投票日まであと10日を切り、今年に入ってから続いてきた各党のキャンペーンも大詰めだが、それぞれの党にとっての大きな敵は、政治カラーの異なる他の党だけではない。ここぞとばかりに厳しい質問で説明責任を求めてくるジャーナリストも、各党にとっては大きな敵なのだ。
スウェーデンの選挙戦では、大手メディアが各党の党首を一人ずつ招いて「ヒアリング」(utfrågning)を行う。ヒアリング、と書くと聞こえはソフトだが、実際はそんな生易しいものではない。むしろ「尋問」といった適切だろう。
連立政権を構成する与党であれば、4年間の政策の責任を様々な角度から検証され「なぜこうしたのか?」「なぜこのような結果になったのか?」「誰の責任なのか?」と厳しく追及される。前回の選挙で公約に掲げたにもかかわらず、実行していなければ、その説明責任も求められる。
また、与野党ともに、現在の選挙戦で掲げている公約をしらみつぶしにチェックされ、少しでもアラがあれば、厳しい追及を受ける。党首がうまく答えられなければ、有権者には信頼するに足りない党というイメージが付くし、「尋問」のあとで提案を変更するといった事態にもなりうる。
既に8月途中には、公共放送であるスウェーデン・ラジオが早朝のリスナーの多い時間帯を使って、一日ごとに党首を招いて「尋問」を行った。また、8月下旬には同じスウェーデン・ラジオの中でも、若者向けの番組を提供しているチャンネルが、若手ジャーナリストによる若者的視点から党首インタビューを行い、政策の検証を行った。そして、現在は、公共放送であるスウェーデン・テレビが夜8時の視聴者の多い時間帯を使って「ヒアリング」いや「尋問」をライブで行っている。TV4も来週、同様の尋問番組を生放送する。
その「尋問官」であるジャーナリストは、かなり綿密な準備をしている。そして、厳しい質問を1時間にわたって集中的に浴びせる。だから、党首の中には途中でしどろもどろになる人もいる。先日は、中央党(現・中道保守政権を構成)の女性党首モウド・オーロフソンがスタジオに招かれ尋問を受けたが、まさにそういう事態となった。
スウェーデン・テレビのジャーナリストは男性レポーター(以下、男性レ)と女性レポーター(以下、女性レ)の2人。両方ともベテランだ。開始早々から、シビアな状況となった。
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女性レ 「ようこそ、モウド・オーロフソン。」
党首 「ありがとう」
男性レ 「口にする食材が何か、そしてどこから来たかという情報は、あなたにとってどれだけ重要か?」
党首 「とても重要だ。だから、私は地元で生産された食材や、生産者が誰か、どれだけの距離を輸送されてきたかが分かる食材を買うようにしている。」
男性レ 「2006年秋の総選挙では、あなたの中央党はすべての食品の生産地表示を義務付けることを提案した。しかし、それが実行されることはなかった。どうしてか?」
党首 「それは費用が高くつくからだ。生産者や食品の中身、環境への影響といった詳細な情報を表示しようと思えばコストがかかる。むしろ、生産者が自ら進んで情報提供するのが良いと思う。実際に多くの企業がそうしている。」
女性レ 「それなら、なぜそんな提案を前回の総選挙の際にしたのか? そして、後になってから『それはコストがかかる』なんて言うのか?」
党首 「批判するのは簡単だ。」
女性レ 「よく熟考した提案ではなかったということか?」
党首 「食品の詳細情報の表示を義務付けるなんて話は、野菜や果物といった原材料なら簡単だが、加工品となると難しくなる。私としては、食品業界により大きな責任を持ってほしいと思っている。すべてが政治的な決定を必要とするわけではない。」
女性レ 「結局、熟考せずに軽はずみで提案して、後で撤回したということか?」
党首 「社会の望ましいあり方について様々な提案をすることは可能だが、だからといってすべてに政治的な決定が必要だということにはならない。業界が責任を負うべき。」
女性レ 「でも、食品情報の表示という問題がとても重要だと考える有権者の中には『騙された』と思う人もいるかもしれない。」
党首 「政治的な決定を行ったか、否か、にかかわらず『騙された』と感じる人はいるだろう。人々は一般に、すべての問題を政治が解決してくれるなどという過信を抱きがちだ。この問題もその良い例だ。企業の中には、生産地表示や児童労働の禁止、環境への負荷に関して、自分から進んで行動を起こすものもある・・・・・・」
男性レ 「しかし、現状は、すべての企業が自主的に情報を開示しているという理想から全く遠い。」
党首 「でも、消費者はそのような企業を選んで商品を買うだろう。消費者の力というのはそれだけ大きいということを私は指摘したい。」
男性レ 「しかし、2006年総選挙のときの中央党の公約は、ふざけたものだったということか?」
党首 「私たちがマニフェストに書いている約束は、必ずしも政治的な決定を通して実行するものであるとは限らない。」(開き直ってきた!)
