12月12日(ブルームバーグ):ゴールドマン・サックス証券のチーフストラテジストであるキャシー・松井氏は、年明け後の日本株はことし第1四半期に迫る上昇相場となり、2013年は上期中にTOPIX が900ポイントを回復、パフォーマンスは主要各国を圧倒するとみる。国内新政権の政策期待や米国など世界経済の回復予想が主な理由だ。
松井氏がこのほど、ブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じた。日本企業の利益が主要国の中で最大の伸びとなるほか、バリュエーション面での割安感も相場の支援材料と同氏。6カ月先のTOPIXの水準は900と、現在比でおよそ15%の伸びを予想。一方、ストックス・ヨーロッパ600指数 は6%、S&P500種指数 は7%の伸びにとどまるとみる。11日のTOPIX終値は786.07。
松井氏は、16日の衆院選で政権奪回の可能性が高まっている自民党は、来夏の参院選での勝利を確実にするために、「可能な限りあらゆる景気浮揚策を講じるインセンティブが非常に強い」と指摘。また、米国を中心に「グローバル経済はより健全な状態にある」とし、輸出の回復や為替の円安進行を通じ、自動車など輸出関連株が恩恵を受けるとの認識を示している。
自民党は政権公約の中で、「明確な物価目標の設定」「ゼロ金利政策の再開」「無制限の金融緩和」といった、脱デフレと円安誘導に向けた大胆な政策を掲げている。11月14日の党首討論で衆院解散の流れが決まって以降、自民党政権の金融政策に対する期待から円は対ドルで一時およそ3円50銭、対ユーロで7円ほどそれぞれ下落した。
円高阻止への気迫
そのほか、原子力発電に対する現実的な対応や法人税の減税、公共事業支出などの財政出動方針も日本株にプラスに働くとし、「財政、金融両面で民主党よりも踏み込んだ内容が予想される」と松井氏は言う。特に、為替に対する姿勢がこれまでとの大きな違いで、「円高阻止に向け実行可能な手段を講じる気迫を感じる」と評価している。
また、米国を中心とした世界経済の回復も日本株を後押しするとの認識だ。「日本株にとって最も重要なのは米国経済。中国も最悪期は脱し、成長率が改善の兆しを見せている」とし、米経済の病根だった住宅市況の回復に加え、米企業は現金を多く抱え、景気見通しが改善すれば設備投資に打って出る準備は整っていると指摘した。
世界的な景気底打ちや円安基調への転換、今期の収益下振れの反動などを踏まえ、東証1部上場企業の13年度の1株利益(EPS)伸び率は前年度比20%と、カバーする地域の中で最大の伸びを予想。一方で株価純資産倍率(PBR )は1倍割れのままと、バリュエーション面での割安感も日本株の支援材料になるとしている。
自動車株に恩恵
セクターでは輸出関連株に加え、リフレ政策が追い風となるほか、割安感の強い銀行株などを推奨。中でも、「自動車は米国での需要回復の恩恵を最も受けやすい」と松井氏は話している。個別銘柄では、為替感応度などを条件にスクリーニングを行い、日産自動車 と日本ゼオン に注目するとした。
ただ、来上期に予想される日本株の上昇はシクリカルなもので、長期的な上昇相場になるには、「新政権が少子化や財政赤字など構造的な問題に決意を持って立ち向かうことが求められている」と言う。