ringoのつぶやき

音楽、ガーデニング、株、社会経済政治、etc・・・・日常の色々なことを書きたいと思います。

サンワード証券主催の池辺セミナーに参加

2017年10月22日 16時23分18秒 | 為替

先週の土曜日、サンワード商品先物メインの証券会社は、池辺セミナーに行ってきました。

「タイトルが熟練テクニカル」なんたらかんたらというのでさぞかし、素晴らしいテクニカル分析とその方法を伝授してくれるのかと思ったら、まあ・・バスケットボールほどの巨大なニンジンでした。

主催側の意図は「商品のプロ、池辺氏を餌に新規顧客獲得」だったようです。

ですので、内容は、池辺氏の自慢話9割、5回も同じ話聞かされました。

藤巻氏や黒田氏も毎回テーデレコーダー回すのみですが、まあ、吉本流に言えば「漫才」ですわね。

時間と運賃の無駄でした。ユーチューブのネット中継で十分な内容。

ここ、戦略で池辺氏を引っこ抜いたんでしょうね、昨年まではカネツでしたもの。

FXの手数料が片道1300円もし、店頭しかないと言う、まあ今時珍しく時代に逆行してて、私たちのような庶民大賞ではなく、10億も20億も持てあましてるお金持ちのシニア向けだったようです。

自転車操業トレーダーの私には場違いだったようです。

色んな無料セミナー行きましたが、今回ほど、収穫0のは無かったです。

レーディングトリプルB

 

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株式・為替・債券市場の相関性消滅は「暴落近し」を警告しているのか?=今市太郎

2017年05月31日 17時16分52秒 | 為替

6月利上げが迫るなか、足元の相場は低金利と株価のじり高を継続中。これはどちらかの判断が間違っているとしか思えない不思議な相場展開です。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)

※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2017年5月30日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

暴落の「黄信号」が点灯。株・債券・為替の動きがバラバラに

なぜ?資産クラス間の相関性が低下

FOMCの議事録が開示されましたが、どうも金融市場の反応は実にまちまちの状況で、すでに相場では個別の市場ごとの相関性がすっかり崩れ、独自の動きが示現しはじめています。

金利再上昇が目前に迫っても、米国の債券長期金利はまったく反応を示さず低金利が継続中で、NYダウ株価だけがじり高を継続する動きになり、どちらかの相場の判断が間違っているとしか思えない不思議な相場展開になってきています。

またOPEC総会で減産が来年3月まで延長になった直後に、WTIの原油価格が1バレル50ドルを割る動きになっても、株式市場や為替市場はまったく反応しない状況で、VIX指数はまたしても10を割り込むという総楽観の相場が継続しています。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

NYダウ 日足(SBI証券提供)

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

WTI原油先物 日足(SBI証券提供)

モルガンスタンレーの指摘通りの展開か

すでにこのコラムでもご紹介していますが、モルガンスタンレーが顧客向けに発行しているレポートで指摘されているように、今年に入ってから金融市場の資産間の相関性が急激に低下しているという話があります。

米国の株と債券と為替だけをクローズアップしても本当にバラバラになりつつあり、いよいよ中央銀行が主導してきたバブル相場が終焉の域に差し掛かってきている可能性が高まりつつあります。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

為替相場におけるドル円は、米国の金利が低率のまま動かないことからほとんど膠着状態を保っていますが、どうもこのまますんなり何事もなかったかのように進んでいくとは思えない状況になりつつあります。

6月はまたしてもリスク満載月に

6月は8日の英国総選挙がまたまた大きなリスクイベントになりそうで、まさかの保守党敗北ともなれば、ポンドがこっぴどく下落することからポンド円の大幅下落は免れず、ドル円もポンドにつられる形で110円を割れて下押しするリスクが高まることになりそうです。

また、翌週の日本時間15日朝3時にはFOMCの政策金利の発表がありますが、市場の予想どおり追加利上げとなっても材料出尽くしで金利下落からドル円下落、また延期となってもドル円はまた売られることになりそうで、為替市場にとっては決して安穏とはしていられない厳しい月が到来しそうです。

相場の大幅下落タイミングというのは、なかなか正確に当てられるものではありませんが、どうも金融市場が変調をきたしはじめている中に利上げが持ち込まれることになれば、それなりの影響がでるのは当たり前で、ここからのドル買いについては相当慎重に対応することが必要になりそうです。

7のつく年は7月まで株式相場は保つ、といったアノマリーがありますが、果たして今年もそれが適応になるのか、かなり疑わしい状況になってきているようです。

相場の危険信号をとにかく見逃さないように、細心の注意を払ってトレードを進めてきたい時間帯です。

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不気味なFX円高地雷 爆発する相場水準は  編集委員 清水功哉

2017年03月29日 12時37分06秒 | 為替

 

今週は米トランプ政権の政策の実現性を材料に株式相場がネガティブに反応する程度に応じて、ドルの対円相場も1ドル=108円程度まで下がるリスクを注視している――。ドル相場の先行きを強気に見てきたドイツ証券の田中泰輔氏が27日、こんな見方をリポートで示した。同氏は中期的なドル高予想は変えていない。ただ、3月後半に入って急速に進んだドル安を受けて、ドル強気派も短期的には108円程度までドルが下落する可能性を意識し始めたようだ。

 

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 となると気になる点がある。外国為替証拠金取引(FX)を手掛ける個人投資家(通称、ミセス・ワタナベ)のドル買越残高(対円)が高水準になっていることだ。108円程度までドルが下落すれば、損失確定のドル売りが一気に膨らみかねない。これはさらなる円高圧力をかけそうだ。「円高地雷」爆発への警戒が必要になってきているのだ。

 具体的な数字を基に説明していこう。筆者が週次ベースで集計している有力FX業者4社(GMOクリック証券、外為どっとコム、セントラル短資FX、マネーパートナーズ)のデータを見ると、3月15日~22日の1週間にドルの買越残高が急拡大し、約32億ドルとほぼ1年ぶりのレベルになった。一部業者の日次データから推定すると、この残高はその後も大きくは減っていないようだ。

■買越残高、逆張りで膨らむ

 なぜドル買いが拡大したのか。3月後半に入りドルが軟調になったことを受けて、ミセス・ワタナベが得意の逆張りの買いを積極化させたからだ(詳細は3月23日公開の日経電子版の拙稿「ミセス・ワタナベ、トランプ相場最大のドル買い」を参照)。3月半ばに一時115円台を付けていたドルは、27日の米市場では一時110円11銭に下落した。ほぼ4カ月半ぶりの安値だ。

 ドルが軟調地合いになったきっかけは、3月15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)。年内の米利上げ回数が「4回」でなく「3回」にとどまるとの金利予測がドル売りを促した。18日閉幕の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、米国の要求により共同声明から「保護主義に対抗」という文言が落ちた。米政権の保護主義的な姿勢が改めて印象付けられ、円買い圧力が強まった。さらに足元では、米政権が大規模な減税など景気刺激策を本当に実施できるかも不透明になってきた。議会との調整の失敗により、重要な政策と位置付けてきた医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案の撤回を余儀なくされたからだ。

 もちろん、今後ドルが軟調に推移し続けても、ミセス・ワタナベが損失確定せずに我慢する可能性はある。ただ、いつまでもドルを持ち続けるのは難しい。FXには、投資家の評価損が証拠金の一定割合に達すると強制的な反対売買で損失を確定する機能(ロスカット)があるからだ。

■倍率10倍なら108円でロスカット

 ドルがどこまで下がればロスカット発動が増えそうなのか。推計してみよう。

 まず、前出の有力業者4社のデータを集計した3月22日までの1週間に、ドルは主に111~114円程度で推移した。ミセス・ワタナベはこのレベルで巨額のドルを買ったとみられる。

 では、FX投資家が利用している証拠金倍率(証拠金の何倍の取引をしているかを示す数値で上限は25倍)は、どの程度なのか。外為どっとコム総合研究所の「外為白書」によると、FX利用者のおよそ半分は10~25倍で取引しているという。ただこれはあくまで人数ベースの比率。倍率の分、金額ベースでは5割をかなり上回るだろう。

 

4月に予定される日米経済対話開始に向けて円高の可能性が意識されやすくなる点も要注意だ
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4月に予定される日米経済対話開始に向けて円高の可能性が意識されやすくなる点も要注意だ

 以上のことを踏まえつつ、強制的にドル売りをさせられる相場水準を推計すると以下のようになる。

 まず証拠金の半分(50%)の損失でロスカットになると想定する。そうすると25倍で取引している人は2%のドル下落で売りを強いられる(2%の25倍が50%)。10倍なら5%の下落でロスカットだ。上述した通り、ミセス・ワタナベがドルを買った水準は主に111~114円程度。ここから2%のドル安とは109~112円程度。5%の下落なら105~108円程度である。このあたりが「円高地雷」が爆発しそうな水準のメドということになる。既にロスカットされている人もいるかもしれないが、本格化するのはこれからだろう。

 25倍で取引している人は、ドルが109円まで下がる過程で強制的なドル売りを迫られそうだ。その後108円に下がると10倍で取引していた投資家に対してもロスカットが始まる。大ざっぱにいえば、そんなイメージである。

 果たして「地雷」の爆発が円高に拍車をかける展開になるのか。4月に予定される日米経済対話開始に向けて、円高の可能性が一段と意識されやすくなりそうなだけに、要注意だろう。

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DJ-【コラム】中国の人民元操作が危うくなっている理由

2017年01月09日 13時26分21秒 | 為替

 

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 中国政府は依然として、通貨をほんのわずかに制御できなくなることさえ現実として受け止められないようだ
。この1年間、中国は通貨管理プロセスに関して市場の理解を得ようとしてきたが、結局、自らが一番よく知る
「締め付け」という手段を取っている。この戦いは厳しくなる一方だ。

 中国は、自国市場における世界の金融市場の影響が大きくなり、以前よりも制御するのが難しいと感じている
。オフショアで自由に取引されていた中国の人民元は先週、不意に急騰し、その借り入れコストは60%以上も上
昇した。ちょうど1年前には借り入れコストが同様の水準まで上がり、元は急落した。デジャビュ(既視感)の
ようだが、値動きは逆になっている。元の秩序ある下落という中国政府の思惑は打ち砕かれた。

 この数カ月間、中国は国内市場で元安を誘導してきたが、それでパニックが起きるということはなかった。投
資家は元安の許容限度を試すかのようにオフショア元の価値をどんどん下げていった。元安が許容限度を超えた
ところで政府は介入した。米連邦準備制度理事会(FRB)が直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事録
で投資家の不意を突くと、ドルは値を下げ、元は急騰した。つまり、再び危うい領域に入ってしまったのだ。

 見た目を取り繕うための中国の取り組みは無駄に終わるかもしれない。中国人民銀行(中央銀行)が採用して
いる通貨バスケットを例にとろう。概ね恣意(しい)的だが貿易加重を行ったように見えるバスケットだ。中国
は世界の通貨の値動きの影響を弱めるため、最も影響が大きくボラティリティが高い主要通貨の構成比を引き下
げた。問題はこの数日間、中国がそのバスケットを無視してきたように見えることだ。

 中国が自国市場の開放を試みようとするなか、世界の市場圧力に対処するのはこれまでよりずっと難しくなっ
ている。米国の金融引き締めやユーロ安・円安のせいで、元を通貨バスケットに対して安定させるという約束が
守りづらくなった。主要貿易相手国の通貨の価値の急落は経済成長の障害となる。十分に立証されているように
、ドル高は中国から数十億ドルの資金を流出させ、外貨資産の蓄積を促してきた。このため中国の金融政策は経
済成長の維持よりもリスク管理が目的となっており、政府が人民元の急落を食い止める能力はさらに低下してい
る。

 投資家は元安の反転が続くと誤解すべきではない。これは小休止にすぎない。米国の利上げが中国の債券市場
の低迷を悪化させたように、ドル高は中国の通貨を安定させる戦いの痛みを倍化させるだけである。
-0-

Copyright (c) 2017 Dow Jones & Co. Inc. All Rights Reserved.