女性レ 「しかし、あなた方は『生産地の表示を義務付ける』と言っていたんだよ。公約は公約。実際の政策はそれとは異なるということか? 私の理解に間違いがあるか?」
党首 「私が望んでいるのは、食品業界が自ら責任を果たすこと。」
女性レ 「中央党の言った『義務付ける』というのは、どういう意味なのか?」
党首 「イャー」(首を傾げる)「業界は消費者に対する責任を果たすべきだ。」(しどろもどろ)
女性レ 「つまり『義務付ける』なんていうのは、何の意味も持っていないということなんだね。」
党首 「『義務付ける』というのは、私たちが業界側にそうしてほしいと願っていたということ。」
女性レ 「でも、それだと『義務付ける』じゃなくて『推奨する』ということに過ぎないのでは?」
党首 「消費者にとって重要なのは、もちろん生産地などの詳細情報だが、政府が様々なルールや規制を設けて生産者に課してしまえば、コストがかかるから、食品価格の高騰をもたらしてしまう。消費者がその余分なコストを負担する用意があるのか、それが問題だ。」(そんな言い訳あるかよ!)
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中央党は、連立政権内において環境大臣や農林水産大臣、産業大臣のポストを有しているため、それぞれの政策領域の話題が続く。党首であるモウド・オーロフソン自身も副首相であり、産業大臣も兼ねているのだ。
再びシビアな状況がやってきた。ジャーナリストが仕掛けた待ち伏せ攻撃にまんまと引っかかったかのようだ。それは、幼稚な極右政党のスウェーデン民主党の話題となったときだった。現在のところ、社会民主党を中心とする左派ブロック(赤緑連合)と保守党を中心とする右派ブロック(極右という意味ではなく保守という意味)は支持が伯仲しているが、どちらも過半数を獲るのが難しいと考えられている。
そのため、もしスウェーデン民主党という極右政党が議席を獲得すれば、キャスティング・ボードを握る立場になり、左派ブロックと右派ブロックのどちらが政権を獲るにせよ、政策運営に対して大きな影響力を行使する恐れさえある。それを阻止する方法は、どこかの党がブロックの垣根を越えて、相手ブロックと提携することだ。
社会民主党の党首モナ・サリーンは、もし自分たちが政権を奪還したものの過半数を獲れなかった場合は、右派ブロックの中央党か自由党と連携したい、と発言していた。さて、この提案に対して、中央党はどう考えているのか? しかし問題は、社会民主党が既に左党(旧共産党)と連立樹立を約束していたことだった。このことが尋問の中で話題に上った。
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女性レ 「社会民主党のモナ・サリーンは、自由党もしくはあなた方の中央党と提携したいと言っているが、どう答える?」
党首 「共産主義者(現・左党のこと)が連立を組んでいる政権に私が加担するなんて、絶対に考えられない。」(スタジオの観客(中央党の応援団)が拍手喝采)
女性レ 「しかし、左党の党首は『自分は共産主義者ではない』と言っているが?」
党首 「いゃ、それは無理に正体を隠しているだけだよ。それに党員の中にはそういう人も多い。」
旧共産党を含む左派ブロックとの連携はありえない!ときっぱり言った中央党党首。強い決断力を示せて、誇らしげだった。しかし、その数分後に伏兵が待ち構えていた。産業大臣である彼女が担当していたボルボ売却の話題だ。
女性レ 「自動車メーカーのボルボが中国資本の傘下に入ったことをどう思うか?」
党首 「経済状況を考えたら、それがベストな解決策だったと思う。GMは売却したがっていたし、買い手もたくさんいたわけではなかったから。ボルボがこれから中国市場に進出していくための良いチャンスだ。それによって、スウェーデンの雇用も維持される。」
