A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記90 「ソドムとゴモラⅠ」

2007-08-31 23:52:51 | 書物
タイトル:失われた時を求めて7 第四篇 ソドムとゴモラ Ⅰ
著者:マルセル・プルースト 鈴木道彦訳
装丁:木村裕治
カバー画:キース・ヴァン・ドンゲン
発行:集英社/集英社文庫ヘリテージシリーズ
発行日:2006年10月23日
内容:
シャルリュス男爵と仕立屋ジュピヤンの出会いをきっかけに、同性愛(ソドムの世界)の主題がくっきりと姿をあらわす(第四篇Ⅰ)。ゲルマント大公夫妻のサロンでの、ソドムの男たちの描写とドレーフュス事件の影。章末の一節「心の間歇」では、祖母を巡る過去が突然に蘇る(第四篇Ⅱ 第一章)。アルベルチーヌとの交際の深まり、そして彼女と女友だちの関係への疑惑。ここから、ゴモラすなわちレズビアンの世界が、徐々に始まってゆく。(第四篇Ⅱ 第二章)。エッセイ:三木卓
(本書カバー裏解説より)

購入日:2007年8月17日
購入店:紀伊國屋書店 渋谷店
購入理由:
『失われた時を求めて』もいよいよ7冊目に突入。
平日にほとんど本が読めないため、なかなか先に読み進むことができないのが、残念でならない。

未読日記89 「狼少年のパラドクス」

2007-08-31 23:33:53 | 書物
タイトル:狼少年のパラドクス ウチダ式教育再生論
著者:内田樹
装画・装丁:山本浩二
発行:朝日新聞社
発行日:2007年2月28日
内容:
「教育再生会議」の諸氏、この本を読んでから議論してくれ!
国民総六歳児の道を歩む日本人への提言

「学力低下」は日本人全員が同罪
路頭に迷う高学歴失職者たち
「上野千鶴子って誰ですか」
石原都知事の粗雑な文章
早稲田、受験生をなめたパブリシティ
いまの二十歳は半世紀前の十五歳
1966年の日比谷高校生
(本書帯より)

購入日:2007年8月16日
購入店:ジュンク堂書店 新宿店
購入理由:
こちらも仕事用の資料作りで購入した1冊。
仕事のためとはいえ、知らない分野のことを知るのは楽しい。とかく専門性ばかりが評価される昨今だが、専門外の本を読む方が読書体験としては有益なことが多いのではないか、と思う今日この頃。
内田樹の著作を読むのは2冊目だが、この『狼少年のパラドクス』の方がおもしろい。教育については前作『下流志向』があるが、私の知りたかった大学教育の現場についてならこの本の方が詳しいからだろう。とかく仕事の現場と言うのは、自分の仕事のことしかわからないもので、他の仕事場の状況を知ると、同じような問題に悩んでいたり、思わぬことに悩んでいたりで発見が多い。
この本は教育問題だけでなく、研究者としての心構えであったり、組織論であったり、経営の問題など広がりのあるテーマを扱いながら、切れのいい文体で問題を捌いていく手腕は私のわだかまりを代弁してくれているようで腑に落ちるものが多かった。
しかし、このような本を読むにつけ、日本の大学及び教育に未来は感じられない。

未読日記88 「下流志向」

2007-08-30 23:11:39 | 書物
タイトル:下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
著者:内田樹
ブックデザイン:日下潤一
矢印:沼田美奈子
発行:講談社
発行日:2007年2月20日(初版2007年1月30日)
内容:
学力低下、ニート増加の深層!
最新ベストセラー 新聞・雑誌で話題沸騰!
 勉強を嫌悪する日本の子ども
 「自分探し」イデオロギー
 勉強しなくても自信たっぷり
 IT長者を支持する理由
 クレーマー化する親
 ニートの未来

日本社会に未来はあるかウチダ教授が難問に挑む!

学習と労働について、これまでとは違う考え方をする新しいタイプの日本人、新しい世代集団が今生まれつつある。このまま若い人たちがぞろぞろと学びから逃走し、労働から逃走した場合に日本社会の先はかなり暗いものになります。この危機にどう対処すべきか-本書より
(本書帯より)

購入日:2007年8月16日
購入店:ジュンク堂書店 新宿店
購入理由:
大学教育に関するレポートのための参考資料として購入した1冊。
ジュンク堂書店の現代思想コーナーで内田樹の著作がまとめて置いてあり、以前新聞のコラムで読んで気になっていた人だったのでしばし足を止め立ち読みした。内田樹という人は、フランス現代思想、映画論、武道論を専門としており、その専門分野を見る限りかなり毛色の変わった学者で気になっていたのだ。彼は教育関係についての著作もあり、かつ平易な文体で書かれているため、サクッと読めそうだと判断しこの『下流志向』と『狼少年のパラドクス』の2冊を購入。
この『下流志向』は会社のセミナー向けに行った講演会がもとになっており、話の都合上くどい部分もあったり、散漫な点もあるのだが、さまざまなキーワードを散りばめていて、問題意識が高まるストレッチのような本である。読後感じるのは教育というより若者論、現代社会論といった感じか。しかし、ただの若者論で流せないのは私もそのような現場におり、少なからず頷いてしまう現場を知っているせいだろう。
学ぶこと、働くことに関しての考えは、実に明快で、蓮實重彦の『私が大学について知っている二、三の事柄』とも共通する点も多い。文体から橋本治を連想したりしたが、橋本治を好きな人にはおすすめの本である。ベストセラータイプの本なので賞味期限はあると思うが、読んで損はない快作。


