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como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

塚原卜伝 最終回「卜伝、見参」

2011-11-14 23:13:18 | 過去作倉庫11~14
 はい、なんだかんだであっというまに、「塚原卜伝」も満願成就の最終回となりました。
 思えば、第一回で、そんなにノリノリにもなれなかったものの、久しぶりにまともな時代ドラマの香りがするかな??と、その香りに導かれて最後まで見届けてまいりましたが、そうですね、全体の印象も、総括すると、ウナギの香りでご飯を食べたというか…。香りはすごくおいしそうだったのですが、おなか一杯とはいかなかった…て感じかな?
 まあ、なんつっても短すぎですよね。これで「新選組血風録」の14回くらいあればなー。途中の、塚原卜伝の修行時代の数々の勝負とかが、みんな似たようなシチュエーションなので、結局京都に10年いてたまに御前試合で賞金稼ぎしてただけの人?みたいな。もちろんそんなんじゃないんですが、そういうとこしかドラマ上にあがってこないため、重い業を背負って…とかいわれても、いまいちそんな気になれないのが、物足りない原因だったりもします。
 まあ、そのあたりに目をつぶっても、最終回は良かったですわ。わたし、第一回のとき「イケメン剣豪が世界平和を布教して、最後は愛の兜でフィナーレみたいなしょうもない話になる…ということも、そうでなきゃいいなあとは期待はしときます」と、いささか斜めになって言いましたが、この最終回は、そういう、「そこに落としても不思議はなかったしょうもない落ち」に、真っ向から対決したすがすがしいもので、それだけでもわたし、良かったと思います。
 んでは、最終回、見てまいりましょうかね。

最終話「卜伝 見参」

 前回のラストで、鹿島神宮への千日参籠の満願の日、流祖・国摩真人様から奥義「一つの太刀」を授けられた新右衛門(堺雅人)は、俗世に戻り、また剣術教師になります。新右衛門が神さんから奥義を授かったという噂はすぐ広まり、入門者は門前市をなし、月謝はたんまり、とうちゃんニッコリ、でも相変わらず神社の建て替えは進まないという…。回国修行に出る前と状況変わってないし。千日修行もなんだったんだという感じですが、まあ一番美味しい変化といえば、若の前髪がとれてオールバックになったことですかね(それかい…)。
 んで、新右衛門のところには、例の二代目バカ殿のイエスマン家来・玉造上総之介(松田悟志。って見たことあると思ったらこの人、龍馬伝ですげー不憫な土方歳三をやってた人だわ)というのも通ってきてて、こいつがまた、イケメン鼻にかけたようなキザな男で、吉川・塚原の両とうちゃんや、松本先生(永島敏行)なんかも大嫌い。だけど新右衛門はココロが広いので、そーゆーのも、月謝を払って教えを請えばちゃんとお稽古してあげる。それを、塚原のとうちゃんは、なぜか異常にムキになり「破門しろ」と迫るのでした。
 んで、ある日左門(平岳大)と夜道をあるいていると、そのタマ造が刺客におそわれているところに遭遇(夜道といえば刺客ww 夜道あるいてて刺客が登場しないことって一回もなかった。笑)、新右衛門の神さんオーラは、「狼藉者―!」と一声発しただけで資格を撃退してしまいます。
 で、怪我したタマ造を家まで送って行ってあげると、それがまた、何で羽振りがいいものか、新築の豪邸で、そこでタマ造はきどって「いやあ俺って敵多くてサー」みたいなことを言います。刺客の元に心当たりはあるけど、まあ敵が多くて誰っつってわかんねえし。つか今の世の中敵がいるくらいが上等じゃね? 一国へーわ主義じゃいずれは他国に食われてジリ貧だし。だからTPP反対とか言ってデモってる場合じゃねえのよ(違…)、みたいな、気に障ることを吹きまくります。
 タマ造邸からの帰り道、「あのヤロー、裏金で家新築しやがって」と、露骨に嫌悪感を示す左門。ですが、新右衛門は「んでもあいつの言うことにも一理あるよ」と考え込みます。

 そんなおり、意味なく登場して意味なく消えたと思われたあの人が、鹿島にやってきます。そう、山本勘助(三浦アキフミ)。
 勘助は、新右衛門が千日引き籠っているあいだに諸国を見分したそうで、周防にもいって平賀父娘に会ってきたと。鹿乃ちゃん(京野ことみ)も結婚して、お母さんになったそうでよかったですね。っつか年齢のことは…それは不問。彼女人間じゃないし。
 で、都が内乱で荒れ果てているとか、周防山口もいろいろ大変とか、これから本格的に戦乱の世の中になるのか…みたいな話を勘助から聞きます。その中で、伊勢正三…じゃない山田パンダ(古いなおい)、…じゃないパンダうさぎ、こと伊勢宗瑞様(中尾彬)が亡くなった話を聞いたりして。
 あのお殿様に仕えたかった、という勘助に、いやあでもアンタこのあとその孫の北条氏康に就職活動にいくよね、とか。左門が「武田信虎とは?」って反応したのに「それはアンタのお父ちゃんやん」って思って吹いたり、なんだか「武田信玄」と「風林火山」がごっちゃになって一瞬頭の中凄いことになりましたが(笑)、勘助って、意外とそういう人間関係のリンクなのね。まあ、八割がた架空の人物なので、そーゆー役が振りやすいのかもしれんが。

