ringoのつぶやき

音楽、ガーデニング、株、社会経済政治、etc・・・・日常の色々なことを書きたいと思います。

12月30日(金)のつぶやき その2

2016年12月31日 04時03分38秒 | その他

12月30日(金)のつぶやき その1

2016年12月31日 04時03分37秒 | その他

3連動の南海トラフMEGA地震 「地盤の動乱」が始まった

2016年12月30日 12時54分53秒 | 東北関東大地震 2011/3/11 14:46
鎌田浩毅(京都大学教授)
 
鎌田浩毅著『西日本大震災に備えよ』より)
 

3つの巨大地震が発生する確率

 
 政府の地震調査委員会は、日本列島でこれから起きる可能性のある地震の発生予測を公表している。全国の地震学者が集まり、日本に被害を及ぼす地震の長期評価を行っている。今後30年以内に大地震が起きる確率を、各地の地震ごとに予測している。
 
 たとえば、今世紀の半ばまでに、太平洋岸の海域で、東海地震、東南海地震、南海地震という3つの巨大地震が発生すると予測している。すなわち、東海地方から首都圏までを襲うと考えられている東海地震、また中部から近畿・四国にかけての広大な地域に被害が予想される東南海地震と南海地震である。
 
 これらが30年以内に発生する確率は、M8.0の東海地震が88%、M8.1の東南海地震が70%、M8.4の南海地震が60%という高い数値である。しかもそれらの数字は毎年更新され、少しずつ上昇しているのである。今世紀の半ばまでには必ず発生すると断言しても過言ではない。
 
 地震の発生予測では2つのことを予測している。1つは今から数十年間において、何パーセントの確率で起きるのかである。巨大地震は「プレート」と呼ばれる2枚の厚い岩板の運動によって起きる。プレートが動くと他のプレートとの境目に、エネルギーが蓄積される。
 この蓄積が限界に達し、非常に短い時間で放出されると巨大地震となるのだ。プレートが動く速さはほぼ一定なので、巨大地震は周期的に起きる傾向がある。この周期性を利用して、発生確率を算出するのである。 
 
 たとえば100年くらいの間隔で地震が起きる場所を考えてみよう。基準日(現在)が平均間隔100年の中ほどに入っているケース、つまり、銀行の定期預金にたとえればまだ満期でない場合に、発生の確率は低くなる。しかし、基準日が満期に近づくと、確率は高くなる。実際には確率論や数値シミュレーションも使って複雑な計算を行うのである。
 
 

「西日本大震災」という時限爆弾

 
 今後30年以内に地震が起きる確率に対して、以下で述べる予測には人間の判断が入っている。過去の地震に関するあらゆる観測情報を総合判断して行う予測である。
 
 近代地震学が我が国に導入されて地震観測が始まったのは、明治になってからである。それ以前の地震については観測データがないので、古文書などを調べて、起きた年代や震源域を推定している。
 
 その結果、我々が最も懸念する地震は、これから西日本の太平洋沿岸で確実に起きると考えられる巨大地震である。
 
 過去には東海から四国までの沖合いで、海溝型の巨大地震が、比較的規則正しく起きてきた。こうした海の地震は、おおよそいつ頃に起きそうかを計算できる。この点が、数千年の周期を持ち、いつ動くとも動かないともわからない活断層が引き起こす直下型地震と大きく異なる。
南海トラフ巨大地震を想定した「日米共同統合防災訓練」で、高知市の種崎海岸に上陸した海上自衛隊のホーバークラフト型揚陸艇=2015年6月7日南海トラフ巨大地震を想定した「日米共同統合防災訓練」で、高知市の種崎海岸に上陸した海上自衛隊のホーバークラフト型揚陸艇=2015年6月7日
 そして巨大地震の予想される震源域は、太平洋沖の「南海トラフ」と呼ばれる海底にある。「3.11」の主役は太平洋プレートだったが、次回の主役はその西隣りにあるフィリピン海プレートである。南海トラフとはフィリピン海プレートが西日本の陸地に沈み込む、いわば海のプレートの旅の終着点である。
 
 なお、太平洋プレートの終着点は「日本海溝」や「伊豆・小笠原海溝」であり、フィリピン海プレートの終着点は「南海トラフ」なのである。ここで「海溝」と「トラフ」と異なる用語が用いられているが、言葉の違いについて説明しておこう。
 
 トラフは日本語では「舟状海盆」である。読んで字のごとく舟の底のような海の盆地だ。トラフでは海のプレートが海底になだらかな舟状の凹地形をつくりながら、日本列島の下に沈み込んでいく。それに対して、海溝はプレートが急勾配で沈み込んでいく場所にできる深く切り立った溝である。
 
 海溝もトラフもプレートの終着点にできるが、地形の違いによって名前を分けるというのが、地球科学のしきたりなのだ。ちなみに、トラフと名付けられたものは他にも沖縄トラフ、相模トラフ、駿河トラフなどがある。
 
 また海溝としてはマリアナ海溝、千島海溝、琉球海溝などがある。いずれも「3・11」以後の新聞や雑誌によく出てくる地名なので、既にお馴染みとなっているかもしれない。
 
 さて、南海トラフの海域で起こる東海地震・東南海地震・南海地震の3つの活動史について具体的に見てゆこう。
 
 歴史を繙くと、南海トラフ沿いの巨大地震は、90~150年間おきに発生してきた。やや不規則ではあるが、緩い周期性があることがわかっている。こうした時間スパンの中で、3回に1回は超弩級の地震が発生してきた。
 
