(ダウ・ジョーンズ)ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のユンケル議長(ルクセンブルク首相)は21日
、キプロス国債の保有者が近くヘアカット(元本減免)を強いられる可能性について否定した。キプロス国債を
めぐっては、格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)が格付けを引き下げたばかりだ。
ユンケル議長はドイツ国営ラジオ局DLFとのインタビューで、「(キプロスに)活用する措置のなかに、ヘア
カットはないとみている」とした上で、「わたしの側からは、これを排除したい」と述べた。
S&Pは20日、キプロスの長期ソブリン信用格付けを2段階引き下げて「CCC+」とした。「CCC+」は投資適格級
を7段階下回る水準で、キプロスにはますます財務面の圧力が強まっているとS&Pは警告した。
また、国際通貨基金(IMF)がキプロス国債の再編を迫っているとの報道も複数ある。キプロス国債の大半は
民間投資家が保有している。IMFはこれらの報道について、コメントの求めに応じていない。
一方、欧州中央銀行(ECB)のアスムセン専務理事は、ドイツの公共放送局ARDとのインタビューで、EU諸機関
はキプロスについて銀行の資金需要に関する仮資料しか受け取っていないため、「現時点でキプロス国債のヘア
カットはあり得ない」との見解を示した。キプロス銀行業界の資金需要に関する最終的な数字は、来月得られる
という。
キプロスは今年夏から、ユーロ圏およびIMFと金融支援の条件を協議しているが、まだ最終合意に至っていな
い。最大の争点は銀行業界への資本注入に関わる部分で、1月中旬に見込まれる銀行業界のデューデリジェンス(
資産査定)の結果を国際債権団が受け取るまで、キプロスは金融支援を受け取れない見通しだ。
アスムセン専務理事は、キプロスの資金需要が膨らみ、政府債務が持続不可能な水準に達することが「すでに
予見できる」と指摘した。これに対しユンケル議長は、ヘアカットは信用力を維持する上で「例外的な」場合に
限り適用されると強調し、「ギリシャ語圏のすべての国に(ヘアカットを適用する)とは言っていない。(適用
すると)言ったのはギリシャだ」と繰り返した。
キプロスの金融システムは、ギリシャの債務再編ですでに打撃を被った。ギリシャの債務が再編される前の2
011年にIMFが発表したキプロス経済の報告によると、同国は国内総生産(GDP)比160%に相当する投融資残高を
ギリシャの銀行に対し抱えていた。
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