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トランプ次期政権が日本に「円高」を迫る日

2017年01月06日 10時40分52秒 | 為替

「ドル高前提」の日本株上昇の危うさ

近藤 駿介 :金融・経済評論家/コラムニスト

ドル高のまま米国も日本も潤うというシナリオは本当に実現するのか(写真:AP/アフロ)

「申酉騒ぐ」といわれる酉年がスタートした。2017年酉年の金融市場が昨年同様、騒がしいものになるかは、トランプ次期大統領にかかっている。

昨年11月の米国大統領選挙以降のトランプラリーで、NYダウが史上最高値を更新し、日本でも日経平均株価が年初来高値を更新したこともあり、市場関係者の2017年の見通しは総じて楽観的なものになっている。

主要証券会社の2017年の相場見通しは、FRB(米連邦準備理事会)による利上げがドルを押し上げ、円は上昇しにくい地合いが見込まれことからドルは110円以上のドル高水準で推移し、円安による企業業績回復によって、日経平均も2万円台で推移するという、いたってシンプルなものになっている。

トランプ氏が実際に政策実行ならリスクは消えるのか?

しかし、2017年の金融市場はそれほど単純な展開とはならず、これまで以上に悩ましい展開になる可能性を秘めている。

市場関係者の多くは、トランプ次期大統領が掲げて来た政策の実効性をリスクだと認識している。確かに、大統領就任初日にオバマ大統領が実行してきた政策の多くを廃止する計画であることを明らかにしているトランプ氏が掲げる政策の実効性が失われれば、政策的漂流状態となってしまう。これは金融市場に混乱を招く大きな要因となるだろう。

ここで言いたいのは、日本の投資家が認識しておかなければならないことは、トランプ次期大統領が掲げる政策の実効性が高まることもリスクだということだ。

Make America great again

トランプ次期大統領が掲げるこのスローガンは、平たく言えば、米国で生まれる利益、米国が得るべき利益は米国が独占するというものだ。

つまり、トランプ次期大統領が掲げる政策が実現し、米国経済が力強い成長を見せたとしても、これまでのようにその「おこぼれ」を頂戴しにくくなり、日本お得意の「コバンザメ作戦」が通用しなくなる可能性があるということだ。

また日本人が描く、ドル高を背景とした輸出企業の業績回復によって日本経済が潤うというシナリオが現実のものになるということは、トランプ次期大統領にとっては政策的失敗を意味することであり、ラストベルト(さびた地帯、斜陽化した中西部や北東部の工業地帯)を中心とした熱狂的支持者たちからの支持を失いかねないことだ。

トランプ次期大統領の政策パッケージがうまく機能すれば、米国企業と日本企業の業績には差が出て来るはずである。トランプ次期大統領の政策パッケージが実現し、米国経済に恩恵が及ぶということをファンダメンタルズ面でのメインシナリオに据えるのであれば、投資面でのメインシナリオは、米国の株価と日本の株価に乖離が生じて来るということになるはずである。

したがって、トランプ次期大統領の政策パッケージの実現性とその効果に期待する投資家にとって、日本株を持つ動機は、トランプ次期大統領の政策パッケージが期待する効果を生まなかった場合のヘッジということになる。

レーガン元大統領との相違点とは?

また、トランプ次期大統領に関しては、過去の新政権誕生とは異なった固有のリスクがあることも認識しておくべきだ。それは、トランプ次期大統領が掲げる政策の実現性が高まっても、実体経済が政権の思惑どおりに動くか定かではないというリスクである。

通常であれば、政権の政策にそって実体経済は動いていくものである。しかしそれは、政権と政策の持続性があるという前提があっての話である。
過去米国大統領の就任時の支持率を見てみると、少なくとも50%程度の支持はあった。トランプ次期大統領と比較されるレーガン元大統領の支持率も6割近い数字であった。

これに対してトランプ大統領は、就任時から支持率よりも「不支持率」が高くなるといわれている。不支持が支持を上回るという異常な状況が続き、トランプ政権が短命で終わるという見通しが強まれば、トランプ政権の思惑どおりには動くものと動かないものに分かれていくことになる。

動きやすいのはおカネであり、動き難いのは実体経済である。多国籍企業が海外に持つ利益を米国に還流させる際の税率を10%に下げるという政策が実現すれば、資金が米国内に還流し、投資や自社株買い、配当金などに使われる可能性はある。

しかし、中国やメキシコに対して高い関税をかけるということが決まっても、それによって中国やメキシコにある生産拠点がすぐに米国内に移されるものではない。こうした投資は長期にわたる計画にそって行われたものであり、税制や金利によって直ちに動かせる資金とは違う。

低支持率が常態化しトランプ政権が長くても4年だという見方が強まれば、実物投資は簡単には動かない。なぜなら、オバマ政権が掲げて来た自由貿易を否定することで誕生するトランプ次期政権が短命に終わるとしたら、トランプの次の政権はまた自由貿易を標榜する政権になる可能性が高くなるから。トランプ政権が短命で終わり、4年後に再び大きな政策転換があるとなれば、直ぐには動かないというもが賢明な選択の一つになる。

また、トランプ次期大統領が掲げる政策の成否には、為替も重要な要素となって来る。現状は、トランプ政権に対する期待自体がFRB(米連邦準備理事会)の利上げを催促し、さらなるドル高を招きかねないという構図になっている。

次期政権を従来と同じ物差しで計るべきではない

トランプ次期政権に対する期待とFRBによる利上げ観測を背景に、足もとのドル指数は、14年ぶりの高水準にある。だが、米国企業活動に逆風となるドル高をFRBと次期政権が指をこまねいて放置するだろうか。次期政権からどのような発言が飛び出すかを想像するのは難しいが、最近のイエレンFRB議長の発言の中で気にかかるのは、米国の自然利子率がかなり低い水準にあるというたぐいのもの。利上げは穏やかなものになるという発言も、こうした認識に基づいたものだともいえる。

そうだとすると、今後FRBの政策の軸足は、ドル高を誘発しかねない利上げから徐々に保有債券の再投資の縮小、停止の方に移っていく可能性があると思われる。利上げも保有債券の再投資の縮小、停止も金融引き締め政策であることには違いはないが、FRBの利上げを前提として動いている市場がどのような反応を示すかはかなり不透明だ。

これらのことを総合的に考えると、トランプ次期政権に対する期待とFRBの利上げ観測を背景としたドル高によって企業業績が回復し、日経平均株価が堅調に推移するというシナリオは、次期政権をこれまでと同じ物差しで評価したうえでのものだといえる。

少なくとも過去8年の政策の多くを大幅に見直すと表明している次期政権の影響を、これまでと同じ物差しで測ろうとしていることこそが、2017年最大のリスクだといえそうだ。


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最強通貨は円か、2016年相場の重い事実=佐々木融氏

2016年12月29日 21時57分25秒 | 為替

[東京 29日] - 本稿執筆時点で2016年はまだ営業日を1日残しているため、少し気が早いかもしれないが、簡単に今年を振り返っておきたい。

まず為替だが、2016年のドル円相場は120.20―120.30円近辺で取引を開始していたため、足元の水準(東京時間12月29日午後7時時点で116円台)程度で2016年を終えるのなら年間を通じると下落との結果になりそうだ。

ドル円相場はアベノミクスが始まった2012年から2015年まで変動相場制移行後初めて4年連続の上昇を記録していたが、5年連続の上昇とはなりそうにない。

もっとも、11月8日に行われた米大統領選後、ドル円相場は急激な上昇を見せ、ニューヨーク終値ベースでは、米大統領選当日を含む週からの6週間で14.4%も急騰した。これは変動相場制移行以来最大の上昇率だ。

この6週間のドル円相場の動きは「ドル高」と総括されることもあるが、実際には「円安」の側面が強い。この間の主要10通貨の動きを見ると、カナダ・ドルが最も強く、次が米ドル、そして英ポンドが強かった。これら3通貨の強弱にはさほど差がなく、米ドルが一方的に強かったわけではない。

一方、最も弱かったのは円で、2番目に弱かったユーロに対してさえ7%も下落している。週ごとの主要10通貨の騰落率順位を見ると、円は米大統領選が行われた週から5週間も連続して最下位になっている。

ちなみに、2014年10月に日銀がサプライズの追加緩和を行った週から5週間連続で円は最下位になったことがあるが、こうした現象は他の通貨を含めて見ても、めったに起こることではない。英国民投票で欧州連合(EU)離脱が決まった後のポンドでさえ、連続して最下位となったのは3週間止まりだ。つまり、2016年11月から12月にかけてドル円相場が急騰したのは「円独歩安」の側面が強かったと言えそうだ。

このように11月と12月は円の弱さが印象的だったわけだが、実は2016年を通じて見て最も強かった通貨は今のところ円である。

カナダ・ドル、ノルウェー・クローネがかなり近いところで2位、3位につけており、最終的に年を終えるまでまだ分からないが、このまま行けば、円は2011年以来5年ぶりの「最強通貨」となる。円は2012年と2013年が最下位、2014年が8位、2015年が2位だったため、過去3年間で着実に順位を上げてきたことになる。

2016年中の「最弱通貨」は今のところポンドであり、円に対して20%以上、2番目に弱かったスウェーデン・クローナに対しても10%以上下落している。2016年は「ポンド独歩安」だったと総括できる。ドルは今のところ5位だ。ドルは2014年、2015年と連続して最強通貨だったが、3年連続で最強通貨とはなれなかったようだ。

<金利差拡大でドル円上昇は本当か>

次に2016年の長期金利に関しては、前半は世界的に金利低下、後半は金利上昇という展開となった。しかし、10年国債金利で見て、年後半の金利が年初の水準を上回り、1年を通じて金利上昇となったのは、主要国ではカナダ、米国、ノルウェーの3カ国だけだ。このうち10年国債金利が最も上昇したのはカナダで、次が米国であり、ノルウェーもほぼ同程度上昇している。米国の長期金利上昇が突出していたわけではない。

一方、ドイツ、フランス、英国の10年国債金利は、年前半から8月にかけての低下があまりにも急激だったため、年後半の上昇後でも、依然として年初の水準から40―60ベーシスポイント(bp)程度低いままだ。日本も同様に、年初の10年国債金利はプラスの0.25%程度あったため、年間では低下している。ちなみに、こうした主要国の長期金利の動きは、2年スワップ金利の動きを見ても、概ね同じようなことが言える。

米国の2年国債金利と10年国債金利のギャップは年初から8月にかけて急速に縮小し、イールドカーブのフラット化が進んだ後、9月以降急速にスティープ化したが、結局2年と10年の金利差は年初と同じ120bp程度で年を終えそうだ。年末ベースで見れば、2014年、2015年と続いたイールドカーブのフラット化の動きが反転したと言い切るのはまだ難しい状況にある。

日米10年国債金利差は11月以降急速に拡大して、2010年以来となる250bpまで到達した。2010年のドル円相場は80円台から90円台で推移していたことを考えると、金利差と為替相場の長期的な関係の難しさが見えてくる。

つまり、金利差が一定レベルまで広がったら、ドル円相場が一定レベルまでドル高・円安になるといった関係は基本的にはない。また、日米10年国債金利差はリーマン・ショック以降250bpを大きく上抜けることができておらず、それは今回も同様だ。

株価を見ると、日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)ともに2016年を上昇で終えられるかどうかは微妙な情勢だ。1980年代以来の5年連続上昇となるかどうかが注目される。

ちなみに、他主要国との比較では日本株はアンダーパフォームしている。主要国の株価指数で最もアウトパフォームしているのはカナダとノルウェーで英国と米国がそれに続いている。

つまり、2016年中の通貨、金利、株価のパフォーマンスを見ると、全てにおいてカナダとノルウェーが大きく上昇していることが分かる。これは2016年、原油価格が大きく上昇したことが影響していると見ていいだろう。原油価格は1年間で40%以上も上昇しており、これは2009年以来の上昇幅となる。

<2017年のドルは弱い通貨に>

このように2016年のマーケットを総括すると、いくつかのことが見えてくる。まず、円相場は確かに11月半ばからの6週間程度で急落したが、ある意味ではこれは年前半の急騰の反動であり、2015年頃からの円の強さは続いていると言える。

また、この間、確かにドルは強く、名目実効レートは1月の高値を更新して上昇しているが、「ドル独歩高」と言えるような状況ではなく、2016年の1年間を通じて見れば、2014年、2015年のようなドルの強さはなくなっている。