 さて、そんなある日新右衛門が左門とこんどは昼の道を歩いていますと、土左衛門に遭遇します。夜道といえば刺客。昼道といえば斬死体か土左衛門。素晴らしき哉ワンパターン。この土左衛門もお約束で、バッサリ斬られて川に落ち、上がったようです。で、よくよく見ると土左衛門は、あの夜道でタマ造を襲っていた刺客ではアーリマセンカ。新右衛門は刀傷鑑識のプロなので、一目見て、その太刀筋からだれの手にかかったかわかってしまいます。
 そしてその夜…。実家の卜部吉川家を訪ねた新右衛門は、そこで、実家のとうちゃんと、大先生の松本備前守に会います。あの刺客を斬ったのは松本先生ですね、なぜそのようなことを、っていうかタマ造に刺客を放ったのが先生で、それって口封じってことですかどういうことですか!!!
 と、問い詰める新右衛門に、とうちゃんと大先生は、お前には黙ってるつもりだったけど、といって事情を打ち明けます。実は刺客を放ったのは塚原のとうちゃんで、ようするに、バカ殿まわりから番犬やイエスマン家来を消し、孤立させて、隠居に追い込むという計画。謀叛ですね。
 まあ、この時代はまだ朱子学思想がないので、謀叛というものに道徳的な抵抗もそんなにないのですね。殿様が船なら家来は水よ、船が梶を間違ったら水が総出で船をひっくり返して沈めてもしょうがないことだわ、という理屈も、戦国時代的にダイナミックです。
 でも、謀叛といったら一国を戦場にして自分も死ぬ覚悟が必要なので、新右衛門にも、聞いた以上はこっちについてもらう、と。お前に千日引きこもりを許してやって、そのうえで奥義・一つの太刀を会得したんだからな、ありがたく思って協力せえよ、みたいな。露骨に恩着せがましい先生。

 なんだかエライことをきいてしまった新右衛門は、悩むわけです。先生の言うことにも一理ある。恩ある先生や両とうちゃんを見限ることはできないし、これは鹿島神宮のご神威をまもる戦いなのだ!っていわれたらそれもそうだし、んでも、そーゆークーデターとかのために、国摩真人様がわざわざ降臨して自分に奥義を授けたとも思えないし…と悶々として、また鹿島神宮に日参し悩める日々を過ごします。
 そんな夜、神社の参道で悩んでいる新右衛門のところに、妹の真尋ちゃん(栗山千明)がやってきて、「物忌様(江波杏子)の最後のお言葉をお伝えします」と言います。そうです、前回に伏線としてふせられた、物忌様の遺言ですね。悩める新右衛門をみて、いよいよそれを伝える時が来た、ってことのようです。
 物忌様の遺言は、 「鹿島の大神が新右衛門に授けるは、平法の剣!」
…ということでした。
 まあ、簡単にいえば、戦や世の乱れを助長するんじゃなくって、剣のちからでそれを収めよということですね。

 平和。あああ…。これってNHKの時代劇的には禁断の踏み絵でねえ…。なんか一瞬、喧嘩で世の中変わるとは思うちょらんきの、とか、みんな仲よぉせんとイカンぜよ、とか、愛の兜の大写しとか…不吉なものが走馬灯のように脳裏を通過しましたが、ここからの展開は…。
 そう、ここからの展開は、ちょっと良かったんですよ。まあ聞いて。
 物忌様のご託宣を得て、諸々の悩みがふっきれた新右衛門は、大先生のところに行きます。クーデターに加勢しろよ、という勧誘に返事をするためですね。新右衛門の回答というのは、
「わたしは鹿島を去ります。また回国修行に出ようと思います」
 ぬぁにぃいいいいい!!!…っと、大先生じゃなくても思いますよね。っつかオメー、それじゃ10年間の京都滞在はなんだったんだ、3年間の引きこもりは何だったんだ、そんだけやって「また修行の旅に出ます」ってなんだよそれ。「もう付き合いきれません」と、左門じゃなくても思いますよね(このときの左門の顔が露骨の迷惑そうだったのもツボでした)。
 ですが新右衛門はマジで、いえわたし、千日参籠で会得した奥義・一つの太刀というものを、世の中に布教して、それがどーいう効能のものなのか見極める必要があるので…。あとに残していく鹿島が内乱で大変なことになっても、申し訳ないんですがカンケーないってことで。ひとつお許し願いたいと、はい。
…いや、許せないです、ふつう。大先生は青筋たって切れんばかりに憤り、「お前そこまで言って無事で逃げられると思うなよ」と、新右衛門に決闘を申し込みます。