 その例としては、1707年の宝永地震と、1361年の正平地震、887年の仁和地震が知られている。過去の西日本では300~500年間隔で巨大地震が起きていた。
 
 実は、近い将来に南海トラフ沿いで起きる巨大地震は、この3回に1回の番に当たっている。すなわち、東海・東南海・南海の3つが同時発生する「連動型地震」というシナリオである。これらの震源域は極めて広いので、首都圏から九州までの広域に甚大な被害を与えると想定されている。
 
 具体的に地震の規模を見てみよう。1707年宝永地震の規模はM8.6だったが、これから起きる連動型地震はM9.1と予測されている。すなわち、今回の東北の地震に匹敵するような巨大地震が西日本で予想されるのである。
 
かまた・ひろき 京都大学教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学教授。専門は地球科学。テレビや講演会で科学を解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気。著書に『地震と火山の日本を生きのびる和恵』(メディアファクトリー)、『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『火山噴火』(岩波新書)『もし富士山が噴火したら』『座右の古典』『一生モノの勉強法』(以上、東洋経済新報社)など。
 もう1つはどれだけの大きさ、つまりマグニチュードいくつの地震が発生するのかである。こちらは、過去に繰り返し発生した地震がつくった断層の面積と、ずれた量などから算出される。
 
 こうして30年以内に発生する確率予測が出されるのだが、これはコンピュータが計算するので誰がやっても同じ答えが出る。逆に言うと、人間の判断が入る余地が生じないので、国としてはこうした情報を出したがるとも言えよう。

記事のタイトルを入力してください(必須)

2016年12月30日 12時52分28秒 | 東北関東大地震 2011/3/11 14:46
鎌田浩毅(京都大学教授)

鎌田浩毅著『西日本大震災に備えよ』より)
 

南海トラフ巨大地震の災害予測

 
 現在、国は「想定外をなくせ」という合い言葉のもとに、南海トラフ巨大地震で起こりうる災害を定量的に予測している。中央防災会議が行った被害想定では、東北地方太平洋沖地震を超えるM9.1、また海岸を襲う最大の津波高は34メートルに達する。加えて、南海トラフは海岸に近いので、一番早いところでは2分後に巨大津波が海岸を襲うのだ。
 
 地震災害としては、九州から関東までの広い範囲に震度6弱以上の大揺れをもたらす。特に、震度7を被る地域は10県にまたがる総計151市区町村に及ぶ。その結果、犠牲者の総数32万人、全壊する建物238万棟、津波によって浸水する面積は約1000平方キロメートル、という途方もない被害が予想されている。
 
 南海トラフ巨大地震が太平洋ベルト地帯を直撃することは確実だ。被災地域が産業・経済の中心地にあることを考えると、東日本大震災よりも一桁大きい災害になる可能性が高い。
 
 すなわち、人口の半分近い6000万人が深刻な影響を受ける「西日本大震災」である。
 
 経済的な被害総額に関しては220兆円を超えると試算されている。たとえば、東日本大震災の被害総額の試算は20兆円ほど、GDPでは3パーセント程度だった。西日本大震災の被害予想がそれらの10倍以上になることは必定なのである。
 

9世紀と酷似する日本列島

 
 南海トラフ巨大地震の発生が確実視される21世紀は、日本史の中でも特異な時代として記録されるのではないか。というのは、地球科学的には同じように異常だった9世紀の日本と酷似しているからである。
 
 地球科学では地層に残された巨大津波の痕跡や、地震を記録した古文書から、将来の日本列島で起こりうる災害の規模と時期を推定している。これに従って、9世紀の日本で何が起き、さらに今後何が起きうるのかを考えていこう。
 
 「3.11」は869年に東北地方で起きた貞観地震と酷似している。そして驚くべきことに、1960年以降に日本で起きた地震や火山噴火の発生地域や規模が、9世紀のそれによく似ているのである。具体的に見てみよう。
 9世紀前半の818年に北関東地震が発生した。ここから9世紀の「大地変動の時代」が始まり、827年の京都群発地震、830年の出羽国地震と直下型地震が続いた。
 
 9世紀は地震だけでなく火山の噴火も頻発していたので見ておこう。832年に伊豆国、837年に陸奥国の鳴子、838年に伊豆国の神津島、839年に出羽国の鳥海山、と各所で立て続けに噴火した記録が残っている。
 その後の地震発生を見ると、841年に信濃国地震と北伊豆地震が相次ぎ、850年には出羽庄内地震、863年には越中・越後地震が起きた。その直後の864年には富士山と阿蘇山が噴火するという事件が起きた。
 
 さらに、868年に播磨地震と京都群発地震が発生し、871年に出羽国の鳥海山、また874年に薩摩国の開聞岳が噴火した。
 
 そして東日本大震災に対応される869年の貞観地震の発生である。これが起きた9年後の878年には、相模・武蔵地震と呼ばれる直下型地震(M7.4)が関東南部で起きた。
 
 さらに、その9年後の887年には、仁和地震と呼ばれる南海トラフ巨大地震が起きた。
 
 これはM9クラスの地震で、大津波も発生した。そして最後の2つの地震が今後の予測に関してきわめて重要なのである。
 

2020年と2029年という計算

 
 たとえば、こうした「9年後」と、「さらに9年後」に起きた地震の事例を、21世紀に当てはめてみよう。東日本大震災が起きた2011年の9年後に当たる2020年は、東京オリンピックの年である。
 
