政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

鳩山総理の迷と暗・次の民主党内閣を…

2009-12-31 09:05:02 | 鳩山由紀夫
迷は迷走の迷、迷惑の迷。
暗は暗愚の暗。

ここにきて急速に鳩山の発言が支離滅裂、混迷の度を深めている。
抱える問題が多すぎる上に、自分で混乱を増幅させている。
麻生政権の末期──発足時から政権末期状態ではあったが──というよりも、安倍晋三政権の末期に状態が似てきているのではないか。
特に鳩山由紀夫という人物の精神状態が限界に近づいているように思われるのである。

まずは、秘書の起訴を受けての発言。

「辞めろという声が大勢となれば尊重したい。首相の座にしがみついている訳ではない」

なったばかりの総理大臣が、首相の座にしがみついている訳ではない、と言い訳する。
しかしわたしたちは、執着しない総理には辟易している。
安倍晋三・福田康夫・麻生太郎そして今度は鳩山由紀夫。
麻生の場合は、執着していたのかいなかったのか、よく分からないところがあるが……。

鳩山首相献金問題:「捜査終結後に説明」 首相が答弁 (毎日jp 12/1)
鳩山由紀夫首相は30日の参院本会議で、自身の資金管理団体を巡る偽装献金問題に関し、実母からの多額の資金提供について「仮に母親からの提供があったなら、検察の解明を待ち、法に照らして適切な対応をしたい」と述べ、「贈与」と認定されて税法上の問題が生じた場合は修正申告などを行う考えを示した。また、「(東京地検による)全容解明の暁には、私自身が改めて国民に説明すべきだと考えている」と話した。自民党の秋元司参院議員への答弁。


この国の税の基本原則は、申告納税、自主申告である。
鳩山の言い方はこの原則を根底から覆すものである。
「仮に母親からの提供があったなら」?
「検察の解明を待ち」?
母親のところに出かけて尋ねればすむことではないか!
こんな言い訳が通ると思っているバカ総理はいらない。

「すべて検察にお任せしています」
人に任せることではない。
自分で調べて納税すべきことである。
自分の調べと検察の調べと齟齬があればそのとき修正すればよい。
利権がらみとか収賄と違って悪質性が少ない、などという議論がある。
知らないうちはそれでもよい。
知った以上は自ら調べて納税するのが当たり前の感覚である。
もし仮に検察が、親からの貸付金と認めれば、鳩山はそれを受け入れるのか。
検察が鳩山に甘い判断をすればそれをそのまま受け入れるのか。

普天間基地移設問題での迷走もまた目を覆わんばかりのものである。

「常時駐留なき安保論」首相、在任中は封印 (YOMIURI ONLINE 12/17)
鳩山首相は16日夕、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題の決着を先送りしたことに関連し、かつて提唱した「常時駐留なき安保」論について「首相という立場になった中で、その考え方は今、封印しなければならない」と述べた。

 首相在任中には主張しない考えを示したものだ。首相官邸で記者団の質問に答えた。


自分の持論・信念を自身が最高権力者であるときに実現しようとしないで、いつ実現できるのか!
封印するのではなく、たとえ即時実現は不可能であっても、その実現のために一歩でも踏み出すのが務めではないのか!
万難を排して自分の理想を実現するために全力を尽くす。
それが政治家ではないのか。
何のために政治家になり、何のために総理大臣になったのか!

「普天間のグアム移転は無理」 鳩山首相、ラジオ番組で (産経ニュース 12/26)
鳩山由紀夫首相は26日、ラジオ日本の番組収録で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設先について「抑止力の観点から見て、グアムに普天間のすべてを移設させることは無理がある」と述べ、米領グアムへの移設の可能性を否定した。連立与党の社民党が有力な移設先とするグアムを首相が排除する考えを示したのは初めて。


「抑止力の観点から見て」
言わずもがなの発言で状況を混乱させる。
挙げ句の果てには、

「取材に話しすぎた」…普天間迷走で首相 (YOMIURI ONLINE 12/26)
鳩山首相は26日、ラジオ日本の正月番組収録で、沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題で政府の対応が迷走したことについて、「ぶら下がり(取材)などで『多少サービスするか』みたいな発想になったところが、拡大されて伝わってしまった。『決まるまでは何もしゃべらない方がいい』と指摘されており、その通りだと反省している」と述べ、適切な対応でなかったとの考えを示した。

 さらに、「他の閣僚ともしっかり打ち合わせして、話すべきでないところは話すべきでなかった。ところが、閣僚もそれぞれ自分の思いを正直に話したきらいがあった。首相か防衛相か、一人だけが発言するようにとどめておかなければいけなかった」とも語り、閣僚の足並みの乱れが事態を一層深刻にしたとの認識を示した。


要は、しゃべるべきことと黙っているべきことの判断もできないということである。
『決まるまでは何もしゃべらない方がいい』と指摘されており……
これではまるで麻生と同じではないか!

その程度のことが自分で判断出来ないのか!

