政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

日本が厄介な国なら、アメリカは?

2009-10-30 16:42:46 | 民主党
どこの国でも政府と国民とがぴったり重なっているわけではない。
アメリカも、アメリカ政府とアメリカ国民がまったく同じ考えを持っているわけではない。
インド洋での給油もアメリカ政府は継続を望んでいたろうが、アメリカ国民の多くは、日本がそんな活動をしていることは知らないだろう。

日本のメディアはアメリカ政府の言うことをアメリカ全体の意思であるかのように報道する。
アメリカのメディアの一部の報道がアメリカ全体の意思であるかのように報道する。
オバマはアフガニスタンへの米軍増派を意図しているが、アメリカの国民世論は3割程度が賛成しているに過ぎないという。

アメリカの鼻息を窺い続けた65年間に、日本は政府もメディアも国民の多くもアメリカに対して冷静に対処することを忘れ、思考停止状態に陥っている。
アメリカの要求を悉く受け入れ、アメリカを喜ばせることが日本の利益であると思いこんでいる。
アメリカに不快感を与えることは国益に反する。
そう思いこんできたのが、自民党政府であり大手メディアであった。
官僚はアメリカの言うことを聞いていれば面倒に巻き込まれることも、責任を問われることもなかった。

米高官「最も厄介なのは中国ではなく日本」 米紙報道 (asahi.com 2009年10月23日)
【ワシントン=伊藤宏】米紙ワシントン・ポストは22日付の1面で、米軍普天間飛行場の移設問題をはじめとする鳩山政権の日米同盟への対応について、米国務省高官が「いま最も厄介なのは中国ではなく日本」と述べたと伝えた。日米関係について米主要紙が1面で報じること自体が少ないだけに、米の懸念の強さが浮き彫りになった。

 ポスト紙は、訪日したゲーツ国防長官が日本側に強い警告を発したのは、日本が米国との同盟を見直し、アジアに軸足を置こうとしていることへの米政府内の懸念のあらわれと指摘。米政権がパキスタンやアフガニスタン、イラン、北朝鮮などへの対処に苦しんでいる時、普天間飛行場移設問題などで「アジアで最も親密な同盟国との間に、新たに厄介な問題を抱え込んだ」とした。国務省高官は、鳩山政権や民主党が政権運営の経験に乏しいうえ、官僚組織への依存から脱却しようとしていることが背景にあると語ったという。


「対等な日米関係」を唱える民主党政権とアメリカ政府との間にきしみが生ずるのは当然である。
外交とは国益と国益のぶつかり合いである。
”米の懸念の強さ”、”強い警告”などとポスト紙の記事を解説してみせる日本のメディアの姿勢には違和感がある。
「アメリカを怒らせた民主党政権」という雰囲気が漂う記事である。
まるでアメリカの代弁者である。

U.S. pressures Japan on military package



ポスト紙の記事の末尾は次のようである。

"I have never seen this in 30 years," Calder said. "I haven't heard Japanese talking back to American diplomats that often, especially not publicly. The Americans usually say, 'We have a deal,' and the Japanese respond, 'Ah soo desu ka,' -- we have a deal -- and it's over. This is new."
Calder氏 : わたしはは30年来、こんなの見たことない。日本人がアメリカの外交官にこんなに反論するのを聞いたことがない、とりわけ公の場でないところで。
普通はアメリカが「こう決めよう」というと「アア、ソーデスカ」でおしまいだった。
これは新事態だ。
(大体こんな意味なんだろう)


アメリカが望むのはこんな日本政府である。


読売もほぼ同じ見出しである。
日本国民の意思、沖縄県民の願いをアメリカにぶつけてやろうなどという姿勢は微塵もない。

「最もやっかいな国は日本」鳩山政権に米懸念 (YOMIURI ONLINE 2009年10月23日)

「アメリカにとって日本は厄介な存在になったかも知れない。
しかし、アメリカは世界の厄介者ではないか!」
せめてこれぐらいのことは言って欲しいものだ。





政権交代の果実は?


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自民党の算術・報われない努力

2009-10-28 18:17:17 | 自民党
民主党も大分モタモタしているが、自民党の方がそれ以上なのでまだまだ余裕をもっていられる。
自民党は、てんでんバラバラに分解・消滅への道を探っている。
本人達はそれぞれ大まじめに駆け回っているのだろうが、藻掻けば藻掻くほど死期を早める。

真保守研、再始動へ 安倍元首相を新会長に (産経ニュース)
2009.10.28 01:01
 保守勢力の再結集を掲げる自民党国会議員を中心とした「真・保守政策研究会」は27日、国会内で衆院選後初の幹部会を開き、民主党を中心とする政権が誕生したのを受けて、活動を再開させる方針を決めた。11月中旬にも総会を開く。また、平成19年12月の発足から会長を務めていた中川昭一元財務相の死去を受けて、後任に安倍晋三元首相を内定した。

