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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

「コロナ問題が日本の貧困層に打撃を与え、貧富の差がさらに増加」

2021年06月01日 | 日記・エッセイ・コラム
多くの人々は日本では貧富の差が小さいと信じています。幸せな国に住んでいると思っています。しかし日本の貧困率は世界的に見ても高いのです。
そしてアメリカの貧困率も世界一高いのです。私はこの事実を以下の記事で紹介してきました。
「日本社会の格差が年々増加している」(2016年03月31日掲載記事)
「トランプ大統領でアメリカの貧富の差が益々拡大する」(2016年12月17日 掲載記事)
「アメリカの4600万人の貧困層・・・日本も将来そうなる!」(2014年08月20日掲載記事)

日本人は戦後のひどい貧困状態を克服して経済の高度成長をしたことを知っています。ですから日本では貧富の差が小さいと信じています。しかし貧富の差は経済の高度成長によって拡大したのです。
今日はこの日本の貧困層にコロナ問題が打撃を与え、貧富の差がさらに増加する可能性を記したいと思います。
まず次の本の紹介記事をお読み下さい。
「新型コロナの打撃が大きい貧困層ー検査拡大が助けに」
アラン・ディジオリ ミハル・アンドレ ジョン・ブルードーン 著
2020年12月3日、https://www.imf.org/ja/News/Articles/2020/12/03/blog-covid-19-hits-the-poor-harder-but-scaled-up-testing-can-help
世界中で、新型コロナウイルスの感染者と死亡者は豊かな地区よりも貧しい地区で多くなっている。各国内でも世界全体でも、パンデミックとそれを制御するための取り組みによって貧困層が不釣り合いに大きな影響を受けている。健康面での影響が所得層によって異なる原因について理解を深めることは、この問題に政策担当者がどのような対応を講じれるか考える上で参考になりうる。
・・・私たちの研究は、年齢や性別、その他の人口統計のみに注目するのではなく、所得に基づく個人の行動や選択にも着目しており、大半の疫学モデルを凌駕するものとなっている。
ワクチンは今後数か月、数年をかけて徐々に投入されると見られるが、その間にも一部の国ではパンデミック初期よりも早いペースで感染率が上昇し続けることになる。パンデミックを封じ込める上では、ロックダウンや物理的距離の確保、マスクの着用といった手段が最も多用されてきた。しかしながら、安価で迅速な検査ももうひとつの武器となりうる。
「重要となる所得」
パンデミック下で貧しい人々を感染の最前線に立たせることになる行動や選択は、必要の産物であることが多い。まず、低賃金労働者の多くは(食料品店や宅配サービスといった)パンデミック下でも必要不可欠と見なされるサービスや、リモートワークを選択する余地が限られた仕事に従事している。第二に、貧困地区は人口密度が高い場合が多く、より感染が広がりやすい。第三に、いざという時の貯金も貧困地域の住民には少ししかない傾向があり、労働時間を減らして感染リスクを抑える可能性が限られている(自営のインフォーマル労働者など)。

1番目の写真はアメリカのラスベガスの貧民街の風景です。
この写真とは対照的に、豊かな人々は仕事を減らしたり自宅外で過ごす時間を制限したりする選択肢があるため、感染リスクを低下させることが可能だ。こうした選択は劇的な影響を及ぼす。モデルによるシミュレーションでは、ウイルスに最終的に感染する割合が富裕世帯では10%をわずかに上回る程度であるのに対して、貧困世帯では2年間に50%を超えることが示されている。この点は死亡率にも反映されており、モデルは貧困世帯の死亡率が4倍ほど高いと示している。こうした数字は、パンデミックに伴う健康上の被害の大部分が貧困世帯で生じていることを示唆している。

以上はアメリカにおけるコロナ問題が貧困層に与えている打撃の様子を描いていますが、日本でも同じように貧しい人がコロナの被害を受けていると考えられます。

そこで日本の状況に関する次のロイター、2021年2月12日の記事をお読みください。(https://jp.reuters.com/article/column-kazuhiko-tamaki-idJPKBN2AC0JP )
「コラム:富裕と貧困、コロナ禍で進む「日本の二極化」とその後」By 田巻一彦