11月半ば以降の米長期金利の急騰は確かに印象的だったものの、年間を通じて見れば、米国債のイールドカーブ(2年から10年)は20bp程度上方にパラレルシフトしただけだ。日米10年国債金利差もここ数年の上限で跳ね返されている。

以上のことを考えると、2017年早々にドル円相場は、2016年末の動きへの反動を示す可能性が高そうだ。

米連邦準備理事会(FRB)は2015年12月半ばに利上げを行ったが、米10年国債金利はそれから1カ月も経たない2016年1月上旬に明確な下げトレンドに入った。今回の利上げ後の動きも同じことを繰り返す可能性は高そうだ。

当社の米国エコノミストは、トランプ新大統領の財政政策により米国景気に影響が出てくるのは2017年後半で、さらにその景気押し上げ効果も年率0.25%程度と控えめに見積もっている。それにしては米長期金利は上がり過ぎてしまったかもしれない。

気が付けば、ドル名目実効レートは今年1月のピークを3%弱上回るところまで上昇している。過去2週間、米国株は主要国株価指数の中でアンダーパフォームしている。ドル高が米国経済に悪影響を与え、それが明るみに出ることによって、トランプ新政権がドル高に対して懸念を示す可能性は高まっていると考えられる。

筆者は引き続き2017年はドルが最弱とまで行かなくとも弱い通貨になると見ている。ちなみに、ドルは2000年と2001年にも2年連続で最強通貨になったことがある。そして、現在ドルは実効レートベースでこの時のピークの水準に近づいている。前回は、2000年と2001年に連続して最強通貨になった後、3年連続で最弱通貨となっている。

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日本円は「蚊帳の外」に、仮想通貨が独自の経済圏を形成

2016年10月13日 07時58分08秒 | 為替

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

前回述べたICO(イニシャル・コイン・オファリング)のほとんどは、OpenLedgerという分散市場で行なわれている。

 これは金融取引の大きな進歩だ。なぜなら、カウンターパーティーリスクがほとんど消滅し、手数料が従来の株式市場の取引に比べて飛躍的に低下するからだ。

 新しい技術を開発した企業のスタートアップ資金は、これまでは株式市場におけるIPOによって行なわれてきた。しかし、今後は、分散市場におけるICOによってなされるだろう。

 仮想通貨はすでに独自の経済圏を形成している。問題は、日本円が蚊帳の外に置かれていることだ。

リーマンショックで大問題となった
カウンターパーティーリスク

 これまでの金融取引において、カウンターパーティーリスクが大きな問題であった。

 「カウンターパーティーリスク」とは、決済の前に相手方が倒産して、契約不履行になるリスクである。

 カウンターパーティーリスクは、2008年のリーマンショックで大きな問題となった。CDSというデリバティブでの取引を大量に行なっていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻し、デリバティブ契約が実行できなくなった。さらに、保険のAIGが経営危機に陥り、同社が引き受けていたCDSが実行できなくなる危険が生じた。

 金融機関は他の金融機関を信用できなくなり、疑心暗鬼に陥って、マネーに走った。それが連鎖して、金融システムはメルトダウンの直前までいった。

 この問題は、デリバティブを取引所取引(市場取引)で行なうという形で対処された。

 金融取引では、相対取引と取引所取引とが区別される。相対取引の場合には、カウンターパーティーリスクが存在する。それに対して、取引所取引では、中央清算機関(クリアリングハウス)が売り手と買い手の間に入ってリスクを集中的に管理する。取引相手先が中央清算機関に一元化されるため、カウンターパーティーリスクが回避され、契約不履行が他の主体に連鎖するリスクがなくなる。

 しかし、その半面で、決済完了までに時間がかかり、手数料も増加するという問題が発生する。

仮想通貨取引における
カウンターパーティーリスクは?

 仮想通貨そのものの取引は、管理者のいないP2Pがブロックチェーンに記録することで行なわれるため、カウンターパーティーリスクはない。

 しかし、周辺サービスまで含めると、カウンターパーティーリスクが存在する。ビットコインの場合、ドルや円などの現実通貨とビットコインの両替や取引で発生する。

 実際、ビットコイン交換所であるマウントゴックスが2014年2月に破綻し、預けられていたビットコインが回収不可能となる事件が生じた。これは管理者が不正を働いたことによるもので、広い意味でのカウンターパーティーリスクだ。

 こうした問題が起きるのは、マウントゴックスが従来型の集中管理組織であるからだ。マウントゴックス後も、仮想通貨の取引所や交換所の破綻事件がいくつか発生している。

 問題はそれだけではない。集中型システムでは手数料が高い。ビットコインそのものの送金コストが低くても、現実通貨との交換にコストがかかってしまって、全体としてのコスト削減にはならない可能性がある。

 しかし、こうした問題を回避する手段がつくられつつある。それが分散市場だ。

デンマークの取引所CCEDKが開設した
世界初の分散取引所Openledger

 「分散市場」(または、分散型取引所、Dex:Decentralized Exchange)がすでに誕生している。世界最初の分散型取引所は、デンマークの取引所CCEDKが開設したOpenledger(オープンレジャー)だ。

 Openledgerでは、ビットコインやEther、ドルにペッグしたBitUSDなどの取引を行なっている。また独自トークン(仮想通貨)であるObitsの発行も行なっている。

 また、ICOO(Initial Coin Offering Openleger)というICOのためのファンドを立ち上げ、毎月のように新たなDAC(分散型自律企業)が資金調達のためのICOを行なっている。これまで行なわれたICOのほとんどは、Openledgerで行なわれたものだ。

 決済はほぼ即時で行なわれるので、カウンターパーティーリスクはほとんどない。

 取引が分散取引所で行なわれていたら、リーマンショックやマウンドゴックス事件は起こらなかっただろう。

Openledgeでは、手数料収入などを使って、自らのトークンであるObitsを購入するBuy-back(バイバック)が行なわれている。これは、上場企業の自社株買いと同じようなものだ。

 OnalyticaのFintech 2015: Top 100 Influencers and BrandsのTOP 100 BRANDSで、CCEDKは世界第31位に選ばれている。このランキングでは、Nasdaqが第23位で、総資産120兆円のスイス最大の銀行UBSが第36位だ。分散市場は、もはや限界的な存在ではなく、金融市場でのメジャーな存在になろうとしているのだ。

プラットフォームとして
使われるのはBitShares

 OpenLedgerは、プラットフォームとして、BitSharesを採用している。

 BitSharesの仕組みは、やや複雑だ。これについては、拙著『仮想通貨革命』(ダイヤモンド社、2014年)で説明した(第5章の5「分散市場と自動化企業が作る未来社会」、補論「分散市場の仕組みと自動化された通信社」)。あらためて説明すれば、以下のとおりだ。

 BitSharesのシステムには、いくつかの資産がある。まず、BTS(BitShares)と呼ばれるものがある。これは、BitSharesにおける取引で使われる基軸通貨であり、BitSharesで取引をするには、BTSが必要となる。また、BitSharesを株式会社と見た場合の株式のようなものである。BTSはブロックチェーンで運営される。

 さらに、SmartCoin(当初はBitAssetと呼ばれていた)がある。これは、価値が他の金融資産の価値に追随する仮想通貨だ。

 SmartCoinには、いくつかのものがある。BitBTCはビットコインの価格をフォローする。つまり、BitBTCは、ビットコインとほぼ同じ価値を持つ資産だ。BitUSDは米ドルの価格をフォローし、ほぼ1ドルの価値を維持する。BitGoldは金の価格をフォローする。

 BitSharesのシステムで、以上の資産の取引を行なうことができる。取引の方法も、「Buy(現物買い)」「Sell(現物売り)」の他に、SmartCoinについては、BTSを証拠金とする「Short(空売り)」も行なえる。また「Swap(スワップ)」「Loan(ローン)」などもある。

 SmartCoinは、通常で行なわれている商品購入時の決済にも利用しやすいという利点がある。

IPOからICOに
仮想通貨が現実の通貨を駆逐する可能性は?

 今後、多くの企業が、事業の一部で自律的な運営に適している部分を切り離して、DAO(自律的組織)にするだろう。とりわけ革新的な新技術が開発された場合には、それをDAOとして運営するだろう。

 ICOして資金調達をし、その後は、トークンがいまの株式のように取り引きされるだろう。

未公開で時価総額が10億ドルを超える企業は、ユニコーン企業と呼ばれる。こうした企業はいずれIPOするのだろう。しかし、従来型のIPOでは手数料がきわめて高い。今後は、IPOではなく、ICOを行なう場合が増えるのではないだろうか。

 ICOが急激に増えたのは、前回述べたように、EthereumのコインであるEtherの価格が、ICO時からわずかの期間で60倍以上に上昇したのに刺激されたためと思われる。こんなことは、株式の世界では滅多に起こらないだろう。

 このように、技術開発資金の調達法が一変しようとしている。いま起こっていることを見ると、2004年にまだ小規模な企業であったGoogleがIPOしたことを思い起こす。

 その後、グーグル(正確には、その持ち株会社であるアルファベット)の時価総額は、アメリカで第2位にまでなった。それと同じようなことがいま生じようとしているのだ。

 分散市場は、『仮想通貨革命』を書いたときには構想段階だったので、夢のようなものとして紹介した。それがいまや利用されており、巨額の資金を調達することに成功しているのだ。変化は想像した以上に速いスピードで進んでいる。

 これからどういう世界がつくられるか。仮想通貨が現実の通貨を駆逐する可能性はなくはない。

ビットコイン経済圏が誕生しているが
日本円は蚊帳の外

 分散市場ではビットコインが用いられる。ビットコインは、すでに独自のエコシステムを形成しているわけだ。

 ビットコインの価値は変動する。しかし、それは、リンクしたスマートコインを買うことで避けることができる。

 現実世界の支払いはどうするか? 取引相手がビットコインを受け付けてくれれば、ビットコインで出金して払えばよいわけだ。仮想通貨なら簡単に国境を越えられる。銀行の支店がないところでは、とくに使われるだろう。

 受け付けてくれないのであれば、ドルにすればよい。

 スタートアップ企業のCircleは、ビットコイン口座を無料で提供し、その口座と銀行口座とのお金の出し入れや、コイン送金が即時にできるサービスを2105年暮れから米国で開始した。

 今年9月7日にiPhone 7の発表があったが、近日中にリリースされるiOS10では、iMessage内でCircleのビットコイン決済が利用可能になるようだ。

 初期アプリのiMessageから利用できるので、わざわざアップストアからダウンロードし、初期登録などを行なう手間をなくすことができる。ただし、Circleの公式ブログによると、利用できるのはアメリカとイギリスであり、日本で利用が可能になるのは、先のようだ。

 OpenLedgerの場合も、取引できる通貨としてホームページに示されているのは、ビットコイン、米ドル、ユーロ、中国人民元、BTS、OBITSなどだ。

 その中に日本円はない。日本はすでにビットコインシステムから外れてしまっているのだ。


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DJ-中国の人民元需給引き締め、借り入れコスト押し上げ

2016年09月15日 12時33分38秒 | 為替

 

 中国政府がオフショアでの人民元取引を拡大しようとした時、元の信用収縮のことは頭になかった。

 だが最近、香港で人民元の短期借り入れコストが急上昇している。これは今年2回目だ。ここ数日、人民元の
1週間物香港銀行間取引金利(HIBOR)は8ポイント余り上昇して10.15%となっており、元安に賭ける取引コスト
が再び上昇している。

 このことは、元相場の動きが最近落ち着いているように見えるからといって、安心しすぎてはならないことを
教えている。

 考えられる原因の1つは、1年前の中国政府の為替介入だ。それは遠い昔の思い出のような気がするかもしれな
いが、中国は2015年8月に人民元を切り下げてから数週間、オフショアの元相場を安定させるために、ひそかに
香港市場に介入した。これにより、オフショア元相場はオンショアよりはるかに安くなった。中国政府は9カ月
前にも介入したが、その時は中央銀行の関係者が介入したことを認めた。
 
 想定される介入方法の1つは、中国の国有銀行が長期の通貨先渡しポジションをとることだ。トレーダーらに
よると、先週、一部の銀行が行っている数十億ドルの1年物先渡し取引が満期を迎えると予想されていた。だが
、そうはならず、銀行はオフショア市場でできる限り人民元を買い集め始めた。今週は中秋節の祝日で香港と中
国本土の市場が休場になることも、事態を悪化させた可能性がある。

