Todd Rundgren - Wailing Wall
憎むべきはもちろんイスラム国だ。十字軍きどりの国家の威光をかさにきた軍人ならともかく(じゃないか)、公平な立場で、弱者の生活をレポートしようとしていたジャーナリストを拉致し、殺害するなど狂気の沙汰であり、過激派が過激さをエスカレートせざるをえない不幸の連鎖にいることを思い知らされる。
そしてこの事件は歴然と国際問題なのであり、いつもの内向きの議論だけですむ話ではない……はずだった。
でも、前年末にすでに後藤氏らが拉致されていたことを知りながら、難民支援などの国際貢献(それ自体、すばらしいことだったのに)を、「ISILと戦う周辺各国を支援する」とぶちあげた首相の不用意さは、やはりきちんと責められるべきだと思う。
殺害されたふたりですらバッシングを受けているのだ。“当事者”である日本政府および首相に批判が集まらない方がおかしい。
YouTubeにイスラム国のメッセージが出て以降は、どう対応しても誰も勝利しない戦いに入った。ハードライナー(強硬派)として有名な首相がイスラム国に譲歩するとは考えづらかったが、わたしが怖いのは
「テロに屈しない」
と連呼する裏で、実はまっとうな解決策をさぐる意志も、そして外交能力もなかったのではないだろうなということだ。当事者ですらなかったとしたら……
首相の頭の中には、世界において日本が相応のあつかいを受けていないという不満がうずまいているのだと思う。セレブの一員なのにと。そのため、徹底した検証もないまま十字軍(かつてのそれもまた、いろいろと問題をはらんだ組織だった)に参加したくて仕方がないのだろう。この人物が、集団的自衛権を自儘にあつかっていることの理不尽さを思う。
さあ今度はテロとの戦いを前面に出して、特定秘密保護法や公安の強化に走るに違いないぞ。失火を機にひともうけ企む。そういうのを世間では……。
PART2につづく。本日の一曲はトッド・ラングレンの「Wailing Wall」。嘆きの壁です。