政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

後期高齢者健康保険というおぞましいもの

2008-04-17 19:52:33 | 政治
このできの悪い制度が4月からスタートし、連日テレビではその混乱を伝えている。福田や桝添は制度自体は高齢者のためのもので、とてもいいものなんだが、説明や広報活動が十分ではなかったために混乱を招いてしまった。あるいはネーミングがよくなかったなどとと繰り返している。しかし、保険証の未達に始まって、誤徴収や天引き開始の遅延やらと、現場の混乱は目も当てられぬ状況だ。この混乱の原因は、広報活動の不十分さにあるのは間違いない。が、それだけではないのではないか。実は、厚労省は意図的に広報活動をしてこなかった(あるいはごく控えめにしてきた)のではないか、という疑いを抱かざるを得ないのだ。2年前に導入が決まったこの制度の質の悪さに厚労省ははじめから気づいており、もしこの制度が国民に理解されてしまったら始まる前に潰されてしまうという心配をしたのではないか。厚労省は国民への広報活動ばかりでなく、自治体への説明・広報もわざと遅らせてきたのではないか。先日テレビのニュースで担当窓口の自治体職員が、数百ページもある分厚い手引き書を前に、これが届いたのが、わずか一週間か10日前。とても読んですぐに理解できるものじゃないと、泣いていた。

いきなり制度をスタートさせて、後での多少の非難や攻撃には、口だけは達者な召使いの桝添をテレビカメラの前に座らせよう、と厚労省の役人達は密かに考えていたのだ。

これまでの保険制度と変わったことの一つに、資格証明書の問題がある。資格証明書そのものはこれまでの健康保険制度に、01年からとりいれられていたという。しかしそれにしても、役人というのはよくもこんな底意地の悪い無慈悲なことを思いつくものだ。保険料滞納者にはまず三ヶ月だけ使える短期健康保険証というものを渡し、更に滞納が続くと、資格証明書に切り替える。こうなると当人は一旦病院で医療費の全額を支払わなければならない。その後で保険給付分を支給してもらうということになる。とにかく滞納者には、見せしめと懲らしめのために、恥をかかせて、苦しい思いを味合わせようというだけのものなのだ。ただこれまではこの適用は75歳以上の人には免除されていた。ところが、こんどの制度では全員がこの適用対象になる。なんともむごい制度だ。一体こんな事を考えつく役人の頭は、いや頭ではない、心はどうなっているんだ。

この制度は次のような結果になって表れている。
「国保死亡事例」18都府県で31件 (是非読んでみてください)


こんな制度を考え出した役人は”人殺し”といわれてもしかたない。多分家に帰ればふつうの父親や母親なんだろうに。

「世代間の助け合い」、「みんなでお年寄りを支える制度」というなら、高齢者を切り離すのではなく、逆に全体の中に統合するのが筋だろう。





経産省とJパワー問題Ⅲ

2008-04-17 11:00:33 | 官僚
この問題は、一人経産省だけの問題ではない。政治の制度疲労は極限の状況にあるようにみえる。

TCIのJパワー追加投資に政府が中止勧告(ロイター 4/16)

この投資ファンドがJパワーへの追加投資を申請したのは、今年の1月15日。通常は1ヶ月の審査期間がある。ほぼ1ヶ月後の2月13日になって経産省は3ケ月の審査延長を通知した。
甘利経産相はすでに昨年12月の時点でTCIがJパワーに対して役員の選任を要求したことに関して会見で警戒感を表明している(ロイター)。まして北畑事務次官が采配を振る経産省では、今回の結論はTCIが申請を出した時点で決まっていたようなものだ。3ケ月という期間はその間十分に審査を尽くしたという口実のために必要だったのであろう。

別にTCIの味方をするつもりで書いているのではない。今度の決定がきわめて不明朗、不公平、不公正、非論理的だから言っているのだ。
『公の秩序の維持に妨げになる恐れがある』?もう少し具体的な説明ができないのか。具体的にどうなる恐れがあるのだ?
外為審議会の問題にした『3年から5年程度の投資期間』のどこがいけないのか。Jパワーの株主は、20年も30年も株を持ち続けなければならないのか。増配の要求をしても、役員派遣の要求をしてもいけないというのか。不都合ならば株主総会で拒否すればすむことではないか。現にこれまでのTCIの要求も拒否してきたではないか。20%の株保有はこれまでの9.9%と決定的な違いがあるわけではない。経営にたいする圧力が多少強まるだけだ。
根底にあるのは、異分子を排除しようという経産省の体質と利権維持に懸命な官僚意識だ。だが、これは日本のすべての省庁についてもいえることだ。決して経産省だけのことではない。
体制の内側にある者は、その体制を維持し、その中での保身に力を尽くす。それがいまの政治家・官僚とその回りに群がる学者・マスメディアである。二世議員であふれた国会、何の疑問も持たずに天下りしていく官僚。それを監視し批判しなければならない学者やマスコミの堕落した姿。一般の国民はそんな中に置かれている。これはその象徴的な出来事といえる。


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