救ったと伝えられる招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤
備え(戦国時代の軍団編成の一種、あらゆる武具を朱りにした部
隊編のこと)と兜(かぶと)を合体させて生まれたキラクタ「ひ
こにゃん」。
はじめての春の歌会みな爆笑
(産業技術総合研究所) 以下、via 環境ビジネス2024.SP
薄膜太陽電池は自家消費向き
発電事業は従来型ソーラーパネル
極薄、軽量で柔らかく、曲げたり半透明にしたりできる。製造は
トを低く抑えて短時間に量産できる。これらの特長から、生産者
トは計り知れない。
「Gフ広島サミット2023」会場にて展示された
フィルム型ペロブスカイト太陽電池
(出典)積水化学工業株式会社
国土交通省の統計資料から推算すると薄膜太陽電池の設置可能性
は従来の無機系太陽電池に比べ、数倍に広がると見積もられてい
る。また、電力消費の多い都市部で発電できるため、大規模な再
エネ発電所や原子力、水力発電所のある、遠隔地からの送電の必
要性がなく、送電ロスや災害リスクなどが少ない。加えて、主に
経済活動が活発な昼間に発電するので、昼間電力のピークカット
効果もあり、単純な発電量増分の効果だけでなく、それ以上のエ
ネルギー市場への波及効果が望める。
2030年100GW超が太陽光発電の宿命
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光の導入拡大
は必要 不可欠である。エネルギーミックス改定では、2030年度の
温室効果ガス46%削減に向けて、再エネ電力の電源構成を36~38
%(合計3,360~3,530億kWh程度)としている。再エネの主力電源
化に向けて、太陽光発電がけん引役として位置づけられており、
エネルギー基本計画における2030年度の電源構成をみると、太陽
光発電の割合は再エネのなかで最大であり、2021年度からの増加
幅も他の再エネより大きい。野心的な目標として2030年度には
14~16%程度、104~118GW、1290~1460億kWh導入を目指さなけれ
ばならない(2020年度の実績は7.9%、61.6GW、791億kWh)。
2022年末の時点で太陽光発電の累積導大量が約85GWに達しており、
国は今後の導入見込みとして、用地確保の地上設置を年平均3~
4GW程度を前提とし、屋根設置は年平均3GW程度の導入を掲げて
いる。しかし現状は、立地制約の克服が鍵となっている。日本は
既に平地面積あたりの導大量は主要国で1位であり、地域と共生
しながら安価に事業が実施できる大規模な太陽光発 電所の適地は、
ほとんど見当たらない。国が掲げた太陽光発電の導入拡大に向け
た取り組みは、公共施設への率先実行に加え、空港、鉄道、軌道
への施設、農地も営農型として太陽光を併設させるといった、苦
渋策で構成されていた。世界市場で戦える技術力図らずも登場し
たのがペロブスカイト太陽電池ということになる。
国は、既存の技術では設置できなかった場所(耐荷重の小さい工
場の屋根、ビル壁面等)にも導入を進めるため、軽量・柔軟等の
特徴を兼ね備え、性能面(変換効率や耐久性等)でも既存電池に
匹敵する次世代型太陽電池の開発に期待を寄せている。
現状、次世代型太陽電池の研究開発は、世界各国の研究機関等で
<しのぎを削っている状況であるが、我が国は次世代型太陽電池
について世界でもトップクラスの技術力を有し、現在もトップ集
団太陽電池だけではない。風力発電においても、国際競争力を低
下させ、市場撤退してしまっている。これらの経験を踏まえた対
応できるのか、国の対策が問われる。
都市で太陽光発電が始まる
東京都は「ゼロエミッション東京」の実現に向けた2030年目標と
して、温室効果ガスの排出量50%削減、化石エネルギー消費量の
50%削減、再エネ電力の利用割合50%、太陽光発電200万kW以上等
を掲げている。
大都市東京がこの目標を達成するためには、再エネ電力の消費だ
けでな<、再エネ電力の供給、自給の強化策を打ち出し、実施す
ること抜きに語れない。