 先渡し取引が満期を迎えたら、市場が需給逼迫(ひっぱく)に気付くことはまずなかっただろうが、この取引
は中央銀行かその他のコンデュイット銀行のいずれかのバランスシートで認識せざるをえなかっただろう。

 これらは全て、先渡し市場で再び人民元が急落する中で起きた。中国の外貨準備高の減少には歯止めがかかっ
たものの、資本流出は続いており、ここ数カ月はそのペースが加速している。

 中国政府は1年前にオフショア人民元の需給を引き締めた。投資家はその影響が長引くことを覚悟しておいた
方がいい。
-0-


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コラム:なぜドル円だけが3桁なのか=佐々木融氏

2016年08月24日 22時05分35秒 | 為替

[東京 24日] - 先進国通貨の対ドルレートを見ると、円だけ異なる点があることに気づく。他は整数が1桁だが、円の対ドルレートだけが3桁なのだ。

実は、ドル円相場も最初は1桁だった。何しろ、もともとは1ドル=1円だ。

円は、1871年(明治4年)に「新貨条例」という法律で日本の貨幣単位として採用された。純金1.5グラム=1円と定められ、1円、2円、5円、10円、20円の金貨が製造された。

一方、米国のドルはその79年前の1792年に「貨幣鋳造法」によって公式に採用され、1ドル金貨の金の含有量が決められたが、1871年時点での日米両国の金貨幣の純金含有量を比較すると、日本の10円金貨が15グラム、米国の10ドル金貨が15.05グラムでほぼ同じとなっている。

つまり、円という通貨は、そもそも1ドル=1円という価値になるように作られたと考えられる。

<戦前にたどったヘリマネへの道>

しかし、1877年に勃発した西南戦争の戦費調達のために、政府の不換紙幣が大量に発行されると、円の価値が下落し、1897年には1ドル=2円程度まで円安が進んだ。

戦費調達のために、政府が紙幣を大量に刷って市中に供給した結果、円の価値が下がり、インフレ、他国通貨に対する円安を引き起こしたのだ。当時、東京のコメ価格は、4年間で倍になったと記録されている。

こうした事態を背景に、1882年、松方正義大蔵卿(現在の財務大臣)は、日本銀行(日銀)を創設。日銀が唯一の中央銀行として、本位貨幣(金貨や銀貨)と必ず交換する銀行券(兌換銀行券)を独占的に発行するという制度を作った。

1897年に公布された「貨幣法」では、「1円=純金750ミリグラム」と定め、5円、10円、20円金貨を鋳造した。1円は、当初定められた純金含有量のちょうど半分と同等の価値ということになったのである。

このような措置をとったのは、それまでの物価上昇を反映するためだった。そして、日銀が発行する兌換銀行券も、金貨と兌換することを定め、これによって日本の貨幣制度は完全に金本位制度になったのである。

こうした政策のおかげもあって、ドル円は1897年から1931年までの34年間もの間、1ドル=2円前後で安定的に推移した。

しかし、ここから事情が変わってくる。1929年10月24日の米国での株価大暴落(暗黒の木曜日)を発端として世界的な大不況となり、他の主要国同様、日本でも物価が大幅に下落し、デフレに陥ったのだ。

この状況下、1931年12月13日に大蔵大臣に就任した高橋是清は、金の輸出を禁止し、日銀の発行している兌換銀行券を金貨に交換することを法律で制限した。つまり、金本位制度の停止である。

さらに高橋蔵相は1932年3月、金融関係者に対し、財政政策の拡張と満州事変の戦費調達のために、国債の日銀引き受けを実施する準備がある旨を伝えた。高橋蔵相の強い意向を受け、日銀も同意した。まさに、ヘリコプター・マネーが行われたわけだ。

<1ドル=1万円になったのと同じ衝撃>

さて、この結果、円は暴落し、対ドルで2円前後から1932年12月の4.86円まで急速な円安が進行するとともに、日本はデフレから脱却した。

しかし、高橋蔵相は、経済が回復した後は当然、日銀直接引き受けを止めるつもりでいた。1935年10月に発表した1936年度予算編成方針では「公債漸減方針」を掲げた。

ちなみに、当時日銀は国債を直接引き受けていたが、引き受けた国債を市中に売却していた。直接引き受けは行っていなくとも、市中から購入した国債をそのまま保有し続けている現在の状況に比べると、直接引き受けていた当時の方が健全だったとも言えるかもしれない。実際、1936年当時の日銀のバランスシートの大きさは対国民所得比で20%前後であり、現在と比較しても極めて小規模にとどまっている。

日銀は引き受けた国債のうち、当初98―99%は市中で売却できていたが、1935年度には77%しか売却できなかった。公債の市中消化が滞り、日銀が発行公債を背負い込む状況を受け、高橋蔵相は、公債政策の行き詰まりを指摘し、悪性インフレーションの弊害が現れることへの警告を発した。

もっとも、健全財政路線にシフトすることで、高橋蔵相は軍部と対立。1936年2月26日に暗殺された(二・二六事件)。その後、公債漸減方針が撤回され、「対満州政策の遂行」「国防の充実」「農村の経済更生」「税制大改革」の名のもとに国債が野放図に発行され、戦争に突入していったことは歴史が示すとおりだ(国債発行額は1932年度の7.7億円から1945年度には334億円へと13年間で40倍以上に膨れ上がった)。

そして、戦後の日本は復興資金を日銀信用により賄ったことなどにより、ハイパーインフレに悩まされることになる。1944年から1951年までの8年間の物価上昇率は年率平均プラス100%にも達した。こうしたハイパーインフレを受けて、ドル円は円安方向へと大幅に修正されたのである。

ちなみに、第2次世界大戦が勃発した1939年当時は、1ドル=4.25円程度だったが、1945年8月に戦争が終結すると、軍用交換相場として1ドル=15円に設定され、1947年3月にはこれが1ドル=50円に、さらに1948年7月には270円に引き上げられた。そして、1949年4月に、連合国軍総司令部(GHQ)が発表したレート(一般に利用される相場)は、1ドル=360円となった。

1ドル=4.25円だったドル円は、たった10年間で360円までの大幅な円安になったということだ。これが先進国通貨の中で、ドル円だけが3桁になっている理由である。

要するに、日本という国は、たかだか80年ほど前に現在と同じような政策を採用しており、その結果が現代の為替相場に残っているのだ。4.25円が360円になるのは、120円が10000円(1万円)になるのと同じマグニチュードである。

後世の為替ストラテジストが、なぜドル円だけが5桁なのかを説明する時のキーワードは、「アベノミクス」「量的・質的金融緩和(QQE)」なのだろうか。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

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日本経済は円高で再び大きな試練が始まった

2016年08月23日 07時45分29秒 | 為替

真壁昭夫 [信州大学教授]

足元の為替市場で円高が進んでいる。18日には、ドル/円の為替レートが99円台半ばまで下落した。これは、英国のEU離脱決定の影響によって、投資家のリスク回避が進んだ6月24日(1ドル=99.02円)以来の水準だ。

 この背景にはいくつかの要因がある。その一つは、米国経済の先行き不透明感だ。足元の経済指標やこれまでの景気循環を考えると、徐々に米国の景気がピークを迎える可能性は高まっている。

 特に、昨年の夏場以降、米国の企業業績がドル高の影響で下落傾向を示していることは要注意だ。米国企業の海外収益の割合が高まっていることを考えると、ドル高は米国経済にとって無視できないマイナス要因だ。

 米国政府は、これ以上のドル高を容認することは難しい状況になっている。経済専門家の間でも、「米国政府の為替政策はドル安に転換している」との見方が有力になっている。

 ヘッジファンドなど大手投資家は、米国政府の政策展開を見逃すはずはない。彼らの投資姿勢は、既にドル安・円高を想定した持ち高に変わりつつある。そうした状況を考えると、今後も基本的に円高が続きやすくなるはずだ。

 また、最近の世界経済を概括すると、欧州の大手銀行が抱えるシステミックリスクなど、無視できないリスクが高まっている。それだけ投資家のリスク回避の動きが出やすく、リスク軽減から円高は進みやすいと見るべきだ。

 これまで、円高はわが国の企業業績を圧迫し、景気を低迷させてきた。ここで、わが国企業は円高への抵抗力を高め、経済の活力を引き上げることを真剣に考える局面に来ている。

足元の為替市場を取り巻く経済環境
総合的に考えると円買い圧力は強まる

 足元のドル安・円高は、米国の実質金利の上昇圧力の弱さに起因する部分が多い。短期的には、為替相場を動かす最も大きな要因は二国間の“実質金利”の差だ。

 一般的に、投資資金は、低金利の通貨から高金利の通貨に向かいやすい。多くの投資家は高金利通貨を選好することが多いからだ。その結果、高金利の通貨は低金利の通貨に対して強含み、金利の低い通貨は弱含みとなりやすい。

現在、米国は主要国の中で唯一利上げ期待がある。本来であれば、ドル高が進んでもおかしくはない。しかし、これは表面的な利回り=名目金利を見た場合の議論だ。

 問題は、通貨の価値の変動=インフレ率を加味した実質ベースの金利を見なければならないことだ。過去の相場を振り返っても、為替レートは、名目金利から物価の上昇率を引いた、実質金利に反応することが多い。

 名目ベースではわが国の金利水準の方が低いのだが、米国のインフレ率を考えると、どうしても実質ベースで見た金利はわが国の方が高くなりがちだ。そのため、円が買われやすく、ドルが売られやすくなる。

 米国のFRBは年内利上げの可能性を残しているが、会合の都度、金融政策の慎重な運営スタンスが示されている。市場参加者の利上げ予想も高まりづらく、金利の上昇圧力は弱い。

 2016年上半期、わが国の経常収支(海外とのモノやサービスの取引状況を示す)の黒字幅は、10.6兆円と上半期として9年ぶりの水準に達した。経常収支が黒字であるということは、需給面からドル売り・円買いにつながりやすい。

 わが国の企業が、海外からの売上などで得たドルなどの外貨を売り、円を買う可能性が高いからだ。これらの要素を総合的に考えると、円買い圧力が強まる可能性が高まる。

自国の経済に下落圧力がかかると
ドル高を牽制し始める米国

 昨年以降、米国政府のドルの為替レートに対する考え方=為替政策も変化している。過去を振り返ると、米国の経済が堅調な場合、米国政府はドル高に寛大だ。「強いドルは国益につながる」とのスタンスを明確にする。その場合、円安の進行も容認されてきた。

 しかし、ひとたび米国経済に下落圧力がかかると、米国は手のひらを返してドル高を牽制し始める。最近、G7やG20等の場で、ジャック・ルー米財務長官は一貫して「為替相場は秩序立っている」と発言している。

 米国政府が、ドル高を懸念する最大の理由は企業業績の悪化だ。近年の米国経済を見ると、ドル高が企業業績を圧迫してきた。大手企業の業績は2016年4~6月期まで4四半期連続の減益に陥っている。

 また、米国では3四半期続けて労働生産性も低下している。労働生産性が低下する中、新規の採用は労働コストの増加につながり、追加的に利益を圧迫する可能性がある。そうなると、雇用の削減=リストラを進める企業も出てくるだろう。

 過去の景気循環を振り返ると、2009年6月に米国経済は景気の底(ボトム)を打ち、それ以降、7年超の景気拡張の中にある。平均的に米国の景気拡張期間が5年程度であったことを踏まえれば、景気はピークまで7合目程度まで来ていると言えるだろう。

米国政府にとって大きな課題は、いかに企業収益を支え、景気の下支えを図るかだ。その方策の一つとして、企業経営者からも指摘されているドル高の影響を軽減することは欠かせない。輸出の促進のためにも「緩やかなドル安がいい」のが米国の本音だろう。

 そうした状況を考えると、繰り返しとなるが、明らかに米国政府の為替政策は転換している。わが国をはじめ、自国通貨安で輸出促進などの景気支援を図りたいとの考えに対する牽制だ。そのため、FRBも利上げには慎重にならざるを得ない。そうした米国政府の政策変化を、海千山千のヘッジファンドマネージャー連中が見流すはずはない。

