政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

前原誠司は国民の敵であることがはっきりした

2010-10-28 08:47:11 | 民主党

ここまで冷酷な物言いをする国務大臣がいただろうか。
しかも並び大臣ではない。
政権与党民主党の国交大臣を経て現在外務大臣である。
かつてその民主党の代表までつとめた人間である。

たまたまニュースを見ていて耳にした前原の次の発言には仰天した。

貿易自由化を柱とする環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を巡って、

「日本のGDPにおける第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっている」

1.5%というのは農林漁業部門の生産額を指しているようだ。
前原が生意気そうな表情でしゃべっていた。
(記者会見での発言だと思っていたのだが、10月19日に行った講演での発言だったらしい)

農業を守ることがこの国の迷惑になると言っているのである。
この男には、そういう言い方をされた農業従事者の心情を思う神経は欠落している。

こんな言い方をされたのでは、お百姓も辛かろう。

前原外務大臣のTPPに関する発言に対する抗議コメント

複数の報道によると、前原誠司外務大臣は、19日に、TPPへの参加の検討をめぐり「日本のGDPにおける第1次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」と発言したと伝えられている。
(中略)
鹿野道彦農林水産大臣も言われているが、第一次産業は、単なる数字で判断できるものではない。人が暮らし、営農している農村の多面的機能や、地域経済・雇用など、農林水産業の果たす重要な役割を正しく認識してもらいたい。
「この国のかたち」を主張すべき外交責任者である外務大臣の発言は、国益を著しく損なうものであり、抗議する。

平成22年10月21日
全国農業協同組合中央会
会 長 茂 木 守


前原が見ているのは数字だけである。
「人が暮らし、営農している農村」の姿は前原の目にはまったく見えていない。
見るつもりもないのであろう。

GDPの1.5%のために98.5%が犠牲になるという発想がどこからでてくるのか!
前原の頭の中では、98.5%のためには1.5%を犠牲にするのは当然なのであろうが……。

しかし、前原が犠牲にするのは、GDPの1.5%ではない。
300万人の農業従事者である。
家族を含めるとその2倍ぐらいになるだろうか。
その周辺で生活をしている人たちを含めると膨大な数になるだろう。

その人たちの生活する姿は前原の視野にはまるで入っていない。

日本の経済にとってTPPが大切だというのならそれはそれでいい。
しかしわたしたちが政治に望むのは、単なる数字ではない。
経済発展が、国民の幸福に直接結びつくものではないということは、私たちはしみじみと思い知らされている。

前原にとっては98.5%という数字は、残りの1.5%を見捨てるに足る十分な正当性を持つものらしい。

沖縄県人口   1,392,000人
日本の人口 127,700,000人

1%強の沖縄県民のために国民の99%を犠牲にするわけにはいかない。
よって沖縄県民を見捨てる。

なるほど前原誠司の頭の中では見事な整合性をもっている。

今や、国民の敵は、自民党だけではない。
民主党こそ、国民の前に立ちはだかる敵となってしまった。

昨年の総選挙前、あれほど民主党を支持し、敵の攻撃から民主党を擁護した人たちを民主党はすべて敵に回してしまった。
残っているのは、自民党から政権与党・民主党に乗り換えただけの既得権益擁護勢力のみである。

TPP、米豪など9か国と事務協議…前原外相 (YOMIURI ONLINE 2010年10月26日)
前原外相は26日午前の閣議後の記者会見で……。
(中略)
外相は会見で、「TPPはすでに9か国で相当議論しており、扉は閉まりかけている。政治的な先送りは許されない」と、早期参加を決断すべきだとの考えを重ねて示した。


TPP参加そのものは、政治的判断としてあり得よう。
しかし、その発想の底にあるこの政権の冷たさには顔をそむけたくなる。
おまけに、「扉は閉まりかけている」という発言は、この国の内政・外交の場当たり的対応のお粗末さをさらけ出している。
これではまるで、”駆け込み乗車”ではないか!
足下を見透かされるだけである。
こいつに交渉事など任せられないのはすでに証明済みではないか。
偽メール事件・八ッ場ダム・JALそして尖閣問題等々、枚挙に暇がない。




