como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

八重の桜 第14話

2013-04-08 22:28:15 | 過去作倉庫11~14
 大河ドラマの最初のほうは、なんかどうかとケチをつけて貶めようというのが、最近のマスコミの定番のイベントになってるようですが、あんまり感じのいいことではないですね。先日もネット上で、八重の桜の長州の描写が許せないと山口県の御婦人が憤ったとかなんとか、出所不明な情報が飛んでましたけど、それってねつ造にしても粗末すぎませんか。ちょっと失笑してしまいました。
 だいたい吉田松陰を小栗旬、桂小五郎を及川ミッチーがやっててそれ以上なにが許せないのよ。各陣営にイケメンを配し、描写は公明正大、史実通り。特にいうことないじゃないですか。
 あと、坂本龍馬が出ないのがおかしいとか言ってる人が、ホントにいるらしいのもびっくり。龍馬に偏った幕末ものがいいなら、龍馬伝でも見てたらどうですか。長州にイケメンが少なくて気に入らない方も、ご一緒に。そっち方面の需要にこたえてわざわざ再放送してるんだから(だよね?)。わたしは龍馬伝なんか二度と見たいと思わんけど、あれがタマランって人は、別に、いろいろ言わずにそっち見て満足してればいいんじゃないの。

 ああ、なんか久しぶりに思いっきり毒を吐いてしまいました。
先週、主人公の大人への旅立ちポイントを通過しまして、今週はサブタイも「新しき日々へ」ということなんですが…。どっちかというとその新しき日々も、暗くドツボな展開へまっしぐらな「新しき日々」という趣でございます。史実どおり、このあとはあんま明るくなれる材料はないので…しかたないんですけど。
 そんな鬱展開をカヴァーするかのように、今週はコテコテに、八重ちゃん(綾瀬はるか)・尚さま(長谷川博已)の結婚式と、新婚生活が描かれます。そのへん逐一追ってると冗漫になってしまうので、今週はピンポイントチェックで。(多少偏ってるのはお許しください)

第14話「新しき日々へ」

やえ♪しょのすけのラブラブ生活編

○ 披露宴で、無禄の居候の尚さまに無神経なことをいってきた親戚のおっちゃん(どこにでもいるね、こういう人は)。それを、ガサツな言葉攻撃でやりこめるんではなく、さりげなくその場から引き離し、酒で潰してしまうという、おとっつぁま(松重豊)の気遣いが、いまでもあるある、田舎の親戚づきあいの独特の気配りが、リアルに匂い立っていました。こういう家族の描写が、大人っぽくていいんだよね。このドラマ。やたらベタベタに狎れあってるような家族愛じゃなくて。ほどよい距離感と、ほどよい遠慮があるのがいい。

○ で、披露宴で酔いつぶれてしまった新郎の尚さまを、無造作にまたいで通る、総領娘の山本みねちゃん4歳。この瞬間に、居候の身の悲しみを見てしまいました。その後、八重ちゃんが米俵のように新郎を担いでいくとこより、こっちのほうがショッキングだったりして。

○ 初夜にとどいたあんつぁま(西島秀俊)からの贈り物、京都の口紅。それを「つけてみてください…」といって、花嫁にぬってあげる尚さま。その真面目な顔とキラキラした目と、紅を塗る長い綺麗な指に、日本中の奥様が失神寸前になったと思われます。
 が、なんでしょうか、あの慣れた手つきは。女の口紅なんか慣れたふうにササッとつけられる男って、ヤバくないですか。過去がありそうじゃないですか。花嫁はそこに疑問を感じないのでしょうか(いや、そんなこと感じたら話がすすまないんだけど)。

○ で、新婚生活がはじまっても、「八重さん」とかいって敬語でしゃべる新郎を心配したおとっつぁまが、娘が亭主を立てるように、鉄砲をさわるのを禁じます。
 これって先週も言った「恋バナを盛り上げるための強引な妨害」の挿入だよね。ま、いいけどさ。んで、夫を一生懸命立てて、鉄砲をさわらない八重ちゃんに、尚さまは「わたしは鉄砲を撃つ女を妻にしたっ!あなたはあなたのままでいいんだっ!!」とかなんとか言って、夫婦は雨降って地固まる、と。まあ、ここで、それじゃなにか、鉄砲と結婚したかったのかアンタは、と突っ込むのは野暮かもしれんよね(いや、ホントにそうなのかもしれないし…)。