 彼らは敏感にそうした変化を察知し、ドル売りを仕掛け、これまで売ってきた円を買い戻している。これは、2011年11月~2015年半ばまでのドル独歩高の修正とも言える。

中国経済の減速と欧州の政治混乱に
米国経済のピークアウトが重なれば…

 足元の世界経済を俯瞰すると、これまで米国の景気回復が世界全体を牽引してきた。今後、米国景気の先行きに不透明感が高まると、世界全体の景況感悪化は避けられないだろう。

 中国は、過剰な生産能力の問題を抱え経済成長率が低下している。欧州では英国のEU離脱の影響、イタリアでの政治不安など不確定要因が多い。米国でも、生産性の伸びがマイナスに落ち込むなど気掛かりな点は多い。

 仮に、中国経済の更なる減速、欧州の政治混乱等に米国経済のピークアウトが重なると、世界経済は未知の低迷リスクに直面する恐れがある。米国に代わる世界経済の牽引役が見当たらないからだ。

 今後、さらにドルが下落すると、これまで以上の速度で円売り・ドル買いのキャリートレード巻き戻しが進むことが考えられる。その場合には、資金調達通貨である円の買い戻しが進み円高が加速する可能性もある。

 為替市場の変動に加えて、世界的な需要の低迷から資源価格が一段と下落し、投資家のリスクオフがさらに円高圧力を高める可能性もある。その場合、わが国の景気にも相応の下押し圧力がかかるだろう。

 わが国経済の問題は、円高による国内企業の収益悪化懸念だ。企業の海外進出の影響もあり、わが国は海外経済の動向、それに起因する為替レートの変化に影響されやすい。

 それを克服するためには、政府が労働市場などの構造改革を進め、企業の積極性を引き出す必要がある。それは、アベノミクスが掲げた成長戦略の本義であるはずだ。

 同時に各企業にも、自助努力によって技術革新を進め、新しい製品やサービスを断続的に生み出すことが求められる。そうしたイノベーションこそが、企業の競争力を引き上げ、わが国の潜在成長率を高めるために必要な要素だ。それができないと、社会全体の活力が低下した状態から抜け出すことは難しい。円高は、再び、わが国経済に大きな試練を与えようとしている。


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今は踊り場、為替は90円台の円高に向かう-米FRBの次の一手が「利下げ」になるとき

2016年07月27日 08時02分52秒 | 為替
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「今は踊り場、為替は90円台の円高に向かう 米FRBの次の一手が「利下げ」になるとき | 市場観測 - 東洋経済オンライン」をはてなブックマークに追加
このところ為替の振れが大きいが、米国が継続的に利上げできる環境ではない以上、円高になるというのが筆者の見立て

日米の金融政策決定会合を前に一時、107円まで値を戻したドル円相場は104円台前半まで軟化している。7月に入って以降、政府・与党による経済対策関連の報道、米6月雇用統計を筆頭とする良好な米経済指標、メイ新首相選出による英国のEU離脱(Brexit)に関する不透明感後退などを受けてドル買いが進んだものの、やはり腰の入った動きにはならなかった。

とくに、政府・与党の経済対策については安易にヘリコプター・マネー(ヘリマネ)という単語を見聞きする場面も増えており、これが意識されているという解説もある。しかし、後述するように、7月に入ってからの円安・ドル高の動きは自律反発の域を出るものではなく、何か新しい局面に入っているようには思えない。円安・ドル高が進んでいくような事態は今のところ、筆者は想定していない。

昨年来筆者は、2016年は円安相場から円高相場に転換する分岐点になると述べてきた。その理由として重視してきたのは、第1に「FRBの正常化プロセスはそもそも信用できないこと」、第2に「購買力平価(PPP)や実質実効為替相場(REER)に照らして円安はどうみても過剰であること」だった(2015年12月15日の記事『2016年が5年ぶりの円高ドル安になる理由:実質実効相場でみれば今がそのとき』)。

7月の円安はポジション解消よる一時的なもの

筆者のそうした見通しは変わっていない。7月に入ってからのドル円相場の急騰はそれまで積み上がっていた投機筋の円ロング(円買い)ポジションの解消に伴うものであり、あらかじめ想定されたものである。

例えば、7月5日時点のIMM通貨先物取引の状況を例に取れば、円はドルに対して7946億円のネット買い持ちとなっていた。これは今年4月19日時点で観測された過去最大のネット買い持ち(8984億円)に次ぐ水準である。

事実、そうしたポジションの解消に絡んで、5月にも円安ドル高に一時的に振れることがあった。投機である以上、どこかで反対売買は必要になるからだ。7月に入ってから進んでいる円安ドル高には「買われ過ぎたから売られているだけ」という側面が大きそうなことは見逃せない。年初からのドルの対円相場は「上げる時はショートカバー(買い戻し)、それが終われば新安値」を繰り返しており、気づけばかなり遠いところに連れて来られている。今は円高基調の中の踊り場に過ぎない、というのが筆者の見立てである。

それでも半年で20円超も円高になったのだからそろそろ反転し円安になるのではないかという意見をいただくこともある。正直、その気持ちは分かる。円高を見通す筆者から見ても、年初からの動きは「過度な変動」と感じられ、果たしてここから一段の円高があるのか、不安もある。しかし、今年の高値・安値の値幅(約22.7円)が過去に類を見ないほど大きいわけでもない。

単純に値幅だけで比べた場合、これより動いた年は過去10年で3回(1998年、1999年、2008年)ある。いずれも金融危機や史上初のゼロ金利導入など歴史的な動きがあった年である。この点、今年は、Brexitという戦後秩序の変化を示唆する大事件が勃発しており、大きな値幅を伴うこと自体に違和感はない。

もしくは、値幅よりも変化率の方が現実的な尺度だろうか。この点、今次円高局面の始点が125円であるとした場合、105円前後ならば、15%程度の下落率となる。しかし、過去の円高の「波」では平均33%程度、変動してきた経緯がある。むろん、こうした変動が単年で達成される必要はないし、しょせんはプラザ合意後の極端な動きを含めての平均であるため、幅を持って見ることを推奨したいが、例えば125円から33%は83~84円となる(そうなると言っているわけではない)。

変動相場制の波は平均3~4年続く

さらに言えば、過去30年で「円高の年」は17回あるが、上半期(1~6月)にドル円相場が最安値(円の最高値)をつけたことは1度もない。この点、今年は6月24日の99.00円がドル円相場の最安値であり、「円高の年」として上半期に初めて最安値をつけるかどうかは密かに注目したいところではある。だが、経験に従えば、まだ「底」を警戒したい気持ちになる。

また、歴史的には、円高も円安も、いったん始まった「波」は平均3~4年は続くことが多かった。2015年まで4年間続いた円安相場は2015年6月10日に記録した125.86円を境にピークアウトしている(ちなみに同日は黒田日銀総裁が「実質実効為替相場で見ればこれ以上円安になりそうもない」と発言し、ドル円相場が急落した日だ)。だとすれば、足元の円高局面は、まだ約1年しか続いていない。

以上のような視点はあくまで単なる手掛かりである。現段階で80円台の話をするのは流石に性急過ぎるし、今回の円高が過去のように3~4年続くとの保証もない。だが、フェアバリューのない為替の世界において、手掛かりは少しでも多いほうがよいし、その手掛かりが経験則によるものであれば、なおのこと、気にかける価値はある。

なお、年初来、ドル円相場がドル安円高に進む中で、都合のよい節目を取り上げて、円安への反転を期待する風潮は度々見られた。具体的には「115円は本邦自動車大手企業の想定為替レートだから守られるはず」、「110円はハロウィン緩和以降、実現してきた水準だから守られるはず」といったものであり、105円付近でも「本邦自動車大手企業の想定為替レートだから守られるはず」といった言説が再び持てはやされた。また、100円割れでは本邦政府・日銀の政策対応が期待できるといった声もよく聞いた。

購買力平価からの乖離は修正されていく

しかし、こうした言説はしょせんは「見たくない物を見ない」というだけの話であり、「木を見て森を見ず」の相場観であったように思う。ドル円相場は単に「100~105円」という企業物価ベースの購買力平価に照らして違和感のないゾーンに戻ってきているだけであり、今年に入ってからは米国の通貨・金融政策のスタンスもドル安方向に転じたことが強く意識された経緯がある。変動相場制の力学や基軸通貨を持つ通貨当局の意向は個社の事情など聞いてくれない。

そもそも120円や125円といった水準が異常なのであり、この点、本邦自動車大手の首脳が自社の高利益を指して「追い風参考記録」と述べたことは印象的であり、的確な認識と言える。アベノミクス初期、購買力平価を軸に為替予想を形成することを軽視する風潮も感じられたが、物価尺度に照らして過剰な水準は往々にして調整を強いられてきたというのが過去の教訓である。

極論すれば、80円も120円も企業物価ベースの購買力平価から概ね20%乖離しているという意味では同じくらい過剰である(ただし、20%という円安方向の乖離は歴史的にプラザ合意直前しか見られていない稀有な動きである)。

だが、80円ならばその修正を求める声が大きくなるのに対して、120円の場合はその勢いをあおるように130円や135円といった常軌を逸した予想が相次ぐという非対称性がある。

ヘッジファンドに代表されるような節操のない投機的かつ短期的な動きを「木」だとすれば、物価尺度で見た長期的な動きは「森」である。過去1年間のドル円相場では、「森」を真摯に見ようとする相場観が報われたように思われる。

こうした認識の下、筆者の相場観は変わっていない。むしろ、筆者が最も恐れているのは円安へのオーバーシュートではなく、円高へのオーバーシュートである。

具体的には、現段階でFRB(米国連邦準備制度理事会)の「次の一手」がまだ建前上は利上げとなっていることは不安に思える。議事要旨などを見る限り、FOMC(米国連邦公開市場委員会)では既に米経済の構造的停滞を念頭に置いた議論も出ているように見受けられ、だとすれば、利上げプロセスは相当緩やかなものにならざるを得ない。

FRBの次の一手が「利下げ」となったら?

いや、利上げを検討できる状況ならばまだ良い。既に米景気の拡大局面が約7年間に及んでいることを思えば、「次の一手」が本当に利上げなのかどうかも疑わなければならないのではないか。端的に言えば、利下げの可能性を視野に入れることになるが、その場合、まずは2013年以降続いている正常化プロセスの休止を示唆する声明文へ修正されることになるだろう。これに応じてドル円相場が二桁定着に至るというのが今後1年間についての筆者のメインシナリオである。

円高へのオーバーシュートが起きるとすれば、さらにその先であり、本当に「次の一手」が利下げ(又は緩和)であることが示唆された場合である。その際は90円を守れるかを議論するステージに入ってくる。こちらはまだ今後1年間で発生する可能性が低いリスクシナリオと考えるが、目の離せない論点と思われる。

 

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ヘリマネより米利上げが「本筋」、みずほ銀、ドイツ証など円強気維持

2016年07月24日 21時12分41秒 | 為替
2016年7月22日 10:47 JST更新日時 2016年7月22日 15:11 JST
  • 今回ドラスティックなことやるインセンティブない-JPモルガン
  • ヘリマネはQEという形で多くの先進国ですでに実施との指摘も

ヘリコプターマネー観測など日本の政策期待で円高修正が進んだ為替相場。ストラテジストらは、期待先行の感が否めず、米国の利上げ再開が見通せない限り、円高見通しは変わらないと指摘している。

FRBのイエレン議長
FRBのイエレン議長
 
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  円相場は今週、6月初旬以来となる1ドル=107円台まで円安が進んだ。政府による大型経済対策や日本銀行の追加緩和期待、日銀が財政支出をファイナンスするというヘリコプターマネー政策への思惑が、英国の欧州連合(EU)離脱ショックで一時99円ちょうど付近まで進んだ相場を円安方向に押し戻した。一方、21日の海外市場では日銀の黒田東彦総裁のヘリマネ否定発言を受けて円が急反発し、対ドルでは105円台に戻した。

  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは、「結局、ヘリマネということの定義を誰も明確化しないまま議論が進み、勝手に盛り上がったのが実態」と指摘。ヘリマネが円買いポジションの巻き戻しの材料に使われただけだったと言い、「これで本筋のファンダメンタルズ、金融政策に焦点が回帰し、円高基調が確認されることになる」と語った。

 