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千人の小沢支援デモは無視、百人の中国デモを報じるマスコミ

2010-10-25 18:40:29 | 小沢一郎
 中国での抗日デモは余程マスコミの好みに合っているのであろう。
連日、しっかり取り上げている。
こんな片田舎の集まりまできっちり報道されている。

中国 デモの拡大・過激化防止 (NHKニュース 10月25日)
中国では、24日、内陸部の甘粛省蘭州でおよそ100人から200人の若者らが、中心部で2回にわたって日本に抗議するデモを行いました。また、同じく内陸部の陝西省宝鶏でも学生らおよそ100人がデモを行いました。


これはNHKニュースであるが、これが産経となるとこうなってしまう。

「腐敗反対」「住宅高騰抑制しろ」中国反日デモに政府批判も
中国の甘粛省蘭州市と陝西省宝鶏市で24日、それぞれ数百~1000人規模の反日デモがあり、若者らが「釣魚島(尖閣諸島)を守れ」「日本製品ボイコット」などと叫んで市内を行進した。


産経を相手にしてもしょうがないが、いい加減な連中である。
共通するのは反・中国、嫌・中国感情を煽り立てようという意図である。
その材料になるなら地球の片隅にまで探しに行こうという使命感には恐れ入る。

しかし10月24日、日本のど真ん中で1000人規模のデモがあったことを伝えるマスコミは皆無であったようだ。

「10・24検察・検審を糾弾するデモ」

ネットでの呼びかけに応じて各地から思い思いに集まった人たちがデモ行進をしたらしい。

文藝評論家・山崎行太郎の『毒蛇山荘日記』 )様より引用
京橋の小さな公園からスタートし、西銀座通り、数寄屋橋交差点、新橋の直前で右折、日比谷公会堂、日比谷公園へ……。
(中略)
さて、参加者は意外に多かったのではないか。800人から1000人ぐらいはいたのかもしれない。素人の手作りデモだったらしく、参加者の中には、あまりにも静かなデモで、しかも最後は集会もなく流れ解散ということで……


かつて検察に対する猛烈な批判の声が上がったことがある。
黄色ペンキぶっかけ事件である。

(東京佐川急便から金丸信へ行われた5億円の政治献金を巡り、)東京地方検察庁特別捜査部は金丸に事情聴取のための出頭を求めたが、金丸はこの要請に応じずに政治資金規正法違反を認める上申書を提出するにとどまった。結局、東京地検は金丸に事情聴取せずに1992年9月に同法違反で略式起訴し、金丸は東京簡易裁判所から罰金20万円の略式命令を受けた。逮捕もなく事情聴取すらせず、5億円の賄賂に対する僅か罰金20万円というこの決着に、地検は国民から凄まじい批判を受け、検察庁の表札にはペンキがかけられた。(ウィキペディア 「東京佐川急便事件」)より

マスコミはこの黄色ペンキの映像を繰り返し放送し国民の怒りを煽り続けた。
この黄色いペンキは国民の怒りの象徴となってしまった。
国民の怒りと応援の声を背に受けた検察は今度は脱税で金丸を逮捕した。

今回、小沢不起訴への批判は、黄色ペンキではなく検察審査会が受け持っている。
日比谷交番焼き討ち事件以来、日本国民のメンタリティーは少しも変わっていないようだ。

しかし10月24日のデモこそ普通の市民の良識が検察批判となって現れた最初の画期的な事件である。
このデモでは、検察と一体となっているマスコミに対する批判のプラカードやシュプレヒコールもあったらしい。
他人への批判には先頭に立つが、自分への批判は完全無視するマスコミを考えれば、このデモを無視する彼らの対応は当然すぎるものであろう。

