【なんてったって本阿弥さやか!】
なつかしのレトロ漫画の中で、私が愛した悪役ヒロインたちについて今回は言いたい放題…しようと思ったんだけど、愛がとまらず
「私が愛した漫画『YAWARA!』の悪役ヒロインたち」
に変えます。
違う漫画の悪役ヒロインは別記事で。
といっても実は子ども時代から好きだったのは最初に書くさやかさんだけで、もう一人はある程度心が成熟(あくまで私の中では、な)してから好きになりました。
というわけで、トップバッターは浦沢直樹さんの傑作『YAWARA!』で主人公・猪熊柔ちゃんの宿命のライバルであり裏の主人公だと私は信じている本阿弥さやかさん!
『YAWARA!』は柔道の天才・猪熊柔をめぐる重厚なスポーツ漫画であり、そしてなにより弱ってるときでも心から大笑いできるコメディ漫画であり、登場人物がそれぞれに成長してどんどん魅力的になる物語でもある。
連載していたのはなんと1989年から1992年ということで、バブル景気・男尊女卑・性的搾取上等の時代を反映している上にお色気必須の成年漫画雑誌での連載だったということで
「おいおい…」
な描写もありますが、根本は人間愛と努力、そして生きることへの賛歌…だと私は思ってるのでぜひぜひ皆さま読んでほしい。
バブル時代(?)は私も経験していないのでよく知らないのだけど、日本全体が成金状態だったため、全国が港区ウェーイ文化だったような感じらしい。
金がありあまってるおじいさん・おじさんがワガママで勝気で傲慢な女の子を好む、というのはよくある話で、
「男を振り回してひどいことする女ほどイケてる!」
って多くの一般庶民も思ってた時代…らしい。
テレビや雑誌でも持ち上げてね。
そんな時代の象徴するキャラクターでもあるのが本阿弥さやかですよ
「ほんあーみ
ほんあーみ
ほんあーみーグループ~」
のテーマソング共にCMをガンガン流す本阿弥財閥の跡取り娘にして、あらゆるスポーツで優勝した経験をもつ天才少女。
そんなさやかさんが唯一勝てなかったのが天才・猪熊柔であり、
「柔は柔道の天才だが、お前さんはただの凡人だ」
と巻数を重ねるごとに認め、精進し、日本を代表する柔道選手になっていく。
…と、これだけだとすごくカッコイイクールビューティーキャラを想像しますが、さやかさんの魅力はむしろ人間くさくてダサいところだと思う。
傲慢、幼稚、すぐ嘘ついてからかうし、すぐムキになる。
彼女の美しい顔には大きな秘密があるのですが…それはぜひ本編でご確認ください(笑)。
というわけで幼女の頃の私にとって彼女はギャグキャラであり、そのおかしさ・滑稽さがあまりに面白くて
「憎めない敵キャラなんだよな~」
だったんだけど…少女になる頃には
「そうか、猪熊柔という天才がいるから影になってただけで、本阿弥さやかだって稀有な天才だったのか!!」
って気付いた。
だって高校生になって柔道はじめた女の子が、オリンピック金メダリストの宿命のライバルになったんだもの。
っていうか柔ちゃんがいなければ彼女が金メダルをとったはず。
まあ、猪熊柔がいなければ本阿弥さやかは柔道をやりもしなかったので、運命…いや、宿命の人なのよね、やっぱり。
聖身女学館(聖心+女学館かな?)はどんなにお金をつんでも単位をとらなければ進級できないって話は笑った。
漫画の方がよっぽど現実よりちゃんとしてるわ~。
個人的に控えめにいってKUZUだと思っているキャラクター・風祭さんと結婚してしまいましたが、さやかさんなら負けず風祭さんに報復してくれるはずだと信じてるよ私は。
【今なら彼女を認められる、アンナ・テレシコワ】
もう一人の悪役ヒロインは、アンナ・テレシコワ。
この名前で思い出せない人は
「ジョディに怪我させたソ連の角刈り選手」
といえば
「あいつか!」
ってわかるはず。
かわいらしさ・人間くささ・かわいそうさを併せ持った本阿弥さやかと違って、テレシコワはもう完全なる悪役。
ソ連、とあるようにソビエト連邦(連載当時は存在していたんだねえ…)の選手で、まー波乱万丈の人生を作中生きています。
氷の女王って言葉がぴったりな冷酷非道キャラとして描かれる。
幼女~少女時代はそりゃー私も大っ嫌いでしたよ(笑)。