 単純に計算すると、その頃に首都圏に近い関東で直下型地震が起き、さらに9年後の2029年過ぎに南海トラフ巨大地震が起こることになる。もちろん、この年号の通りに地震が起きるわけでは決してないのだが、もしこの周期が合ってしまうととんでもないことになる。
 
地震で倒壊した皇嘉門大路の築地塀跡。大量の瓦の破片が地震のすさまじさを物語る=京都市下京区地震で倒壊した皇嘉門大路の築地塀跡。大量の瓦の破片が地震のすさまじさを物語る=京都市下京区
 9世紀に起きた大地震のうちで近年まで起きていないものが、首都直下地震と南海トラフ巨大地震の2つなのだ。しかも、後者の南海トラフ巨大地震は、発生の時期が科学的に予想できるほとんど唯一の地震である。
 
 我々専門家ができることは、過去のデータから判断して、確実にそれが起きると見做すことと、10年ほどの幅を持たせて時期を予測すること、だけである。しかし、これでも人生や仕事の将来を決める上では、非常に貴重な情報となるのではないか。
 
「知識は力なり」。知識があるかないかで、将来に対する意識が全く違ってくる。「3.11」以降の日本列島は千年ぶりの大変動期に突入した、といっても過言ではないことを、しっかりと認識すべきなのである。
 
 我々は東日本大震災の教訓として、「想定外をできるだけなくす」ことを学んだはずである。様々なタイプの地震が起きることを「想定内」とし、必ずやって来る巨大災害に向けて今から準備していただきたい。
 
かまた・ひろき 京都大学教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学教授。専門は地球科学。テレビや講演会で科学を解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気。著書に『地震と火山の日本を生きのびる和恵』(メディアファクトリー)、『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『火山噴火』(岩波新書)『もし富士山が噴火したら』『座右の古典』『一生モノの勉強法』(以上、東洋経済新報社)など。

12月29日(木)のつぶやき その2

2016年12月30日 04時02分57秒 | その他

12月29日(木)のつぶやき その1

2016年12月30日 04時02分56秒 | その他

最強通貨は円か、2016年相場の重い事実=佐々木融氏

2016年12月29日 21時57分25秒 | 為替

[東京 29日] - 本稿執筆時点で2016年はまだ営業日を1日残しているため、少し気が早いかもしれないが、簡単に今年を振り返っておきたい。

まず為替だが、2016年のドル円相場は120.20―120.30円近辺で取引を開始していたため、足元の水準(東京時間12月29日午後7時時点で116円台)程度で2016年を終えるのなら年間を通じると下落との結果になりそうだ。

ドル円相場はアベノミクスが始まった2012年から2015年まで変動相場制移行後初めて4年連続の上昇を記録していたが、5年連続の上昇とはなりそうにない。

もっとも、11月8日に行われた米大統領選後、ドル円相場は急激な上昇を見せ、ニューヨーク終値ベースでは、米大統領選当日を含む週からの6週間で14.4%も急騰した。これは変動相場制移行以来最大の上昇率だ。

この6週間のドル円相場の動きは「ドル高」と総括されることもあるが、実際には「円安」の側面が強い。この間の主要10通貨の動きを見ると、カナダ・ドルが最も強く、次が米ドル、そして英ポンドが強かった。これら3通貨の強弱にはさほど差がなく、米ドルが一方的に強かったわけではない。

一方、最も弱かったのは円で、2番目に弱かったユーロに対してさえ7%も下落している。週ごとの主要10通貨の騰落率順位を見ると、円は米大統領選が行われた週から5週間も連続して最下位になっている。

ちなみに、2014年10月に日銀がサプライズの追加緩和を行った週から5週間連続で円は最下位になったことがあるが、こうした現象は他の通貨を含めて見ても、めったに起こることではない。英国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まった後のポンドでさえ、連続して最下位となったのは3週間止まりだ。つまり、2016年11月から12月にかけてドル円相場が急騰したのは「円独歩安」の側面が強かったと言えそうだ。

このように11月と12月は円の弱さが印象的だったわけだが、実は2016年を通じて見て最も強かった通貨は今のところ円である。

カナダ・ドル、ノルウェー・クローネがかなり近いところで2位、3位につけており、最終的に年を終えるまでまだ分からないが、このまま行けば、円は2011年以来5年ぶりの「最強通貨」となる。円は2012年と2013年が最下位、2014年が8位、2015年が2位だったため、過去3年間で着実に順位を上げてきたことになる。

2016年中の「最弱通貨」は今のところポンドであり、円に対して20%以上、2番目に弱かったスウェーデン・クローナに対しても10%以上下落している。2016年は「ポンド独歩安」だったと総括できる。ドルは今のところ5位だ。ドルは2014年、2015年と連続して最強通貨だったが、3年連続で最強通貨とはなれなかったようだ。

<金利差拡大でドル円上昇は本当か>

次に2016年の長期金利に関しては、前半は世界的に金利低下、後半は金利上昇という展開となった。しかし、10年国債金利で見て、年後半の金利が年初の水準を上回り、1年を通じて金利上昇となったのは、主要国ではカナダ、米国、ノルウェーの3カ国だけだ。このうち10年国債金利が最も上昇したのはカナダで、次が米国であり、ノルウェーもほぼ同程度上昇している。米国の長期金利上昇が突出していたわけではない。

