(ダウ・ジョーンズ)操縦している飛行機が高度を下げているのに、機体は操縦かんに思うように反応してく
れない、といった悪夢を想像してほしい。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2日間の政策会合を終える31日の時点で、米経済がこの悪夢に出てくる飛行
機のように制御不能の状態であることを示唆する新たな指標を目の当たりにする可能性がある。株式市場をはじ
めとするファーストクラスの乗客は、無料サービスの飲み物を楽しみながら、うかつにも飛行機の降下に気づい
ていないようだ。エコノミー席に詰め込まれた乗客は、機体の揺れによる衝撃を感じ始めている。
米経済はリセッション(景気後退)には陥っていないものの、31日発表の米4-6月期国内総生産(GDP)速報値
に続き、エコノミストが言うところの「失速速度」に近いペースでの成長にとどまるかもしれない。ダウ・ジョ
ーンズ経済通信がまとめたエコノミスト調査では、4-6月期GDP成長率は前期比年率でわずか0.9%にとどまり、
今回の景気拡大期で2番目に低い水準に並ぶと予想されている。
1-3月期は1.8%、2012年10-12月期は0.4%だった。2%を下回る成長率が数四半期続くと、リセッション入り
のリスクが高まると考えられている。
FRBは11年春に行った研究で、景気失速の危険性を数値化した。この研究結果によると、前期比年率ではなく
前年同期比でみたGDP成長率が2%を下回ると、70%の確率でその後リセッションに陥るという。ただ、米経済は
11年夏に危険水域まで落ち込んだ後、一部のリセッション入り予想に反し、高度を上げて勢いを取り戻した。
飛行機になぞらえた表現をさらに加えれば、当時は経済のエンジンの1つである政府支出が失速していた。11年のGDP成長率に対する連邦・州・地方政府支出の寄与度はマイナス0.43ポイントだった。しかし、同年9月から始まった「量的緩和第2弾」の債券買い入れ措置が、経済を人工的に押し上げた。
足元では、連邦政府の歳出削減が11年当時と同じような悪影響を及ぼしており、比較的堅調な州・地方歳出がもたらすプラス効果を相殺して余りある。ただ、今回はFRBがすでに月額850億ドルの債券買い入れという積極的な量的緩和を実施している。一方、4-6月期GDPの前年同期比伸び率は、11年半ばの1.6%を下回る可能性があり、市場では1.5%との予想が多い。
量的緩和が景気浮揚に役立っていることは確かだ。1-3月期のGDP成長率では、金利に敏感な住宅建設や自動車製造の寄与度がプラス0.66ポイント前後だった。好調な株式市場による資産効果も大きい。
操縦室から救難信号を発信するのは、現段階では過剰反応といえるだろう。だが、量的緩和による加速をやめてエンジンの出力を下げるのも軽率に思える。量的緩和を徐々に縮小する場合には、シートベルトを締めた方が良い。
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