そこで期待されるのが薄膜太陽電池の存在だ。平置き中心であっ
た従来の太陽電池に比べ、開発が進む薄膜太陽電池は、その形状
特性から透明等の意匠性や設置容易性などの特長を活かして、ビ
ル等の建造物への適用に向いている 都市部のビルは、大型、高
層化が進み、建物の省エネや災害時に
おける機能維持に関する要求は一層高まっている。快適性を損な
わずに消費エネルギーを削減し、その上で必要なエネルギーを太
陽光による再エネ電力で賄うことができれば、大規模停電の災害
リスクを軽減できるだけでなく、さらなる省エネを推進、実現で
きる。そのために、平置き太陽電池の設置に限りのあった都市ビ
ルの自立再エネ発電を可能にする、薄膜太陽電池の登場は、願っ
てもない好機である。都市の大型高層ビルが電力自給、自家消費
機能を持つためには、都市の多様なニーズに対応する、特化した
新タイプの薄膜太陽電池の開発と柔軟な導入アイデアが求められ
る;再エネの地産地消社会が実現する大都市圈の電力供給を火力
に頼らない再エネ電力化するメリットはほかもある。これまで再
エ<ネ電力は、遠隔地で発電し送電するしかなかった。島国である
我が国は、100%自給が宿命であるが、国土面積が狭く再エネに適
したエリアは限られており、そのほとんどを開発しつくしている。
しかも発電した再エネ電力の送電は、送電容量に限りがある既存
の系統遠系に集中せざるを得ない。加えて、様々な自然災害に対
し脆弱な送電網は、電力の安定、安心供給に大きなリスクを背負
っている。省エネ、再エネの地産地消社会の実現のために、従来
の系統遠系電源だ けでなく、再エネ電力需要の多様性への軟な
対応力、災害、ピークカット、地区(場所)単位の自家消費等課
題解決に薄膜太陽電池の役割は多い。
開発はニッチ二ーズヘの対応
特殊性を追求する日本メーカー 国は、日本発のペロブスカイト
太陽電池であることから、諸外国 に先駆け量産技術の確立、生
産体制の整備、需要の創出に期待を寄せている。しかし、国内企
業は自社事業優先の戦略に沿って、 固有の技術開発を進める薄
膜(有機、ペロブスカイト)太陽電池の新市場創出 日本は世界最
高水準に位置し大型化や耐久性の分野でリード激化している状況
にあるが、日本は世界最高水準に位置し、特に製品化のカギとな
る大型化や耐久性の分野でリードしている。こうしたことから、
グリーンイノベーション基金において、「次世代型太陽電池の開
発プロジェクト」(498億円)を立ち上げ、2030年の社会実装を目指
している( 目標:2030年度までに一定条件下での発電コスト14円/
kWh以下)。 ペロブスカイト太陽電池の主要原料のヨウ素は、日
本が世界生産の30%を占めるなど、各原材料の国内調達が可能で
あり、特定国からの原料供給状況に左右されない強靭なエネルギ
ー供給構造の実現につながる。加えて、太陽光発電市場は、世界
的にも、導入量が毎年右肩上がりで増加(2021年:176GW、2022年:
234GW)しており、世界的な市場の獲得も期待さを逃した苦い経験
がある。
国は、日本発のペロブスカイト太陽電池であることから、中国や
欧州など諸外国でも研究開発競争が激化している状況にあるが、
投資の「規模」 と「スピード」でも競争し、諸外国に先駆け、
早期の社会実装を進め、 量産技術の確立、制体制の整備、需要の
創出に期待を寄せている。
図 厚さ0.003mmの有機太陽電池> 2022年3月28日
未来を変える次世代の太陽電池 出所:理化学研究所
開発競争にしのぎを削る国内メーカー
例えば、積水化学工業は、現在、30cm幅のペロブスカイト太陽電
池のロールtoロールでの連続生産が可能となっており、耐久性10
年相当、発電効率15%の製造に成功している。今後、1m幅での量
産化技術を確立させ、 2025年の事業化を目指している。すでに建
物壁面への実装工事も行われるなど、実証の取組も進捗が見られ
ており、昨年末には、世界初となる1MW超の建物壁面への導入
計画が公表された。
東芝では、独自のメニスカス塗布法を応用して作製したフィルム
