まっしゅ★たわごと

街歩き、建築、音楽、フランス、それに写真の話題を少々

【「兵士」になれなかった三島由紀夫】という本を読み終えて

2007年08月04日 20時51分58秒 | おすすめ

週末、書店でたまたま手に取った書籍である。10分ほど立ち読みした後に購入。夜を徹して読み耽ったのは、かなり久しぶりで、その前は確か「下山事件」だったのではないかとなと思う。それほど私には衝撃的な内容であった。

自衛隊レンジャー体験入隊~「盾の会」結成~市ヶ谷駐屯地での自決

この一連の流れを、当時まさしく寝食を共にした自衛隊員たちの側から見た「三島由紀夫像」ならぬ「平岡公威像」が綴られている。

ボディービルで造られた三島由紀夫の肉体美の陰に隠された足腰の弱さは、塀の外の我々には決して捉えることのできない部分であるが、自らの弱さをさらけ出し、死にもの狂いで立ち向かうレンジャー平岡は「世界のミシマ」とは全くの別人であり、そのギャップが本書によって明らかにされている。

「世界のミシマ」を演じた平岡公威が、最後の最後になって「レンジャー平岡」を演出した三島由紀夫になり変わった。その変わり様は見事としか言いようのない、まるでサスペンス映画のトリックにでもかかったような妙な錯覚すら覚える。やはり、そうなるべくして彼は市ヶ谷に辿り着いたのだろう。単なる思い付きや、一時の激情にかられてのことではないということが感じられる。

本書は、淡々と平岡公威をめぐる隊員の思い出を綴っているだけである。そこで語られている言説がどこまで当時のありのままを語り得ているか、また著者である杉山 隆男氏がそれらの言説をどれだけの取捨をもって書き上げているか定かではないが、著者もまた三島由紀夫という人物にある種の思い入れを持っていることは確かなようである。だからこそ、杉山氏自身も十数年に及ぶ体験入隊を通して自衛隊員たちと向き合いながら「兵士」というシリーズを書いているらしいのだ。

平岡公威が、当時いちばん親交の深かったレンジャー隊の教官である福岡という人物に対し「あなたにいろいろ世話になったことについて、私は今後一切あなたに迷惑をかけない様にしますから」という言葉を生前に残しているらしい。そして、その通り今日までそれが果たされていることを初めて知り、私の中でくすぶっている三島由紀夫に対する幾つもの「何故?」がほんの少し埋められたような気がした。

興味のある人はコチラへ
「兵士」になれなかった三島由紀夫 杉山 隆男(著) ¥1,470(税込)

もしもし良かったらポチっと→人気blogランキングへ