1960年にオハイオ州でダッジ・コルネットという大型乗用車の中古を買いました。クリーム色と水色のツートンカラーの美しい車でした。
行っていた大学のそばの学生街の道傍には、イギリス製の真紅のMGスポーツカーがよく駐車してありました。。時々、幌が空けたまま駐車してあるので中がよく見えます。シンプルなダッシュボードに木目のハンドルがついています。MGは手動のギアチェンジ。軽快な構造で車体のフォルムが流れるように美しい。そばを通るたびにMGのところで、しばし足を止めたものです。
同級生にMGで通学している中年の空軍大佐が居ました。仲良くなった時、そのMGで家まで招待してくれたのです。車体が軽くてスピードを上げると飛び上がるように疾駆するのです。エンジンの音をわざとゴロゴロと響かせ、体をしびれさせるのです。
それ以来、いつかは自分もスポーツカーに乗れる身分になろうと頑張りました。それは苦しく、激しい人生でした。
一生の間に一度はMGのようなスポーツカーを持ってみたいと考えながら、その夢も果たせず60歳になってしまいました。
最後のチャンスと思い60歳過ぎに、MGと同じような軽スポーツカーのマツダ・ロードスターの中古を買ったのです。上の写真の車です。
家人も一度はスポーツカーに乗って見たいと言います。
彼女の好みの色合いの車を探しました。エンジンにガタが来ていてもどうせ3年だけ乗ると決めているので安い中古の車が沢山ありました。
落ち着いたマリンブルーの中古を見つけました。
それから3年間、山の小屋や土浦のヨットへと散々乗った後で、3年後に予定通り売ってしまいました。一生の夢がかなえられて満足しました。充実感もありました。
スポーツカーに3年乗ってみた結果として意外な感じがしたのです。スポーツカーは見ていればロマンチックな車ですが、乗ってみると違います。
特に老人にとっては椅子が硬くて、その上サスペンションのバネが最小限度しか付いていないので腰が痛くなるのです。
椅子が低い位置にあり、ドアーが小さいので乗り降りが非常に不便です。
タイヤの音が大きいので、4輪すべてを一番静かな新品タイヤへ変えたが、やはりうるさいのです。その上、屋根が幌なので他の車の騒音が入って来るのです。
快晴のときには幌を畳んで、オープンで走ります。たしかに爽快です。しかし埃や砂粒が遠慮なく顔を叩くのです。その上、陽射しがまともに顔に当たります。
家人も始めは喜んで乗っていましたが、次第に乗らなくなりました。
スポーツカーはやはり青春の乗り物なのです。
しかし3年間乗りまわして大いに満足しました。人生に思い残すことがまた一つ無くなりました。皆様はスポーツカーに憧れていらっしゃいますでしょうか?下に写真を幾つかお送り致します。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)
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下は1955年のMGです。