 ますますドツボのアンドレ覚馬と、会津in京都編

○ 蛤御門のときのケガが原因で、白そこひ(白内障)を患ってしまうあんつぁま。白内障か…。いまなら日帰り手術でなおるのにねえ。当時は確実に失明だそうです。ということで、自分のやってきたことが近い将来確実に道を絶たれるとわかってしまい、激しく落ち込んで脱力するあんつぁまなのですが…それでも、とりあえず目の前のことに集中し、日々の仕事は続けているところが立派ですよね。昔の人は偉いな。

○ (たぶん長州の賠償金肩代わりの負担のせいで)守護職の手当を借り上げ(事実上凍結)という、残酷な処置をされてしまった会津藩。経済的にも限界で、そんな待遇で幕府に尽くす義理はない、お役目返上して帰国しましょう、と、家来衆は容保様(綾野剛)に詰め寄ります。ですが、
「我らが都をさればますます世は乱れる、そこに主上ひとりをお残しすることはできぬ。御所に発砲し奉った朝敵・長州を幕府の力で討てば、これこそが公武一和の成就となる。長くはかからぬ、もう少しの辛抱じゃ」
 そして、朝敵成敗が終わったらみんなで会津に帰ろう、磐梯山を見よう、と言って、家来たちも男泣きに泣いて、泣きながら容保様の主上LOVEにつきあう覚悟をするのですが…。いやあこの展開辛いなあ。会津は、まさにここのポイントで、うまいことズルく立ち回れなかったわけなのね。容保様の主上LOVEが過ぎてしまったってのもあるんだけど…。ようは、あまりにも時代の趨勢を知らなかったことか。
 そのあたりの「あたまの固さ」というのも、きちんと批判しつつ取り入れて、会津が破滅していく道筋をきっちり、コンパクトに説明しているのは、非常に見ごたえもあります。一方的な犠牲者じゃなくって、会津は会津なりに問題があるのよ、というね。そこんとこを見るのは、勝ち組の話じゃないから辛いけどね。でも、事実だから(そこを理解できないで長州の描写が気にらないとか本気で言ってるバカが実在するのかよ)。

 そのほかの細かいみどころ。

○ 大久保一蔵(徳重聡)、初登場。ビックリしちゃったんだけど、この徳重さんって、すんごいイイ声なんだね。低音で、よく響いて、じつに声イケメン。これが大久保の冷酷な感じを出すのに効いてます。西郷(吉川晃司)と中の人の年齢が一回り以上違う問題はあるけど、まあそれはいいや。
 その大久保が、これも今回登場の岩倉具視(小堺一機)とともに、天下を操る陰謀を語り合うくだりはシビレてしまいました。これぞ幕末劇って感じだね。

○ 帰国してから病床にあった横山主税さま(国広富之)が亡くなります。亡くなるまぎわまで、「秋月をヨロシク…」といいながら。ううっ(涙)
 実は、ここ、うっかり泣きそうになってしまった。「あの御宸翰が、いまとなっては会津を縛る枷になって…」と、あの日の感激を複雑な思いで回想する横山様。横山様にとっても一世一代の晴れの日だったのにねえ。そして、殿からじきじきに頼まれた秋月の引立ても、余命いくばくもない身で果たせない。それをあえて、公職解かれている西郷頼母(西田敏行)に、「頼む」と言い残し、頼母も「…はい」と承諾して、同席した秋月(北村有起哉)も、泣きながら深々と低頭するという…。もう、三人三様に切なくて、ほんと泣きそう。
 こういう場面に時代劇の香気が凝縮していると思う。うん。


今週の八重ちゃん出直し学習会

「岩倉村のあのお方」は、ここまでなにをやってきたのか。

 はい、今週は岩倉具視が登場しました。一般的な幕末ものでは、岩倉具視はだいたいこのタイミング(第一次と第二次長州征伐のあいだ)に登場し、大久保利通に入れ知恵をし、その後大政奉還・王政復古の大号令・鳥羽伏見の戦いから幕府瓦解に至るまで、幕末の最終局面を縁の下で回す黒幕として活躍するのが定番となっています。
 で、登場するときは、洛外岩倉村のあばら家で、落ちぶれた生活をしているのも定番なんですけど、なにをしてそんなに落ちぶれてしまったのかは、わりと、知られてそうで知られてなかったりするので、これを機会にちょっと整理しておきましょうね。

 岩倉具視は1825(文政8)年うまれですので、慶応元年の時点では41歳です。
 この人の実家は堀河家といって、公家の格では羽林家にあたります。摂関家・清華家・大臣家に次ぐ格で、公家のヒエラルキーの中では一番家の数も多い、松竹梅の梅クラスのお家の出です。堀河家から、同じ羽林家の岩倉家に養子にはいり、跡を取りました。
 梅クラスのお公家さんのご多分にもれず、貧乏でしたが、お公家さんの世界は家格だけがすべてではなくて、やりよう次第ではけっこう出世の目もあったみたいで、岩倉具視の場合は実妹の堀河紀子が、孝明天皇の奥向きに、右衛門内侍(よものないし)という役職で仕えていたんですね。この妹をパイプに、具視は、自分の書いた上申書を天皇に内奏するチャンスを得ます。
 それと、この人は当時の朝廷政界の絶対的なドン・前関白鷹司政通に、才気を買われて可愛がられ、そういう引立てもあって、ついに天皇の侍従にまで出世しました。