 安倍氏を会長にする人事は、中川氏が衆院選落選直後に希望していたといい、中川氏の遺志を継ぐことを重視した。

 真保守研は、先の衆院選で、所属する議員が77人から45人に減少した。このため幹部会は、自民党を中心に新たに参加者を募ることも決めた。


自分たちこそ自民党の救世主たらんと思いこんでいるのだろうが、ここまでの自民党没落の最大の功労者たちである。
中川昭一から安倍晋三への交代劇というのも落ち目の自民党を見事に象徴している。

保守という言葉につられるのは、もともとの右翼連中だけである。
多くの有権者にとってはもはや死語である。
もともとの自民党支持者に訴えるだけのことで、離れていく有権者の方が多い。
もっとも、彼等の趣味の集まりと考えれば騒ぐほどのことでもない。

故中川元財務相、正三位に  (NIKKEI NET 10/27)
政府は27日の閣議で、4日に東京の自宅で死亡しているのが見つかった故中川昭一元財務相を正三位に叙し、旭日大綬章を贈ることを決めた。


勲章が欲しければやればいい。
しかし位階は不要であろう。
一般に”官位官職”といわれる。
”官職”は職務を表す。
古くは、左大臣、右大臣、大納言等々ピンからキリまである。
その上に太政大臣、さらには摂政・関白。
現代ならば、内閣総理大臣、衆議院議長、東京都知事、長崎市長、広島警察署長、あるいは東海村役場庶務課長、大阪府警巡査、海上自衛隊二等陸士等々が官職に当たる。
しかし現在、官位(位階)は死後にのみ与えられることになっている。

生前贈れないものが、なぜ死後ならいいのか?
勲章に等級をつけるのはいい。
しかし官位は別である。
官位は天皇の臣下たる者の序列である。
戦後一旦廃止された生前叙勲が復活したときにも、復活できなかったのが生前叙位である。
奈良時代以前からの天皇統治のシステムを今に残す事の意味はまったくなかろう。
国民と天皇との関係が変化しているのである。
気分の悪い制度である。

政権交代を機に官位制は廃止して貰おう。
それにしても、民主党政権が最初に追贈した官位が中川昭一というのは皮肉と言うべきか。
民主党政権樹立に大いなる功績はあったのは間違いないが……。

他にも次の選挙に向けて一生懸命やっている積もりの奴らがいる。

自民、世襲制限を事実上撤回 (asahi.com 10/23)
自民党は23日の臨時役員会で、次の総選挙の公認候補予定者となる小選挙区支部長の選任基準を決めた。比例区での復活当選者を含め現職は原則支部長とし、落選者は年齢や惜敗率、地方組織の意向などを勘案して年内に決める。8月の総選挙でマニフェスト(政権公約)に掲げた世襲制限は事実上撤回した。


世襲でも何でも、選挙に勝てる奴が良い候補。
第一、今や自民党内で世襲でない奴を探す方が難しい。
世襲否定は自己否定につながる。

しかし世襲候補を増やせば、国民はますます自民党を見離す。
世襲候補一人当選させれば、そのおかげで三人が落選する。
しかし、自民党ではこんな高等算術は理解できないだろう。

次は足し算。

改革クラブ、中村喜四郎氏加わり政党要件満たす (2009年10月19日 読売新聞)

改革クラブ(代表・渡辺秀央参院議員)は19日、無所属の中村喜四郎衆院議員が合流し、所属国会議員が5人となったと発表した。

 先の衆院選の結果、参院議員4人だけとなり、政党交付金を受けるための政党要件を失っていたが、中村氏の合流で回復した。


中村喜四郎は選挙はめっぽう強い。
汚職で裁判を受けている間も9年間当選を続け、有罪が確定して初めて議員辞職した男である。
刑務所を出てからまたまた当選を続けている。
政権交代など”どこ吹く風”と無所属で小選挙区を勝ち上がってきた。
これで4+1=5

自民、衆院会派名「自民党・改革クラブ」に (YOMIURI ONLINE 10/20)
自民党は20日午前、衆院の会派名を「自民党・改革クラブ」に変更することを衆院事務局に届け出た。

 改革クラブに入党した中村喜四郎・元建設相と統一会派を結成したことに伴うもの。衆院の新勢力分野は次の通り。

 民主党・無所属クラブ311▽自民党・改革クラブ119▽公明党21▽共産党9▽社民党・市民連合7▽みんなの党5▽国民新党3▽国益と国民の生活を守る会3▽無所属2


201+5=206
201は衆参合わせての自民党議員数である。
大勢に影響はないが、溺れる者はわらをも掴む。
こんな奴らは、いざ選挙の時には何の役にも立たないということが見えていない。

次は引き算。

河野太郎氏、青木前参院議員会長に引退勧告 (YOMIURI ONLINE 10/22)
自民党の河野太郎国際局長は22日配信の自らのメールマガジンで、来夏に改選を迎える青木幹雄・前参院議員会長について、引退すべきだとの考えを示した。

 河野氏は「参院選の候補者は、勝てる候補に差し替えなければならない。青木氏が自分はやるけどダメな奴(やつ)は差し替えるよとか、自分がやるからみんなやろう、というわけにはいかない」とけん制した。


引き算の対象は森喜朗や青木幹雄である。
しかし、彼等こそ自民党の精髄である。
彼等こそが自民党なのである。
彼等がいなくなったら自民党が自民党でなくなってしまう。
まだまだ現役で活躍して欲しい人材である。

無理な引き算に挑戦などせずに自分が出て行った方がよさそうなものだが……。

何を足そうが何を引こうが、結局は引き算になってしまうのが今の自民党である。




政の次は官と財とマスコミと!