  日銀の黒田東彦総裁は21日放送の英BBCラジオ4の番組で、現在の制度的枠組みを考えると、現段階で「ヘリコプターマネーは必要性も可能性もない」と語った。このインタビューは6月17日に収録された。

  日銀は2%の物価目標を達成するため、金融市場で年間80兆円の日本国債を積み増す資金供給を行っている。1月にはマイナス金利政策の導入も決めたが、デフレ脱却には至っていない。むしろ、世界経済成長の鈍化や英EU離脱決定、為替の円高傾向などにより、日本の経済・物価の下振れリスクは高まっている。

  こうした中、黒田総裁と安倍晋三首相が先週、ヘリコプターマネー政策の信奉者として知られるバーナンキ前米連邦準備制度理事会(FRB)議長と会談。その直後に、同氏が今春に訪米中の安倍首相の政策ブレーンとの会談で、政府が市場性のない永久国債を発行し、これを日銀が直接全額引き受ける手法に言及していたとブルームバーグが報じ、市場ではヘリマネの思惑が一気に広がった。日銀は28、29日に金融政策決定会合を開く。 

「根本的に危ない政策」

  中央銀行による究極の資金ばらまきとされるヘリマネは、ノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマン氏が1969年に提唱した景気対策をバーナンキ氏が何度となく比喩表現したことで世間に知れ渡った経緯がある。バーナンキ氏は2003年5月の日本での講演でも、世界恐慌発生後の1930年代、当時の蔵相、高橋是清が国債の日銀引き受けによる財政拡張というリフレ政策などでデフレを乗り越えたことを紹介している。

 

  JPモルガン・チェース銀の佐々木融市場調査本部長は、ヘリマネはいったん始めれば歯止めが効かなくなる「根本的に危ない政策」で、「1回やるなら、長年にわたって効果が続くような使い方をしようということを決めてやるべき。お金をいくら使うかといった議論より、何に使うかを考えなければ、切りがない」と指摘。「ドル・円が100円を上回る水準にある今の状況で、今回そんなドラスティックなことをやるインセンティブはない」と語る。 

  日本では、財政法の第5条が公債の日銀引き受けを禁じているものの、「特別の事由がある場合に、国会の議決を経た金額の範囲内」なら行えるただし書きがある。日銀法第34条にも同じ旨の規定がある。

  三井住友銀行市場営業統括部副部長でヘッド・オブ・リサーチの山口曜一郎氏は、「曲がりなりにもセカンダリー市場で買うという形でワンクッション入っていたものを完全に直接財政ファイナンスという形にしてしまった場合、経済的効果は同じでも財政規律に対する部分のアンカーが外れてしまうという不安がある。通貨の価値に対する信認が低下する可能性がある」と話す。  

円高リスク

  主要通貨の年初来騰落率を対ドルで見ると、円は14%高と最も強い。シカゴマーカンタイル取引所(CME)国際通貨市場(IMM)の先物取引非商業部門の円の買い越しは直近縮小したとはいえ高水準。オプションの需給を示すドル・円のリスク・リバーサルも、円が戦後最高値を記録した2011年以来の水準付近にあり、円高リスクに対する警戒の強さを示唆している。

  「ヘリコプターマネーは、多くの先進国で程度の差はあれ、QE(量的緩和)という形ですでに実施している」。そう指摘するドイツ証券の田中泰輔チーフ為替ストラテジストは、「従来のQEで2%インフレ目標が未達になっている構造的な逆風を勘案すれば、日銀がさらに急進的なヘリコプターマネー政策を導入しても、同目標の実現に至る可能性は小さい」と読む。

  田中氏は、米景気が堅調で年後半の利上げ観測が再浮上している場面で日銀が事実上のヘリマネ政策を強化すれば、「円安へもう一段弾みが着く可能性」はあるが、米景気不振で利上げ観測も後退する場合は「日銀がどのような追加策を講じても、ドル安が優勢となり、円安は持続し得ない」とみている。「向こう数カ月、ドル・円が110円を超えて上伸する可能性より100円を割り込むリスクを引き続き警戒しており、9月末97円、年末94円をメーンシナリオに採用している」と言う。
  
  ブルームバーグが金利先物相場動向を基に算出した年内の米利上げ実施の確率は4割強と、年初の9割超から低下している。日銀会合に先立ち、26、27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利は据え置かれる見通しだ。昨年12月にゼロ金利を解除した後、金融引き締めに慎重な姿勢を維持しており、今回で5会合連続の利上げ見送りになるとみられている。

  みずほ銀の唐鎌氏は、米国の利上げプロセスが疑わしいという論点は1年前から変わっておらず、ドル高に加えて英国のEU離脱やテロなど「日増しに利上げができない理由がたくさん出てきているのが実態」と指摘。「歴史的に米国が連続的に利上げできないときに円安基調になったことは一度もないはずだ」とし、「ドル・円が90円台に定着するのは至極あり得る展開」と語った。

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ヘリコプターマネーの誘惑、日本国民に大惨事招くとJPモルガン警告

2016年07月18日 20時57分43秒 | 為替
2016年4月20日 00:00 JST更新日時 2016年4月20日 13:55 JST
  • G20は通貨安競争けん制、財政出動を推奨-熊本地震も議論後押し
  • アベノミクスの初期段階から手を染めていたとBNPパリバ証

日本銀行の黒田東彦総裁による前例のない金融緩和でも景気回復とデフレからの完全脱却を果たせない中、安倍晋三内閣と日銀の経済活性化策が「ヘリコプターマネー」的な色彩を強めていくのではないかとの懸念が市場で浮上している。

  政府の景気刺激策の財源を中央銀行の紙幣増刷で賄うヘリコプターマネーは、ノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマン氏が1969年に提唱した。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は第2次世界大戦の遠因にもなった通貨安競争をけん制し、金融緩和効果の限界に言及。有望視される財政拡張の資金源として、ヘリコプターマネーをめぐる議論が世界的に広がっている。

  JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、日本政府がヘリコプターマネーに踏み切る「環境が完全に整った」とみる。円安要因となる金融緩和の強化とは異なり、財政拡張は「基本的に国内政策であり、他国から批判されにくい」と説明。ただ、ひとたびヘリコプターマネーの領域に踏み入れば、日本経済、とりわけ国民は最終的に「大惨事」に見舞われる恐れが強いと懸念する。

 

  ヘリコプターマネーには、米連邦準備制度理事会(FRB)の議長に就任する前のベン・バーナンキ氏も2002年の講演で言及。金融不安とデフレ下の日本に対して提案した経緯があり、市場では「ヘリコプター・ベン」とも呼ばれる。中銀による財政ファイナンスは日米欧とも法律で原則禁止されているが、英銀スタンダードチャータードは日本が早ければ年内にも国債の日銀引き受けに踏み切る可能性があると読む。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「財政が拡張方向にあり、追加的な赤字が国債増発でファイナンスされればヘリコプターマネーだ」と言う。日本は13年に10兆円規模の補正予算と異次元緩和の導入で「アベノミクスの初期段階からヘリコプターマネーに手を染めていた」と指摘。今年度も日銀の国債保有増が財政赤字の2倍超に上るため、「追加財政を打つ分だけヘリコプターマネー的になる状況だ」とみている。

  今月15日のワシントンG20会合後の記者会見で、ルー米財務長官は日本の為替介入をけん制し、財政出動や構造改革による内需主導の成長押し上げを要望。増税の時期にも配慮を求めた。国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通しで、広範囲な長期停滞局面に陥るリスクが高まっていると警告。今年の成長率を3.2%、来年は3.5%に引き下げた。特に日本は16年が0.5%に半減、17年は円高や消費増税を背景に0.3%からマイナス0.1%に下方修正した。

事実上の財政ファイナンス

  自民党の山本幸三衆院議員は熊本地震前の13日、10兆円規模の国費を投入する財政拡大策を主張。来年4月の消費増税も延期が当然だと述べた。14日付の日本経済新聞朝刊は、政府・与党がインフラ整備に使う資金をほぼゼロ%の金利で民間企業に融資する仕組みを検討すると伝えた。日銀のマイナス金利政策で発行コストが大幅に低下した国債を増発し、政府系金融機関を通じて最大3兆円を貸し出すとしている。

 

  日銀は2%の物価目標の達成に向けて13年4月にマネタリーベースを積み増す量的・質的金融緩和を導入し、翌年10月末には国債保有増を年80兆円に拡大する追加緩和を実施した。今年1月末には金融機関の当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用することを決定。金利低下を促し、結果的に債務残高や利払い負担の増加を抑えてきた。

  スタンダードチャータードでグローバルマクロ戦略・為替調査の責任者を務めるエリック・ロバートセン氏(シンガポール在勤)は「世界中の先進国に必要なのは財政支出、インフラ投資だ」とみる。日銀は物価目標を達成できず、景気低迷や円高・株安などが続けば、究極の選択を迫られると分析。「日本はすでに事実上の財政ファイナンス状態にあると多くの人々が考えている」と言う。

  財政ファイナンスとは、厳しい財政状況にある国の政府が多額の国債を発行して中銀に引き受けさせ、紙幣の増刷で財政赤字を穴埋めする状況を指す。財政破綻懸念から国債相場の暴落リスクにつながるほか、通貨の信認低下で為替相場が下落し、輸入物価急騰などを通じた高インフレが国民生活に深刻な打撃をもたらす恐れがある。

日本は「炭鉱のカナリヤ」

  財政法の第5条は公債の日銀引き受けを禁止。ただ、「特別の事由がある場合に、国会の議決を経た金額の範囲内」なら例外としており、日銀法にも第34条に同様の規定がある。日銀法は第43条で同法が規定していない業務を禁じているが、日銀の「目的達成上必要がある場合に、財務相及び首相の認可を受けた時」は例外扱いだ。

  黒田総裁は20日の国会質疑で、ヘリコプターマネー政策について「全く考えていない」と述べた。財政は政府と議会、金融政策は政府や議会から中立的な中銀が行うので、「一体としてやるのは法的枠組みと矛盾する」と指摘した。一方、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は同政策について「興味深い」と発言しているが、第1次大戦後に極度のインフレに苦しんだドイツのバイトマン連邦銀行総裁は、政府と納税者がツケを払うことになるだろうと猛反対している。

  ドイツ銀行で外国為替調査の共同責任者を務めるジョージ・サラベロス氏らは15日付のリポートで、日本は既存の経済活性化策が限界に近づいており、次の世界的な政策の革新をめぐって「炭鉱のカナリヤ」的な位置付けにあると指摘。財政ファイナンスの確率は大方の予想より高そうだとみる。

  世界経済は1929年10月に発生した米国株の暴落をきっかけに恐慌に陥った。日本では31年に発足した犬養毅内閣の高橋是清蔵相が金本位制からの離脱や円の切り下げ、国債の日銀引き受けによる財政拡張というリフレ政策を断行。英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズが「雇用・利子及び貨幣に関する一般理論」を発表する数年前に、他の主要国に先駆けて景気回復とデフレ脱却を果たした。

  サラベロス氏らはヘリコプターマネーを分析したリポートで、高橋蔵相が「日本のケインズ」と呼ばれていると紹介した。麻生太郎財務相は第2次安倍内閣発足から間もない2013年2月にNHKのインタビューで、デフレ脱却については「歴史に学ぶ以外に方法はない」と発言。高橋蔵相の対応策を「いろいろ工夫しながら模倣している」と明かし、日本経済を数年で健全な状態に戻せるとの自信を示していた。

  高橋蔵相は前例のないリフレ政策で成功を収めた後、インフレを抑えるため軍事予算など財政の膨張抑制に転じた。これが遠因の一つとなり、1936年の2・26事件で落命。日本は財政面でも軍部の暴走を抑えきれなくなり、翌年からの対中全面戦争を経て第2次世界大戦に突き進み、45年に敗戦を迎えた。

  日本銀行百年史によると、国の一般会計歳出は戦時下の35-44年度の10年間に約10倍に膨張。政府債務残高の国民総生産(GNP)に対する比率は62.9%から204%に上昇した。日銀はこの間「国債の無制限引受機関に化して」おり、「敗戦後に爆発するに至った悪性インフレーションの十分な下地を形成した」と自己批判している。