今回のデモの主催者は第2回目のデモを計画しているらしい。
こういう市民の声が大きく広がっていくことを心から願うものである。




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検察の無法を助長する裁判所…小沢一郎の次なる敵は裁判所である

2010-10-22 08:53:53 | 小沢一郎

有罪率99.9%!
こんな数字は裁判所の協力がなければ絶対にあり得ない。
これは検察と裁判所の協力の結果なのである。

裁判は、有罪を前提にした量刑のネゴシエーションに過ぎない。
裁判官は検察の提出する供述調書を最大の判断基準にする。
自分の面前での被告人の証言より、検察の調書を重視する。
被告人が、その調書は恫喝・脅迫・拷問のもとに検事がこしらえ上げたものと叫んでも、裁判官は検事の言うことを信じる。
嘘と分かっていても信じた振りをする。

その典型的な例が、前福島県知事・佐藤栄佐久氏の汚職事件裁判であろう。

福島県汚職判決要旨/東京地裁 (四国新聞社 2008/08/08 )
東京地裁で8日に言い渡された、前福島県知事佐藤栄佐久被告と実弟祐二被告の判決理由要旨は次の通り。
 【罪となるべき事実】
 一、栄佐久被告と祐二被告は共謀、木戸ダム工事受注に便宜を図った謝礼として、祐二被告が経営する郡山三東スーツの時価8億円相当の所有地を約8億7300万円で前田建設工業の指示を受けた水谷建設に買い取らせ、差額約7300万円のわいろを受け取った。
【収賄の共謀】
 栄佐久被告と祐二被告の検察官調書は信用できるから、祐二被告は2002年5月か6月ごろ、前田建設工業の紹介で水谷建設に土地を売却したことを栄佐久被告に報告したことが認められる。
【土地売却の利益】
 売却した土地の相当価格は高くても8億円を超えない。水谷建設から追加して支払われた1億円は、土地の売却代金に含まれると認定できない。祐二被告は栄佐久被告に報告していない。


検察の主張した賄賂額は一億七千万円であったが、裁判所はこれを七千万円に減額している。
この金額について佐藤栄佐久氏は後に語っている。

「事件後に水谷建設は購入価格を上回る9億6000万円で土地を手放し、さらにファンドに転売された時の価格は12億円を超えました」

実際には時価相当額より低い金額で売却されていたのである。

検察は時価と売却額との差額を賄賂として起訴したはずだった。
その根拠が消え失せたのだ。
これで検察側の論理は完全に崩れ去ったものと思われた。
しかし第2審の東京高裁の判決は奇妙きてれつなものだった。

懲役2年、執行猶予4年!

一審判決より少し値下げしたが、有罪は有罪である。

その判決理由というものが驚く。
土地売却の利益金額はゼロだが、「換金の利益」つまり土地を売れるようにしてやった利益があった。そしてそれを「無形の賄賂」と無理矢理こじつけたのである。

裁判所は何とか有罪の線だけは守ってやろうとしているのが一目瞭然である。
検察は、供述調書だけ取れれば、あとは裁判所がいいようにしてくれると思っている。
それが拷問によるものだろうが、脅迫だろうが、詐術だろうが、裁判所は検察の言うことを信じてくれる。

検察が好き放題のことをやれるのも、裁判所がこんな検察のやり方を容認・応援しているからである。
これから小沢一郎が戦うのはこういう検察・裁判所の連合軍である。

多くの人が、小沢無罪を主張し、精密な論証を展開している。
しかし、佐藤栄佐久判決に見るとおり、そんな正論が通る連中ではない。
闘いの行方は決して楽観はできない。

小沢一郎の強制起訴を決めた検察審査会なるものはすべて裁判所の直営店である。
運営は裁判所事務官が担当し、検察が共同出資者となっている。
政府や自治体の各種諮問会議とか委員会とかいうものも、事務局が1から10までお膳立てをして、委員となった学識経験者とか専門家とかいう連中は黙って事務局の敷いたレールに乗るだけというのが実態である。
まして検察審査会はシロート相手である。
事務局にとっては赤子の手を捻るようなものであろう。