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日本郵政社長人事に関するいくつかの疑問

2009-10-23 12:10:36 | 民主党
亀井郵政担当大臣が西川善文社長を辞任に追い込んだ。
自発的辞任という名の実質的解任である。
鳩山邦夫元総務大臣が辞任という名で実質罷免されたことと好一対である。

亀井は「生首を取るようなことはしたくない」と言っていたが、実のところ亀井には「生首は取れなかった」のである。

亀井郵政担当大臣には、西川社長を解任する権限がなかったのではないか。
郵政の取締役人事は法的には総務大臣の承認が要る。
しかし、亀井は総務大臣ではない。
郵政に関する権限を総務大臣から郵政担当大臣に移すということが法的に成り立っているのか。
閣内の了解だけでは不足であろう。
実質的に郵政担当大臣に権限があるとしても、形式的には総務大臣に権限が残っているのではないか。
すると亀井はいざ人事権を執行しようとしても現実には原口総務大臣の口を通さなくてはならない。
原口の口出しに、「郵政はおれの担当だ」などと啖呵を切っていられる立場ではない。

日本郵政株式会社法
第九条  会社の取締役の選任及び解任並びに監査役の選任及び解任の決議は、総務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。


亀井にすれば西川に辞任してもらうのが一番良かったのである。
でなければ、さらに面倒が待っていた。
西川の肩書きは「取締役兼代表執行役社長(CEO)」というものである。
以前にも何度か書いたが、これは日本郵政が委員会設置会社であるところから、こんな肩書きになる。

会社の業務等の監督は取締役会、実際の業務は取締役会により任命される執行役が行う。

西川善文は取締役会のメンバーであり、代表執行役を兼任しているのである。
総務大臣は取締役及び執行役員の人事を承認する権限はもつが、一度承認した人事を解消する権限まで持つかどうか、つまり解任権があるかどうかには疑問がある。

もし西川を強権で解任しようとすると、日本郵政株式会社の唯一の株主である財務大臣に臨時株主総会を招集してもらい、そこで西川解任に反対の取締役を全員解任し、新しい取締役を選任し、その新しい取締役会で西川の執行役を解任しなければならない。
その新しい取締役会が新しい代表執行役を任命する。
そして初めて新社長が誕生する。

そこで亀井には新たな関門が待っていることになる。
現在の取締役をどうするか、という難問である。
取締役会が斉藤次郎社長を認めなければ、取締役を入れ替える必要がある。
取締役の任期は次の株主総会までである。
定例の株主総会は六月である。
取締役を任期途中で解任するには臨時の株主総会を招集しなければならない。

現在の取締役の構成は以下のようである。

取締役会長(社外取締役)
西岡 喬(にしおか たかし)

取締役兼代表執行役社長(CEO)
西川 善文(にしかわ よしふみ)

取締役兼代表執行役副社長
高木 祥吉(たかぎ しょうきち)

牛尾 治朗(うしお じろう)ウシオ電機株式会社代表取締役会長
奥田 碩(おくだ ひろし)トヨタ自動車株式会社相談役
丹羽 宇一郎(にわ ういちろう)伊藤忠商事株式会社取締役会長
奥谷 禮子(おくたに れいこ)株式会社ザ・アール代表取締役社長
高橋 瞳(たかはし ひとみ)青南監査法人代表社員
下河邉 和彦(しもこうべ かずひこ)弁護士


奥田碩(トヨタ)・丹羽(伊藤忠)・西岡(三菱重工)等の首を切れるか?
彼等は今年六月に揃って西川を再任したばかりである。
西川を首にするのなら、彼を任命した取締役会の責任も問わなければなるまい。

亀井にとって、強権発動は限りない茨の道なのである。

このことに関しては、竹中平蔵の批判もまんざら的はずれでもない。
「正式な手続きを踏まず、嫌がらせのように一民間人に圧力をかけた」
jiji.com 10/20


詐欺師と火事場泥棒を合わせたような男の言うことであるが、さしづめ”泥棒にも三分の理”、というところか。

斉藤次郎元大蔵事務次官の起用にも疑問が残る。
自民党が言うような斉藤氏が官僚上がりだからなどという理由からではない。
相変わらず自民党は馬鹿なことを言っている。

斎藤氏起用に自民反発…「官僚はダメ」と矛盾
これに対し、自民党からは批判の声が相次いだ。大島幹事長は21日午前、党本部で記者団に「昨年の日銀総裁(人事)の時に、『財務省出身だからいかん』と、(民主党から)強烈な抵抗にあったことを考えるとどういう一貫性があるのか。民間人が経営のノウハウを生かした方がいい」と述べた。

