工のような行為をするのである。仁王と聞けば、奈良の東大寺と興福寺を思い起こすが、それは仮の姿で、仁王像にはもうひとつの面があるのかもしれない。
 浅井眞人は、仁王のシチュエーションや行為の滑稽さを強調するわけでもなく、淡々と写実的に描く。それが、月光の照らす夜道のように、静かな余韻となって残るのである。
 装丁のエンボスで罫が入ったカバー、辛子色のような表紙の色、触感もすばらしい。

memorandum 147 もしかしたら

2014-04-24 23:15:18 | ことば
 意見にまつわるもうひとつの問題。自説に凝り固まるきらいがある点だ。作家がすべきことは、人を自由に放つこと、揺さぶることだ。共感と新しい関心事へと向かって道を開くことだ。もしかしたら、そう、もしかしたらでかまわない、今とは違うもの、より良いものになれるかもしれないと、希望をもたせること。人は変われる、と気づかせることだ。
 ニューマン枢機卿がいみじくも語っている。「高いところの世界ではそうではないが、この下界では、生きることは変化することであり、完全な生とは変わり続けてきた生のことである」。

スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、p.224





幸いに下界に生きている。

未読日記868 『2000年後の小学校』

2014-04-23 23:00:45 | 書物
タイトル:2000年後の小学校 : 芝川敏之×てんとうむしプロジェクト
別書名:Planet school : Shibakawa Toshiyuki×Tentoumushi project
編集:京都芸術センター、芝川敏之
本文執筆:芝川敏之、藤田瑞穂
デザイン:仲村健太郎
写真:大島拓也、芝川敏之
発行日:2014.3
発行:京都 : 京都芸術センター
形態:107p : 挿図 ; 23cm
注記:プロジェクト会期・会場: 2013年3月5日-30日:京都芸術センターギャラリー北・南ほか館内各所
   主催: 京都芸術センター
   芝川敏之略歴: p103-104
   主な文献: p105
内容:
ごあいさつ
「「2000年後の小学校」の行方」芝川敏之

プロジェクト概要
 京都芸術センターについて
 明倫小学校について
 「てんとうむしプロジェクト」について
 『2000年後の小学校|PLANET SCHOOL』について
 『2000年後の小学校|PLANET SCHOOL』ができるまで
 タイムドキュメント
 展示配置図

会場風景
 2000年後のプロジェクトルーム
 2000年後の発掘現場
 2000年後のステンドグラス(B)
 2000年後の大部屋
 2000年後の小学校博物館
 2000年後のステンドグラス(C)
 2000年後の教室
 2000年後の遺跡
 2000年後のカフェ
 2000年後の図書室
 2000年後のステンドグラス(E)
 2000年後の小部屋
 2000年後の二宮金次郎の頭の中
 2000年後のいたずら

イベント
 アーティストトーク「2000年後のギャラリーツアー」
 アーティストトーク「2000年後のナイト☆ツアー」
 ダンスパフォーマンス「2000年後の人類☆復活」
 参加型パフォーマンス「2000年後のランドセルプロジェクト」
 明倫茶会「2000年後の発掘☆茶会」

てんとうむしプロジェクト「2000年後の小学校」に参加して|吉田季平
「2000年後の小学校」展となるまでに|森口まどか
遷都3219年祭の京都|三井知行
風の光、未来の星座|安河内宏法
「2000年後」につながる笑顔|藤田瑞穂

柴川敏之に関する資料
てんとうむしプロジェクト・ボランティアスタッフの活動記録
謝辞

頂いた日:2014年4月21日
 発行元よりご恵贈頂いた1冊。どうもありがとうございます。
本書は、柴川敏之と京都芸術センターボランティアスタッフによるてんとうむしプロジェクトの展覧会「2000年後の小学校|PLANET SCHOOL」の報告書。
 柴川の作品は、「2000年後」という時間設定が笑いとしても、批評的にも効果的である。今回は、元小学校の京都芸術センターという立地を生かして、学校というノスタルジックなイメージも絡めておもしろい。
 個人的には、大の学校嫌いで小学校には何のいい思い出もないので、20年前でも2000年後でも(小)学校と名のつくところに郷愁はない。

未読日記867 『Suburban Portraits』

2014-04-21 23:54:07 | 書物
タイトル:Suburban Portraits
著者:nakaban
Binding:Akiko Ishikawa, nakaban
Design:nakaban
Printing:Taniguchi Seisakusyo
発行:大阪 : Calo Bookshop & Cafe
発行日:2014.4
形態:1冊 ; 11cm
注記:ed 055/200

購入日:2014年4月19日
購入店:Calo Bookshop & Cafe
購入理由:
 大阪・Calo Bookshop & Cafeにて開催された「nakaban個展 或る光」にて購入。本書は、会場となったCaloの10周年記念本。シルクスクリーン印刷、200部限定、エディション入りのnakabanとCalo店主による手製本。手製本ゆえに紙のアンカット部分や不揃いさも味があってよいが、何より購入の決め手となったのはインクの匂いである。最初は紙の匂いかと思っていたが、店主の方のご説明によるとインクの匂いなのだとか。本を匂いで買ったのは、本書が最初かもしれない。
 つい匂いばかりに触れてしまったが、nakabanの絵もよかった。少し前にnakabanと音楽家・トウヤマタケオによるライブプロジェクト「ランテルナムジカ」を見たが、その時の幻燈体験を蘇らせるような光と影、線のドラマに魅せられた。インクの匂いとともに、あの日の夜の記憶が甦える。