12345・・・無限大  一粒の砂

「一粒の砂」の、たわごと。
無責任結構・ 中途半端・ちゃらんぽらん・ 出たとこ勝負、で参りましょう!

草いきれ

2007年08月09日 07時35分11秒 | Weblog

残日録より
清左衛門が、ひどい夏風で寝込んだ。よく気の付く嫁の心利いた看病のおかげで一命を取り留めたと、清左衛門は思っているのだが、死んだ妻の「喜和」がいたなら、ささやかなわがままもいえただろうという別の感想もあったと思った。

嫁に対する不満ではない、窮屈さを感じたのであった。手厚く扱われたことに、感謝こそすれ文句を言うのは筋違いではあるが、手厚い庇護が、連れ合いを失った孤独な老人の姿をくっきりと浮かび上がらせるのも事実だった。

 惣兵衛という「やもめで隠居」という共通項を持つ幼なじみと会った。
惣兵衛は女を囲ったという。「べつに女子がほしいとは思わん」と清左衛門が答えれば、惣兵衛は「・・・老いるのにははやいぞ」ともいう。

また、作者は、惣兵衛に「隠居などというものは、ただの厄介者にしか過ぎん。・・・妾宅を構えて、別に過ごせば、若夫婦にとっては、息抜きになる」、「・・・病気で倒れるのも、こっちの家で倒れたいと願っている。嫁に看病されるのは好かん」と言わせている。

 ・・・果たして・・・。病気で倒れたとき、あの若い妾が親身に看護してくれるかどうかは疑問だ、と清左衛門は思った。

しかし、惣兵衛も自分も、そういうことで足掻く歳になったのかと思ったのである。

 以上のことは、小生にとっても決して他人事ではない、もう既に、自分の身の上にも、ちゃんと降りかかって来ている。

 「嫁いらず観音」に願をかける人の気持ちが、切実に判るのである。