神戸にゆかりの深い野坂昭如さんが亡くなった。
直木賞を受けた『火垂るの墓』はあまりにも知られている。
神戸空襲の実体験をベースにしているという。
私を映画の虜にしたのも彼が書いた今村正平監督の『エロ事師たち』、
『おもちゃのチャチャチャ』も彼の手によるもの。
活動は多彩だが、騒がしい事件も起こしている。
映画監督の大島渚をぶん殴った事件は、
私と同年代の人間なら誰もが記憶にあるだろう。
彼は15年前に脳梗塞で倒れたが、
今も続けているのが『新潮45』の連載「だまし庵日記」。
新潮社に絶筆といえる原稿が届いたことが、
きょうのスポニチに紹介されている。
末尾の一文、
「この国に戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」
絶筆にふさわしい彼の悲痛な叫びだ。
ちなみに女優・吉永小百合に思いを寄せる“サユリスト”、
その吉永さんは「残念です。野坂さんの飛びぬけた行動力と
非戦への想いを、今しっかりと受けとめたい」と追悼の言葉を寄せている。
ほんとに突拍子のない人物だが、彼の憂いは大切にしたい。