福井利佐blog

切り絵アーティストの日々

OKI

2006年09月13日 | 過去のBLOG記事

現在、映像の方が追い込みに入っています。
私が切ったら4℃のスタッフが随時取りにくるという、
締め切り前の漫画家のような生活をしています。
今回作っている映像は台詞などはなく、BGMというか音楽のみです。


音楽を依頼したのは、アイヌ民族の楽器トンコリの奏者であるOKIさんです。
OKIさん自身もアイヌの血をひいています。
トンコリというのは、北海道北部やサハリンなどに伝えられてきた楽器で、
肩に立てかけて弦を指で弾いて演奏されるいわゆる弦楽器です。
音は琴に近いです。



なぜOKIさんに音楽を依頼したかというと・・・。
色々な理由があるのですが、
私は2年前に偶然トンコリという楽器とOKIさんを知り、ずっと気になっていました。


私は学生の頃、古本屋で見つけた「アイヌ伝説」なる絵本をみつけてから、
ちょっとアイヌというものに興味があり、大学の課題でこの本をもとに
切り絵で絵本を制作したりしていました。



book_1

大学の課題で制作したもの。製本も自分でやったためカラーコピーの紙がボヨボヨに・・・。アプカシカムイという疱瘡の病神をボロ布と臭い煙草で追い払うお話。



book_2

ルペシペ沢のコウモリが焚き火を隠してくれて、アプカシカムイから見逃してくれるお話。本当かどうか知りませんがおもしろいお話ばかりです。




そして2年前、たまたま深夜のドキュメント番組で
「現代に生きるアイヌ人」についてやっていたので見ていました。
そこにOKIさんが登場し、北海道の海
で波の音の中、トンコリを演奏をしていました。
その光景にいたく感動しつつ、
次の日イベントに参加するべく札幌に旅立ちました。
そのイベントは
札幌コンベンションセンターで国連軍縮会議が行われるのに合わせて、
様々なアーティストが「平和の旗」をデザインして展示する、というものでした。


開会のセレモニーがあり、参加アーティストとして控え室に入ると、目の前に
OKIさんが座っていました。
私は興奮して、前の晩にテレビを見た事を伝え、
初対面なのに質問しまくってしまいました。
東京でしか放映しなかったものら
しく、放映の様子を知らなかったOKIさんは
熱心に話す私に少々引き気味でした(笑)。
そして、これまたラッキーな事に開会のセレモニーでトンコリの演奏があり、
生演奏を聴くことができました。


その後、この時札幌に行ったのが縁で、その年の末には私の個展が
札幌へ巡回し、
そのギャラリーはライブなどもしている場所だったので、
たまたま私の展示の時にOKIさんのライブがあったりしました。


去年映像を制作することになってから、「音はどうしようかな?」と思案している頃、
またまた札幌のイベントに呼ばれました。札幌パルコの記念イベントで、
クリエイター達によるチャリティーフリーマーケットがあり(といっても本人はいません)、
なぜか私はトークショーに参加することになり、現地に行きました。
すると、そこにまたOKIさんのブースがあり、CDが売られていました。


OKIさんは普段バンドで活動をしているのですが、
この年、初のトンコリのみで
演奏したCDを制作していました。
視聴させてもらうとピンとくるものがあり、
これともう一つ「ウポポ サンケ」という
アイヌ語の歌が入った物を買いました。



cd_1

OKIさんのアルバム。「トンコリ」




cd_2

安東ウメ子さんの歌が入った「ウポポ サンケ」



東京に戻ってから、制作のスタッフに私が候補としている音を何曲か聞いてもらうと、
全員が一致でトンコリの音にしっくりくる物を感じ、OKIさんにお願いすることになったのです。

トンコリは音も不思議なのですが、楽器の各部位が頭、首、胴体、腰といった人体名称で呼ばれて、
女性の体のイメージで作られているらしいのです。
そんなちょっと神秘的な所も今回の映像のイメージに合ったのだと思います。
まだ音は合わせていませんが、できあがりが楽しみです。



OKIさんに関する情報はこちら→CHIKAR STUDIO