未読日記87 「私が大学について知っている二、三の事柄」

2007-08-30 22:35:43 | 書物
タイトル:私が大学について知っている二、三の事柄
著者:蓮實重彦
装丁:鈴木堯+小林煌[タウハウス]
発行:財団法人東京大学出版会
発行日:2002年4月15日(初版2001年12月5日)
内容:
変化へ、細部へ

[主要目次]
Ⅰ-プラトンの寝椅子
 歴史という現実
 思考の柔軟性(他)
Ⅱ-私が大学について知っている二、三の事柄
 大学は「黒塗りの高級車」に似てはならない
 依怙贔屓と偏愛(他)
Ⅲ-「革命」のための「プラットフォーム」
 「日本モデル」からの脱却
 「改革」という言葉の価値下落は誰の責任か(他)
Ⅳ-知性の行方
 「変化」の体験に向けて
 「惹きつける力」について(他)
Ⅴ-偏愛のすすめ
 変化する細部への偏愛

(本書帯より)

購入日:2007年8月16日
購入店:ジュンク堂書店 新宿店
購入理由:
夏休み中に大学教育についてまとめなければならないレポートがあり、参考に購入した3冊のうちのひとつ。どのような本を読めばいいのか、教育分野に疎い私にはわからなかったので、そのような時はまず書店に行く。インターネットではなく、実物の書物が並んだ棚を見ているうちに、私が今買うべき本がわかってくるのだ。インターネットでは、漠然とした書物を探すのには不向きな気がして、いまだに私は書店派なのだ。
気が向かないテーマなので、現代思想のあたりをうろうろしていたら、この本を見つけた。蓮實氏と言えば、私もその映画論の大ファンなのだが、東大総長時代の後半に書かれた文章をまとめたこの本は、直接参考にはならないかもしれないが、教育、研究という問題の本質を考える上ではおおいに参考になりそうだと考え購入。結果は大成功というべきで、蓮實氏らしい淡々としつつ痛快なもの言いに、いくつも考えるヒントが込められていて、すがすがしくなる読書経験となった。これこそ夏の読書という感じである。
 また、先日古本屋でプラトンの『パイドン』を購入したが、蓮實氏が本書の中で「今の日本がうまくいっていないのは、ごく単純に誰もプラトンを読んでいないからだ、プラトンを読めばどうすればいいかということはすぐわかる、というのが私の考えであります。」(p.213)と述べいて、どこか響きあうものを感じた。書物を読む、買うという行為がどこかで連鎖していく。このチェーン・リアクションというべき現象こそ大袈裟な言い方をすれば「変化」ということなのかもしれない。

音楽論001 「finally we are no one」

2007-08-29 22:12:56 | music
タイトル:finally we are no one
アーティスト:mum
レーベル:fat cat RECORDS
発売日:2006年3月1日
内容:
1.sleep/swim
2.green grass of tunnel
3.we have a map of the piano
4.don't be afraid, you have just got your eyes closed
5.behind two hills,,,,a swimmingpool
6.k/half noise
7.now there's that fear again
8.faraway swimmingpool
9.i can't feel my hand any more, it's alright , sleep still
10.finally we are no one
11.the land between solar systems

購入日:2007年8月16日
購入店:タワーレコード 新宿店
購入理由:
数日前にアイスランドの音楽ドキュメンタリー映画『スクリーミング・マスターピース』を見たときに、気になったアーティスト。まず、ムームという語感の響きがいい。こんなに舌に抵抗なく発することのできる単語を持つグループ名もめずらしいかもしれない。その音楽もグループ名同様に心地よく、シガーロスだけでなくアイスランドの音楽シーンの成熟さの一端を感じさせてくれる。「アイスランド人はロマンチックなんだ」という発言を、映画の中であるアーティストがしていたが、このムームの音楽を聴くかぎりそうだと思う。映画のサウンドトラックのようでありながら、それでいて日常のフィールドで鳴らされる美しい旋律にいまはただただ耳を傾けていたい。

未読日記86 「木」

2007-08-29 21:40:34 | 書物
タイトル:木
著者:幸田文
カバー装画:増田実
デザイン:新潮社装幀室
発行:新潮社/新潮文庫
発行日:2004年6月10日(初版1995年12月1日)
内容:
「樹木に逢い、樹木から感動をもらいたいと願って」北は北海道、南は屋久島まで、歴訪した木々との交流の記。木の運命、木の生命に限りない思いを馳せる著者の眼は、木を激しく見つめ、その本質のなかに人間の業、生死の究極のかたちまでを見る。倒木の上に新芽が育つえぞ松の更新、父とともに無言で魅入った藤、全十五篇が鍛え抜かれた日本語で綴られる。生命の根源に迫るエッセイ。(本書カバー裏解説より)