一方、ドイツ、フランス、英国の10年国債金利は、年前半から8月にかけての低下があまりにも急激だったため、年後半の上昇後でも、依然として年初の水準から40―60ベーシスポイント(bp)程度低いままだ。日本も同様に、年初の10年国債金利はプラスの0.25%程度あったため、年間では低下している。ちなみに、こうした主要国の長期金利の動きは、2年スワップ金利の動きを見ても、概ね同じようなことが言える。

米国の2年国債金利と10年国債金利のギャップは年初から8月にかけて急速に縮小し、イールドカーブのフラット化が進んだ後、9月以降急速にスティープ化したが、結局2年と10年の金利差は年初と同じ120bp程度で年を終えそうだ。年末ベースで見れば、2014年、2015年と続いたイールドカーブのフラット化の動きが反転したと言い切るのはまだ難しい状況にある。

日米10年国債金利差は11月以降急速に拡大して、2010年以来となる250bpまで到達した。2010年のドル円相場は80円台から90円台で推移していたことを考えると、金利差と為替相場の長期的な関係の難しさが見えてくる。

つまり、金利差が一定レベルまで広がったら、ドル円相場が一定レベルまでドル高・円安になるといった関係は基本的にはない。また、日米10年国債金利差はリーマン・ショック以降250bpを大きく上抜けることができておらず、それは今回も同様だ。

株価を見ると、日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)ともに2016年を上昇で終えられるかどうかは微妙な情勢だ。1980年代以来の5年連続上昇となるかどうかが注目される。

ちなみに、他主要国との比較では日本株はアンダーパフォームしている。主要国の株価指数で最もアウトパフォームしているのはカナダとノルウェーで英国と米国がそれに続いている。

つまり、2016年中の通貨、金利、株価のパフォーマンスを見ると、全てにおいてカナダとノルウェーが大きく上昇していることが分かる。これは2016年、原油価格が大きく上昇したことが影響していると見ていいだろう。原油価格は1年間で40%以上も上昇しており、これは2009年以来の上昇幅となる。

<2017年のドルは弱い通貨に>

このように2016年のマーケットを総括すると、いくつかのことが見えてくる。まず、円相場は確かに11月半ばからの6週間程度で急落したが、ある意味ではこれは年前半の急騰の反動であり、2015年頃からの円の強さは続いていると言える。

また、この間、確かにドルは強く、名目実効レートは1月の高値を更新して上昇しているが、「ドル独歩高」と言えるような状況ではなく、2016年の1年間を通じて見れば、2014年、2015年のようなドルの強さはなくなっている。

11月半ば以降の米長期金利の急騰は確かに印象的だったものの、年間を通じて見れば、米国債のイールドカーブ(2年から10年)は20bp程度上方にパラレルシフトしただけだ。日米10年国債金利差もここ数年の上限で跳ね返されている。

以上のことを考えると、2017年早々にドル円相場は、2016年末の動きへの反動を示す可能性が高そうだ。

米連邦準備理事会(FRB)は2015年12月半ばに利上げを行ったが、米10年国債金利はそれから1カ月も経たない2016年1月上旬に明確な下げトレンドに入った。今回の利上げ後の動きも同じことを繰り返す可能性は高そうだ。

当社の米国エコノミストは、トランプ新大統領の財政政策により米国景気に影響が出てくるのは2017年後半で、さらにその景気押し上げ効果も年率0.25%程度と控えめに見積もっている。それにしては米長期金利は上がり過ぎてしまったかもしれない。

気が付けば、ドル名目実効レートは今年1月のピークを3%弱上回るところまで上昇している。過去2週間、米国株は主要国株価指数の中でアンダーパフォームしている。ドル高が米国経済に悪影響を与え、それが明るみに出ることによって、トランプ新政権がドル高に対して懸念を示す可能性は高まっていると考えられる。

筆者は引き続き2017年はドルが最弱とまで行かなくとも弱い通貨になると見ている。ちなみに、ドルは2000年と2001年にも2年連続で最強通貨になったことがある。そして、現在ドルは実効レートベースでこの時のピークの水準に近づいている。前回は、2000年と2001年に連続して最強通貨になった後、3年連続で最弱通貨となっている。


12月28日(水)のつぶやき その2

2016年12月29日 04時05分56秒 | その他

12月28日(水)のつぶやき その1

2016年12月29日 04時05分55秒 | その他

バリュー投資の視点で選ぶ「2017年注目セクター」と厳選銘柄3つ=栫井駿介

2016年12月28日 09時25分44秒 | 

つばめ投資顧問では、企業が持つ本質的な価値を大幅に下回る銘柄に投資する「バリュー株投資」を推奨しています。この記事では、2017年にバリュー株投資を実行するにあたって、注目すべきセクターや個別の銘柄をご紹介します。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

2017年の注意点と注目ポイント。チャンスは見放された銘柄にあり

ブレグジットが最大のチャンスだった

まずは、2016年のバリュー株投資を相場環境とともにおさらいします。

年初の日経平均株価は18,000円台でしたが、為替が円高傾向に動くにしたがって、2月には一時14,000円台まで下落しました。6月にイギリスのEUからの離脱(ブレグジット)が決まると、再び14,000円台に下落し、同年の最安値を記録しました。

下落傾向が続いていた市場に変化をもたらしたのが、11月のアメリカ大統領選挙です。トランプ新大統領の決定後は、政策への期待感からドル高円安・株高が進み、最終的に今年の終値は年初の高値水準を上回ることが濃厚です。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