 石破政調会長も、「細川内閣の国民福祉税(構想)で旧大蔵省の論理を体現した斎藤氏が就けば、民営化の趣旨がどうなるのか。(民主党は)今まで『官僚はダメだ』と主張してきたが整合性はどうか、と言わざるを得ない」と記者団に語った。
(2009年10月21日 読売新聞)


日銀総裁に関しては、財政と金融の分離という建前からは、民主党としては大蔵事務次官上がりの武藤氏の総裁就任は絶対認められない人事であった。
民主党の言う”官僚出身者”とは出身省庁との関係の深さ・影響力に注目したものであり、出身省庁の意思の働かない人事については関係ない概念である。

わたしの疑問は別にある。
斉藤氏選定の過程である。
伝わるところでは亀井の独断による決定のようである。
小沢の了解くらいは取っていたのかもしれないが、亀井が主になって決定したものであろう。
官房長官も総務大臣も事後承諾のようである。
しかし、これくらい重要な決定を亀井個人の考えに任せていいものか?
選定についてはしかるべき機関における選考・検討が、そして決定については閣僚委員会での検討・了解の手続きが必要ではないか。
こんな決定の仕方には、今後亀井の独走を許す懸念が残る。
人事は密なるをもって良しとす?
(斉藤選任についての過程は今後はっきり分かってくるのかも知れない)

さて今後の手順についての要は取締役の奥田碩であろう。
この男が亀井に付けば以後の段取りはスムーズに進む。
本来は西川と共同責任をとって辞任すべきであろうが、そうなると取締役の大多数を選定し直さなければならなくなる。
奥田留任の筋書きはすでにできているのかもしれない。
少なくとも奥田の了解あるいは協力の約束くらいは取っているであろう。

亀井は古いタイプの政治家であるが、手練手管と押しの強さを備えた油断できない政治家でもある。





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自治体首長たちの思い上がりと勘違い・地域主権はまだ早い

2009-10-20 11:35:48 | 政治
民主党のマニフェストには地域主権が掲げられている。
自治体の首長たちはそれを逆手にとる。

前原国交相が八ッ場ダムの工事中止を明らかにすると、揃って抗議の声を上げる自治体の長たち。
「地域の意思を無視した決定である。地域の声を聞こうとしない。地域主権に反する」
羽田のハブ空港化を打ち出すと、キチガイみたいに怒って見せる知事がいる。
「寝耳に水」だの「一言の相談もない」だのとわめき立てる。
こいつらは自分が地域の主権者だと思っている。
地域の主権者は地域の住民である。
地域主権などと言うと自分が主権者だと勘違いする知事や市町村長たち。
こいつらに勝手なことをさせておくわけにはいかない。

鞆の浦埋め立て架橋事業めぐり、国交相と羽田市長が論戦 広島・福山市 (産経ニュース 2009.2.6)
万葉の昔から瀬戸内海の景勝地として知られ、今も江戸時代の風情が残る鞆の浦(広島県福山市)の埋め立て架橋事業をめぐり、国と地元自治体との対立が深まっている。事業は着工に向けた手続きが最終段階に入っているが、埋め立て免許を認可する金子一義国交相が反対運動が起こっていることをふまえ「国民の同意を取り付けてほしい」として“待った”をかけた格好だ。これに対して、福山市の羽田皓市長が「民主主義の手続きを踏んだのに国民同意とは何事か」と反発するなど、論戦が続いている。

 事業をめぐっては、反対派住民らが昨年10月、事業主体の一つである県が申請した埋め立て免許を認可しないよう求める約10万人分の署名を国交省に提出。金子国交相は「一般論として言えば、風光明媚(ふうこうめいび)な所は避けた方がいい」などと述べた。
(中略)
鞆の浦 弓を射る際、腕につける武具「鞆」が地名の由来とされる瀬戸内海の景勝地。美しい景観は万葉集にも詠まれ、江戸時代の朝鮮通信使も絶賛した。埋め立て架橋事業は交通渋滞緩和と地域振興などを目的に昭和58年に計画を策定。排水権者らの同意が得られず、一時凍結されたが、県が昨年6月に埋め立て免許の認可を国に申請した。一方、反対派住民らが免許差し止めを求めて広島地裁に提訴しており、今春にも判決が出る見通し。


福山市と広島県が事業を強引に推進しようとし、国交大臣がブレーキをかけている。
自民党政権としては珍しく真っ当な態度である。
これは国と地方自治体の対立。
そしてもう一つの対立がある。
国交省に寄せられた10万人の国民の声と地域住民の声との対立である。
地域住民の生活と国民の自然・景観・文化遺産保存を要求する権利との対立である。
ここには自然・景観・文化遺産は国民のものか、地域住民のものかという問題が潜む。
そしてさらにもう一つの対立がある。
賛成派と反対派との住民同士の対立。

