【シドニー】(ダウ・ジョーンズ)オーストラリアの畜産農家がインドにシェアを奪われつつある。牛肉価格が
底値水準で推移していることを追い風に、インドが輸出国の3番手から首位の座に近い将来躍り出るとアナリスト
らは予測している。
オーストラリアの農水林業省のデータによると、2012年1月~9月までの同国の骨なしベース牛肉・子牛肉のアジ
アへの輸出高が41万9303トンと、前年同期比で8.4%減少した。
月間の輸出統計資料によれば、豪州の2番目に大きい輸出国の韓国の出荷量がほぼ4分の1の8万2202トンに落ち込
み、インドネシアでは30%超減少した。
需要急減により常に世界3位の輸出量を誇るオーストラリアでは国内産の牛肉価格が下落した。オーストラリア
産牛肉の価格を決定する指標である東部地区若齢牛指標(EYCI)は今月、枝肉重量ベースで1キロ当たり350セン
トを下回り2010年以来の低水準に下落した。
ナショナル・オーストラリア銀行の農業担当アナリストのマイケル・クリード氏は、オーストラリアの牧畜農家
は値段が高すぎて牛肉輸出市場から敬遠される状況にある。豪ドル高で低価格を武器に輸出を伸ばしているイン
ドの牛肉との競争がますます困難になっている。インド・ルピーは1年前に比べ他の外国通貨に対し急落しており
、生産コストが大幅に下がっている。
クリード氏はダウ・ジョーンズ経済通信に「インドは世界最大の牛肉輸出国に躍り出る見通しだ」と述べた。イ
ンドではイスラム教の住民が価格に敏感なアジアや中東市場からの牛肉需要増大に付け込もうとする中で、世界
の最大級の輸出国として出現した。
米農務省はインドの牛肉輸出量は2013年に過去最高の216万トンと前年比29%増加し、世界の4分の1近くに達し
、ブラジル、米国、オーストラリアなど従来の上位輸出国をしのぐと予測する。昨年にはインドが米国を抜いて
世界3位に、オーストラリアがブラジルを抜きトップに躍り出たばかり。
金属と石炭の需要が旺盛なためオーストラリアの最大の貿易相手国の中国市場向けでも首位の座を明け渡した。
オーストラリアの統計資料によると、今年のオーストラリアの中国向け牛肉輸出量はほぼ倍増の9100トンだった
。ただ、米農務省によれば、世界の牛肉輸出国として台頭してきたウルグアイとの競争にもさらされている。
しかし、クリーク氏はこうした状況が、オーストラリアの牛肉業界の終焉とは考えていない。世界の牛肉消費量
が増加しインドの輸出増加を吸収し、日本など多くのオーストラリア産牛肉の輸入国は安全面を問題にインドか
らの輸入を控えるもようだ、と指摘した。
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