ふぶきの部屋

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韓国史劇風小説「天皇の母」130(フィクションの秋)

2013-09-30 07:00:00 | 小説「天皇の母」121-140

マサコ懐妊の報道は、お祝いムード・・・というよりは、粛々と淡々と行われた。

4月16日、宮内庁の一室に入ったフルカワ東宮大夫は無表情で、むしろ

ぴりぴりしたムードで、それを察した記者達も言葉をかけるのをためらった。

皇太子妃殿下におかせられましては、ご懐妊の可能性が出てまいりました

はっきりと「懐妊した」ではなく「可能性」と報じた所に、フルカワ以下東宮職の

ぎりぎりの選択があったのだ。

もし、また前回のような事になったら・・・・それを思うと、本当は生まれるまで発表したく

ない程だ。隠し通せるものなら隠したい。そうでないと。

フルカワの脳裏に、流産時のマサコの荒れっぷりがよみがえって来て、思わず

ぶるぶると体を震わせる。

皆様には、静かに、ひたすら静かにお見守り頂きたく」

両陛下からお言葉はあったのですか」

・・・・天皇陛下からは「それはよかった。大事にするように」と、皇后陛下からは

「ようございましたね。どうぞお大切に」との言葉を賜りました」

そして世間では一斉に号外出て、「ええーっついに」的な雰囲気の中、

それを「全国民が祝福している」とマスコミは報道したのだった。

 

やったわ。本当にやったわよ。まーちゃん。ありがとう」

東宮御所にかけつけたユミコは思わず娘を抱きしめて言った。

「長かったわ。今度こそきっと大丈夫よ」

つわりで気持ち悪いんだけど

マサコは不機嫌な様子で言った。今日は朝から食事もろくにとらず横になっている。

いつもなら女官が注意しにくるところだが、何と言っても「妊婦様」になったので

誰も何も言わない。

むしろ、腫れ物に触るような態度で、マサコにすればその態度が面白かった。

「妊娠ってちっとも楽しくないわ。幸せなんて嘘。気持ち悪いし、お腹すくし」

何を言ってるの。全ては赤ちゃんの為なんですから

ユミコはうきうきしながらテーブルの上のカタログを見つけた。

これなあに?」

ああ・・タカマドノミヤ家から届いたマタニティウエアのカタログよ。フランス製の」

「まあ、末端宮家のくせに随分すり寄るじゃないの」

お父様にお世話になっているからじゃないの?でも、こういうものを贈って

来たのはここだけで、他の宮家は知らんぷりなのよ」

マサコは憮然とした顔になる。

両陛下だってあんなに「みんなが待ってるからね」なんて言っておいて

いざ妊娠したと知ったらそっけないもんよ。何なの?あの態度。私は世継ぎを

産んであげるのに」

マサコは先年、天皇の発した「みんなが待っているからね」と言われた恨みを

忘れてはいなかった。

結婚して以来、ひたすら待ち望まれていたもの。それは「子供」だ。

こっちは少しも欲しいと思わないのに、産め産めとまるで子産みマシーンのように。

だから必死に不妊治療してやっと妊娠したっていうのに、「よかった」?「お大切に」?

それしか言葉がないのか。

あの発表のあと、ノリノミヤの誕生日でみんな集まったんだけど、そこでも

あまり・・話題にならなかったわ」

そりゃあ、前の事があるから。さすがに遠慮したんでしょう」

ユミコはマサコ程恨み節に浸っているわけではないので、軽く流す。

こうなったら絶対に男の子を産みなさいよ。ツツミ先生だから大丈夫だとは

思うわ。でも、あなたも祈り続けるのよ」

せっかく妊娠したのに、今度は性別でプレッシャー?」

母親だからこそ言うんじゃないの。私だって3人子供を産んで育ててるけど

男の子じゃないって随分責められたわ。やれエガシラの家は女腹だの

子無しの家系じゃないのかって・・・そりゃあひどい事を言われたものよ。

だから、絶対に男の子よ。将来の天皇を産みなさい。そしたら全て

うまくいくわ」

「うまく・・・・

ユミコの「うまくいく」という意味は何となく分かる。

それは皇太子との間に吹きすさぶ隙間風の事だ。

最近になって、マサコはこの結婚は一体誰の為だったのかと思う事がある。

「皇太子と付き合えば万事うまくいく」

「皇太子と結婚すれば必ず幸せになれる」

そう言ったのは父だ。

信じたのは自分。でも、妊娠した現在すら、自分が幸せだと思う事が出来ない。

なのに今度は「子供を産めば万事うまくいく」というのか。

まーちゃん」

ユミコは言い聞かせるように顔を近づける。

皇太子妃という地位は将来の皇后よ。日本でもっとも位の高い女性よ。

誰でもなれるものじゃないわ。あなたの容姿・学歴・職歴があってこそよ。

でもそれだけじゃない。あなたが日本最高の地位に就く事が出来たのは、お父様の

御蔭なのよ。それを忘れちゃいけないわ。あなたが皇太子妃として盤石になれば、それだけ

お父様に恩返しが出来るのよ。わかる?」

ええ・・・」

「歴史を見てもわかる通り、ただの妃では大きな顔は出来ないわ。あなたが

皇位継承者の母になってこそ、私達は安定するのよ」

ええ・・わかってるわ。でも性別までは私だって」

大丈夫。万が一女の子だったにしても大丈夫なように手を打つつもりだから

 

