事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

Lost In Translation

2008-04-13 | 洋画

Lostintranslation02  コッポラの娘が映画監督として、そしてそれ以上に脚本家としての才能を爆発させた作品。「ゴッドファーザーPARTⅢ」を一人で壊していたと悪評サクサクだった彼女には、女優としての華はなかったものの別の種類の才があったわけ。よかった。

 アメリカの俳優はCMに出演することを“二流の存在の証明”として嫌うらしいが、自国民にばれないところでガンガン稼いでいる。日本はその代表。ディカプリオが刑事プリオになっていたり、シャーリーズ・セロンが軽自動車に乗ってはしゃいでいたりすることを、合衆国民は全然知らないでいる。「ロスト・イン・トランスレーション」で、サントリーをいやいや持ち上げる主人公ビル・マーレイの憂鬱な表情は、そんな「オレも堕ちたもんだ」という苦みのせい。

 彼と、カメラマンの夫についてきたものの、日本になじめずにいるスカーレット・ヨハンソンの目から見た東京は、おそらく異世界としてカリカチュアライズされて描かれるのであろうと予想していたら大間違い。二人の孤独を際だたせる背景として機能はしているが、わたしたち日本人から見ても“ふつうの東京”だ。あの藤井隆(まんまマシューで出演)ですら、ふつうに見える。視点が醒めているからだろうか。

 むしろ人生の通過点でとまどう二人の、どうしようもなく宙ぶらりんな不安感と、それゆえに共有できた喜びがきちんと感じとれておみごと。

「歳をとったら、楽になる?」
「………………そうでもない」

いいとこ突いている。彼らが迷子になっているのは、日本という異国にいることよりも、男にとっては先が見通せる年齢になったこと、女にとっては未来にまったく展望をもてない隘路であることが、しみじみと感じとれる作品。意外なほどよかった。

あ、そうだ。よかったと言えばCMのディレクターを演じた田所豊。元レッドウォリアーズのダイヤモンドユカイくんだ。この人が昔主演したのが「TOKYO POP」。「ロスト~」と同じように外国からやってきた女の子が東京でさまようお話。隠れた名作なのでこちらもぜひ。同じ専修大学文学部英米文学科出身だから言うわけではないが(笑)、ユカイくんが壮絶に英語がうまいのに驚かされるはず。だから今回ぜんぜん英語が話せない役柄なのはちょっとオシャレなキャスティングなのでした。

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