横須賀を基地とするアメリカの第七艦隊がイージス駆逐艦を南沙諸島へ派遣し、中国が飛行場を建設中の島の領海に出入りしました。
これに対して中國海軍は2隻の駆逐艦を派遣し、警告し監視行動をとりました。
中國が南沙諸島の暗礁を埋め立て飛行場を作ってその周囲を中国の領海と主張していたのです。
中国の行為は国際法で認められない違法な行為なのでアメリカが断固抗議していました。それを中国は無視して来たので、今回は1万トン級の駆逐艦を派遣して、”領海”侵入に踏み切ったのです。
南沙諸島には一挙に緊張した情勢になりました。
しかし中国とイギリスとの親密な関係や、中国の世界経済における大きな影響力を考えると米中間で大規模な軍事衝突は起きないと考えられます。
日本の新聞を見るとアメリカ側に絶対的に正義があり、中国が悪いという報道ぶりです。
しかしこのような国際的な紛争はもっと広い視野で歴史的に考えるのも重要と思います。
下の写真はあまり報道されないのですが、中華民国(台湾)が2008年に南沙諸島に作った軍用飛行場の写真です。

この写真の島は太平島といい南沙諸島では最大の島です。
現在は中華民国(台湾)が実効支配し、行政区画は高雄市に帰属しています。中華民国にとっては、シーレーン防衛の要衝にあたり、警備のため海軍陸戦隊員や海岸巡防署員が常駐しているのです。中華民国が実効支配していますが、他の島と同様に中華民国、中華人民共和国、ベトナム、フィリピンが領有権を主張しているのが現状です。
2008年2月には陳水扁台湾総統が軍用機C-130で太平島に到着、空港落成使用開始式典を主催して駐留する軍関係者を慰問、島内施設を視察しています。
そしてその後はC130大型輸送機が定期的に往復して常駐する軍隊の補給を行っています。
この事実は日本ではあまり報道されません。
中国の埋め立てと飛行場建設だけが大々的に報道されているのです。これは客観的に公平な報道姿勢ではないと私は感じてきました。
さて太平島に対する台湾の正義はあるのでしょうか?それが有るのです。日本の敗戦でこの一番大きな島は中華民国へ引き渡されたのです。ですから一見問題は無いようです。
しかし現在は中華人民共和国、ベトナム、フィリピンがこの太平島の領有権を主張しているのです。
この島は大きな正真正銘の島です。中国の行っているように暗礁を埋め立てで作った人工の島ではありません。ですから中華民国に正義があるようです。
しかしこの太平島の軍用飛行場の建設を見て中国共産党が真似をして飛行場を作ったとしたらその動機は理解できます。理解は出来ますが中国の行為は国際上は違法行為です。
こんないきさつがあるのでアセアン諸国の意見が分かれているのかも知れません。
国際紛争には関係する国の数だけの正義があるのです。アメリカの正義だけを大々的に書きたてる日本の報道ぶりに疑問を感じています。
誤解なさらないで下さい。私も中国が悪いと思います。しかし報道には広い視野で歴史的にいろいろな側面を過不足無く報道すべきと信じています。あまりにも中華民国による大平島の軍事飛行場の建設が無視されているのでご紹介した次第です。
込み入った話題なので気分を良くして頂くために先日行った富士山五合目から見た頂きの写真と黄葉の写真をお送りします。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)