今回の起訴にあたり検事役の弁護士候補の名前が取り沙汰されている。
当然、裁判所・検察・審査会事務局の意に沿うような人物が弁護士会から推薦されてくるのだろう。
検察審査会は、各地域の弁護士会にとっては優良顧客でもある。

敵の出方は目に見えている。
まず公判開始の引き延ばしである。
そして公判が始まってもダラダラといつまでも引き延ばしを図る。
一審判決までにマスコミを使って出来るだけ小沢一郎を痛めつける。
できれば一審でどんな形でもいいから有罪判決をとる。
さらに控訴審でまた引き延ばす。
そして最高裁まで引き延ばす。
あとは最高裁がうまいことやってくれる。

まあ最終的に小沢一郎が無罪になっても仕方がない。
そのころには小沢の力はまったく削がれているだろう。
こちらは別にだれが責任を問われるというわけでもない。

それもこれも最高裁判所がだめだからこんなことになる。
最高裁判所が堕落したわけではない。
最初からそうだったのだ。

今後展開されるであろう小沢裁判に何か意義を見いだすとすれば、この国の司法のデタラメな実態が少しでも明らかになり、何らかの改善のきっかけになるかもしれないということであろうか。

最高裁判所については言いたいことが多々あるのだが……。
とりあえず今日のところは、最高裁判所の改革と司法修習制度の廃止を提案するだけにする。
これについてはまた次の機会に書くことにしたい。





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小沢一郎「これは権力闘争だぞ」…その意味するところは

2010-10-11 09:44:24 | 小沢一郎

検察審査会が小沢一郎の起訴を決定した。
そのこと自体に驚きはない。
マスコミ・検察・裁判所そして検察審査会そのものの構成や運営の在り方を思えば、むしろ起訴以外の結論はあり得なかったと言えるだろう。

その後のマスコミの論調もまた予想通りである。
相も変わらず「政治とカネ」・「離党」・「議員辞職」と叫び続けている。

そんな中、ようやく小沢一郎は戦う決意を固めたのだろうか?

小沢氏、「これは権力闘争だぞ」と涙
民主党の小沢一郎元代表は4日午後、東京第5検察審査会の議決が公表された後、東京都内の個人事務所で自らに近い議員と会談した。
 その際、小沢氏は「これは権力闘争だぞ」と述べ、涙を流しながら自らの正当性を訴えたという。
(2010年10月5日03時04分 読売新聞)


「権力闘争」とはなにか?
小沢一郎と菅・仙谷一派との闘いではない。
小沢一郎と検察・マスコミとの闘いでもない。
小沢一郎が権力を握るための闘いなのではない。

これは”検察・マスコミ”と”政治”との権力闘争なのである。
検察・マスコミが政治を屈服させようとしている。

検察・マスコミは、政治の側が自分たちの利益を犯さない限りにおいて政治を容認する。
しかし、政治が彼らの領分を侵そうとするなら潰してやると牙をむく。

これは小沢一郎個人の闘いではない。
”政治”と”検察・マスコミ”との闘いなのだ。

菅や仙谷は分かっているのか。
前原や岡田は分かっているのか。
その他大勢の民主党議員達は分かっているのか。
闘いを挑まれているのは自分たちなのだということを。

谷垣をはじめとする自民党の議員達は分かっているのか。
小沢を攻撃する議員達は分かっているのか。
攻撃されているのは自分たちであるということを。

政治家が小沢を攻撃することは、”政治”を貶めることである。
小沢を攻撃することによって、彼らは自分の足下の土を崩しているのである。

彼らが小沢に勝ったとして何が残るのか。
政治の抜け殻である。

勝ったはずの彼らは、検察とマスコミの鼻息を窺いながら生きていかなければならない。
”検察とマスコミ”の牙が彼らにむけられないことを願いながら。
マスコミや検察の逆鱗に触れないように、腰をかがめて卑屈に生きていかなければならない。