1年のうち、バリュー株投資で最も大きなチャンスとなったのは、ブレグジット後の株価下落局面でした。株価が下落したのは一時的で、1ヶ月も経たないうちにもとの水準を回復しました。その後は「トランプ相場」の追い風もあり、株価は上昇しました。株価の下落時に株を購入していれば、大きなリターンをあげることができたでしょう。

私は、ブレグジットが世界経済に与える影響はわずかであり、株価下落は投資家がパニックに陥っているにすぎないとブログやメールマガジンで発信しました。興味がある方は当時の記事を読んでみてください。

【関連】英国EU離脱がバリュー株投資家にとって千載一遇のチャンスとなる理由=栫井駿介

下落局面における投資の原則は、株価下落の要因とそれが企業の本質的な価値に与える影響を考えることです。影響が小さく、株価が本質的な価値を下回っていると考えられるならば、絶好の投資チャンスと言えるでしょう。

商社が割安な理由

株価の下落局面においては、インデックスを購入しても良いのですが、私がお勧めするのは個別の優良銘柄への投資です。バリュー株投資では企業の本質的な価値を基準に投資を決定しますが、インデックスには玉石混交の銘柄が含まれるため本質的な価値が分からず、割安かどうか判断が難しいからです。

3月には、三菱商事<8058>や三井物産<8031>が、資源安の影響により会社創設以来初の最終赤字を計上しました。しかし、商社は資源だけでなく様々な事業に投資を行っており、一時的に赤字になったからと言って、その後の回復は自明でした。

それまで、商社はPER1桁の割安な水準に放置されていました。私は資源価格変動リスクを織り込んだ評価と考えていたのですが、赤字でもさほど株価が下がらなかったことで、割安な水準は「特に理由のないもの」ではないかと考えるようになりました。

その後、三菱商事は年内の安値から約6割、三井物産は約4割上昇し、PERも2桁を回復しました。割安に放置されている理由を突き詰めて考えることの重要性を改めて思い知らされる動きとなりました。

【関連】大手商社「減損ショック」の中身~三菱商事と三井物産はいまが買い?=栫井駿介

【関連】それでも私が「万年割安」な商社株を推奨するシンプルな理由=栫井駿介

マイナス金利が銀行に与える影響

2月には、日銀が国内初のマイナス金利を導入し、銀行株が大きく値下がりしました。低金利により、各銀行の貸出や有価証券運用は苦しい状況に陥っています。

しかし、私が度々取り上げた三菱UFJ<8306>は、低金利にあえぐ国内事業からの脱却を図り、海外や資産運用ビジネスに幅広く事業を展開していました。そのため、マイナス金利が業績に与える影響はさほど大きくなかったのです。

幸運にも、アメリカ大統領選挙後の「トランプ相場」が出現すると、アメリカへの事業ウェイトを高めていた三菱UFJの株価上昇率は他のメガバンクを上回り、マイナス金利導入直後からの上昇率は7割近くにものぼりました。

マイナス金利で低迷する銀行株は買い時か? | つばめ投資顧問

【関連】トランプ相場の牽引役「三菱UFJ」はなぜ買われたか。売り時はいつ?=栫井駿介

このように、ネガティブなニュースで株価が大きく値下がりした時は、バリュー株式投資における大きなチャンスです。もちろん本当に致命的なこともあるので、きちんと調査する必要がありますが、それをチャンスと見られるかどうかが投資家の腕の見せどころです。

2017年に注意すべきポイント

さて、いよいよ2017年の見通しについて考えていきたいと思います。

バリュー株投資では市場から見放されている銘柄にこそチャンスが眠っていると考えます。逆に言えば、今市場で盛り上がっている銘柄は投資の対象外になります。そのような観点で「注意すべきポイント」は、「輸出」「設備投資」「開発競争」です。

注意点その1:輸出

トランプ新大統領決定以後、ドル高円安が進み、輸出関連企業の株価は大きく上昇しました。しかし、私はトランプ相場を期待先行の不安定なものと考えています。期待を裏切るようなことがあれば瞬く間に崩れ去っていく可能性も否定できません。

為替の動きを読むことは困難を極めますが、確実に言えることは、円安になればなるほど円高リスクも大きくなるということです。

足元の為替水準は経済実体に対して円高とは言えない水準であり、いつまた円高に向けた動きになるかわかりません。そのため、為替により業績が大きく左右される輸出関連企業は避けたいところです。

注意点その2:設備投資

為替と同様に不安定要素と考えているのが景気です。世界経済は、リーマン・ショック以降約8年にわたる回復傾向が続いています。しかし、経済学が示している通り、景気は必ず循環するものです。景気の拡大は、すでに過去最長の期間に及びつつあります。

景気が後退に向かうからと言って、再びリーマン・ショックのような事態が起こるとは限りません。それでも、米国株が史上最高値を更新し続けるような相場は終わり、期待の剥落による株価下落は避けることはできないでしょう。

企業の設備投資は、景気にとても敏感です。景気が悪くなれば、企業は当面必要のない設備投資を絞りますから、設備を納入している企業は大きなダメージを受けます。企業を顧客とする銘柄には注意が必要です。

そのような企業が輸出関連企業であれば、景気減速と円高の二重苦に襲われるでしょう。もちろん、優良企業にとってはそれが一時的なものである可能性が高く、株価が大幅に下落していればかえって投資のチャンスとなるでしょう。