 具視が朝廷政治の中枢に入っていったのは、当時、幕府の開国政策と通商条約が、叡慮に反する、違勅だということで、長州や薩摩など雄藩をバックにつけてにわかに朝廷が政治的発言力をまし、その中で、具視の才気と抜け目のなさが重宝されたというのもありました。
 なにせお公家さんたちは、何百年もお雛様みたいに飾り物にされてたのが、とつぜん「ものいう存在」になったので、舞い上がり、あやしげな浪人の遊説家なんかにいいように利用されたりしてたんですね。
 そんな中で岩倉具視はめずらしく頭も切れ、幕府や雄藩の武士と渡り合う胆力もあったので、朝廷の中ではすごく頼りにされるわけです。そんな具視の政局ゲームの頂点にあったのが、文久元年の和宮降嫁です。
 14代将軍・家茂と、皇女和宮の結婚は、いわゆる公武合体のきわめつけの一手として、大老井伊直弼が発案し、そのブレインの長野主膳が根回しをしていたんですけど、井伊は桜田門外で暗殺され、長野主膳も殺されて、この話はいったん宙に浮いていました。
 それが再度検討されだしたとき、岩倉具視は、和宮の結婚を、破約攘夷(=通商条約をチャラにして開国をなかったことにし、外国人に日本からでていってもらうこと)を幕府に約束させるカードとして、ガッチリ手の中に握り込んだわけです。このカードをタイミングを計ってちらつかせることで、朝廷が幕府の鼻づらを引き回し、事実上の決定権を握ることができる、というわけ。

 そんなことで、岩倉具視は和宮の結婚にあたり、裏も表も駆け回っての大活躍、というか暗躍をします。和宮の生母をその実家を脅しもし、天皇と、もちろん和宮本人もことば巧みに説得し、幕府の老中たちと渡り合っては、和宮降嫁の条件として「十年以内の攘夷実行」という確約を取り付ける。
 その目標には、公武合体、それも公が主で武が従うという、限りなく天皇中心の絶対王政的な、国の形がありました。

 こうして文久元年秋に、和宮は江戸に嫁いでいきますが、いれかわりに、都には天誅テロの季節が到来します。
 いわゆる「恋闕の情」、ようは一方的な天皇LOVEという流行病に熱狂した下級武士は、脱藩し、京をめざし、とりあえずおのれの天皇LOVEを行動で表現するために、御上の宸襟を悩ませ奉る君側の諸奸を血祭りにあげ始めるんですね。首を切って道端に晒したり、指とか耳とかを人の家の窓の中に投げ込んだりとか。さらには○○に●を刺して道端に逆さ吊りなど、とても書けないおぞましい事件も起こるわけです。
 そういうイカレ尊攘志士が、深く憎んだのが、プリンセス和宮を人身売買さながら幕府に売渡し、政局に利用した極悪人どもであります。イカレ尊攘の業界用語では、彼らは「四奸両嬪(しかんりょうひん)」と呼ばれて、直ちに殺すべきターゲットとされました。
 四奸とは、岩倉具視・千種有文・久我建通・冨小路敬直、両嬪は(彼らと天皇の連絡役をした女官の)今城重子と堀河紀子のこと。昼夜絶え間ない脅迫と、じっさい、千種有文の家に仕える召使の賀川肇が殺されて、両腕が千種家と岩倉家にそれぞれ送り届けられるというグロテスクな事件がおこって、恐怖は頂点に達します。

 朝廷まわりでは、長州をバックにつけた三条実美ら、尊攘急進派の公卿が実権を握り、和宮降嫁を推進した岩倉たちのグループは、一転して国賊扱いに。テロの恐怖と、尊攘公卿グループの突き上げもあって、ついに岩倉たちは全員辞官します。朝廷からは落飾・慎みを命じられ、宮中からは事実上の所払い。追放。この処分の理由は「御上の英明を汚奉の次第」ということでした。