型の同電池(面積703cm)において、大面積のものとしては世界最
高のエネルギー変換効率(16.6%)を記録した。塗布法を用いるこ
とで、エネルギー変換効率の向上と生産プロセスの高速化を両立
することが可能になり、現在、高効率かつ低コストなフィルム型
の同電池の実用化に向けて開発を<進めている。
カネカは、ポリイミドを基板に用い、薄膜シリコン太陽電池の量
産技術&発を通じてフィルム型ペロブスカイト太陽電池における
世界最高水準である20%に迫る変換効率を実現した。
トヨタもペロブスカイト開発に出資
京都大学化学研究所の研究成果を基に2018年に設立されたスター
トアップ企業エネコートテクノロジーズは、2023年4月時点でモジ
ュール変換効率19.4%なフィルム型ペロブスカイト太陽電池の開
発に成功している。次世代技術として期待の高い車載用ペロブス
カイト太陽電池の実用化を目指して、トヨタ自動車と共同で取り
組むことにも合意し、開発を開始した。
トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」の実現に向けた様々な取り
組みの中で、省エネルギーやエネルギー多様化の観点からカーボ
ンフリー電力の自給自足を目指し、結晶シリコンセルを用いた車
載太陽光発電システムの実用化を進めており、さらなる発電効率
向上や低コスト化を目指している。
パナソニックでは、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池の
開発を進めている。まち・くらしに調和する「発電するガラス」
と位置づけ、実用サイズのモジュールとして世界最高レベルの発
電効率17.9%を達成している。
シャープが取り組むペロブスカイト太陽電池は、タンデム型で30
%以上の変換効率を実現できる水準に達し、大面積化した用途に
向けたタイプについては、変換効率を20%程度には高めておきた
いとしている。大面積化を志向した用途に向けては、880mmx660mm
のガラス基板に形成したセル(発電素子)を昨年末に公開している。
理化学研究所は超薄型・超柔軟・耐水を開発
理化学研究所では、水中でも駆動可能な耐水性と超柔軟性を備え
た超薄型有機太陽電池の開発が進んでいる。作製された厚さ3μm(
0.003mm)の超薄型有機太陽電池は、水に4時間浸漬した後もエネ
ルギー変換効率の保持率が89%であり、水中で30%の圧縮歪(ひ
ず)みと復元を繰り返す機械的な変形を300回加えた後も、エネル
ギー変換効率の保持率が96%という商い安定性を示す。さらに、
水中で浸漬した状態で60分以上の連続駆動を達成している。通常
の太陽電池は、光が斜めに入ると発電効率が低下するが、折り曲
げ可能な超薄型有機太陽電池の特長を生かして、700ナノメートル
(1nmは10備分の1メートル)の周期で微細に波打った状態で層を
つくり、光の入射角度の影響を受けにくく十分な発電を可能とし
ている。超薄型有機太陽電池は、その柔軟性と軽量な性質により、
ウェアラブルデバイスの潜在的な電源として期待されている。
用途や目的に応じてさまざまな市場の拡大が想定される
ペロブスカイト太陽電池
たとえば、軽量でフレキシブルなタイプは、ビルの壁面や耐荷重
が小さい工場の屋根などにも設置が可能で、太陽光発電の導入量
の増加が見込まれる。すでに開発に-定の進展が見られ、今後は
量産化に向けた製造技術の開発を進めるとともに、サプライチェ
ーン構築と初期需要創出がカギとなる。 屋内・小型タイプは、
loTデバイスなど比較的小型な機器類に貼ることができることか
新たな市場への展開が期待できる。また、超高効率型は、設置面
積の制限などから高いエネルギー密度が求められる分野、たとえ
ば交通や航空などの面でも利用が期待されている。低コスト化や、
高い耐久性など、量産化へのハードルはまだ高い状態だが、将来
的な市場ニーズは高いと考えられている。
※関連情報:
日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?資源エネルギー庁
風蕭々と蒼き時代