女性レ 「貿易相手として中国をどう考えているか?」
党首 「大切な貿易相手国だ。中国だけでなく、アジアの国々全部が重要。ヨーロッパやアメリカよりも急速に成長しているから。」
男性レ 「しかし、独裁国と取引を行うことを倫理的に擁護できるのか?」
女性レ 「さっき共産主義者の話題が出たが、中国こそ共産主義国では?」
党首 「私たちがやろうとしているのは、中国が望ましい方向に発展するように影響力を行使すること。中国政府とは、人権問題や閉鎖的社会の開放について議論している。」(焦ってきた)
男性レ 「中国の政治的体制をどう見ているか?」
党首 「私がこれまで見てきたどの国よりも資本主義的な国で、非常に特異的だ。イノベーションに非常に興味を持っており、私が出演した現地のトークショーでも話題になった。」
女性レ 「しかし、民主主義に関しては、何か良い方向に動いているという兆候はあるのか?」
党首 「いや。民主主義の進行という点では、全く停滞している。共産党を批判することは非常にデリケートな問題だ。しかし、イノベーションの話となると、オープンな議論ができる。」
男性レ 「どれだけの数の中国人が裁判を受けることなく、強制収容所に入れられているか、ご存知か?」
党首 「正確には分からないが、たくさんだろう。」
男性レ 「NGOのアムネスティーによると19万人だという。」
党首 「でも、そのことについては、私たちが中国政府と対話を持つたびに話題にしている。」
女性レ 「それが何か効果をもたらしているか?」
党首 「いや。しかし、オープンな社会がいかに望ましいかは、常に指摘している。」
男性レ 「中国ほど死刑を数多く執行している国はないが、毎年の数はご存知か?」
党首 「いや、覚えていない。」
男性レ 「アムネスティーによると1万人に及ぶという。」
党首 「確かにそれは非常に由々しきことだ。しかし、現状を変えるためには対話といった方法もある。」
女性レ 「では、北朝鮮とも大規模な貿易を行う考えもあるか?」
党首 「いや、ない。考えられない。」
女性レ 「どうして、考えられないこと?」
党首 「中国とは、昔から長い付き合いがある。北朝鮮は、中国よりもさらに極端な国だ。」
女性レ 「つまり、倫理的に受容できる限界が存在する、ということなんだね。」
このあとは、中国の新興中産階級が国外の社会にも目を向け始め、スウェーデンへの留学生も増えているから、開かれた民主主義社会の良さを理解するようになり、長い目で見ればよい方向に向かうだろう、という話になっていくが、中央党党首はタジタジだった。まさか「旧共産党とは組まない」と発言した数分後に、中国との商取引の話題をされるとは思ってもいなかっただろう。
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上に紹介した「尋問」はほんの一例に過ぎないが、選挙のたびに恒例で行われるヒアリング(尋問)がいかに厳しいものかを示すために、紹介してみた。
スウェーデンの選挙戦では、大手メディアが各党の党首を一人ずつ招いて「ヒアリング」(utfrågning)を行う。ヒアリング、と書くと聞こえはソフトだが、実際はそんな生易しいものではない。むしろ「尋問」といった適切だろう。
連立政権を構成する与党であれば、4年間の政策の責任を様々な角度から検証され「なぜこうしたのか?」「なぜこのような結果になったのか?」「誰の責任なのか?」と厳しく追及される。前回の選挙で公約に掲げたにもかかわらず、実行していなければ、その説明責任も求められる。
また、与野党ともに、現在の選挙戦で掲げている公約をしらみつぶしにチェックされ、少しでもアラがあれば、厳しい追及を受ける。党首がうまく答えられなければ、有権者には信頼するに足りない党というイメージが付くし、「尋問」のあとで提案を変更するといった事態にもなりうる。