購入日:2007年8月15日
購入店:BOOK-OFF 中目黒駅前店
購入理由:
「木」のよさを再確認したのは、春に京都を訪れたときだった。新緑の緑がさまざまな色の階層となり、豊かな緑の空間を形成していた。その風、光、色、空気に、日常を忘れ、それを作り出しているのが「木」の存在であるということにあらためて気づいたのだ。その時、いまなら幸田文の『木』という書物を手に取ることができるかもしれない、と思った。別に幸田文の著作に苦手意識を持っていたわけではないが、作家が「木」という存在をどのような言葉で表しているのか知ってみたくなったからだ。それには、そのもの「木」という固有名詞がつけられた潔いタイトルのこの本がふさわしい。いまは、この「木」がどれぐらい育ち、また私の掌に乗ることになるか今から楽しみな1冊なのである。

TOUCHING WORD 010

2007-08-28 22:12:44 | ことば
「向上心は必ずしも人を幸福にしない」。幸福の秘訣は「小さくても、確実な、幸福」(村上春樹)をもたらすものについてのリストをどれだけ長いものにできるか、にかかっている。
(p.157 『狼少年のパラドクス』内田樹、朝日新聞社、2007.2) 

未読日記85 「pen」

2007-08-28 22:01:56 | 書物
タイトル:pen 6月1日号 通巻199号
発行:阪急コミュニケーションズ
発行日:2007年5月15日
内容:
特集「古都の情緒に誘われて、鎌倉の旅へ。」
シングルモルトの聖地 アイラ島めぐり。ほか

購入日:2007年8月15日
購入店:有隣堂 アトレ恵比寿店
購入理由:
鎌倉へ行こう、と思った。
この夏は神奈川県立近代美術館やカフェやお寺や鳩サブレーだ!
そこで、インターネットで情報収集・・というのは本好きの性が許さないので、紙媒体の情報を探す。
そのとき私の頭の中ではこんな声が聞こえてきた。
「そういえば以前、雑誌で鎌倉の特集があったな・・」
記憶が不確かだったが、penか東京生活か散歩の達人のどれかだろうと思い、いくつかの古書店をまわるも見つからない(それに「鎌倉」は東京生活じゃないな・・・)。そうかといって新刊書店の旅コーナーで売られている下品な旅本を買うのも気がひける。とりあえず、ぶらりと寄った書店でpenの鎌倉特集を見つけ購入した。

未読日記84 「禅と日本文化」

2007-08-28 21:45:43 | 書物
タイトル:禅と日本文化
著者:鈴木大拙 北川桃雄訳
発行:岩波書店/岩波新書R20
発行日:2000年4月5日(初版1940年9月30日)
内容:
禅は日本人の性格と文化にどのような影響をおよぼしているか。そもそも禅とは何か。本書は、著者が欧米人のためにおこなった講演をもとにして英文で著わされたものである。一九四〇年翻訳刊行いらい今日まで、禅そのものへの比類なき入門書として、また日本の伝統文化理解への絶好の案内書として読みつがれている古典的名著。(カバー裏解説より)

購入日:2007年8月14日
購入店:BOOK-OFF 原宿店
購入理由
東京国立博物館にて開催中の「京都五山 禅の文化」展がいたくおもしろかったため、禅の本を読みたいと思っていた。その後、たまたま時間つぶしに立ち寄ったブック・オフで棚を物色していたら見つけたのがこの本。禅と言えば鈴木大拙というわけで、これはよい出会いであった。禅は茶道などとも絡んでくるようなので、華道とも接点があるかもしれない。私の本年後半期は「禅」がキーワードになるかもしれない。その理由はおいおい明らかになるだろう。


TOUCHING WORD 009

2007-08-24 22:58:25 | ことば
あなたがたには、あなたがた自身の<知性>の動揺を、恐れることなく招き寄せていただきたい。揺らぐことを放棄した<知性>はもはや力を持ちえず、現状維持の自堕落さに陥るしかなく、ある種の快適さからふとそれに安住するとき、人は知らぬ間に若さと別れを告げるのです。
(p.71 「私が大学について知っている二、三の事柄」蓮實重彦、東京大学出版会、2001.12)

<知性>の動揺。動揺続きの一日であった。動揺といえば私の未来も随分動揺しているのだが、勝手なことばかり言う豊臣秀吉みたいな子どもに振り回される幼稚な大人たちにも私は動揺していて、だが実はそれは動揺ではないだろう。事実、わかりきったことだった。いつも心中で笑ってばかりいたし、いまも思い返すと笑えるのだが、この笑いに笑いという現象がもたらす幸福はないということに私は動揺しているのかもしれない。