注意点その3:開発競争

「テーマ株」として盛り上がっている銘柄が取り上げられることがありますが、私はその傾向に全く賛同できません。

注目されるテーマには、あらゆる企業が参入してきます。すると、開発投資や価格競争が過剰となり、会社の利益を圧迫します。株価は一時の熱狂で急上昇したとしても、現実に引き戻されて急落した例は枚挙にいとまがありません。

目下盛り上がっているテーマと言えば、自動運転が挙げられます。自動車会社だけではなく、グーグルやアップルなどのIT企業も参入しています。各社はおくれを取るまいと、研究開発や買収に多額の費用を注ぎ込んでいます。

しかし、どの会社も目指すところはほとんど同じであり、技術が進展して消費者にとって素晴らしい商品が出来上がったとしても、それらの商品は似たもの同士になるでしょう。その結果、最終的に価格競争に陥る可能性が高いのです。

もちろん、突出した技術で大きな利益を生む企業が現れる可能性は否定しませんが、それは少数の勝者であり、大多数の企業にとって「利益なき競争」となるでしょう。

2017年の注目ポイントと推奨銘柄

それでは2017年に私が注目するポイントです。

注目ポイントその1:電力セクター

2011年の東日本大震災を発端とする福島第一原子力発電所の事故で、全国の原子力発電所が運転停止を余儀なくされ、電力会社は大きな損失を計上しました。株価は大幅に下落し、長い間低迷が続いています。

電力会社は地域独占が許され、安定的な電気料金収入があることから、本来投資対象としては非常に優れた銘柄です。一方で、特に企業努力をしなくても安定した利益をあげられたため、経営改善努力や競争意識が働きにくく、株価も大きく上昇しないのがネックでした。

しかし、原発問題で経営が窮地に立たされることで、これまで無縁だったコスト削減努力や競争的な戦略を実行するようになりました。数千億円単位でのコスト削減を実行し、電力以外の分野や担当地域外へ進出するようになったのは、これまでにはない大きな変化です。

もっとも電力会社の業績改善の最大のポイントは、原子力発電所の再稼働です。稼働していない原子力発電所はコストを垂れ流し、電力会社は火力発電に要する燃料を購入しなければなりません。逆に考えると、原子力発電所が再稼働すれば、電力会社の業績は大きく改善するでしょう。

その中で、私が最も着目しているのが九州電力<9508>です。日本で唯一稼働している川内原子力発電所を有し、コスト削減や首都圏への進出と積極的な経営を進めています。

トランプ相場で既に多少上昇していますが、まだ十分に割安な水準にあると考えています。

九州電力<9508> 月足(SBI証券提供)

九州電力<9508> 月足(SBI証券提供)

注目ポイントその2:内需、消費者、独占

「注意すべきポイント」として挙げた「輸出」「設備投資」「開発競争」の反対が注目すべきポイントと考えます。どちらかと言うと、普遍的な要素が強いかもしれません。

この条件を満たす銘柄は、為替や景気、競争環境の影響を受けにくく、安定した利益を生み出し続けることができます。生み出した利益を得意分野に再投資すれば、雪だるま式に企業の価値が膨らんでいくというわけです。

実は、バフェットもそのような考え方で銘柄を選定していると推察しています。(バフェット銘柄の代表格と言えば、ウェルス・ファーゴ、コカコーラ、アメリカン・エキスプレスなどですが、いずれもこれらの条件に当てはまっています。)

これらを踏まえた推奨銘柄は、つばめ投資顧問サービス・会員限定レポートで紹介しています。

注目ポイントその3:インターネットサービス

「IT革命」が叫ばれて久しいですが、ITバブルの崩壊やスマートフォンの普及を経て、その勢いは一時期より減速したという見方も少なくありません。しかし、私は長期のトレンドの中ではまだ序盤戦だと考えています。

これまでインターネットサービスは若い人の間に浸透し、既存のサービスを代替することで成長してきました。一方で、企業や富裕層など、大きなお金が動く市場に対するアプローチが十分ではなかったように思えます。

インターネットの本格的な普及から20年近くが経過し、ようやく大きなお金が動く分野へも拡大しているように思います。

高額商品をインターネットで購入することに抵抗がある人が多かったようですが、今では家具屋家電など数万円単位の商品でも、アマゾンでワンクリック購入するようになっています。
企業活動も、自宅勤務やタブレット端末の使用など、インターネットを使えば相当効率化の余地が残されています。普及に伴い、セキュリティの強化やインターネット広告はまだまだ成長の余地があると考えられます。

ただし、インターネット銘柄の選定は簡単ではありません。単なる期待感から実力以上に割高な株価がついていることが少なくないからです。その中から、本当に成長性が高く、利益を生み出す力のある銘柄を見つけ出すのは容易ではありません。

そこで注目すべきなのは、どれだけ人々の生活や企業活動に深く浸透しているかです。現段階であまり利益が出ていなかったとしても、すでに欠かせないものとなっているのならば、利益に結びつけるのはそこまで難しいことではないからです。

インターネットサービスは、1つの企業が市場を独占しやすい業界です。いちどその地位を築いてしまえば、なかなか覆されるものではありません。専用のアプリからサービスを利用することが多いスマートフォンの普及は、その傾向に拍車をかけるでしょう。

その特徴に最も当てはまる銘柄はつばめ投資顧問サービス・会員限定レポートで紹介しています。

いつでも動ける資金と心の準備を

ここで紹介している銘柄は、あくまで現時点でのものです。マーケットの動きにより、割安な銘柄が新たに出現したり、割安なものが割高になったりします。重要なのはマーケットの動きに敏感になり、チャンスがきたらいつでも動ける体制を整えておくことです。

