チェルノブイリ原発事故の際にスウェーデンが受けた被害について先日触れたが、汚染された食品を食べることによる内部被曝だけに触れ、体外から受ける放射線、つまり外部被曝については書かなかった。
では、外部被曝はどうだったのか? 事故後に、スウェーデン各地では地上に落下した放射性物質の量が、事故直後における航空機によるサンプル収集や、その後の地上における土壌検査など様々な調査によって推計された。そのデータをもとにした推計によると、チェルノブイリ事故によって放出された放射能のために、事故から1年の間に1ミリシーベルト以上の放射線を受けた人口は約40000人、そのうち、2ミリシーベルト以上の放射線を受けた人の数は1000人弱だったという。一方、人口の大部分(7割)は最初の1年間に受けた放射線量が0.04ミリシーベルトに満たなかったという。
ちなみに、スウェーデン政府にしろ日本政府にしろ、自然放射線と医療行為以外によって一般の人々が受ける放射線の限度は年間1ミリシーベルトを目安としている(おそらく内部被曝も外部被曝も含めてのようだ)。
自然放射線とは、自然界に微量に存在する放射性物質から日々受ける放射線のことであり、この水準は日本では平均1.5ミリシーベルト、世界平均は2.4ミリシーベルト、そして、実はスウェーデンの平均は少し高く、3.0ミリシーベルトとなっている(放射性のラドンの濃度が少し高いため)。また、スウェーデンの放射線安全庁によるとこれとは別に医療行為によって受ける放射線の平均は年間0.7ミリシーベルトとのことだ。
日本経済新聞 2011年4月3日付より
ただ、いろいろな基準があり、20ミリシーベルトでも大丈夫だとか、100ミリシーベルトでも問題がない、との説もある。原発作業員に対しては今回の事故を受けて基準が引き上げられて250ミリシーベルトとされることになった。
では、それに伴ってどれだけのリスクが発生するかというと、スウェーデンの防衛研究所の資料には「放射線量が比較的少ない場合、放射線を受けてからその後少なくとも50年以内にガンが発症する確率は1シーベルト(=1000ミリシーベルト)あたり5%」と書かれている。
この資料では、一つの計算例としてスウェーデンの人口900万人が、10ミリシーベルト(=0.01シーベルト)の放射線を被曝した場合、900万人×5%×0.01=4500人がその後少なくとも50年以内にガンを発症すると示されている(つまり、発症率は0.05%)。もし、被曝量が20ミリシーベルトとなれば、発症率はその2倍の0.1%となるということだ。
同様の計算は、柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会が発表している「私たちの見解2」でもなされている。
ちなみに、上記の「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」の見解には、普段良く耳にする「毎時マイクロシーベルト」という単位から累積被曝量を計算する例も分かりやすく書いてある。例えば、現在、福島市の放射線量が毎時2.5マイクロシーベルトであったとすると、その状態で1年間居住したときの年間被曝量は22ミリシーベルト(22000μSv=2.5μSv/h×24h×365日)と計算できるという。
だから、この場合、年間の被曝量を1ミリシーベルトに抑えようと思えば、17日でオーバーしてしまう。(2.5μSv/h×24h×17日=1020μSv)
※ ※ お知らせ ※ ※
2012年1月30日発売『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』
スウェーデンの防衛研究所が農業庁やスウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁と共同でまとめ、2002年に発行した「放射性物質が降下した際の食品生産について」という報告書の翻訳です。
チェルノブイリ原発事故のあとにスウェーデンが被った被害やその影響、農業・畜産分野で取られた対策や、放射能汚染を抑えるための実験、放射能に関する基礎知識、将来の事故に備えた災害対策の整備や、実際に事故が起きたときの対策の講じ方をまとめたものです。
詳しくは、こちらをご覧ください。
では、外部被曝はどうだったのか? 事故後に、スウェーデン各地では地上に落下した放射性物質の量が、事故直後における航空機によるサンプル収集や、その後の地上における土壌検査など様々な調査によって推計された。そのデータをもとにした推計によると、チェルノブイリ事故によって放出された放射能のために、事故から1年の間に1ミリシーベルト以上の放射線を受けた人口は約40000人、そのうち、2ミリシーベルト以上の放射線を受けた人の数は1000人弱だったという。一方、人口の大部分(7割)は最初の1年間に受けた放射線量が0.04ミリシーベルトに満たなかったという。
ちなみに、スウェーデン政府にしろ日本政府にしろ、自然放射線と医療行為以外によって一般の人々が受ける放射線の限度は年間1ミリシーベルトを目安としている(おそらく内部被曝も外部被曝も含めてのようだ)。
自然放射線とは、自然界に微量に存在する放射性物質から日々受ける放射線のことであり、この水準は日本では平均1.5ミリシーベルト、世界平均は2.4ミリシーベルト、そして、実はスウェーデンの平均は少し高く、3.0ミリシーベルトとなっている(放射性のラドンの濃度が少し高いため)。また、スウェーデンの放射線安全庁によるとこれとは別に医療行為によって受ける放射線の平均は年間0.7ミリシーベルトとのことだ。
日本経済新聞 2011年4月3日付より
ただ、いろいろな基準があり、20ミリシーベルトでも大丈夫だとか、100ミリシーベルトでも問題がない、との説もある。原発作業員に対しては今回の事故を受けて基準が引き上げられて250ミリシーベルトとされることになった。
では、それに伴ってどれだけのリスクが発生するかというと、スウェーデンの防衛研究所の資料には「放射線量が比較的少ない場合、放射線を受けてからその後少なくとも50年以内にガンが発症する確率は1シーベルト(=1000ミリシーベルト)あたり5%」と書かれている。
この資料では、一つの計算例としてスウェーデンの人口900万人が、10ミリシーベルト(=0.01シーベルト)の放射線を被曝した場合、900万人×5%×0.01=4500人がその後少なくとも50年以内にガンを発症すると示されている(つまり、発症率は0.05%)。もし、被曝量が20ミリシーベルトとなれば、発症率はその2倍の0.1%となるということだ。
同様の計算は、柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会が発表している「私たちの見解2」でもなされている。
ちなみに、上記の「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」の見解には、普段良く耳にする「毎時マイクロシーベルト」という単位から累積被曝量を計算する例も分かりやすく書いてある。例えば、現在、福島市の放射線量が毎時2.5マイクロシーベルトであったとすると、その状態で1年間居住したときの年間被曝量は22ミリシーベルト(22000μSv=2.5μSv/h×24h×365日)と計算できるという。
だから、この場合、年間の被曝量を1ミリシーベルトに抑えようと思えば、17日でオーバーしてしまう。(2.5μSv/h×24h×17日=1020μSv)
2012年1月30日発売『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』
スウェーデンの防衛研究所が農業庁やスウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁と共同でまとめ、2002年に発行した「放射性物質が降下した際の食品生産について」という報告書の翻訳です。
チェルノブイリ原発事故のあとにスウェーデンが被った被害やその影響、農業・畜産分野で取られた対策や、放射能汚染を抑えるための実験、放射能に関する基礎知識、将来の事故に備えた災害対策の整備や、実際に事故が起きたときの対策の講じ方をまとめたものです。
詳しくは、こちらをご覧ください。