著者 鴻上 尚史
出版 講談社現代新書
頁数 292頁
この夏、メディアで結構取り上げられていた。本人自身も出たり書いたり。
佐々木友次。9回出撃して9回生還した特攻兵の名である。覚えた。これが著者の意図である。
あの軍律厳しき日本軍隊にあって、一介の兵士にそんなことが出来るのか。本人の最晩年に会えて話が聞けた。その内容を残した。それがこの本の全て。
戦後生まれの我が少年時代、巷には傷痍軍人が辻々で物乞いをする日常。特攻隊や予科練は、最高にかっこいい英雄だった。あれから60年、日本人の太平洋戦争観が変わって来、軍首脳の無能振り、軍隊の惨状などのホントの姿を国民が知っている。
この夏、昭和天皇の自戒らしきツイートの存在が明らかになった。平成天皇が代替わりの時に昭和天皇の戦争責任に言及すべきだとの論も散見する。
著者は後半、「同調圧力」を取り上げる。日本は、一億火の玉となって戦争に突入した。学者もジャーナリズムも政治家も止めることが出来なかった。特攻の誕生も根は同じ。
先頃の日大アメフト問題も同型だろう。戦後72年、日本人の属性、言い換えれば民族の特性は聊かも変わっていないのだ。
朝日新聞(8/23付)のインタビューで著者は「結局、同調圧力を求める人たちは、右にも左にもいます。この状況を何とかしない限り、この国が本当に、健全に一人ひとりが思考することは難しいと分ってもらえる人がいいですね」と語っている。
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