体の故障につけこんで怪我させて勝つなんて…しかもあの素晴らしいジョディ(ライバルキャラの一人で、めちゃくちゃいい人)に…。
「そこまでして勝ちたいかーっっ!!!」
って思ってたけど、大人になった私はちゃんとわかる。
「勝てないのなら、明日は望めない、そんな過酷な世界に彼女は生きている」
と。
貧農の子どもであり、才能を見出され英才教育をほどこされ柔道選手になったテレシコワ…。
そりゃー優しさや、礼儀なんてかまってられないよ。
結果が出せなきゃ明日はないのだから。
私がテレシコワのことを理解できるようになったのは、現実の格闘家であるアルトゥール・キシェンコの歴史を知った時。
彼はウクライナの極貧家庭出身で、モデル並みの端正なルックスを持ちながらニコリともしない無表情が通常だった。
「家はなく、瓦礫の中が家だった」
「父親は蒸発、家族を養うためにファイトマネーを稼いだ」
そんなことを知ったら
「そんな辛い人生に耐えてきたら、感情なんか殺しますわ」
と心底理解できた。
※アルトゥール・キシェンコ(Wikipedia)
↑
キシェンコまだ34才なの?!若いな~。(2021年1月時点)
彼の通称は「美しき死神」だったけど、こうやって書けば書くほどテレシコワに似ている。
ウクライナもソビエト連邦だったしね…戦争や悪い政治が人の命や心をどれほど踏みにじるのか、という物語に通じる。
さて、こんな言葉をテレシコワ本人に言ったら激昂されそうだが
「アンナ(テレシコワの名前)…かわいそうだな…」
という視点を持ってみると、漫画の見え方が全く違ってくるのです。
「ジョディの仇~!」
と燃える柔ちゃんに負かされたテレシコワは、心に赤黒い炎が燃え上がります。
それが昔は
「ほんっとにお前は気色悪いキャラだよな!」
でしかなかったけど、過酷な人生に凍らせるしかなかった彼女の心に、融けるキッカケになったと思うんだよね。
天才・猪熊柔に負け、
「くやしい!
ぜったい次は勝つ!」
って心の炎を取り戻したというか。
生きるためだけじゃなく、心の渇望を感じるというか…。
というわけで昔は嫌いだったけど今は好きなキャラなのです。
浦沢直樹さんは賢い方で
「売れる漫画を描かなきゃならない」
と最初から意識していたそうですが、漫画が愛されていくうちに変化して、社会派な面も出てきたのかな?と素人は思ったりする。
あと、あれだ。
アンナ・テレシコワが残酷で暴力的なのは、国家や所属団体に彼女自身がそういう仕打ちを受けていたからなんじゃないだろうか。
虐待と構造の連鎖。
(現実のキシェンコは今でも同時代の選手とにこやかに交流されているので、やられたから必ず連鎖するってわけじゃないんだろうけども)
【悪役以外の好きなキャラ】
悪役じゃないけど、大好きなキャラの一人は富士子さん
彼女も書こうと思えば1記事まるまる愛を叫べる。
真面目でお堅いからこそすごく面白くて富士子さんが出てくるシーンは基本笑えるのですが、その歴史は壮絶。
彼女は血と汗と涙を捧げてプリマになるべくバレエレッスンに人生のほとんどを費やしていたのですが、身長がのびすぎて(175センチ。アニメ版だと180センチ)バレエを辞める。
「血染めのトウシューズ」エピソードはぜったいぜったい漫画で読んでほしい。
でも彼女は柔道の才能が開花し、オリンピック銅メダリストまでになる。
というか、さやかさんと互角にまでなるのだ。
すごい!
彼女の努力や才能は何も無駄にならなかった、という素晴らしい物語で大好き。
他はやっぱり王道に強くてしなやかな女性キャラが大好きで…。
女三四郎・山田香(ソウル五輪で銅メダルをとったという山口香さん?)
ベルッケンス(ベルギーの美貌の世界女王)
クリスティン・アダムス(バルセロナ五輪で富士子さんと戦った金メダリスト)
このあたりが好きだな~。
ジョディももちろん好き。
三葉女子短大チームは全員好きだな~ギャグ要員のまりりんも。
キョンキョン(日陰今日子ちゃん・36キロ)のエピソードは今思い出しても涙がボロボロ出ちゃうくらい大好き。
全巻ほんとに面白いので、ぜひ皆さま読んで!
読んだことない人も、昔読んでた人も!
