事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「夢売るふたり」 (2012 アスミック・エース)

2012-11-06 | 邦画

Yumeurufutariimg01 亭主が料理し、女房が接客。よくある居酒屋の、よくある仲のいい夫婦。ところが、火事で店を失い、自暴自棄になった亭主はなじみの客(愛人から手切れ金を受け取ったばかり)と一夜をともにし、その手切れ金を店の再建資金にと贈られる。夫の不貞に気づいた妻は、しかしそのことで結婚詐欺によって金を稼ぐことを思いつく……

夫に阿部サダヲ、妻は松たか子。なじみ客に愛人顔&愛人体型の鈴木砂羽。ほかにも、元警官なのに背中にモンモンがはいっている探偵が笑福亭鶴瓶だったりするので、喜劇としても十分に成立する設定だ。火事がなかったら阿部サダヲは「なくもんか」そのまんまだとすら。だけれども、監督は「ゆれる」の西川美和だからそうはならない。「ディア・ドクター」のような救いもあまりない。でも、見終わって温かさが胸に残るのはなぜだろう。

詐欺にひっかかる女性たちに、わたしの家の前でテレビのロケをしたことで有名な(笑)田中麗奈、男に病的に貢いでしまう風俗嬢に安藤玉恵(すんごい好演)、シングルマザーの公務員に木村多江(似合いすぎ)。いちばん凄いのは、巨漢であるコンプレックスを払しょくできないウェイトリフティング選手役を演じた江原由夏。いるんだなあこんな女優が。

結婚詐欺は、露見しても被害者が恥ずかしくて警察に通報しにくいという意味でも卑劣な犯罪だ。そんな悪行をつづけることの罪深さに夫婦は気づかない。

いや気づいてはいるんだけれども(テレビで鬼母のニュースに驚くシーンが挿入される)、お互いがそのことを言い出せずにいる。

夫は、妻の心の底にあるのが『腹いせ』であることを感じているし、それを指摘された妻は激昂する。次第に夫婦の関係は壊れて、というより関係が壊れないままにふたりとも立ち腐れていく。

もっとも、食パンをやけ食いするあたりの演出は笑わせてくれます。ダブルソフトじゃなかったですけど、松とヤマザキとの契約はもう切れてますか。

およそ感情移入できない夫婦でありながら、しかしラストにいたって応援したくなるのは、このふたりがそれでも“普通”だからだ。あなたであり、わたしだからだ。

そのために西川監督は松たか子に、過剰なほどのリアルを求める。マスターベーションであえぎ、生理のためにナプキンを使い(わたし、初めて使い方を拝見しました)、お尻を露出する。生活者の側面を押し出したわけね。

わたしは特に、“言い返す”ときの彼女の三白眼に文字どおり恐怖しました。松たか子おそるべし。西川美和おそるべし。そしてどうやら、女性おそるべし。

Yumeurufutariimg02

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2 コメント

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いや、そんなに怖いもんじゃないですよ、女性は。 (sakurai)
2012-11-13 11:14:26
いや、そんなに怖いもんじゃないですよ、女性は。
ちょっと生きるのがへたくそなだけ。
だから何とかして生きようとあがく。その力が強いのでしょうね。

大人になってから、つくづく女でよかったなあと思います。
女じゃなかったら、女の弱さや辛さや強さを心から理解できなかったろうから。
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たった今、ウチにセールスの電話があったんですって。 (hori109)
2012-11-13 20:29:10
たった今、ウチにセールスの電話があったんですって。
「奥様のところではお風呂はガスですか?」
「……」
「エコキュートというのをご存じでしょうか」
「いまお風呂に入りますので」
ガチャン。
へたくそじゃない人もいます(笑)。
計算なのかなあ、うちの奥さん。
返信する

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