対立の三重奏である。

さて上の住民訴訟の一審判決が10月1日に出された。
工事中止の住民勝訴であった。
が、藤田知事は即座に控訴することを決定したらしい。

鞆の浦、現地見た裁判官の判決に現地見ない広島県知事が控訴 (JANJAN 2009/10/16)

「景観」を「保護法益」と認定

 広島地裁の能勢顕男裁判長は、「鞆の浦の景観は住民らの利益にとどまらず、瀬戸内海の美観を構成し、文化的・歴史的価値をもつ国民の財産ともいうべき公益」と指摘しました。

 瀬戸内海の環境保全を趣旨とする「瀬戸内法」によっても公益として保護されていると述べ、景観を侵害する政策判断は慎重になされるべきだとした。

 そのうえで、行政側が実施しようとしている道路や駐車場の整備などの事業に必要性や公共性があることは認めつつ、景観保全を犠牲にしてまでの必要性があるかどうかについては「大きな疑問が残る」としました。

 また、事業が完成した後に景観を復元することは不可能で、事業自体の調査・検討も不十分として、埋め立てを認めることは知事の裁量権を超えており差し止めの対象になる、と断じました。


判決の要旨は上のようなものらしい。
それに対する行政側の控訴の理由が次のようなものである。

鞆港埋め立て・架橋問題:鞆の浦訴訟・県控訴 「景観利益、不明確」 /広島 (毎日jp 2009年10月16日)
鞆の浦(福山市)の埋め立て免許差し止めを命じた広島地裁判決を不服として15日に広島高裁に控訴した県は、大野宏之土木局長らが記者会見し、「景観利益の範囲や内容が特定されず、今後の公共事業に与える影響が甚大だ」と控訴理由を説明した。また、「大多数の住民が望んでおり、この計画がベストだ」として、鞆の浦の埋め立て・架橋計画の必要性を改めて強調した。【加藤小夜】


「今後の公共事業に与える影響が甚大だ」というところに本音が表れている。
とにかく公共事業をやりたいらしい。

先に、広島市と長崎市が五輪開催に名乗りを上げた。
それに対してこの藤田雄山広島県知事がイチャモンをつけている。

広島知事、五輪招致で不快感=「市から聞いてない」 (jiji.com 2009/10/13)
広島、長崎両市が2020年夏季五輪招致の検討委員会を設置することについて、広島県の藤田雄山知事は13日、「広島市から何も聞いていない」と述べ、連絡や相談がないことに不快感を表明した。
 藤田知事は、両市の発表が複数都市開催の是非などに関して関係方面に根回しなどをした後なら理解できるとした上で、「いきなり言った。唐突な感は免れないし、ちょっと理解に苦しむ」と指摘。1994年アジア大会で広島市以外の県内自治体も会場になった点に触れ、「県に何も言わないのだから、ひょっとして(広島県内での競技は)市内で全部やるのかなあ(と思った)」と疑問を呈した。
 招致の是非については「もうちょっと練度が上がらないと、何か言えと言われても材料がない」と評価を避けた。 (2009/10/13-20:19)


相談がなかったからといって、ヘソを曲げているらしい。
こいつらは国に対しては、「地方の意見を聴け」と言うくせに、自分たちは市町村の意思を忖度するつもりはないらしい。
なぜ事前の断りだの根回しだのが必要なのか。
広島市・長崎市が立候補の意志を表明したなら、その意志を尊重し、県としての対応を考えればいいことである。
ちゃんとした理由があって反対するのならそれでもいいが、これは、「誰に断って商売してるんだ」と因縁をつけるやくざの言い分と同じようなものであろう。

地域住民の権利と、住民以外の国民の権利の衝突は八ッ場ダム中止をめぐっての議論においても考慮すべきことであろう。
世論調査では国民の過半はダム建設中止を支持している。

国土保全、環境保全等について国民は権利を持つ。
納税者として税金の使い方に注文をつける権利を持つ。

一都五県の知事が揃って八ッ場ダムを視察した。

ダムの必要性訴え  「八ッ場」 6知事視察 (YOMIURI ONLINE 2009年10月20日)


彼等が向かい合って話を聞いているのはダム建設推進派の住民だけである。





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日本医師会会長選挙と医の倫理…自民党と共倒れ?