 こうして、文久二年、完全に失脚した岩倉は、洛外の岩倉村に隠居して、友山と号し、身をひそめるように暮らしました。といってもお金がぜんぜん無いので、隠居所で賭場を開帳し、テラ銭をかせいで生活費にあてたりとかしていたんだけど。
 さらに、蟄居中の利点で、渦中にいるより大所高所からものが見えるということがあり、時代を見る目が研ぎ澄まされた岩倉は、薩摩にコンタクトをとりはじめるんですね。
 そういう中で執筆されたのが、「叢裡鳴虫」「続叢裡鳴虫」です。
 じぶんは叢のなかで鳴く虫みたいな取るに足らないものなんですけど、と卑下しておいて、敬愛する薩摩の皆さんに、ちょっとお知恵をお貸ししますね…みたいなスタンスで、まずはおもいっきり大胆な政治改革案を展開。さらに、目下渦中の長州出兵に対する入れ知恵もするんですが、ここで岩倉の長州戦争に対する意見は、「幕府と長州、どっちに勝たせてもダメ」とハッキリ言いきっているんですね。
 大久保利通は、大筋、岩倉の入れ知恵に従って幕末最終局面の薩摩を切り回し、勝ち抜いていくことになるんだけど、まあ、ここからはじまる腐れ縁が、ゆくゆく明治になってから、ものすごい荷物になる…ということが、大久保利通とて神ならぬ身で、このときはわかんなかったんだろうなあ。

 また来週っ!


3 コメント

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似た者どうし (SFurrow)
2013-04-08 23:28:09
4分の1長州人としてハッキリ言っておきたいですが、このドラマに長州人が文句をつけたなんてデマ以外の何物でもありません!!
会津と長州ってある意味似た者どうしが不幸にして敵味方になってしまったという気がするんですけどね。
初回で奥州旅行中の吉田松陰と覚馬たちがオトモダチになる所、江戸で共に学ぶ所を丁寧に描いているのを見て、「官軍を単なる悪役にはしないドラマだな」と感じて期待していましたが、蛤御門の変でも、その期待が裏切られない、というか期待以上でした。
まぁ山口県からも東北への支援が届けられているはずなので、そのへんの考慮もあると思うんですけどね。薩摩はもうちょっと腹黒に描いてもいいんじゃないかな~とワタシは思うけど(笑)鹿児島からも支援は来ているだろうしね。
龍馬は不要という説も一理ありますが、高知県からも支援は来てるはずなので、一話限りのゲストでチラと顔見せくらいあってもいいんじゃないかと(^^ゞ

岩倉具視邸宅跡、何年か前に行きましたよ。鞍馬の帰りに岩倉と崇道神社に寄ったのです。いわゆる京都観光コースからははずれているんだけど、面白かったです。
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Unknown (うし子)
2013-04-09 08:40:24
会津と長州の対立を面白がって煽っているのでしょうね、くだらないデマだと私も思います。
でももし万が一ほんとに憤慨してる人が居るならら「会津の人達なんて、この140年ずっと教科書でもあらゆるメディアでも悪or敵として描かれてきても、ずっと我慢してきたんだぞぉ」と言いたいです。私会津の人じゃないけど…
今回特にそうでしたが、このドラマは会津(容保さま)の政治オンチっぷりも隠さず描いてますよね。帝に縛られて、うまく立ち回れない所とか…これも私達が後々の結果を知ってるからできる批判なんですけどね(゜_゜;)
このドラマ、会津以外の人物の賢さ、俊敏さが際立ったり、長州のほうがカッコ良く見えたり、公正明大ですよね。
今後も会津戦争に向けて、会津側の判断ミスも隠さず描かかれる予感なので、見ていて辛さが増しそうです。
あと龍馬…。人気あるんですねぇ。私も好きではありますが、このドラマは会津目線であり、かつ主人公は山本八重さんですから…。不満な方は龍馬伝見て下さい( ̄ー ̄)…ですよね。
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情報の怖さ (素問)
2013-04-14 05:32:01
今回の大河をきっかけに、一通り知った気になっていた幕末期を僕も自分であれこれ調べてみようと思いました。

普段は自分のブログで主に東アジアの古代史を中心に記事をダラダラ綴っていましたが、今更ながら「歴史は勝者が作る」という言葉の意味を痛感しております。

学問にも剣術にも特に秀でたものがない「人たらし名人」の坂本くんがスーパーヒーローとして信奉されていたり、官軍に逆らった人達は尽く歴史の表舞台から記録を消されたり、今の世の中の常識が如何に勝者によって都合良く操作されているかを実感しております。

そういう意味でも、今後八重ちゃんがあの人の足を撃ち抜いたとか、二本松少年隊とか、教科書には掲載されない重要なことをこのドラマの中でどんどん取り上げてほしいものだと思いました。

あ、あと時尾ちゃんがあの人の嫁になるという話もちょっとびっくりでしたが、そこまではやらないかな?(^_^;)
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