2017年も、バリュー株投資とつばめ投資顧問を、どうぞよろしくお願いします。

つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

【関連】日本人を辞めたらどうなる? 究極の自由と「永遠の旅行者(PT)」の条件=俣野成敏

【関連】公募割れ続く日本郵政とゆうちょ銀行 「騙された」株主のとるべき道は?=栫井駿介

【関連】資産100万ドル以上!『となりの億万長者』に共通する7つの法則=栫井駿介


12月27日(火)のつぶやき

2016年12月28日 04時03分12秒 | その他

16年相場で最も驚いたのは、あの大型株の仕手化

2016年12月27日 21時55分57秒 | 

 

 

 当連載の2016年最終回ということもあり、「16年に驚いたことトップ3」を独断と偏見で選びたいと思う。本当はブレグジット(英国のEU離脱)、マイナス金利、トランプラリーにしたかったが(あと「神の手」とか)、あえてそれ以外でトップ3を挙げてみたい。

 まず、独断と偏見で驚いたこと第3位は……「祝・東証1部銘柄数2000社突破」にしたい。26日時点で内国株式の東証1部銘柄数は2005。上場企業というだけで「社会的信用が高まる」といわれる。その頂点である東証1部銘柄が2000社を超えたわけだ。東証の全上場銘柄数は3544社だが、そのうち半数を超える57%が東証1部銘柄である。信頼と安心の(? )東証1部企業が日本に2000社以上も存在するわけだ。

 15年末の東証1部上場社数は1934銘柄だったため、71社の純増。新規株式公開(IPO)で16年に東証1部銘柄へ加わったのは九州旅客鉄道 、LINE など8社で、残りのほとんどは東証2部や東証マザーズ、ジャスダックから鞍替えした企業である。新興株に絞って見ると、16年に東証1部へ市場変更になった銘柄はマザーズが29社、ジャスダックがわずか5社と大きな開きがある。実はここに問題がある。

 東証と大証が統合されてマザーズとジャスダックの垣根は実質的にはないように思うが、東証1部への変更基準に大きな違いがある。いちばんの違いは「時価総額(市場変更時見込み)」だ。マザーズが「時価総額40億円以上」であるのに対し、ジャスダックは「時価総額250億円以上」である。

 “東証1部上場企業”の看板を手に入れるためのハードルは、マザーズを経由するほうが圧倒的に低いのだ。その結果、今年何が起こったか……。極めて利益水準が小さい段階ままで東証1部銘柄になれちゃった、というような超スモール東証1部銘柄が続出したのである。

■ マザーズ市場の質が劣化

 具体的な社名は挙げないが、15年にマザーズ上場を果たし、上場初年度の純利益がピークで今期は減益予想の企業がある。同企業の今期の純利益予想は2億円にも満たない。だが、「フィンテック関連銘柄」の仲間入りをした結果、時価総額は「40億円以上」の基準を超えていた。

 というようなマザーズ銘柄が「東証1部銘柄です」と名乗ることのできる「肩書き変更」ができてしまえるのだ。これを実現してしまう変更基準に問題があるように思うが、ルールがそうである以上、来年も続出するのだろう。

 これに派生して起きてしまうこともある。「東証マザーズ市場の質が劣化してしまう」点だ。たとえ、純利益が2億円にも満たない企業でも、東証マザーズ市場で見れば平均レベル。この某企業より利益額が小さい会社はマザーズに113銘柄あり、マザーズ上場228銘柄のほぼ半分を占める。

 そこそこ利益のあるベンチャー企業が意気揚々とマザーズを卒業していくことで、残されたマザーズ市場のファンダメンタルズはさらに劣化するのだ。もちろん、マザーズにはIPO会社が毎年多く入ってくる。新しい銘柄で劣化を食い止めることができれば話は別だが、基本的には劣化していくように思う。どうだろうか? 

 続いて、独断と偏見で選ぶ第2位は……「日銀ETF買い枠6兆円にざっくり倍増」としたい。「2年連続打率3割、30本塁打、30盗塁の“トリプルスリー”を達成したプロ野球界のスーパースターでも、年俸は1億3000万円増で推定3億5000万円という記事を目にした。一方、「2年で2%」を実現できなかった日銀は今年7月の金融政策決定会合で、年間ETF買い入れ枠を当初の3兆円から倍増の「6兆円」にした。これには驚いた。どういう査定で倍増になったのだろう……。

 16年の日銀ETF買いは合計で約4.4兆円に上った。これはすべての投資主体で最大の買い越し額であり、日本株市場の年間MVPは日銀で決定といえるだろう。これに対して、個人投資家は年初来から(現物と先物合算で)約3兆円の売り越。外国人投資家も同約2.5兆円の売り越しだった。

 日々の売買フローの中心である外国人と個人がこれだけ売り越しになりながら、指数が年初来プラスで終えられそうなのも日銀のおかげといえるだろう。日銀と、自己株買いや年金の買い分を含む信託銀行の大幅買い越しでプラスになった日本株。これを人は「官製相場」と呼び始めたが、確かに「官製相場」としか呼べないと思う。

■ 大型株の時価総額がわずか8日で倍増

 今年は途中から年間枠が6兆円になったが、17年には通年で年間6兆円枠となる。テーパリングと呼ばれるような政策変更が断行されないかぎり、17年も日銀は日本株の最大の買い手になりそうだ(17年のMVPも開幕前から決まっている……)。年間6兆円買い越す投資家が確実に存在するわけだ。