既に8月途中には、公共放送であるスウェーデン・ラジオが早朝のリスナーの多い時間帯を使って、一日ごとに党首を招いて「尋問」を行った。また、8月下旬には同じスウェーデン・ラジオの中でも、若者向けの番組を提供しているチャンネルが、若手ジャーナリストによる若者的視点から党首インタビューを行い、政策の検証を行った。そして、現在は、公共放送であるスウェーデン・テレビが夜8時の視聴者の多い時間帯を使って「ヒアリング」いや「尋問」をライブで行っている。TV4も来週、同様の尋問番組を生放送する。
その「尋問官」であるジャーナリストは、かなり綿密な準備をしている。そして、厳しい質問を1時間にわたって集中的に浴びせる。だから、党首の中には途中でしどろもどろになる人もいる。先日は、中央党(現・中道保守政権を構成)の女性党首モウド・オーロフソンがスタジオに招かれ尋問を受けたが、まさにそういう事態となった。
スウェーデン・テレビのジャーナリストは男性レポーター(以下、男性レ)と女性レポーター(以下、女性レ)の2人。両方ともベテランだ。開始早々から、シビアな状況となった。
女性レ 「ようこそ、モウド・オーロフソン。」
党首 「ありがとう」
男性レ 「口にする食材が何か、そしてどこから来たかという情報は、あなたにとってどれだけ重要か?」
党首 「とても重要だ。だから、私は地元で生産された食材や、生産者が誰か、どれだけの距離を輸送されてきたかが分かる食材を買うようにしている。」
男性レ 「2006年秋の総選挙では、あなたの中央党はすべての食品の生産地表示を義務付けることを提案した。しかし、それが実行されることはなかった。どうしてか?」
党首 「それは費用が高くつくからだ。生産者や食品の中身、環境への影響といった詳細な情報を表示しようと思えばコストがかかる。むしろ、生産者が自ら進んで情報提供するのが良いと思う。実際に多くの企業がそうしている。」
女性レ 「それなら、なぜそんな提案を前回の総選挙の際にしたのか? そして、後になってから『それはコストがかかる』なんて言うのか?」
党首 「批判するのは簡単だ。」
女性レ 「よく熟考した提案ではなかったということか?」
党首 「食品の詳細情報の表示を義務付けるなんて話は、野菜や果物といった原材料なら簡単だが、加工品となると難しくなる。私としては、食品業界により大きな責任を持ってほしいと思っている。すべてが政治的な決定を必要とするわけではない。」
女性レ 「結局、熟考せずに軽はずみで提案して、後で撤回したということか?」
党首 「社会の望ましいあり方について様々な提案をすることは可能だが、だからといってすべてに政治的な決定が必要だということにはならない。業界が責任を負うべき。」
女性レ 「でも、食品情報の表示という問題がとても重要だと考える有権者の中には『騙された』と思う人もいるかもしれない。」
党首 「政治的な決定を行ったか、否か、にかかわらず『騙された』と感じる人はいるだろう。人々は一般に、すべての問題を政治が解決してくれるなどという過信を抱きがちだ。この問題もその良い例だ。企業の中には、生産地表示や児童労働の禁止、環境への負荷に関して、自分から進んで行動を起こすものもある・・・・・・」
男性レ 「しかし、現状は、すべての企業が自主的に情報を開示しているという理想から全く遠い。」
党首 「でも、消費者はそのような企業を選んで商品を買うだろう。消費者の力というのはそれだけ大きいということを私は指摘したい。」
男性レ 「しかし、2006年総選挙のときの中央党の公約は、ふざけたものだったということか?」
党首 「私たちがマニフェストに書いている約束は、必ずしも政治的な決定を通して実行するものであるとは限らない。」(開き直ってきた!)