2009-10-18 17:52:32 | 政治
日本医師会はこれまで自民党の支持組織あるいは圧力団体としての側面のみが突出しているように見えていた。
職業団体としての医師会は当然二つの側面を持っている。
一つは、生活者・職業人としての医師の利益擁護組織という側面である。
そしてもう一つは、この国の医療を担う前線組織としての一面である。

多かれ少なかれ職業集団というものは、利益擁護団体の性格と同時に社会的責務を持っている。
ただ医師会は他の職業集団と比べて、より重い社会的責務を要求される団体と言えよう。
しかしながら日本医師会はこれまで利益擁護集団という側面だけが強く印象されてきた。
当然政治的な活動も活発であった。
日本医師会は自民党の強固な支持基盤の代表の一つであった。
日本医師会は日本医師連盟という政治組織を作っている。
国会議員を自民党から立て、毎年15億円を超える政治資金を渡し、集票マシーンとして働く。
それが日本医師会であった。
診療報酬の引き上げなどを目標とする圧力団体。
それが日本医師会だと思われてきた。

だから茨城県医師会が後期高齢者医療保険制度に反対の声を上げたときは、国民も、自民党も、日本医師会自身もビックリ仰天したのである。
その動きは次第に各地の医師会に広がっていった。

茨城県医師会が来る衆院選では民主党支援を打ち出したとき、それを強くけん制したのは日本医師会であった。

日医連盟「与党を推薦」表明 地方を牽制 (asahi.com 2008.9/18)
次期衆院選での対応について、日本医師会の政治団体・日本医師連盟は18日会見し、47都道府県の医師連盟に対して「自民党を中心とした政権与党の候補者を推薦する」との基本方針を示し、「その趣旨に沿った行動をお願いする」と指示したことを明らかにした。

民主党を推薦する方針を17日に決めた下部団体の茨城県医師連盟を牽制(けんせい)した形だ。日医連盟の羽生田俊・常任執行委員は「連盟規約に処分や罰則がなく、茨城県の方針は容認できないが反対もできない」と話した。日医連盟は、茨城県内の選挙区から立候補する自民党公認候補から支援の要請があった場合、県医師連盟とは別に直接支援を決めることもあるという。

 羽生田委員は、自民党側から再来年度予算では社会保障費の2200億円抑制方針を凍結するという麻生太郎幹事長の意向を伝えられたと明らかにし、「医師会の医療政策を最も理解し、政策実現能力を有するのは与党だ」とした。


日本医師会と都道府県医師会は下部機関とはいえ、それぞれ独立した公益法人となっているらしい。
日本医師会としては茨城県医師会に何らかの処分を下したかったのだろうが、これが精一杯の意思表示であったのだろう。
しかしそもそも、この対立の根底にあるものはなにか?

総選挙後、日本医師会は自民党から離れる素振りを見せている。

揺れる日医“選択の秋” 民主強硬…パイプなく困惑 参院選へ「自民離れ」か否か (@nifty 産経ニュース 9/26)
自民党の有力支持団体である日本医師会(日医、唐沢祥人会長)が、民主党支持にシフトするかどうかで大きく揺れている。鳩山政権の「日医外し」の動きに、発言力低下を危惧(きぐ)しているためだ。自民党支持団体の象徴ともいえる日医が民主党にかじを切ることになれば、来夏の参院選への影響は計り知れない。(河合雅司)
8月の衆院選では一部地方医師会が民主党支持に回ったが、日医全体では自民党支持を明確にし、民主党の政策批判を展開した。
 当然のことながら、民主党は反発。選挙後、唐沢氏は鳩山政権にも政策提言したい意向を示すが、民主党医療関係議員の一人は「自民党ベッタリの日医の意見を政策に反映させることはあり得ない」と切り捨てる。
「今後は自民党だけでなく、国会の議席数に応じて政治献金の配分を決めるべきだ」。15日に行われた日医の政治団体・日本医師連盟の執行委員会では献金先の見直し提案が出された。来年の参院選についても、自民党比例代表で出馬予定の西島英利参院議員(61)を「選挙区からの無所属とするか、擁立を白紙に戻すべきだ」との声が上がった。


ここには政権与党というだけの理由で自民党にくっついていた医師会の心底があからさまに見て取れる。
問題にしているのは選挙結果だけで、政策も理念も無関係である。

ところで茨城県医師会のここまでの動きの基本にあるものはまったく異なる。

原中茨城県医師会長「国民に貢献できたと思える日が来ればいい」 (2009/09/02 キャリアブレイン )
原中氏は今後、民主党に対し「わたしたちの持っている知識をできるだけお伝えして、最終的には老後に安心できる医療介護の制度に直すことなどと、それに必要な財源を説明して、積極的に改善してもらうというお話をしていく」と述べたが、同党への入党は否定した。その理由については、「医師として公平な意見を言うというのは、政党にこだわらなくても十分にできる。政党人にならない方が、わたしは正確な意見をきちんと言えるだろうと思っている」と述べた。


これは自民党か民主党かという選択の問題だけではない。
選ぶ側の姿勢の問題である。
同業者組合としての利益優先路線をとるのか、医師の社会的責任・倫理観を優先させるのかということである。
茨城県医師会が後者の立場に立てば次の行動は当然であろう。