  預貯金等残高と日銀券発行残高の合計は45年8月末に37年末の約8倍まで膨張し、公定価格に準拠する卸売物価指数は20年12月に前月比55%上昇、小売物価指数は94%上昇と高騰。実勢を映す消費財の闇物価の水準は公定価格の約37倍に達した。

  JPモルガン・チェース銀の佐々木氏は、日本がヘリコプターマネーの状況に至る確率を「10年以内に5割超」と読む。国債利回り急騰への懸念から巨額の買い入れを止められない日銀を見て、政府は国債発行を増やしていくと予想。株式や外貨建て資産に資産を移すのが難しい平均的な国民ほど、インフレ加速による預金の実質的な目減りに苦しむことになりかねないと言う。

  終戦後70年余りを経た日本では、国の債務残高が昨年度末に1087.3兆円に膨らんだもようだ。国際通貨基金(IMF)は日本の政府債務残高が今年、名目国内総生産(GDP)の249.3%に達すると予測。19年には251.9%に上昇し、少なくとも21年までは高止まりが続くと見込む。

  BNPパリバ証の河野氏は、政府が財政拡張を進めると規律の低下を懸念して市場金利が上昇する「債券自警団」が働くはずだが、ゼロ金利やマイナス金利下では機能しないと指摘。世界経済が拡大して海外の物価・金利が上昇すれば、円安が進んで国内物価も上がり、国民は「インフレ税」を負う一方、海外の経済が停滞して物価・金利が低迷すれば国内も同様でマイナス金利が続くため、いずれにせよ「金融抑圧的になる」と語った。

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現在の円高は異常ではない、企業は「円安頼み」を止めよ

2016年07月14日 07時39分18秒 | 為替

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

 円高が進んでいる。

 為替レートは日本経済に大きな影響を与える。これまでの3年間、企業利益が増加し、株価が上昇したのは、ひとえに円安によるものであった。その傾向が逆転することは、経済全体の状況が逆転することを意味する。

 以下では、現在の為替レートは決して異常な円高ではないことを示し、円安に頼らない事業展開が必要であることを主張する。

購買力平価で評価すれば
1ドル70円程度が適切?

 現在の為替レートは異常な円高であり、為替介入等の措置が必要であるとの意見がある。

 しかし、現状は決して異常な円高とは言えない。これをいくつかの指標で示そう。

 最初に、「購買力平価(PPP)」(正確には、「相対的購買力平価」)を見よう。

 これは、ある時点を基準とし、それ以降の各国の物価上昇率の違いを反映するように為替レートが変化した場合のレートである。例えば日本の物価上昇率が低く、アメリカの物価上昇率が高いとすれば、時間の経過とともに円高が進行しならなければならない。つまり、物価が変化しても購買力を一定に保つための「あるべき水準」だ。

 実際のデータは、いくつかの機関が計算している。OECDとIMFによるものがよく使われる(IMFのWorld Economic Outlook Databaseには、PPPで評価した1人当たり実質GDPの計算に用いられたPPPのデータがある。OECDのデータは、PPPs and exchange ratesにある)。

 図表1には、IMFが計算した円ドルレートについての購買力平価と、現実の為替レートを示す(年平均値、現実のレートの2016年は6月までの平均値)。なお、OECDのデータも、IMFのデータとほぼ同じ傾向を示している。

 購買力平価は基準の取り方で数値が異なるので、水準そのものでなく、変化を見ることが必要だ。

 図表1に示された2010年以降の動向を見ると、購買力平価が徐々に円高に進む傾向にある中で、現実のレートは13年から急激に円安になった。16年には円高方向への動きが生じて、15年までの動きが修正されつつある。しかし、12年頃までの状況からすれば依然としてかなり円安である。

◆図表1:円の購買力平価(IMF)

(資料)購買力平価はIMF、現実のレートは日本銀行

 上で述べたように、購買力平価の水準は、基準時点の取り方で異なる。しかし、図表1で01年から12年頃までの現実の為替レートを平均した動向と購買力平価との間には、20円程度の差がある。したがって、現実の為替レートと購買力平価の水準を一致させるためには、ここに示されている値から20程度差し引いた値を購買力平価とする必要があろう。

 仮にそうした考えが認められるとすれば、現在の購買力平価は1ドル=80円程度ということになる(なお、後で述べる「ビッグマック指数」はほぼこの程度の値である)。

 図表1では、その値を「調整された購買力平価」として示した。

 この値に比べると、現実の為替レートはまだかなり円安である。

 以上から見ると、現在の為替レートが異常な円高と言えないことは明らかだ。

 なお、OECDのデータは15年までだが、IMFのデータでは将来の予測値も示されている。これによると、20年頃には現在よりさらに円高になり、1ドル=90円台のレートになっている(「調整された購買力平価」では1ドル=70円程度になる)。

ビッグマック指数を見ても
1ドル=75円と購買力平価とほぼ同じ

 以上で述べた相対的購買力平価は、基準時点をどこに取るかによって異なる値を取る。

 これに関わる恣意性を回避するために、世界のさまざまな国で同質の商品が販売されているものを取り上げて、その価格を比較する方法がある。これが、「絶対的購買力平価」だ。最もよく用いられるものとして、『エコノミスト』誌が算出する「ビッグマック指数」がある。

 2016年1月に発表された結果によると、ビッグマックの価格は、アメリカで4.93ドル、日本で370円だ。これらの価格が同じでなければならないとすると、4.93ドル=370円、つまり、1ドル=75.05円となる。

 これと比較すると、現実の為替レートは、大幅に円安である。

 もちろん、ビッグマックのような商品の場合、国によって価格が違ったとしても、「ある国でビッグマックを買って他の国に運ぶ」というような国際的な裁定取引が生じることはない。また、ビッグマックという1つの商品だけを取り上げて「適切な」為替レートということもできない。

 しかし、だからと言って、ビッグマック指数は、まったく無視してもよい指標でもないのである。前項で述べた「調整された購買力平価」とビッグマック指数がほぼ同じ値になるのは、その証拠と言える。

実質為替レート指数は低下傾向
1990年代中頃に比べ半分の水準

 つぎに、「実質為替レート指数」を見よう。

 一般に、「実質」というのは、ある基準時点を定め、その時点から物価変化がなかったとしたら、変数がいくらになるかを示すものだ。実質為替レートも、これと同じ考えに基づくものである。

 ただし、物価変化率としては、日本とアメリカの相対的な変化率(日本の物価変化率÷アメリカの物価変化率)を用いる。また、基準年次を100とする指数で表す。通常は1円あたりのドルで表す。したがって数字が大きいほど円高だ。

 購買力平価はあるべき為替レートだが、実質為替レート指数は、現実のレートの評価である。

 実質為替レートは指数なので、直感的な理解が難しい。しかし、これは、「現実の為替レートと購買力平価の比」と解釈することができるのである。証明は省略するが、結果だけを述べればつぎのとおりだ。

 実質為替レート指数が100であれば、現実の円ドルレートは、購買力平価に等しい。100を超えれば、現実の円ドルレートは、購買力平価より過大評価だ(円の場合について言えば、購買力平価より円高)。100未満であれば、現実の円ドルレートは、購買力平価より過小評価である。

 すでに述べたように、購買力平価は基準時点の取り方によって異なる。だから、実質為替レート指数によっても、現在の為替レートが客観的に高いか低いかを判断することはできない。

 しかし、他の時点と比較して、そのときよりも実質的に円高になったか、あるいは円安になったかという判断はできる。

 日本銀行の統計サイトには、「実質実効為替レート指数」が示されている(図表2)。上で説明したのは、日本円とアメリカドルの間だけの関係だが、実質実効為替レート指数は、さまざまな国の通貨との実質レートを計算し、これらを貿易量でウエイトづけた平均値だ。

 また、2010年を基準時点とし、そこでの実質実効レートを100としている。

 図表2を見ると、実質実効為替レート指数は、99年と08年に一時的に上昇はしたが、90年代後半以降、低下傾向にあることが分かる。

 15年後半以降、再び上昇しているが、それでも現在の値は78.8であり、90年代の中頃に比べると、半分くらいの水準に低下している。これは、80年代中頃の水準である。

 つまり、日本円の購買力は、長期的に大きく低下しているのである。

 以上のような状況を考えると、為替介入は必要ないし、国際的にも認められないだろう。また仮に介入したとしても、継続的な効果は期待できない。

◆図表2:円の実質実効為替レート指数

(注)2010年=100 
(資料)日本銀行

1年前とは大きく変わった円への見方
円高を見込む先物投機筋

 リーマンショック以降の為替レートの変化は、投機的な資金の流れによるところが多かった。

 2012年後半から15年前半頃までは、円安を予測した投機によって、実際に円安が進められてきたと考えられる。それが15年の夏頃から変調しているのだ。

 これを見るために、シカゴ商品取引所における円の先物取引の状況を見ることとしよう。

 それまで将来の円安進行を見込んだショート(売り持ち)が、円高を見込むロング(買い持ち)より多かったが、今年の1月にこの状況が逆転し、ロングがショートを継続的に上回る状態が続いていた。

 ここまでのことは、本連載ですでに述べた(第58回「本格的な円高再来の予兆、日本企業は備えを怠るな」)。

 その後、5月下旬にロングが急減したが、6月に入って急回復した(回復したのは、イギリスのEU離脱で円高が進むとの予測によると思われる)。

 現在は、ロングとショートの差が開きつつある。

 投機筋の円に対する見方は、1年前までとは大きく変わっており、これが容易に逆転するとは思えない。

 これは、投機資金のリスクオフ(リスク回避)による。第1には、新興国からの投資の引き揚げだ。第2はヨーロッパにおける不確実性の拡大に起因するものである。

 いずれも、投機の時代の終了の結果である、つまり、経済が新しい均衡に向かって動きつつあることの結果であり、直ちに逆転するようなものではないと考えられる。

◆図表3:シカゴ商品取引所における円先物取引の状況

(資料)Commodity Futures Trading Commission(CFTC)

これまでの状況が異常だった
円安に頼らない事業活動を展開すべきだ

 教科書的な議論では、為替レートは貿易収支に影響するとされる。しかし、ここ数年の傾向を見ると、為替レートは貿易数量には影響していない。

 過去3年間、円安が進んだため、円建てで見た輸出額が増加するという影響があっただけだ。

 これによって企業利益が増加し、株価が上昇した。企業利益の増加は、企業の生産性が上昇したり、新しい商品が開発されたために生じたものではない。単にドルベースの売り上げが増えて原価があまり変わらなかったので生じただけのことである。

 外国人旅行者の増加もそうだ。日本の魅力が増したわけではなく、単に円安になって外国人から見てコストが安くなっただけのことだ。

 これまでの状況が異常だったのであって、それが正常な状態に戻るだけのことだ。

 これに伴って株価も軟調を続けるだろう。

 したがって、企業は、円安の再来を期待するのではなく、長期的な収益構造の改善のため、地道な努力を続けるべきだ。

 都心のデパートなどでは、急増した外国人観光客への対応に追われ、国内顧客を軽視した傾向もあったと報道されている。今後は、国内の顧客を対象にした販売に戻すべきだ。

 輸入物価の動向を見ると、図表4のとおりだ。2012年11月頃から上昇が始まり、13年を通じて対前年同月比が2桁の上昇率を示した。

 しかし、14年秋にピークアウトし、その後下落している。これは、原油価格と円高による。16年5月の対前年同月比はマイナス20%程度だ。

 輸入物価の動向は、ほぼ半年のタイムラグで消費者物価に反映されるので、16年を通じて消費者物価の対前年同月比がマイナスになる状況が続くだろう。

 原油価格が今後急激に上昇することはないと考えられるので、こうした状況がしばらく続くだろう。

 物価が下落すれば、実質所得と実質消費が増えるだろう。そのような健全な経済構造を目指すべきだ。

 金融緩和は惰性化し、意味がなくなっている。インフレ目標を基本とする金融政策は見直すべきだ。

◆図表4:輸入物価指数の推移

(注)2010年=100 
(資料)日本銀行


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勝ちパターンに入ったジョージ・ソロス「人民元売り崩し」の勝算は?=東条雅彦

2016年07月10日 21時55分27秒 | 為替

今回は世界3大投資家の1人、ジョージ・ソロスの過去の投資行動を検証しながら、「なぜ今ソロスは中国の通貨・人民元に目をつけているのか?」について解説していきます。

イギリスのまさかのEU離脱で、市場は大混乱に陥りました。その後やや落ち着きを取り戻したものの、円高の流れはかなり強烈で1ドル100円付近で推移しています。そのような状況にも関わらずソロスはイギリスのEU離脱についてほとんどスルー状態。やはり本命は「中国経済」なのでしょう。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

【関連】いつまで安全?「リスク回避の円買い」に走る外国人のナニワ金融道=東条雅彦

ジョージ・ソロスは、なぜ人民元を売り崩そうとしているのか

英EU離脱でポンドを売っていなかったソロス

すでにご存知の方も多いかと思いますが、ジョージ・ソロスは、英国の国民投票でEU離脱が決まった6月23日に、ポンド売りを実施していませんでした。

米著名投資家のジョージ・ソロス氏は、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の直前に、ポンド安を見込んだ投機取引は行っていなかった。同氏のスポークスマンが明らかにした。

出典:ソロス氏、英国民投票前にポンド安見込んだ取引せず=広報担当者 – ロイター

ソロスは「イングランド銀行を潰した男」という異名を取っています。1992年にポンドを空売りして、15億ドルを儲けました。

この時の印象が強かったため、今回ポンド売りを見送ったことを、市場は意外だと受け取ったようです。

しかし、これは意外なことでも何でもありません。近年、慈善活動などに力を入れていたソロスがトレーディングの現場に戻ってきたのは、「中国の人民元を売るため」です。これはハッキリと断言しても良いと思います。

なぜなら、そもそもソロスは、「半固定相場」の通貨を売り崩して儲けるという手法で富を築いてきたからです。

今、英国のポンドは完全な「変動相場」です。そのため、今回は手を出さなかったのです。

「固定相場」はどういう方法で実現しているのか?