わたしたちは自民党を棄てた。
そのとき鳩山を党首とする民主党がそこにあった。
それが政権交代であった。

だれも鳩山由紀夫がこれほどバカだとは知らなかった。
いや、一人だけいた。

「もともと信念が堅固ではなく、アメーバ的で何でも調子をあわせることが
 できるから、普天間基地の移設問題もあちらこちらに行っている」


弟・鳩山邦夫の言葉である。

驚き、あきれているのはわたしだけではないだろう。
あと三年半は長すぎる。
とても辛抱できる期間ではない。

新しい年は、新しい総理候補をあれこれと品定めしながら迎えることになりそうだ。
民主党にもまだ人はいるだろう。





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100日・鳩山内閣

2009-12-25 20:52:09 | 鳩山由紀夫
海の向こうでは、政権発足後100日間はハネムーンと称して、マスコミも暖かく、忍耐強く政権批判を手加減するとか。
この国のマスコミにそんなものがあったのかどうかは分からない。
批判は控えめにしていた、などと言うところもあるかも知れない。
少なくとも産経は違っていただろう。
政権発足直後から、いや総選挙期間中も、解散する前からも、ずうっとずうっと昔から自民党の敵は産経の敵、と思い定めて攻撃しているのだから。

100日目が鳩山の弁明会見となった。
単なる偶然か、それとも検察の陰謀か。
検察の目にはマスコミの民主党叩きは生ぬるいと映っていたのだろう。
今日からは心おきなく民主党叩きをやるように、という検察からのメッセージだったのかもしれない。

麻生政権もそれなりに批判はされていたが、なんとなく「間抜けな麻生内閣」を揶揄するという感があった。
一方、鳩山・小沢への批判は、命まで取ってやろうかという力の込めようである。

幸いなことに材料は山ほどある。

一つ一つ挙げていけばきりがないので、一つだけ取り上げる。

予算に絡んで、小沢の要望が鳩山に突きつけられた。
マニフェストの変更を要求したのが子供手当に所得制限を設けることと、暫定税率の維持であった。

小沢支配と言われたくない鳩山としては両方を呑む訳にはいかない。
両方を蹴るのは後の祟りが恐ろしくてできることではない。
結局鳩山の選択は、金のかからない方であった。
所得制限で浮く金は大した金額ではない。
暫定税率を残した方がやり繰りは楽になる。
小沢もそのくらいの決着を想定していたのかもしれないが……。

この選択が正しかったのかどうかは時間を経た後でなければ分からないだろう。

所得制限を設ける場合の基準は800万円程度とか、一部には2000万円という声も出ていたようだ。
800万で線引きした場合、対象から外れる人は多少の不満は覚えるだろう。
しかし、それほど切実な痛みを感じる訳ではない。
2000万なら尚更である。
子育てを終わっている人も多いはずだ。

ところが、暫定税率の方は切実である。
公共の交通機関が整っている都市部と、車無しでは生活が出来ない地方の住民を区別せずに行う世論調査の結果を盾に、「国民が臨んでいるわけでもない」などと勝手な理屈で約束を反故にする。

取って付けたように、「環境問題のために」などと言い訳する。
そういえば、たばこの増税に関しても、「健康のために」などと言っていた。
要は金が欲しいだけだろうに。

麻生もそうだったが、鳩山も体裁よくしゃべろうとし過ぎる。
無理に敬語を使おうとして、奇妙な日本語になる。
言葉に、自然と伝わってくる人間性が感じられない。
「宇宙人だから」と言ってしまえばそれまでであるが。

鳩山のために一言弁護をすれば、総選挙が8月30日、その結果を受けて鳩山内閣発足が9月16日である。
ところで、2010年度予算の概算要求は8月末までにまとめられている。

予算(Wikipediaより)
通常、8月末に各省から提出された概算要求を財務省が査定して年末までに財務省原案として作成し、復活折衝を経て政府案を決定する。この政府予算案を1月中に国会へ提出し、3月末日までに成立するようにする(財政法第16条~第28条)


鳩山内閣成立前に、概算要求はできあがっていたのである。

10年度概算要求、最大の92兆円 民主、やり直し明言 (asahi.com 8/31)
10年度政府予算の概算要求で、一般会計の総額が09年度当初予算比約3兆5800億円増の約92兆1300億円に上る見通しになった。社会保障費や国債の元利払いが増え、概算要求額は初めて90兆円を超えて過去最大となる。ただ、民主党は概算要求のやり直しを明言しており、予算編成の見通しは不透明だ。


麻生内閣のもとですでに役人達は92兆円を超える概算要求をまとめていたのだ。
事業仕分けで、仕分け人達が戦っていたのがこの幻の概算要求だったのだ。
役人達も、自分たちがいい加減な要求をしていたのではないと証明しなければならない。
抵抗が強かったのも当然であろう。

10年度予算案を閣議決定 一般会計92.3兆円で最大 (asahi.com 12/25)
鳩山内閣は25日、2010年度予算案を閣議決定した。「子ども手当」など民主党が政権公約(マニフェスト)に掲げた主要政策を盛り込み、一般会計は過去最大の92兆2992億円。公共事業費は前年度当初予算比18.3%減と大幅に削減した。

 歳出は09年度当初予算を4兆円近く上回り、2年連続で過去最大を更新。社会保障費は9.8%増やした。鳩山政権が掲げる「コンクリートから人へ」の姿勢を示した。


”過去最大を更新”と言うけれど、麻生内閣のもとでまとめられた概算要求と同水準である。
子供手当その他を盛り込んでのこの数字は、まあまあ健闘したと言えるかもしれない。

無い袖は振れないが、それでも工夫をこらし、自分の信念・哲学を貫くのがステーツマン(statesman)というものであろう。





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