 こうした状況下で、どうなれば17年末時点で日経平均株価やTOPIXが大幅安になるのか? 日銀によるETF買い効果だけ抜き出しても、年間での下落が理屈で説明しにくい17年相場となる。これは多くのプレーヤーが感じていることだろう。この政策が続く以上、17年も自由市場の原理が存在しないことだけ覚えておきたいところだ。

 独断と偏見で選ぶ第1位は……「任天堂 の仕手株化」である。もちろん、世界中で社会現象化した「ポケモンGO」を生み出したという理由はある。とはいえ、7月6日終値1万4380円から、年初来高値になった7月19日終値の3万1770円までの爆騰が記録的な事例になったのは間違いないだろう。

 発行済み株数が1億4166万株の任天堂株。「ポケモンGO祭り」の前でも時価総額は2兆円に達していた日本の大型株である。その大型株の時価総額が4.5兆円へ膨らむまでに要した時間が「わずか8営業日」だったわけだ。まるで仕手株のごとく舞い上がったのである。

 現在の任天堂の時価総額は約3.4兆円。これは、東証マザーズ市場の時価総額(現在3.4兆円)とほぼ同規模だ。マザーズ指数が8日間で2倍になったら大騒ぎだろう。それに近いことが任天堂株であのとき、現実として起きたわけである。

 株式市場全体の売買でいえば、16年は“低調”だった。年初から22日までの東証1部の1日当たり平均売買代金は2.31兆円で、15年の同2.54兆円を下回る。ただ、一点集中的に短期資金の群がる傾向だけはここ数年と同様、16年も健在だった。そのひとつが任天堂だったわけだが、そうしたタイミングでのフローのほとんどが、年間では売り越しだった個人と外国人だったと想像される。

 このうち、海外勢については、HFT(高頻度取引)などアルゴリズムを使った売買が相当量含まれていたとみられる。流動性が急激に上がったことや短期的なボラティリティがハネ上がったことを受け、「受動的」に反応した注文分が多かったのではないか。これに対して、ポケモンGOによる任天堂の変化を期待し、妄想し、「能動的」にエントリーした初期段階の買い手は個人だったと思っている。

■ 17年末の日経平均は2万円乗せを想定

 個人投資家が、任天堂のような大型株を仕手株のような動きにしてしまう背景には、情報の駆けめぐるスピードが過去に比べて格段アップしたからではないかと思うところがある。今ではツイッターを代表とするソーシャルネットワークサービス(SNS)を専業投資家だけでなく、プロの株式ディーラーまでが必須のツールとしてトレードに活用するようになった。

 例えば、「ポケモンGOがアメリカですごくはやっているらしい」という情報や、「任天堂株がやたら強い」といった情報が、一般的なメディアで記事化される前からSNSを通じて拡散される。その結果、多くの投資家に周知されるまでの時間は確実に短くなったうえ、早くなった。個人投資家が以前よりも早い段階で買い材料を発見する能力をえているうえ、いち早く有利な値段を取りにいこうと迅速に動くようにもなったのだろう。

 その結果、ある程度同じようなタイミングで個人が買い注文を入れるようになる。こうした形で渾然一体となった個人の動きは、ある種巨大なヘッジファンドのような影響をもたらしているのではないか。そのモメンタムに反応したアルゴリズム取引がさらにモメンタムを増幅させるのだ。こうした光景は17年もいろんな形で目にすることになりそうだ。ツイッターが今の形で使われるかぎり……。

 以上、筆者が個人的に驚いたことを3つ挙げました。今年1年、「株式相場の雑記帳」のタイトルでコラムを書きました。年初、2016年1月の第1回コラムではこう書きました。大発会から急落し、日経平均株価が1万7000円を割り込んでいた1月26日時点でした。

 「昨年末1万9033円だった日経平均は、年末時点ではほぼ元通り1万9000円くらいで着地できるのでは? という話になる」(原文ママ)。

 単純に、日銀ETF買い(当時は3兆円枠)でこうなるだろうというだけの理屈です。それだけの理由ですが、ほぼ「ビンゴ」といえると思います。17年も米国のトランプ大統領就任後が心配やら、欧州の政治イベントが多いやら、中国リスク警戒やら、なんやらかんやらとありそうですが、理屈は同じではないでしょうか。年間6兆円買い越すと宣言している前代未聞の投資家が存在する以上、年末時点の日経平均は2万円を超えていると思います。

 ただ、2万円を超えて終わるとは思っていても、その着地点までにたどる経路がさっぱりわかりません。なんとなくですが、その経路は「多くの市場関係者や参加者が描いているシナリオとまるで違うのではないか」と思うのですが、いかがでしょうか? ? 

 (おしまい)

 ※株式コメンテーター・岡村友哉
株式市場の日々の動向を経済番組で解説。大手証券会社を経て、投資情報会社フィスコへ。その後独立し、現在に至る。フィスコではIPO・新興株市場担当として、IPO企業約400社のレポートを作成し、「初値予想」を投資家向けに提供していた。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

岡村 友哉



12月26日(月)のつぶやき

2016年12月27日 04時07分34秒 | その他

12月25日(日)のつぶやき

2016年12月26日 04時05分32秒 | その他

12月24日(土)のつぶやき

2016年12月25日 04時02分09秒 | その他