熱く布教して終わる。
※YAWARA! 文庫版 コミック 全19巻完結セット 小学館文庫(アマゾン)
文庫版買っちゃおうかな~。
なつかしのレトロ漫画の中で、私が愛した悪役ヒロインたちについて今回は言いたい放題…しようと思ったんだけど、愛がとまらず
「私が愛した漫画『YAWARA!』の悪役ヒロインたち」
に変えます。
違う漫画の悪役ヒロインは別記事で。
といっても実は子ども時代から好きだったのは最初に書くさやかさんだけで、もう一人はある程度心が成熟(あくまで私の中では、な)してから好きになりました。
というわけで、トップバッターは浦沢直樹さんの傑作『YAWARA!』で主人公・猪熊柔ちゃんの宿命のライバルであり裏の主人公だと私は信じている本阿弥さやかさん!
『YAWARA!』は柔道の天才・猪熊柔をめぐる重厚なスポーツ漫画であり、そしてなにより弱ってるときでも心から大笑いできるコメディ漫画であり、登場人物がそれぞれに成長してどんどん魅力的になる物語でもある。
連載していたのはなんと1989年から1992年ということで、バブル景気・男尊女卑・性的搾取上等の時代を反映している上にお色気必須の成年漫画雑誌での連載だったということで
「おいおい…」
な描写もありますが、根本は人間愛と努力、そして生きることへの賛歌…だと私は思ってるのでぜひぜひ皆さま読んでほしい。
バブル時代(?)は私も経験していないのでよく知らないのだけど、日本全体が成金状態だったため、全国が港区ウェーイ文化だったような感じらしい。
金がありあまってるおじいさん・おじさんがワガママで勝気で傲慢な女の子を好む、というのはよくある話で、
「男を振り回してひどいことする女ほどイケてる!」
って多くの一般庶民も思ってた時代…らしい。
テレビや雑誌でも持ち上げてね。
そんな時代の象徴するキャラクターでもあるのが本阿弥さやかですよ
「ほんあーみ
ほんあーみ
ほんあーみーグループ~」
のテーマソング共にCMをガンガン流す本阿弥財閥の跡取り娘にして、あらゆるスポーツで優勝した経験をもつ天才少女。
そんなさやかさんが唯一勝てなかったのが天才・猪熊柔であり、
「柔は柔道の天才だが、お前さんはただの凡人だ」
と巻数を重ねるごとに認め、精進し、日本を代表する柔道選手になっていく。
…と、これだけだとすごくカッコイイクールビューティーキャラを想像しますが、さやかさんの魅力はむしろ人間くさくてダサいところだと思う。
傲慢、幼稚、すぐ嘘ついてからかうし、すぐムキになる。
彼女の美しい顔には大きな秘密があるのですが…それはぜひ本編でご確認ください(笑)。
というわけで幼女の頃の私にとって彼女はギャグキャラであり、そのおかしさ・滑稽さがあまりに面白くて
「憎めない敵キャラなんだよな~」
だったんだけど…少女になる頃には
「そうか、猪熊柔という天才がいるから影になってただけで、本阿弥さやかだって稀有な天才だったのか!!」
って気付いた。
だって高校生になって柔道はじめた女の子が、オリンピック金メダリストの宿命のライバルになったんだもの。
っていうか柔ちゃんがいなければ彼女が金メダルをとったはず。
まあ、猪熊柔がいなければ本阿弥さやかは柔道をやりもしなかったので、運命…いや、宿命の人なのよね、やっぱり。
聖身女学館(聖心+女学館かな?)はどんなにお金をつんでも単位をとらなければ進級できないって話は笑った。
漫画の方がよっぽど現実よりちゃんとしてるわ~。
個人的に控えめにいってKUZUだと思っているキャラクター・風祭さんと結婚してしまいましたが、さやかさんなら負けず風祭さんに報復してくれるはずだと信じてるよ私は。
【今なら彼女を認められる、アンナ・テレシコワ】
もう一人の悪役ヒロインは、アンナ・テレシコワ。
この名前で思い出せない人は
「ジョディに怪我させたソ連の角刈り選手」
といえば
「あいつか!」
ってわかるはず。
かわいらしさ・人間くささ・かわいそうさを併せ持った本阿弥さやかと違って、テレシコワはもう完全なる悪役。
ソ連、とあるようにソビエト連邦(連載当時は存在していたんだねえ…)の選手で、まー波乱万丈の人生を作中生きています。
氷の女王って言葉がぴったりな冷酷非道キャラとして描かれる。
幼女~少女時代はそりゃー私も大っ嫌いでしたよ(笑)。