いつか第二・第三の小沢一郎が現れるかも知れない。
その時また同じことが繰り返される。
今日の小沢は明日の小沢である。

一旦彼らのターゲットになれば助からない。
政治家は誰も味方にならない。
これまで味方だと思っていた連中も一斉に離れていく。
それどころか検察やマスコミと一緒になって彼の首を絞めにかかるだろう。

小沢一郎を攻撃している政治家連中には小沢一郎の「権力闘争」の意味が分かっていない。
小沢一郎が守ろうとしているのは、政治の権威であり、それは国民の権威なのである。

権力とは、国民に由来するものである。
国民の信託を受けてこそ始めて権力は正統性を持つ。

”検察・マスコミ”に小沢一郎が負けたとするなら、それは”政治”の敗北であり、国民の敗北なのである。

小沢一郎の闘いは、我々国民の権威を守るための闘いなのである。





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検察審査会の風景…本当の悪人はこいつだ!

2010-10-05 23:01:00 | 小沢一郎
案の定、起訴相当議決が出た。
腹が立って議決文を読む気にもなれない。

今回の議決をした11人の審査員は、前回議決時のメンバーとは全員入れ替わっている。
その入れ替わった11人が議決したのだから、やはり起訴決定は国民の意思の表れである、と理屈にもならない理屈を言ってる奴らがいる。

確かに、審査員は全員入れ替わった。
審査補助員の弁護士も入れ替わった。

しかし、ここに代わらない奴らがいる。
こいつらこそ真の悪党である。
こいつらが交代しなければ審査会の議決が変わることはない。

こいつらというのは検察審査会事務局である。

まずこれまでの経過を考えてみよう。
今年4月27日、検察審査会は小沢一郎に関して全員一致で”起訴相当”の議決を出した。

この”起訴相当”を決めた顔ぶれのうち半数がまず改選される。
今回は5月1日に6人が入れ替わったらしい。

さて、その新しい審査員が出席する第一回の会合がいつ開かれたのかは分からない。

多分そこで最初に議題になったのは、検察審査会長の選任であろう。
これは審査員の互選で選ばれることになっている。

検察審査会法 第15条

前条に規定する各群の検察審査員及び補充員のいずれかの任期が開始したときは、その都度速やかに検察審査会議を開き、検察審査会長を互選しなければならない。この場合において、検察審査会長が互選されるまでは、検察審査会事務局長が検察審査会長の職務を行う。


つまり第一回目の会議は検察審査会事務局長が議長として口火を切る。

「本日は皆様お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。(中略)我々にはどんな小さな悪も見逃してはならない、という使命・責任がございます。さて本日まず皆様に最初にお願いすることは、審査会長の選任であります」
ここで事務局長が一同を見回す。
「どなたか立候補なさる方はいらっしゃいますか」
一同無言。
「新たに審査員になられた方は、事情や運営等についてもよくご存じないでしょうから、ここはどうでしょう、前回から審査員を続けていらっしゃる方のうちから選んでは?」
一同無言で頷く。
「それでは前回から引き続き委員をなさっているこちらの5人の方、自薦・他薦を問わずお手を上げていただけませんでしょうか」
一同無言。
やや間があって、再び事務局長
「××さん、如何でしょうか」
××さん
「いやあ、わたしなんか」
「いえいえ、これまでのご意見・ご見識を拝見しておりまして十分すぎる力量をお持ちだとわたしどもは確信しておるところでございます」
「いやあ……、しかしまあそこまでおっしゃられるのであれば逃げるわけにもまいりませんな。他の方にご異存がなければ、お引き受けいたしましょう」
「どうでしょう皆さん。××さんがせっかくお引き受けしてもよいとおっしゃっております。××さんにお願いしてみては?」
一同頷く。
(もう少し芸の細かいところを見せるかも知れない。△△さんに××さんを推薦させるというような筋書きもあり得る)

いずれにしろこれで手際よく検察審査会長が決定する。
「小沢、断固起訴すべし」、という検察審査会長の誕生である。
もちろん話は事前にできている。

ところでここまで進行役を務めた検察審査会事務局長とは?