ユミコの意味深な言葉通り。事はすぐに始まった。

マサコの妊娠を機に「女帝論」が勢いを増し始めたのだ。

皇太子妃に対する「男子出産のプレッシャー」を軽減する為という事で

国会議員をも巻き込んで「大がかりな女帝キャンペーン」が繰り広げられた。

どの雑誌も「皇位継承者減少に悩む皇室」への提言として女性天皇を認める

事を示唆する記事が増えた。

 

男系男子に限っている皇位継承について、マサコの懐妊と共に

「女帝論」が出るのは、天皇や側近からすれば心外であった。

全ては生まれてから考えればいい事なのに、なぜ・・・・という思いがぬぐえない。

 

夏に入ると、東宮御所が大々的に改築され始めた。

マサコの出産に向けて「幼児室」を作るというのだ。

元ノリノミヤの部屋を改装して、床を全部コルクにし、リノリウムを貼る。

2900万円だった。

宮内庁病院は出産に向け、病室を全面改装し、分娩室に行かなくても全て

すむように最新の機械を取りそろえた。

皇太子妃の初めての出産とはいえ、いささか度が過ぎているような印象を持つ。

 

やっぱりマサコには最高の環境で出産して欲しいんです」

夏の在る日。御所には東宮夫妻とアキシノノミヤ夫妻が招かれ、そこに

ノリノミヤも加わって夕食会が催されていた。

「子供部屋だって同じ気持ちです。やっぱり僕達の子供だから」

嬉々として饒舌な皇太子の笑顔に、みな沈黙した。

マサコは今まで辛い思いばかりしてきたんです。こんな時くらいは」

でもね

と皇后が口を挟む。

それは全部税金なんですよ。東宮御所は先年、莫大な費用をかけて改修したわね。

いくら子供が生まれるからといっても、全部コルクの床にするというのはやりすぎじゃない

かしら。サーヤが育った部屋が適当でないとは思えないけど」

だって古いでしょう?」

皇太子はちょっと怒った顔になる。

サーヤが生まれた時なんて、20何年前じゃないですか。古い古い。赤ちゃんが

生まれるのはやっぱり新しい部屋じゃないと」

部屋のよしあしではないでしょう

静かにアキシノノミヤが言う。

どんな部屋で生まれようと育とうと皇太子殿下のお子はお子ですから」

そりゃあそうだよ。他の宮家とは扱いが違うから。だからそれにふさわしい

形を作りたいんです。たかがコルクの床くらいでそこまで言われるのは心外です」

むくれた皇太子に、天皇は「そういう態度はよくない」と怒った。

我々皇族は税金で暮らしている。その事を忘れてはいけない」

「国家公務員って事でしょう?国家から支払われている給与だと思えば

使う事に何の罪悪感が必要でしょう」

マサコが堂々と口答えをしたので、ノリノミヤが「陛下に失礼ですよ」と止めた。

でも、マサコは

初めて子供を産むのに、部屋を綺麗にしたりする権利もないんですか」と

負けなかった。

権利じゃない。皇室は清貧が伝統なのだ」

セイヒンってなんですか?」

マサコの場違いな質問に思わず笑ったのはノリノミヤだった。

清貧というのは、清らかに貧しいと書くんですよ。妃殿下。

本当の贅沢と言うのはお金では買えないという事です。殿下のお子は

どんな環境に生まれても生まれながらの皇族であり、その血筋の尊い事に

変わりはないのです。だから殊更に華美にしなくてもいいと・・・・

コルクの床が華美だなんておかしいんじゃないですか?」

マサコはノリノミヤの助け舟には気づかなかったようで、さらに怒りを増大させた。

大理石の床にしたならともかく、コルクですよ。赤ちゃんがハイハイしても

転んでも平気なようにという親心じゃないですか。何でわかって下さらないの?」

泣きそうな雰囲気だったので、みな黙る。

皇太子はおろおろとして「そんなつもりじゃないんだよ。みんなが出来る事じゃ

ないからって意味だよ」となだめに入る。

ノリノミヤは呆れて「お兄様は毎月、妃殿下の健診にお付き合いされているそうですね。

何かご不安な事でもあるの?」

と嫌味を言った。

これからの男性は妻の出産や育児に協力する事が理想なんだよ」

皇太子は自慢げに言う。

それは頼もしいわね」と皇后がひきとり、ノリノミヤをにらみつける。

初めての出産や育児は不安なものですよ。幸い、アキシノノミヤ妃が先輩として

いるのですから、何でも聞くといいわね」

結構です。母に聞きますから

マサコはそっけなく言った。

オワダ家のお母様がしょっちゅう来てくれるので、僕も安心なんです」

無邪気な皇太子の言葉にその場は凍りつき、色を失ったのだった。


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10 コメント

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妊婦様 (千菊丸)
2013-09-30 11:31:04
2年くらい前に、ある某巨大掲示板まとめブログで、「妊婦様」なる存在を知りました。
確かに妊娠・出産って、それを体験した女性でないと辛さが解りませんが、「妊婦」であることを盾に、わがまま放題をするのはちょっと違うような気が・・