 まあ、このへんまでは、大先生のほうに同情して、「いくら主人公でもご都合がよすぎるじゃないの」と思いましたですよ。
 で、次のシーン、新右衛門と大先生は、鹿島神宮の前で剣を交えて対峙するのですが、この殺陣が、うん、なんというか、良かったんですね。
 だって立ってるだけなんだもん。じわじわっと間合いをつめて、じーっと対峙してるんだよね。で、その間無駄なBGMとかもないし。
 なんか、ハデーなワイヤーアクションとか、ストップモーションとかエフェクト使いとかの実験の結果、このシンプルな対峙にたどり着いたってことが、ドラマの成果みたいで、ちょっと痺れましたね。そして、最後に渾身の一撃を交えたお二人、勝負は新右衛門が制し、しかも剣を大先生の脳天の皮一枚のところで寸止めにしておわります。
 これで物凄い衝撃をうけた大先生。奥義・一つの太刀というのは、相手に同化してしまう太刀なのでした。ものすごいヒューマニティなのですよ。そして同時に、新右衛門の生き方というものもはっきり認知するのですね。
それは、喧嘩をしてはイカンぜよとか、戦はいやでございますとか、そーゆーバカッタレなことではなくって…なんつったら良いの、これから乱れに乱れていくだろう世の中で、たった一本でも、乱れずに真っすぐ伸びていく、正しい道というものを、新右衛門は行くんだなと。鹿島の内乱とかのために妨害してはイカンのだ。そういう道が世の中に存在しているということは、実は、世界平和に尽くするとか愛する人のために戦うウ!とかよりも、すごく、切実に、必要で大切なことなんだもの…と。
 お前はそういう道をいけ。俺はオレの道をいく。鹿島が戦でドロドロになって俺が野たれ死んでも気にすんな。そういって大先生は、いずれ新流派を開いて「新当流」という名前にしろと、屋号まで授けてくれちゃいます。
 それをうけて新右衛門は、「そういうことなら、これから名前も変えます。塚原卜伝と名乗りますので」と。卜というのは、物忌様が占っていた木の葉のことでもあるみたいで。
 うん、ここは、ジーンときちゃったですね。新右衛門@堺さんもかなり泣いていたし、永島さんもウルウルしていた。きれいごとのヘーワの歌うたうんじゃなく、「乱れた世を貫くまともな道」というものに、それぞれが開眼するあたりの心境に、感じるものもあったんだろうな。見てるこっちもウルッとくる良いシーンでした。

 そして話は振り出しに戻り、新右衛門はまた鹿島から旅立つ日を迎えました。左門は置いてってやれ…と思ったのですが、かわいそうに、やはり一緒です(涙)。もう、完全に若のお世話係に一生を捧げる覚悟を決めたのでしょうね。出家みたいな感覚で。
 そしてなぜか山本勘助も。こーゆー経歴が風林火山前史に…あったんでしょうか。まあ8割がた架空の人物なのでそのへんは…。甲州葛笠村でミツというむすめと会うまでには、あと20年くらいはありそうですしね。
 んで、またいつぞやのように、晴天の霹靂と真尋ちゃんに見送られ、鹿島の太刀を世に広めるため、回国修行の旅に出るのでありました。「京では何がオレたちを待っているんだろうな!」シャキーン!第一回おわり。次回に続く。続かねーよ。
 ってなことで、塚原卜伝、ここに完であります。大ラスのナレーションが「松本備前守様が戦で命を落とされたと旅の空に聞いた兄は、鹿島に帰らず旅をつづけたのでした」、んで??そのあとはどうなったの???…っと、その後の消息のことも何もいわず、なんか微妙に半端ではあったけど。いえ、この続きは「塚原卜伝2」で、ってことね。わかった。楽しみにしてる。

 さて、塚原卜伝の旅はこれではおわらず、生涯のあいだに3度の回国修行をおこない、数多の戦国武将にその奥義を伝えたとされてもいますので、塚原卜伝物語もこれでおわりといわないで、つぎは半年くらいのスパンでをとって、堂々・裏大河として続けてプリーズ。
 ああ、来年は表大河がそれなりに濃そうなのでお休みして、再来年あたりがよろしいんじゃないでしょうか。(あ、脚本家は勿論変えてオッケーですよ)。
 ってなことで、BSでまた会いましょうと一方的に再会を訳し、塚原卜伝、ここに。長らくお付き合い下さりありがとうございました。


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