新型コロナウイルス感染が拡大する中で、富裕層を中心にした預金が急増し、コロナの感染収束時における消費の急拡大を予想する声が市場の一部にある。他方、非正規雇用の人たちを中心に所得環境は厳しさを増しており、日本国内でも第2次世界大戦後に経験したことのない富裕・貧困の二極化に直面している。
富める階層をさらに富裕化させて、その波及効果を所得の低い人たちに波及させるのか、それとも直接的な給付を増やして政府主導で格差是正に臨むべきなのか。米国のように激しい議論になっていない日本でも、コロナ禍をきっかけにした社会・経済の変化によって、選択を迫られる時が到来したのではないか。
<コロナ後に爆発しそうな富裕層のサービス消費>
・・・中略致します・・・
<増加する女性の自殺>
コロナ禍の影の部分の暗さは、時の経過とともに深刻さを増している。厚生労働省によると、コロナ感染の影響で失業者は今月5日までに累計で8万6551人に達した。
また、総務省の労働力調査によると、非正規雇用者の人数は、2020年3月から直近データの11月まで連続して前年比マイナスを記録。11月の減少幅を見ると、男性の25万人に対し、女性は37万人となり、雇用の現場で女性の解雇が多くなっていることを示している。労働問題に詳しいアナリストの中には、接触型ビジネスの典型である宿泊・飲食などにおける非正規雇用者に占める女性の割合が多いことが影響しているとの見方もある。
警察庁によると、女性の自殺者が昨年6月から今年1月まで8カ月連続で前年を上回った。その背景にコロナ禍による失業の増加と関連があるとの専門家の指摘もある。・・・以下省略・・・

以上のようにコロナ問題は日本の貧困層に打撃を与え、貧富の差がますます増加させているのです。
日本のマスコミはコロナ問題の深刻さをあまり報じていません。テレビは相変わらずお笑い番組ばかりです。コロナの予防ワクチンの接種が進んでいるので非正規雇用者の困窮が忘れています。コロナ問題はまだまだ根気よく対策を考えるべきではないでしょうか。
皆様のご意見をお聞かせください。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)

===参考資料=================================================
「日本社会の格差が年々増加している」(2016年03月31日掲載記事)の抜粋です。
生活に充分な厚生年金を貰っている高齢者と毎月5万円の国民年金だけを貰っている人の間の格差、正規社員と非正規社員の間の格差、能力主義による正規社員の間の年収の格差、農業従事者や漁業従事者の中の経済格差などなど日本には大きな格差が増大しつつあります。

(1)日本は世界的にも貧困率が高い先進国
以下は、http://finalrich.com/sos/sos-economy-world-oecd.html から抜粋しました。
高度経済成長期がバブル崩壊によって終焉し、その影響が格差社会を起こしたと言います。
そして1998年以降、日本の格差は紛れも無く拡大しています。
格差にはいろいろあります。今日は年収格差だけを考えて行きます。
さて完璧な社会など存在しないように全く格差が存在しない社会もありませんが、いき過ぎた格差拡大は、不幸な社会になります。日本はこの「行き過ぎた格差社会」になって行くのでしょうか?

2番目の写真の図はOECDが発表した世界の貧困率を表したものです。図面はすべて2005年2月にOECDによって発表された図です。
貧困率とは簡単に言ってしまえば貧乏人が、社会のどのくらいを占めるかという割合を示したものです。貧困率が大きければ大きいほど貧乏人が多いということです。

(2)日本は格差の大きい先進国!ジニ係数の各国との比較

続けて世界の格差を示すデータをみていきましょう。2005年2月にOECDによって発表された図です。

3番目の写真の図はさっきと同じOECDが発表したOECD加盟国の "ジニ係数" を表示したものです。
ジニ係数とは、格差社会をあらわすひとつの目安となっている指数のことで、格差社会のバロメータと言われています。この数値が大きければ大きいほど所得格差が大きい格差社会でです。
さて、このジニ係数においても日本はOECD参加国の中でも上位にランクインしています。
しかしこの日本がなによりも問題なのは、急速にこのジニ係数の数値が上昇していることなのです。
一昔前まで日本は「一億総中流」とか言われて、貧富の差が一番少ない国であると言われていました。それが、わずか10年程度でここまで格差が拡大してきたのです。この格差拡大は、次のジニ係数の年度別変化を見るとハッキリします。

(3)収入格差を示すジニ係数の増加の様子

4番目の写真の図は、ここ20年間のジニ係数の推移を表した図です。
この日本のところを良く見てください、確かにジニ係数自体は5番目あたりになっていますが、そのジニ係数がこの20年間で急速に上昇しているのです。
このことは次のことを意味しているのです。
それは日本の格差拡大は急速に進んでいること、そしてその格差拡大が進んでいるために、アメリカを超える格差社会になる意味しているのです。
しかしあまり長くなるので以下は省略いたします。