半固定相場制を説明する前に、まず前提となる「固定相場制」について説明します。

固定相場制とは、通貨の交換レートを一定に保っている相場のことを意味します。日本も1971年までは1ドル=360円の固定相場制を採用していました。このような交換レートを一定に保つ方法として、次の2通りがあります。

  • <方法その1>中央銀行が要求される為替取引をすべて受け入れる
  • <方法その2>資金の移動を規制し、固定相場になるようにする

<方法その1>の具体例

当時の日本は<方法その1>を採用していました。

将来的な円切り上げ(円高)を見込んだドルからの円買いに応えて、日銀が「円売りドル買い」介入をしていました。

円を買いたい人が増えると、円高になってしまいます。しかし円が買われる量と同じだけのドルを買えば、価格は動きません。

1ドル=360円という固定相場は、日銀の介入により人為的に作っていたのです。

<方法その2>の具体例

中国は2005年7月までドルに対する固定相場制を採用していました。その時、中国は資金の移動を規制していました。

「中国の元を買いたい!」という人が、「中国の元を売りたい!」という人よりも多くなってしまうと、元の価格が上がってしまいます。

そこで、中国政府は「元を買いたい!」という人が多くなった場合、単純に売らなかったのです。反対の場合でも同じです。売りたい人が多くなった場合も、売らせません。

<方法その1>では、中央銀行が反対売買を行い、売買量を均衡させます。
<方法その2>では、売買量を規制することで価格を固定化させます。

どちらの方法であっても、需要と供給を無理やり均衡状態に持っていくのがポイントです。参考までにコチラの需要供給曲線をご覧ください。

需要が増える/供給が減る → 価格が上がる
需要が減る/供給が増える → 価格が下がる

中央銀行や政府が無理やり需要と供給を調整すると、確かに価格は安定します。

しかし、これはアダム・スミスの「神の見えざる手」に反する行為のため、人為的な相場(=固定相場制)は永久には続きません

天才・ソロスはいつも「半固定相場」を売り崩して儲けてきた

半固定相場とは、固定相場制から変動相場制に移行する際に導入される一時的な仕組みです。

固定相場制の<方法その1>を採用して、通貨当局(政府や中央銀行)が市場に介入します。

ただし、価格が固定になるまで介入を行うのではなく、ある決められた範囲の変動は許すというスタンスです(例:1日2%までの変動を許す)。

1992年ポンド危機と「イングランド銀行を潰した男」の誕生

1992年、イギリスは欧州通貨制度(EMS)に加盟していました。EMSとは、加盟国間で通貨変動が年±2.25%以内に抑えることを原則として、ユーロ導入までの移行期間的システムのことです。

1992年時点ではイギリスも他の欧州諸国と足並みを揃えて、ユーロを導入する方向で進んでいました。そこでジョージ・ソロスは、EMSの「年±2.25%以内に抑える」というルールに着目したのです。

通貨の変動幅を2.25%以内に抑えるために、イギリスは為替介入を行わなければいけません。

ソロスは「相場は必ず間違っている」が持論です!この時も、ポンド相場が実勢に合わないほど高止まりしていると考えていました。

1992年9月には、ポンドへの売り浴びせは激しさを増しました。イングランド銀行はポンドの変動幅を2.25%以内に抑えようと、反対売買のために、ポンドを買い増しします。

9月15日(火)には、激しいポンド売りにより変動制限ライン(±2.25%)を超えてしまいました。

そして、翌日の9月16日(水)にソロスはポンド売りをさらに加速させました。

1992年9月16日(水)に何が起こったか?

・午前11時、イングランド銀行はポンド買いの市場介入に加えて、政策金利を10%から12%へ引き上げました。
→金利が上がれば、ポンドを売っている投資家は逆に金利を支払わなければならず、「ポンド売り」の意欲がなくす効果があります。
→金利が上がれば、単純にポンドを買う動機に繋がります。
→しかしながら、ポンド売りが止まりませんでした。

・午後2時、もう一度、政策金利を引き上げて、15%にしました。
→それでもポンド売りの流れは止まりませんでした。
→ついに、イングランド銀行は自己資金を使い果たしてしまい、ポンドの買い支えができなくなってしまいました。

・午後4時、イギリスはEMSからの脱退を発表しました。
→このような経緯でイギリスはユーロを導入できなくなり、ポンドが生き残りました(結果的にはこれで良かったという声も多い)。

後に、1992年9月16日(水)は「ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)」と呼ばれるようになりました。この日からイギリスポンドはドイツマルクに対して、たったの14営業日で約14%も下落してしまったのです。

1997年「アジア通貨危機」とジョージ・ソロスの関係は?

1997年7月よりタイを中心に始まった、アジア各国の急激な通貨下落現象を「アジア通貨危機」と呼びます。

タイ、インドネシア、韓国はその経済に大きな打撃を受け、IMF管理に入りました。マレーシア、フィリピン、香港もある程度の打撃を被りました。

当時、日本、台湾、フィリピンを除くアジアのほとんどの国家は、米ドルと自国通貨の為替レートを固定する「ドルペッグ制」を採用していました。

1995年以降、アメリカ合衆国の長期景気回復による経常収支赤字下の経済政策として「強いドル政策」が採用さていました。アジア各国はこの高いドルとペッグしていたため、自国の通貨が上昇し、その結果アジア諸国の輸出は伸び悩む展開になりました。

ドルペッグ制は「固定相場制」で、中央銀行が無理やり買い支える仕組みです。

「人為的な相場」+「実体経済と通貨価値との乖離」

この2つがセットになった時、ヘッジファンドは当該通貨を売り崩す(ショートする)という投資行動を取って、利益を得ようとします。

マレーシア首相のマハティールは、ジョージ・ソロスをマレーシア通貨のリンギットを下落させたと名指しで非難しました。

ソロスはこの非難について、アジア通貨危機の最中もそれに先立つ数ヶ月間にも、自分はタイ・バーツやマレーシア・リンギットを売ったことがないと説明しました。

これらの通貨が下落しはじめたときはリンギットを買っており、この買いは早すぎたと述べています。

その後、マハティールとソロスは和解していますが、いずれにせよ、人為的な相場である固定相場制・半固定相場制はヘッジファンドに狙われやすいことは確かです。

今、ソロスが売り崩しを狙う人民元「半固定相場制」の弱点とは?

中国の通貨「人民元」は2005年6月まで固定相場でした。1ドル=8.2765元前後に維持されていました。これが2005年7月から「管理フロート制・通貨バスケット制」に移行しています。いわゆる「半固定相場制」です。

前日の変動幅を2%まで許容するというルールで運用しており、それを超える変動があった場合、中国人民銀行が為替介入を実施します。

ジョージ・ソロスは人民元の「半固定相場制」を売り崩して、中国人民銀行が買い支えを実施できないレベルに追い詰めることを狙っています

ソロスだけではなく、世界的に成功している投資家は全て、ファンダメンタルズ分析に基づいて行動しています。

ウォーレン・バフェットもジム・ロジャーズも、運否天賦(うんぷてんぷ)で判断しているわけではありません。

1992年に実施した「ポンド売り」では、イギリス経済はその3年前から停滞していました。

<イギリス 経済成長率の推移>

1986年 3.17%
1987年 5.56%
1988年 5.92%
1989年 2.25% ←ここから経済が失速していく
1990年 0.55%
1991年 -1.26%
1992年 0.45% ←ここでソロスはポンド売りを仕掛けた!

そして今、中国経済のファンダメンタルズは悪化してきています。

<中国 経済成長率の推移>

2003年 10.00%
2004年 10.10%
2005年 11.30%
2006年 11.30%
2007年 14.20%
2008年 9.60%
2009年 9.20%
2010年 10.61%
2011年 9.46%
2012年 7.70% ←ここから成長に陰りが出てきた
2013年 7.70%
2014年 7.30%
2015年 6.90% ←ついに6%台に突入!
2016年 6.49%

さらに次のような報道もなされるようになりました。中国の外貨準備の大幅減少が続いているのです。2016年6月7日のロイターのニュースを引用します。

中国人民銀行(中央銀行)が発表した5月末時点の外貨準備高は3兆1900億ドルで、2011年12月以来の低水準だった。ドル高や散発的な市場介入が影響した。

ロイター調査による予想は3兆2000億ドル、4月末時点は3兆2200億ドルだった。

5月の減少幅は279億ドルで、月間の減少としては2月以来の高水準。

ただアナリストは中国からの資本流出が再開したことを示しているとは限らないと指摘した。

出典:中国外貨準備5月末は3.19兆ドルに減少、11年12月以来の低水準 – ロイター

中国からの資本流出が激しくなってきているというニュースです。日本経済新聞でも同様の報道が行われています(グラフ付きでわかりやすく解説されています)。

2014年時点には4兆ドル弱あった中国の外貨準備は、約2年で3.2兆ドルまで減っています。(2年で2割減)

ソロスもおそらく中国の外貨準備の動向には注意を払っているはずです。なぜなら、半固定相場制では人民元を買い支えるのに「外貨準備」が必要だからです。

いわば外貨準備は人民元を買い支える体力とも言える指標です。

中国人民銀行が前日比2%に収まるように買い支えを実施できなくなった時、人民元はストーンと下落してしまいます。

ソロスがトレーディングの現場に復帰したのは、このタイミングを見極めるのに最も自分が適任だという自覚があるからでしょう。

足元の人民元下落は序章に過ぎず

現在、ドルと人民元の交換レートは1ドル=約6.67人民元です。2014年の1ドル=6.05人民元をピークにどんどん元の価値が落ちてきています。この2年で10%以上も下落しています。

半固定相場制の環境下にいるにもかかわらず、下落幅が大きいです。

しかし、もし中国人民銀行が買い支えを実施できなくなると、もっと大きく下落するはずです。

今回のまとめ

ジョージ・ソロスは「半固定相場」の通貨を売り崩して、儲けるのが得意である。

固定相場制は次の方法で実現している。いずれの方法にしても、不自然な手法である!

  • <方法その1>中央銀行が要求される為替をすべて受け入れる
  • <方法その2>資金の移動を規制し固定相場になるようにする

全ての価格は需要と供給がクロスする点(=アダム・スミスの「神の見えざる手」)で決まる。

人為的に価格を調整する固定相場制、半固定相場制を採用すると、実体経済の価値と市場価格の乖離が発生しやすくなる。

ジョージ・ソロスはこの乖離を突く天才である!

中国の人民元も半固定相場制で運用されているため、ソロスは自分の得意な手法で売り崩しを狙っている。

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