古い話で恐縮ですが、満州事変、日中戦争で日本の陸軍の関東軍が東京での政治を無視して勝手に戦争を拡大して、日本を破滅に追いやったのです。
今回のオバマ大統領の動きを見ながら、そんなことを思い出しています。
日本には明治維新以来、軍隊のシビリアン・コントロールという考えが定着していなかったのです。
イギリスのキャメロン首相がシリア攻撃を議会へ諮って、否決されると、いさぎよく攻撃を断念しました。
オバマ大統領も勝手に攻撃命令を下す権限を持っていながら、その権限を行使しないで、上院と下院へ攻撃の承認を求めることにしたのです。
しかし議会の承認はかなり難しいのです。
オバマ支持の民主党議員数は下院435議席のうち200議席しか持っていません。上院では定数100議席のうち54議席を持っていますが、民主党上院議員のなかから攻撃反対に投票する議員もいると予想されています。
否決される可能性があるのに議会へ諮ったオバマ大統領の勇気と見識を高く評価したいと思います。
そもそも一国の軍隊をどのように使うかは国民が決めるべきです。その原則を守る手続きに時間がかかるので、欧米の諸国では大統領や首相に命令を下す権限を与えているのです。
しかし今回のように、さしせまった攻撃を英米仏が受ける可能性が無い場合には国民の代表である議会の承認を得るのが「シビリアン・コントロール」の基本です。
オバマ大統領は振り上げたコブシをおろして、冷静になり攻撃の可否を議会へ託したのです。これこそシビリアン・コントロールの模範です。
一国の軍隊の最高司令官は大統領や首相です。彼らはまさしくシビリアンです。
ところが日本の戦前の軍隊の最高司令官は天皇だったのです。軍部から派遣された天皇の側近が、「これが天皇の命令だ」と言えば終わりです。
満州に展開していた関東軍はもっと悪くて、天皇の意見など始めから無視していたのです。張作霖を爆死させ、中国軍が攻撃してきたような謀略をして、戦争を始めたのです。
ソ連や中共の軍隊にさえ共産党から派遣されたシビリアンの委員が必ずいたのです。軍の暴走を監視するためです。
日本も安倍総理になってから、憲法の集団自衛権の解釈を考え直す動きをしています。
更に平和憲法を改正する動きもあります。
しかしここで一番重要なことは自衛隊のシビリアンコントロールを徹底することです。自衛隊は参議院と衆議院の決議を受けて首相の命令があった時だけ動くべきです。
その基本として自衛隊幹部は政治的な意見を発表しては駄目なのです。自衛隊は常に戦う準備をしています。ですからこそ自衛隊幹部の政治的発言は軍隊出動の方向になりがちなのです。戦前の日本はこの間違いを犯したのです。
地中海に展開しているアメリカ海軍の司令官が、「シリア攻撃を即刻実行すべし」という新聞発表をしたら自分が即刻罷免されます。日本の自衛隊幹部に2、3年前にそういう人が居たことを忘れてはいけないと思います。
シリア攻撃に関する米英仏の最近の動きを見ながら感じたことを記しました。
下に8月31日に、「議会の承認を求めることにした」と発表しているオバマ大統領の写真を示します。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
(写真の出典:http://www.asahi.com/international/update/0901/TKY201309010001.html )