日医会長選、民主支持の茨城医師会長が出馬へ (YOMIURI ONLINE)
来春に予定される日本医師会(日医)の会長選挙に、茨城県医師会の原中勝征会長が立候補する意向を固めたことがわかった。
 19日の同県医師会の臨時代議員会で賛同が得られれば、同日中に記者会見して正式に表明する予定だ。同選挙にはすでに、唐沢祥人会長が出馬の意向を示している。
 日医の政治団体「日本医師連盟」は自民党の有力支持団体だが、原中氏は先の衆院選で民主党を支持した。原中氏が出馬すれば、支持政党をめぐる路線対立や鳩山政権との関係が選挙の争点になるのは確実だ。(2009年10月15日 読売新聞)


無条件に自民党支持を続け、茨城県医師会の動きをけん制してきた日本医師会。
「医師会の医療政策を最も理解し、政策実現能力を有するのは与党だ」としてきた執行部側。
そして自民党惨敗後は恥も外聞もなく民主党にすり寄ろうとする現執行部。
それに対して
「国民に貢献できたと思える日が来ればいい 」と語る原中茨城県医師会会長。

選択すべきは自ずと明らかであろう。

自民党と郵政一家、農協そして医師会。
しょせん利害得失のみで結びついていた関係は、壊れるのも速い。




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取り残される自民党

2009-10-15 05:59:20 | 自民党

政治は動く。
政治は変わる。
そんなことを実感させる日々が続いている。
政策に賛否もあろうし、その進め方にも異論が皆無とは言えまい。
しかし、全員が真剣に政治に取り組んでいるのはひしひしと伝わってくる。

それにひきかえ、

谷垣まんじゅう、賞味期限は60日 届いた本人微妙 (asahi.com 10/10)
 小泉純一郎元首相の「純ちゃんまんじゅう」などで知られる東京の菓子会社「大藤」が10日、自民党の谷垣禎一総裁にちなんだ商品の販売を始めた。12個入りで630円(税込み)。その名も「よみがえれ!自民闘 勝栗まんじゅう」。野党転落後、「火中の栗」を拾った谷垣氏にエールを込めて名付けたという。
           

9日に試食した谷垣氏は、賞味期限の長さが売りと聞いて「末永いお付き合いということですね」とご満悦。ところが肝心の期限が「60日間」とわかって微妙な空気が流れ、茂木敏充・党報道局長が「まんじゅうの60日は(総裁)任期の6年ですかね」ととりなした。(冨名腰隆)


谷垣には60日と言わず6年でも60年でも、自民党が存在し続ける限り、総裁でいてほしい。
普段は理論派らしい顔をして偉そうに民主党を責めていた茂木もこんな訳の分からぬお追従を言う。
落ち目の党というのはこんなものだろう。

「英国のまねで良くなるのか」自民幹事長、小沢氏を批判 (産経ニュース 10/13)

   
自民党の大島理森幹事長は13日の記者会見で、民主党の小沢一郎幹事長が官僚答弁の禁止などを目的とした国会法改正を目指していることに「何でも英国のまねをして日本の政治は良くなるのか。国会のルール作りに絶対強行採決をしてはならない」と批判した。


これまで自民党国対委員長として、強行採決や再議決を繰り返してきた大島幹事長だからこそ言える核心をついた指摘である。
強行採決の威力は誰よりもよく知っている。
この男、面の皮の厚さでは全国会議員中随一であろう。

自民党の動きの緩慢さにはあきれるばかりである。
民主党は、内閣も党も連日目一杯の仕事をしている。
政治が毎日激しく動いている。
自民党はこの政治のダイナミックな流れから完全に取り残されている。

まんじゅう談義をしている間にも味方は離れていく。

経団連:09年分の政策評価「採点見送り」 献金額は自主判断に (毎日jp 10/14)
日本経団連は13日、会員企業が政治献金をする際の指針となる「09年政策評価」を発表した。昨年までは10分野の政策を5段階で採点してきたが、今年はそれを中止。民主、自民両党への期待を短文で表現するにとどめた。両党の政策の優劣を示す表現はせず、献金額は会員企業の自主判断に委ねた。採点の中止は政策評価を始めた04年以降で初めて。
経団連は自民党が最初に下野した93年、企業献金あっせんを廃止。「カネは出すが口も出す」と、奥田碩会長(当時)が04年に政策評価を導入し、献金あっせんを再開した。民主、自民の政策について「合致度」「取り組み」「実績」の3項目に分け5段階で評価。これまでは自民党の評価が一貫して高く、会員企業の08年の献金額は自民党26億9900万円、民主党1億900万円と差がついていた。


もともとは自民党へ献金するためにどうでもいいような政策評価をやっていただけだ。
経団連にとって都合のいい政策を挙げて都合のいい評価を下す。
結果ははじめから見えているが、試みに2008年度の評価をみてみる。
10の政策で合致度欄は

自民党 A 7   B 2   C 1
民主党 A 0   B 3   C 6  D 1


今年もこんな評価を下したら、政権与党に喧嘩を売るようなものだろう。
お金で政策を買うようなことを続けた来た経団連だが、自民党からはもう買う物はなくなってしまった。
献金したくても口実がない。
下手すれば、株主から訴えられる恐れまである。
そっと手を引くに如かず。