雅子様なら、「妊婦様」になってもおかしくはないだろうなぁと思いながら読んでおりましたけど、皇室の立場が小和田家よりも弱くなっているのは、やはりあの方が原因なのでしょうか?
感服です! (萩と月)
2013-09-30 11:47:11
こんにちは。今106を読ませていただいている所です。
…鳥肌たちました。
人間・皇室の葛藤がすごく鋭く描けていますね。
雅子さんの言う事のある面は現実を突いていますし
皇室ってなんだろうって改めて考えさせられます。
それと純粋にエンタメしてますよね(笑)
平岩弓枝とか好きなので嫁姑・兄嫁・小姑の相克場面は
下世話に楽しんでいます。

いやぁ、名作ですよ~!ただで読ませて頂くなんて申し訳ないです。
今後とも楽しみにしていますのでご自愛の上筆を振るって下さいませ。
Unknown (ゆきんこ)
2013-09-30 12:00:00
苦虫かみつぶしの天皇陛下、
娘より長男嫁に気を使う皇后陛下、
何かいうとにらまれるノリノミヤ、

口数が少なくなったアキシノミヤ、
何も言わないアキシノミヤ妃(その場にはおいでですよね?)、

マサコが以前のように炸裂しなくなったのは余裕からでしょうか。
恐ろしい! (ジュゴン)
2013-09-30 17:20:23
今回も、事実としか思えないくらいの出来映えに、逆にこんな会話でどすこは主張したのだなと思い、 ゾッとしてます。
Unknown (ふぶき)
2013-09-30 18:31:05
>千菊丸さま
一番は「夫」である皇太子が悪いんじゃ?
健診に毎回付き合って、まるで護衛みたいになっていたし。
そこまでやったら親も兄弟も何も言えないですよね。

>萩と月さま
ありがとうございます。褒めて頂いて嬉しい。また頑張って書きますのでよろしくお願いします。

>ゆきんこさま
「妊婦様」の余裕ですね。回りは「皇后陛下、マサコ様をいじめないで」とか言ってたし。
はじめまして (きい)
2013-09-30 22:55:49
はじめまして、いつも興味深く拝見しております。
マサコさまの妊娠ご出産というと、当時「非配偶者間の卵子提供」含め色々と話題だった某産科医がいる県で助産を学んでおりましたので、感慨深いものがあります。当時、まことしやかに一般の外来を断って某産科医のクリニックにやんごとない方が通っておられた、と噂になっておりました。
今は助産の仕事には携わっておりませんが、イクメンだか何だか知りませんが、仕事をそっちのけで「家族を大事にしたい」と産院等にいらっしゃるプレパパたちには疑問を覚えます。お仕事しなくとも誰かが稼いでくれるお金で妊娠維持と出産に育児まで…やんごとない方々の話題の筈が、あらら?生保不正受給と同じ表現に…不思議ですね。
フィクションに思えなくなる!? (PASTORA)
2013-09-30 23:26:47
毎回楽しみに読んでいます。
3日かけて過去のも読破してしまいました(笑)。おかげで職場で寝不足で(笑)。居眠りはダメですね(笑)。

読み進むうちに、果たしてこれはフィクションなのか、本当のことなのか、わからなくなります。
女性のことは女性作家が描くのが一番おもしろいものです。
豊かな語彙力で、感嘆いたしました。

皇室のことは一般に知られていることがあまりないだけに、こうして読みやすく描かれているとより知識が深まります。
昼ドラに (Emi~)
2013-10-01 00:27:52
設定変えて放映してもらいたいです(笑)貴族没落、復活と(笑)

でもまんまこの通りだと思いたいです。でもドラマも実際も何故悪役はやりたい放題でまわりは…。
時として正義は悪に押され好き勝手でこれは許す側も悪いと思うことが多々あります…

このシリーズの最終回が楽しみですがまだまだですね(笑)
名作です (ぴこ)
2013-10-01 12:59:20
 本当に名作です。萩と月様と同じです。
毎回楽しみにしてます。とても臨場感があります。
Unknown (ふぶき)
2013-10-01 18:35:48
>ジュゴンさま
多分・・・じゃないかなあと(笑)

>きいさま
そのお話、知ってます!事実ではないんですね。残念。
私もヨンジュナ出産の時、毎月産婦人科に行き、男性方が平気でフロアの椅子に座っているのを見て腹立たしさを感じました。イクメンっていうより、自己中ですよね。

>PASTORAさま
お疲れさまです(笑)そんなにまでして
読んで頂いて嬉しいです(涙)
これからもがんばって書きますね。

>Emi-さま
昼ドラ!!いいかも!!
昔「貞操問答」というドラマをやってましたが
そのノリで。

>ぴこさま
ありがとうございます。頑張って書きます。

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