【ルアンダ(アンゴラ)】アフリカ第2位の原油生産国アンゴラ。大西洋に面した首都ルアンダは、原油ブームでかつては外国人にとって世界で最も物価の高い都市だった。だが、バブルがはじけた現在、同国で長期独裁政権を率いてきたサントス大統領の立場は危うくなっている。
不動産価格は半値まで急落し、欧米の石油会社は数千人規模でレイオフ(一時解雇)を行った。ドルも安定した仕事もほとんど残っていない。
アンゴラの苦境は、サントス体制の後援者で最大の原油購入国である中国にまで及ぶ危険がある。欧州連合(EU)では、いまやポルトガルの一部銀行がアンゴラ支店からの利益に頼るようになった。ポルトガルが金融危機に見舞われた際、同国企業はこぞってアンゴラに乗り込んだ。
海辺のレストランでエビのグリル料理に数百ドルを払っていた駐在員はいなくなった。貧しい村民は小麦やコメ不足に直面している。
専門的職業に就いているルアンダの中流階級の人々は、町中でのデモ活動を初めて公然と支持するようになった。アンゴラ経済が上向いているとき、彼らは政治に関心を持っていなかった。
ある若い弁護士は「これまで政治を語ることは避けられていたが、今は国民の趣味になっている」と述べた。
フランスのトタル、スペインのレプソルを含む石油大手、油田サービスの米シュルンベルジェなどがコスト削減を進めているため、数千人がレイオフされている。前出の弁護士は「この状況が続けば、(サントス)政権は生き残れないだろう」と述べた。国際通貨基金(IMF)は、アンゴラの経済成長率が今年と来年に3.5%になると試算している。数年前まで、同国の成長率は2桁を記録していた。
アンゴラ通貨クワンザのドルに対する下落率を30%ほどにとどめるため、中央銀行は外貨準備の約3割となる100億ドル(約1兆2100億円)をつぎ込んできた。物価上昇率は年率12%に近づきつつある。
中銀副総裁のグアルベルト・リマ・カンポス氏は「これまで経験した中で最大の危機だ」と発言。同行は流動性の枯渇を緩和するため、中国人民銀行(中央銀行)と通貨スワップ協定を結ぶよう交渉しているという。
アンゴラ政府は向こう2年にわたり毎年17億バレルの原油生産を見込んでいる。カンポス氏によると、その半分を中国に供給し、引き替えに中国から60億ドルに上る新規融資を受けて、新しい学校や発電所を建設する運びだという。
ただ、中国政府はプロジェクトへの支払いを行うだけで、アンゴラ政府に現金を渡すわけではないため、エコノミストらはこうした取引が危機を悪化させると述べている。
中国の旺盛な天然資源需要に依存している他のアフリカ諸国と同様に、アンゴラも需要後退と、欲求不満のた
まった国民を抑制するための歳入が少なくなることを考慮し始めた。
中国はすでにアンゴラとの関係見直しに取りかかっていのかもしれない。中国当局は最近、同国での石油取引に関連して賄賂やリベートを受けていた疑いがあるとして、中国石油化工集団(シノペック・グループ)の複数の幹部を捜査した。
カトリカ・デ・アンゴラ大学のエコノミストは「中国は10年前と同じ顧客ではない。彼らがわれわれを必要と
する時間がどれほど続くか分からない」と述べた。
サントス氏は36年にわたりアンゴラ大統領を務めているが、これは赤道ギニアのヌゲマ大統領に次ぐアフリカ
で2番目の長さだ。サントス氏は今月、一般教書演説を初めて行わなかったことで国民議会に衝撃を与えた。これにより同氏ががんにかかっているとか、政党からの支持を失っているなどのうわさが流布するようになった。
一般教書演説を代行したヴィセンテ副大統領は、73歳になるサントス氏が単に「気分が優れなかった」だけだと話した。
ヴィセンテ氏は手短な演説でデモ参加者を遠回しに批判し、当局が騒動を合法的に鎮圧すると述べた。また、同氏は「われわれの国の政治状況は安定している」とも話した。
ただ、財界の指導者らはドル不足が続けば混乱が深まると懸念している。原油はアンゴラの輸出収入のほぼ全額を占め、歳入の8割ほどを稼ぎ出している。原油相場が1年前の半分になったことで政府が保健や警察に使える費用も半分になり、輸入も不足している。
従業員のレイオフを最近行った石油サービス会社の幹部は「タマゴがなければオムレツは作れない」と指摘し、「生き残りを賭けた状況だ。毎日必ず契約を失っている」と話した。
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