検察審査会法 第20条 
各検察審査会に最高裁判所が定める員数の検察審査会事務官を置く。
2 検察審査会事務官は、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを命じ、検察審査会事務官の勤務する検事審査会は、最高裁判所の定めるところにより各地方裁判所がこれを定める。
3 最高裁判所は、各検察審査会の検察審査会事務官のうち1人に各検察審査会事務局長を命ずる。


検察審査会事務局長は最高裁判所が勝手に指名するのである。
裁判所事務官であるから、まあ法律の専門家である。
ただし司法試験には合格していない。

さてその4項には、

4 検察審査会事務局長及びその他の検察審査会事務官は、検察審査会長の指揮監督を受けて、検察審査会の事務を掌る。

ここで立場が逆転して、審査会長に決まった××さんが事務局長を指揮監督することになる。
検察審査会長の××さんの権限は、表向きは強大である。

第15条 2 検察審査会長は、検察審査会議の議長となり、検察審査会の事務を掌理し、検察審査会事務官を指揮監督する。

第18条 検察審査員が欠けたとき、又は職務の執行を停止されたときは、検察審査会長は、補充員の中からくじで補欠の検察審査員を選定しなければならない。
第18条の2 検察審査会長は、検察審査員又は補充員が欠けた場合において、必要と認める員数の補充員(以下この条において「追加補充員」という。)を選定することができる。


つまり、補充員は審査会長が前もって選定しておき、審査員に欠員がでたときにはその補充員の中からクジで審査員を選ぶということらしい。
つまり審査会長のお眼鏡にかなった者のうちからクジで選ぶというのである。
もちろん実際の手続き一切は事務局が行う。
だれがクジに当たろうと、事務局の思惑に沿った人物となる。

よくもまあこんな姑息な法律を作っていたものだ思わず感心してしまう。

第21条 
2 検察審査会長は、特に必要があると認めるときは、いつでも検察審査会議を招集することができる。

第33条 申立による審査の順序は、審査申立の順序による。但し、検察審査会長は、特に緊急を要するものと認めるときは、その順序を変更することができる。
2 職権による審査の順序は、検察審査会長が、これを定める。


何時、どの事件を審査するかは審査会長の恣意に任せられる。
もちろんこんなこと素人に決められるはずもない。
事務局長のアドバイスという形の指示・命令に従うことになる。

第39条の2 検察審査会は、審査を行うに当たり、法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるときは、弁護士の中から事件ごとに審査補助員を委嘱することができる。
2 審査補助員の数は、1人とする。
3 審査補助員は、検察審査会議において、検察審査会長の指揮監督を受けて、法律に関する学識経験に基づき、次に掲げる職務を行う。
 1.当該事件に関係する法令及びその解釈を説明すること。
 2.当該事件の事実上及び法律上の問題点を整理し、並びに当該問題点に関する証拠を整理すること。
 3.当該事件の審査に関して法的見地から必要な助言を行うこと。


形式上、××さんは検察審査会事務局長たる裁判所事務官も審査補助員たる弁護士をも指揮監督するのである。

もちろん××さんは法律のシロウトであり、審査員になってまだ3ヶ月しか経っていない。
事務局長や弁護士を指揮監督出来るはずもない。

××さんは、前回「起訴相当」の議決に賛成していた。
全員一致であるからこれは間違いない。

これからの3ヶ月間の審査は当然××さんと事務局長がリードする。
事務局長の交代はなかったものと思われるが、たとえあったとしても指名する人間(最高裁のどこかの部署の誰か)が同じであれば同じことである。

