スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

放射能汚染の際の避難の判断基準 ・ 気象シミュレーション

2011-04-07 00:33:51 | コラム
日本政府は原発の周囲20kmまでの強制退避と30kmまでの自主退避・屋内避難を維持したままだが、原発の状況がいまだ深刻である中、水素爆発や格納容器の崩壊などによって大量の放射性物質が拡散するような最悪の事態に備えるべきだろう。風向き次第では遠くまで飛散する可能性がある。

アメリカもスウェーデンも80km以内からの退避を勧告しているし、スウェーデンが一時は東京を含む250km圏内にいる自国民(40歳以下)に対してヨウ素錠剤を服用するよう呼び掛けたことからも分かるように、風向きや天候次第ではそれだけ広い範囲が汚染される可能性もある。(スウェーデンは現在はヨウ素錠剤を服用する必要はないとしている。ヨウ素の半減期が2回以上過ぎたためである)

行政機関からの情報やアドバイスに対する信頼は低いものの、かといって各個人が状況を判断して行動しようにも情報が乏しく、判断も難しいが、スウェーデン国立スペース物理研究所の山内正敏氏が、分かりやすいアドバイスをネット上で行っている(更新を重ねすでに第3版!)。
現在サーバーがダウンしているようだが、cacheはここ

以下はその一部。(Svとは、人体が受ける放射線量を示すシーベルト)
【脱出基準】

(1) 居住地近くでの放射線濃度が1000マイクロSv/時(=1ミリSv/時)に達したら、緊急脱出しなければならない = 赤信号。ダスト濃度が 5000 Bq/m3 に達した場合も緊急脱出。

(2) 居住地近くでの放射線濃度が100マイクロSv/時(=0.1ミリSv/時)に達したら、脱出の準備を始めた方が良い = 黄信号。

(3) 妊婦や小児の場合、居住地近くでの放射線濃度が300マイクロSv/時(=0.3ミリSv/時)に達するか、ダスト濃度が 500 Bq/m3 に達したら、緊急脱出しなければならない = 赤信号。

(4) 妊婦(妊娠かどうか分からない人を含めて)や小児の場合、居住地近くでの放射線濃度が30マイクロSv/時(=0.03ミリSv/時)に達するか、ダスト濃度が 50 Bq/m3 に達したら、脱出の準備を始めた方が良い = 黄信号。

(12) 現在、日変化の最低値が15マイクロSv/時(子供や妊婦なら5マイクロSv/時)ならば、早めに脱出すべき
 → 居住地近くでの値が急上昇した場合でも、普通の人で3~10マイクロSv/時、妊婦や子供で1~3マイクロSv/時なら、それが10日以上継続しない限り安心して良い

【室内退避基準】(無理やり居住地から脱出する必要は余りありません)

(6) もしも原発の近くで50ミリSv/時を超えたら風下100km以内の人は緊急に屋内(できればコンクリート製)に退避し、100km以上でも近くの放射能値情報に随時注意する = 赤信号。

(7) もしも原発の場所で急に5ミリSv/時以上の変動が見られたら、風下100km以内の人はなるべく屋内(できればコンクリート製)に退避し、100km以上でも近くの放射能値に随時注意する = 黄信号。

(9) もしも原発サイトで何らかの爆発(水蒸気爆発や水素爆発)があった場合、半径100km以内の人は緊急に屋内(できればコンクリート製)に退避し、100km以上でも近くの放射能値情報に随時注意する = 赤信号。


(詳細については、山内氏のサイトをご覧ください。ここでは、日本の行政当局によるずさんな情報提供・データ収集体制や、複数の異なる見方や予測が公表されることを好まず『一元性』にこだわる官僚主義などを批判しているが、まさにその通りだと思う。様々なデータや相反する予測があってもできる限りそれを公表して(根拠などの参考情報を付けて)、それをもとに様々な専門家や一般の人々に自分たちで判断させるべきではないかと思う。受験勉強とは違って、正しい答えが一つという訳ではないのだから。)


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気象シミュレーションとしては、ノルウェーの大気研究所(Norwegian Institute for Air Research (NILU))が綺麗なグラフィックを提供している。これはノルウェー気象庁が入手したデータを元に作られているようだが、ノルウェー気象庁といえば、昨年アイスランドの火山が噴火し、ヨーロッパの航空網がほぼ麻痺した際にも、同様のグラフィックを作成して、火山灰の流れの予測を提供していた。

例えば、地表から上空100mまでのセシウム-137の濃度はこれ