女性レ 「しかし、あなた方は『生産地の表示を義務付ける』と言っていたんだよ。公約は公約。実際の政策はそれとは異なるということか? 私の理解に間違いがあるか?」
党首 「私が望んでいるのは、食品業界が自ら責任を果たすこと。」
女性レ 「中央党の言った『義務付ける』というのは、どういう意味なのか?」
党首 「イャー」(首を傾げる)「業界は消費者に対する責任を果たすべきだ。」(しどろもどろ)
女性レ 「つまり『義務付ける』なんていうのは、何の意味も持っていないということなんだね。」
党首 「『義務付ける』というのは、私たちが業界側にそうしてほしいと願っていたということ。」
女性レ 「でも、それだと『義務付ける』じゃなくて『推奨する』ということに過ぎないのでは?」
党首 「消費者にとって重要なのは、もちろん生産地などの詳細情報だが、政府が様々なルールや規制を設けて生産者に課してしまえば、コストがかかるから、食品価格の高騰をもたらしてしまう。消費者がその余分なコストを負担する用意があるのか、それが問題だ。」(そんな言い訳あるかよ!)
中央党は、連立政権内において環境大臣や農林水産大臣、産業大臣のポストを有しているため、それぞれの政策領域の話題が続く。党首であるモウド・オーロフソン自身も副首相であり、産業大臣も兼ねているのだ。
再びシビアな状況がやってきた。ジャーナリストが仕掛けた待ち伏せ攻撃にまんまと引っかかったかのようだ。それは、幼稚な極右政党のスウェーデン民主党の話題となったときだった。現在のところ、社会民主党を中心とする左派ブロック(赤緑連合)と保守党を中心とする右派ブロック(極右という意味ではなく保守という意味)は支持が伯仲しているが、どちらも過半数を獲るのが難しいと考えられている。
そのため、もしスウェーデン民主党という極右政党が議席を獲得すれば、キャスティング・ボードを握る立場になり、左派ブロックと右派ブロックのどちらが政権を獲るにせよ、政策運営に対して大きな影響力を行使する恐れさえある。それを阻止する方法は、どこかの党がブロックの垣根を越えて、相手ブロックと提携することだ。
社会民主党の党首モナ・サリーンは、もし自分たちが政権を奪還したものの過半数を獲れなかった場合は、右派ブロックの中央党か自由党と連携したい、と発言していた。さて、この提案に対して、中央党はどう考えているのか? しかし問題は、社会民主党が既に左党(旧共産党)と連立樹立を約束していたことだった。このことが尋問の中で話題に上った。
女性レ 「社会民主党のモナ・サリーンは、自由党もしくはあなた方の中央党と提携したいと言っているが、どう答える?」
党首 「共産主義者(現・左党のこと)が連立を組んでいる政権に私が加担するなんて、絶対に考えられない。」(スタジオの観客(中央党の応援団)が拍手喝采)
女性レ 「しかし、左党の党首は『自分は共産主義者ではない』と言っているが?」
党首 「いゃ、それは無理に正体を隠しているだけだよ。それに党員の中にはそういう人も多い。」
旧共産党を含む左派ブロックとの連携はありえない!ときっぱり言った中央党党首。強い決断力を示せて、誇らしげだった。しかし、その数分後に伏兵が待ち構えていた。産業大臣である彼女が担当していたボルボ売却の話題だ。
女性レ 「自動車メーカーのボルボが中国資本の傘下に入ったことをどう思うか?」
党首 「経済状況を考えたら、それがベストな解決策だったと思う。GMは売却したがっていたし、買い手もたくさんいたわけではなかったから。ボルボがこれから中国市場に進出していくための良いチャンスだ。それによって、スウェーデンの雇用も維持される。」
女性レ 「貿易相手として中国をどう考えているか?」
党首 「大切な貿易相手国だ。中国だけでなく、アジアの国々全部が重要。ヨーロッパやアメリカよりも急速に成長しているから。」
男性レ 「しかし、独裁国と取引を行うことを倫理的に擁護できるのか?」
女性レ 「さっき共産主義者の話題が出たが、中国こそ共産主義国では?」
党首 「私たちがやろうとしているのは、中国が望ましい方向に発展するように影響力を行使すること。中国政府とは、人権問題や閉鎖的社会の開放について議論している。」(焦ってきた)
男性レ 「中国の政治的体制をどう見ているか?」