体の故障につけこんで怪我させて勝つなんて…しかもあの素晴らしいジョディ(ライバルキャラの一人で、めちゃくちゃいい人)に…。
「そこまでして勝ちたいかーっっ!!!」
って思ってたけど、大人になった私はちゃんとわかる。
「勝てないのなら、明日は望めない、そんな過酷な世界に彼女は生きている」
と。
貧農の子どもであり、才能を見出され英才教育をほどこされ柔道選手になったテレシコワ…。
そりゃー優しさや、礼儀なんてかまってられないよ。
結果が出せなきゃ明日はないのだから。
私がテレシコワのことを理解できるようになったのは、現実の格闘家であるアルトゥール・キシェンコの歴史を知った時。
彼はウクライナの極貧家庭出身で、モデル並みの端正なルックスを持ちながらニコリともしない無表情が通常だった。
「家はなく、瓦礫の中が家だった」
「父親は蒸発、家族を養うためにファイトマネーを稼いだ」
そんなことを知ったら
「そんな辛い人生に耐えてきたら、感情なんか殺しますわ」
と心底理解できた。
※アルトゥール・キシェンコ(Wikipedia)
↑
キシェンコまだ34才なの?!若いな~。(2021年1月時点)
彼の通称は「美しき死神」だったけど、こうやって書けば書くほどテレシコワに似ている。
ウクライナもソビエト連邦だったしね…戦争や悪い政治が人の命や心をどれほど踏みにじるのか、という物語に通じる。
さて、こんな言葉をテレシコワ本人に言ったら激昂されそうだが
「アンナ(テレシコワの名前)…かわいそうだな…」
という視点を持ってみると、漫画の見え方が全く違ってくるのです。
「ジョディの仇~!」
と燃える柔ちゃんに負かされたテレシコワは、心に赤黒い炎が燃え上がります。
それが昔は
「ほんっとにお前は気色悪いキャラだよな!」
でしかなかったけど、過酷な人生に凍らせるしかなかった彼女の心に、融けるキッカケになったと思うんだよね。
天才・猪熊柔に負け、
「くやしい!
ぜったい次は勝つ!」
って心の炎を取り戻したというか。
生きるためだけじゃなく、心の渇望を感じるというか…。
というわけで昔は嫌いだったけど今は好きなキャラなのです。
浦沢直樹さんは賢い方で
「売れる漫画を描かなきゃならない」
と最初から意識していたそうですが、漫画が愛されていくうちに変化して、社会派な面も出てきたのかな?と素人は思ったりする。
あと、あれだ。
アンナ・テレシコワが残酷で暴力的なのは、国家や所属団体に彼女自身がそういう仕打ちを受けていたからなんじゃないだろうか。
虐待と構造の連鎖。
(現実のキシェンコは今でも同時代の選手とにこやかに交流されているので、やられたから必ず連鎖するってわけじゃないんだろうけども)
【悪役以外の好きなキャラ】
悪役じゃないけど、大好きなキャラの一人は富士子さん
彼女も書こうと思えば1記事まるまる愛を叫べる。
真面目でお堅いからこそすごく面白くて富士子さんが出てくるシーンは基本笑えるのですが、その歴史は壮絶。
彼女は血と汗と涙を捧げてプリマになるべくバレエレッスンに人生のほとんどを費やしていたのですが、身長がのびすぎて(175センチ。アニメ版だと180センチ)バレエを辞める。
「血染めのトウシューズ」エピソードはぜったいぜったい漫画で読んでほしい。
でも彼女は柔道の才能が開花し、オリンピック銅メダリストまでになる。
というか、さやかさんと互角にまでなるのだ。
すごい!
彼女の努力や才能は何も無駄にならなかった、という素晴らしい物語で大好き。
他はやっぱり王道に強くてしなやかな女性キャラが大好きで…。
女三四郎・山田香(ソウル五輪で銅メダルをとったという山口香さん?)
ベルッケンス(ベルギーの美貌の世界女王)
クリスティン・アダムス(バルセロナ五輪で富士子さんと戦った金メダリスト)
このあたりが好きだな~。
ジョディももちろん好き。
三葉女子短大チームは全員好きだな~ギャグ要員のまりりんも。
キョンキョン(日陰今日子ちゃん・36キロ)のエピソードは今思い出しても涙がボロボロ出ちゃうくらい大好き。
全巻ほんとに面白いので、ぜひ皆さま読んで!
読んだことない人も、昔読んでた人も!
熱く布教して終わる。
※YAWARA! 文庫版 コミック 全19巻完結セット 小学館文庫(アマゾン)
文庫版買っちゃおうかな~。