喫茶 輪

コーヒーカップの耳

井伏鱒二の筆跡

2019-10-28 13:43:52 | 出久根達郎さん
出久根さんのエッセイ集を読んでいると、いくらでもブログを書きたくなる話が出て来ます。
今度は「井伏氏の新しい顔」です。
「未知の読者から、井伏鱒二氏の筆跡鑑定を頼まれた」という話。
内容も面白いが、ここではそれには触れません。

《さて、コピーの署名は、井伏鱒二、の四文字のみ、無造作に付けペンで書きつけてある。》

で、出久根氏が所持しておられる井伏氏のハガキと見比べるのですが、それは、

《十七歳の時、私が井伏氏からちょうだいした葉書を取り出してきて、見くらべた。葉書の署名は、太字の万年筆で記され、丸みを帯びた文字である。ブルーブラックのインクをポタリと垂らしたような、そんな文字である。》


と書かれています。
そこで、わたしが所持する井伏氏のハガキです。



表の消印は昭和30年。
いや、わたしが井伏氏からもらったものではありません。
宛名は未知の人ですが、宮崎翁を経てわたしのところにやってきたものです。
「ポタリと垂らしたような、丸みを帯びた文字」と言われればそのような気がしますね。
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出久根さんの「五千円札」

2019-10-28 10:15:49 | 出久根達郎さん
出久根さんの『残りのひとくち』を読んでいて、「うわ~っ」と思った。

「五千円札」と題されたエッセイである。
集団就職で上京したころの話から書き起こし、初めて銀座に行ったことや、偶然郷里での旧友に会った話など。
そして、上京して10年ほど経ったころの話として、銀座で五千円札を拾った話に。
《私はまわりを見まわした。》とかあって、《交番に届けないとまずいぞ。》などと心に葛藤を抱きながら、《五百万円とくらべれば、五千円なんて、なにほどのこともない。》になり、新刊書店に入り、前から読みたかった本を十五六冊レジにさしだす。

《お下げの少女が、レジに入っていた。彼女は一冊一冊、ていねいにカバーをつけてくれた。私は例の札を、そのまま渡した。少女がゆっくりと広げ、ふと、小首をかしげた。私は、ドキッとした。ニセ札ではないか、と思ったのである。あるいは札ではなく、チラシであるまいか。ひろったときよく確認してなかった。急いでポケットにしまったのである。ニセ札ではなさそうだった。少女の、癖なのかも知れない。彼女は私に釣りをくれた。
それから何年かたって、私は結婚した。カミさんが古本屋の帳場に座る。客から金を受け取る際に、小首をかしげる。私はハッとした。
聞いてみると、確かにカミさんは、銀座の書店で一時期、アルバイトをしていたのである。私が買った店の、あのレジ係をつとめていた。場所も時期も、ぴったり、と合う。
「俳優の渥美清さんもよく買いにきていたわ。だけど、どうして?」
ひろった金で本を求めた、とは白状しにくい。その時に至って、良心が咎めだしたのである。》


なんということか。
これ、出久根さん、小説になさったのだろうか?こんな話、初めて読むぞ。
あの気さくな奥様とこんなエピソードがあったとは。
出久根さん宅に電話をかけると必ず奥様がお出になる。そして「あら〇村さん」と気さくに話してくださる。
出久根さんはこの話、これを書いた後に白状されたのだろうか。
次の電話の時に一度奥様に尋ねてみようか。
それとも、やめておいた方がいいだろうか。
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「切手の値打ち」

2019-10-26 18:50:41 | 出久根達郎さん
出久根さんの『残りのひとくち』(中央公論社・1997年刊)を読み始めたが、未読だった。
これで100円は、帯がないとはいえお安い。


「切手の値打ち」を読んでいて、おやまあ、と思った。
子どものころから切手を集めていて、(わたしも集めていた。出久根さんとわたしはほぼ同年なので、同じ体験が多い。)切手商に売り払ったら何十万円になるかも、と出かけるが、額面の三分の一とか言われてしまう。そこで出久根さんは、
《かくて私はせっせと使うことにした。自分で使う分には、額面のままである。ただし昔の切手は五円、十円、十五円などという少額なので、何枚も封筒に貼らねばならない。》
そのほか、この章には面白い話が続く。
で、わたしが出久根さんから頂いた手紙を見てみた。

もっともっとたくさん頂いているが、その一部。
書いておられる通り、豪華に見えます。
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出久根さんの人生案内

2019-08-29 13:44:47 | 出久根達郎さん
ある人が持ってきてくださいました。
読売新聞の切り抜き。
←クリック。

出久根達郎さんの「人生案内」です。
出久根さんの解答が素晴らしいですね。
わたしがやってきたことを言って下さっているみたい。

歯切れよく、具体的。センテンス短くリズム良く、そしてわかりやすい。
後段の「私も中学しか出ていません」が特にわたしの心に響きます。

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