党首 「私がこれまで見てきたどの国よりも資本主義的な国で、非常に特異的だ。イノベーションに非常に興味を持っており、私が出演した現地のトークショーでも話題になった。」
女性レ 「しかし、民主主義に関しては、何か良い方向に動いているという兆候はあるのか?」
党首 「いや。民主主義の進行という点では、全く停滞している。共産党を批判することは非常にデリケートな問題だ。しかし、イノベーションの話となると、オープンな議論ができる。」
男性レ 「どれだけの数の中国人が裁判を受けることなく、強制収容所に入れられているか、ご存知か?」
党首 「正確には分からないが、たくさんだろう。」
男性レ 「NGOのアムネスティーによると19万人だという。」
党首 「でも、そのことについては、私たちが中国政府と対話を持つたびに話題にしている。」
女性レ 「それが何か効果をもたらしているか?」
党首 「いや。しかし、オープンな社会がいかに望ましいかは、常に指摘している。」
男性レ 「中国ほど死刑を数多く執行している国はないが、毎年の数はご存知か?」
党首 「いや、覚えていない。」
男性レ 「アムネスティーによると1万人に及ぶという。」
党首 「確かにそれは非常に由々しきことだ。しかし、現状を変えるためには対話といった方法もある。」
女性レ 「では、北朝鮮とも大規模な貿易を行う考えもあるか?」
党首 「いや、ない。考えられない。」
女性レ 「どうして、考えられないこと?」
党首 「中国とは、昔から長い付き合いがある。北朝鮮は、中国よりもさらに極端な国だ。」
女性レ 「つまり、倫理的に受容できる限界が存在する、ということなんだね。」
このあとは、中国の新興中産階級が国外の社会にも目を向け始め、スウェーデンへの留学生も増えているから、開かれた民主主義社会の良さを理解するようになり、長い目で見ればよい方向に向かうだろう、という話になっていくが、中央党党首はタジタジだった。まさか「旧共産党とは組まない」と発言した数分後に、中国との商取引の話題をされるとは思ってもいなかっただろう。
上に紹介した「尋問」はほんの一例に過ぎないが、選挙のたびに恒例で行われるヒアリング(尋問)がいかに厳しいものかを示すために、紹介してみた。
暖かいエール、ありがとうございます。
Xperiaシリーズを近いうちに買おうと思っていたところでした。
>どこに投票して良いか全く分からないので無責任にならないように投票しない予定です。
よく考えて決めてくださいね。ちなみに、ここでは中央党について書きましたが、何も中央党が嫌いだから、というわけではありません。中央党も面白い提案や政策を持っています。
>モウドの画像、お借りしました。
OKです。紹介ありがとうございます。
>Anyway this kind of journalis reminded me of Mickel Blomkvist by Steig Larrson...
本を全部読んでいないので、うまく答えられませんが、そうかもしれません。ジャーナリストの質という点では、日本は大きく後れを取っているのではないでしょうか?
>来週は立候補者が学校に来るようなので、理解を深めてから参加したいと思います。
ここ1ヶ月、各党の党首・議員や関係者は大忙しです。私がSFIの次の段階のコースを勉強していたとき(2002年)にも、Komvuxに今やウプサラ県の県知事であるAnders BjorckがModeraternaの説明をしに来たことがあります。しかし、当時のMは社会保障削減を全面的に押し出しており、Komvuxで勉強していた看護婦や医療スタッフは「現場の声が分かっていない」と強く反発し、大きな議論になったのを覚えています。
今日の私のブログでYoshiさんのブログ宣伝してあります。
黙って借りてしまい、すみません。
佐藤さんの詳細な情報、的確な説明、それにとても熱のこもった思いなど、とても素晴らしいサイトだと思います。
いつもそれを言おうと思っていました。これからもがんばって続けてください。応援しています。
選挙の情報やそれ以外の活動も勉強になりますし、楽しみにしています。
来週は立候補者が学校に来るようなので、理解を深めてから参加したいと思います。
スウェーデン経済&政治をスウェーデン語で理解できる段階にまだないので、いつも参考にさせて頂いています。
今後も拝見させて頂きます。