3ヶ月経つ頃にはほぼ審査会の空気は出来上がっている。
7月末、××さんはじめ5人の任期が切れ、同じことが繰り返されることになる。

そして8月初旬に最初の検察審査会の会合が開かれる。
事務局長がおもむろに口を開いて新しい審査会長の選任が始まる。
××さんの意思を引き継ぐ残留組の○○さんが新しい審査会長に決まり、事務局長を指揮監督する。
(ここまではまったくわたしの推測である。しかし当たらずといえども遠からずだとわたしは思っている)

事務局長の権限は実質的にはとてつもなく大きい。
検察審査会法では、事務局長は単なる事務手続きの責任者であるかのようにも読めるが、実際はすべてを裁量する力を持っている。

そしてこの事務局長の選任は、まったく最高裁判所の恣意に委ねられている。
最高裁判所が官僚の天下り指定席であり、法務省・検察と同じ穴のムジナであることは少しずつ知られてきている。

本当に悪い奴は、ドシロート集団を正義という名前で騙し小沢を追いつめる最高裁判所であり、その手先の事務官であり、ぐるになっている弁護士であり検察である。

そして検察審査会事務局と事務局長こそ、審査会を好きなように振り回している最前線部隊なのである。
(もういい加減に法曹一元という腐りきったシステムを見直すべきであろう)

それにしても、どこが頭でどこが尻尾だか分からないようなこんな法律を作っておいた連中にはほとほと感心する。




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枝野幸男の幼児性…深刻な民主党の中枢麻痺

2010-10-04 14:17:40 | 民主党

麻生太郎が首相になり、勘違いの解散先延ばしを続けていたとき、麻生太郎は間違いなく史上最低の総理大臣だと多くの人は考えた。
確かにその通りで、自民党は目も当てられぬ敗北で政権交代を実現させてしまった。
だれが総理になっても、麻生よりはマシだろうと、だれもが思っていたのだが……。

鳩山と麻生!
麻生に比べれば、鳩山の方がまじめに問題に取り組もうとしていただけマシだったとは言えるかも知れない。

次が菅!
まさか麻生や鳩山よりはマシだろうと今度こそだれもが期待していた。
それがいきなり、「小沢さんは静かにしていろ」の仰天発言である。

本人にそれだけの能力があれば、それでもいい。
小沢抜きで、国民を幸せにする政治が出来ればそれでもいい。
しかし菅は、総理就任以来4ヶ月、それこそ何にもしていない。
無理に探せば小沢攻撃だけである。

今思えば、鳩山内閣の副総理・国家戦略担当大臣として鳩山内閣の中心にいながら、六ヶ月間ただ眠っていただけだった。
何の役にも立たない副総理であった。
鳩山にしては無駄な一ポストであった。

鳩山退陣の直接の要因は普天間問題であろう。
豪華な布陣で普天間解決に当たれば、問題は前進するはずであった。

副総理・国家戦略相 菅直人 (のち財務大臣へ)
外務大臣       岡田克也
国交相・沖縄担当相 前原誠司
防衛相        北沢俊美
行政刷新担当相   仙谷由人(のち国家戦略担当へ) 
行政刷新担当相   枝野幸男

結果的に彼らはサボタージュと鳩山無視、アメリカ従属で鳩山の足を引っ張り、見殺しにした。

菅直人内閣が発足すると、仙谷由人が内閣官房長官に横滑り、枝野が幹事長に昇格しただけでこの連中はそのまま居残った。
鳩山内閣の負の遺産そのものである。

改造内閣では、岡田幹事長・前原外相と小幅に動いただけで、基本コンセプトには変化なしである。

変化らしい変化といえば、枝野幸男が幹事長を降りただけである。
これは参院選敗北の責任をとったということだけで、路線の変更などというものではない。
しかも参院選敗北の最大の要因は、菅直人の消費税増税発言である。
責任を取るべきは菅直人その人であったのだが。

