直幸……幸せにむかってまっすぐ進め、という意味で名づけられた青年が、書店で美女に出会い、しかし彼女の腕に(しかも同じ側に)ふたつの腕時計がしてあることに不審を抱くことから物語は始まる。
友人夫婦もからめて多視点から描かれたミステリだけど、ひとつだけ指摘しておきます。
“人間は絶対にそんな理由で人を殺したりはしない”
あいかわらず無茶なんだよなー石持。でもね、そこが彼の美徳のひとつ。誰もが納得できない殺人の動機がなんに奉仕しているかというと、それは主人公ふたりの恋愛の成就のため。ハーレクインもびっくりのハッピーエンドを石持は一度書いてみたかったのでしょう。
今回、彼が例によって持ち出した強引なルールは、とにかく直幸(不自然なまでに心静かな名探偵でもある)を幸せにするんだっ!ということでしょう。よかったね直幸。わたしは満足しました。でも、あの動機に怒った人もいただろうなあ。