さて今回の尖閣諸島問題も絡んでいるのは上記の連中である。
案の定、惨憺たる経緯をたどっている。
国家中枢が無能なばかりではなく、麻痺状態であることを暴露してしまった。

辞めさせられた枝野は、おとなしくしていられない性格なのだろう。
本人は正論を叫んでいるつもりなのがおかしい。
しかしその幼児性には驚かされる。

中国は「あしき隣人」「法治主義通らぬ」 講演で枝野氏 (asahi.com 2010年10月2日)
民主党の枝野幸男幹事長代理は2日、さいたま市で講演し、尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件に触れて「中国との戦略的互恵関係なんてありえない。あしき隣人でも隣人は隣人だが、日本と政治体制から何から違っている」と、中国を強く批判した。

枝野氏は講演で「中国に進出している企業、中国からの輸出に依存する企業はリスクを含めて自己責任でやってもらわないと困る」と発言。さらに「中国は法治主義の通らない国だ。そういう国と経済的パートナーシップを組む企業は、よほどのお人よしだ」とも述べた。

 日本外交の方向性については「より同じ方向を向いたパートナーとなりうる国、例えばモンゴルやベトナムとの関係をより強固にする必要がある」と持論を語った。


確かに中国は日本と違っているというのは、その通りだろう。
しかし日本と違うのは、程度の差こそあれどこもそうである。

枝野はベトナムを日本のパートナーとして取り上げる。
枝野は、ベトナムが共産党独裁国家だということを知っているのか?
ベトナムの国名が「ベトナム社会主義共和国」であることを知っているのか?

政治はベトナム共産党(ベトナム戦争中は「ベトナム労働党」)による事実上の一党独裁政治が行なわれている。(ウィキペディアーベトナムより)

共産党独裁国家が、なぜ中国に代わる日本のパートナーなのか!

小沢一郎が嫌い。
小沢と仲のいい中国が嫌い。
だからといってベトナムというのはあまりにお粗末ではないか。

どういうわけか、民主党はベトナムが好きらしい。
ベトナムの原発・高速鉄道を受注しようと政府が一丸となっている。
今年になってベトナムを訪問した閣僚は、

直嶋経済産業相
岡田外務大臣
仙谷由人国家戦略担当相
前原誠司国土交通相
ジェトロ-政治動向)より


しかしこれが、ベトナムは中国と違って日本と同じ体制の国という認識のもとに行われているとしたら、恐ろしいことである。

「より同じ方向を向いたパートナーとなりうる国、例えばモンゴルやベトナム」

枝野は民主党の幹事長であった。
もしかしてこれが菅政権・菅民主党の共有している認識なのか。

枝野は、中国を法治国家ではない、民主主義国家ではないと断罪する。
しかしベトナムはどうなのか?

ベトナム国会議員選挙  18歳以上の国民による直接選挙で5年に1度実施。被選挙権は21歳以上。中選挙区制で、全国182の選挙区があり、定数2人区と3人区で構成される。総定数は500。共産党1党支配のベトナムでは、候補者が党の翼賛組織「ベトナム祖国戦線」の審査などで絞り込まれ、共産党の意向が選挙結果に反映される仕組みで、完全な自由選挙ではない。議員は国家主席、首相、最高裁長官らに対する解任発議権を持つ。
(西日本新聞 2007年5月21日掲載)


世界には様々な体制の国がある。
しかし、それが現実なのである。
その中で、国民の利益を保持しつつ、理想の世界の実現を目指すのが政治であろう。
「日本とは違う」と言って中国を敵に回してどうするのか!

中国抜きで、日本経済も世界経済も成り立たない。
これもまた現実なのである。

「中国進出企業のリスクは自己責任で!」

たしかにわたしもそう思うが、政治が”それを言っちゃお終いよ!”

中国は日本と違う。
ロシアは日本と違う。
アラブは日本と違う。

それで最後に残るのはアメリカか!





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