神奈川・静岡参院補選での共闘を断った公明党も、さらに自民党から離れだしている。
というより、自民党を見捨てたと言ったほうがいい。

公明ゆるりと自民離れ=「らしさ」求め是々非々で (jiji.com 10/11)
公明党が野党転落以降、自民党と少しずつ距離を置き始めた。与党時代、同党との連立維持を優先したあまり、「らしさ」を犠牲にしたとの思いが背景にある。ただ、民主党に擦り寄るわけにはいかず、当面は二大政党と是々非々で対応しながら、地力の回復に努めることになりそうだ。
(中略)
実際、連立時代から続けていた幹事長らによる自民党との定例会合の誘いも、「必要なときに」とやんわり断った。当面、国会対策での限定的な協力にどどまる見通しだ。
 一方、民主党との距離も簡単には縮まりそうにない。同党は選対委員長に公明党・創価学会批判の急先鋒(せんぽう)である石井一前副代表を起用。さらに、来年の参院選で改選定数2以上の選挙区で複数候補を擁立する方針を打ち出した。公明党は埼玉、東京、大阪の各選挙区に改選議員を抱えており、「うちをつぶしにかかっている」(関係者)と警戒感が先に立っているのが現実だ。(2009/10/11-14:19)


選対委員長石井一にはなるほど公明党つぶしの意味があったのか。
恐るべし小沢一郎。
公明党もしばらくは静かにしているほかはなさそうだ。




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脱・官僚依存政治とはなにか…産経記事の愚劣さ

2009-10-13 15:10:35 | 官僚
相変わらず民主党政権攻撃の手をゆるめない産経新聞。
強弁・すり替え・こじつけ・あら探しと多様な手法を駆使している。
その一貫した姿勢にはある種畏敬の念を抱かされる。

脱官僚依存…実は“過去官僚”依存 政務三役の2割、霞が関OB (産経ニュース 10/12)
脱官僚依存を訴えて発足した鳩山政権。各府省の大臣、副大臣、政務官の政務三役を中心にした政治主導をスローガンに掲げているが、首相官邸をはじめ、気が付けば政府の中枢を霞が関OBが占有している。果たして官僚の経験をいかして政治主導に反映できるか、それとも「官僚OBによる官僚支配」になるのか。

 「一度役所に在籍すると、入れ墨が入っているのかどうか分からないが…」

 旧大蔵(財務)省出身の古川元久内閣府副大臣は7日の記者会見で、行政刷新会議に同省出身者が多いことを問われ、声をとがらせた。古川氏は同省在籍が6年、議員生活は13年。「新しい仕事を長くやっており、かつてどこにいたかだけで人を判断するのはいかがなものか」と厳しい口調で言いつのった。だが反論すればするほど「鳩山政権は石を投げれば官僚OBに当たる。『過去官僚内閣』だ」(自民党中堅)といった揶揄(やゆ)は広がっている。


産経の記事は例によって論理のすり替えが行われている。
民主党の掲げるのは「脱・官僚依存政治」というものである。
産経は、民主党には官僚OBが多いから、官僚依存の政党・政権であるということを言いたいのだろう。
しかし、民主党のいう”官僚依存”と産経の言う”官僚依存”とは似て非なるものである。
産経は敢えてかバカだからかそこには目をつぶっている。
得意げに”過去官僚”などと言っているが、民主党のいう官僚とは、”現在官僚”を指していることは明らかであろう。
各省庁の利益代表たる官僚を指して言っているのである。
省庁という組織とその組織に組み込まれている組織内存在を指しているのである。
省益優先・省益の代弁者たる官僚に依存する政治からの脱却を言っているのであり、官僚の身分・立場を棄てた個々の元官僚とは厳然と区別しなければならない。

一口に官僚OBと言っているが、ここにも産経に限らずマスコミのごまかしがある。
官僚OBには二種類ある。
官僚組織の中で、どっぷりとその組織の中に浸かってその体質に染まりきったOBと、その組織・体質に飽き足りなくて、若いうちにそこから飛び出したOBとである。
前者は自民党に多く、後者は民主党に多かった。
近年になって、若くても自民党に入っていく官僚OBも増えているが以前は圧倒的に前者が多かった。
彼等は又地方自治体の首長つまり都道府県知事に転身するものも多かった。
現在47都道府県のうち29の首長が官僚出身者である。
ほとんどは長く官僚生活を続けてからの転身である。

境界は、課長補佐以下と課長以上、あるいは30代半ばから40歳程度で線引きできそうである。

「かつてどこにいたかだけで人を判断するのはいかがなものか」

古川副大臣の反論はもっともである。
「どこにいたか」と同時に「どのくらいいたか」、そして「何故やめたか」ということが大事である。
というより、そちらの方がより重要である。

民主党には自民党出身議員が多くいる。
鳩山由紀夫、小沢一郎、岡田克也、藤井裕久、原口一博、山岡賢次等々。
だから民主党は自民党的政治の延長線上にあるのか、自民党的政治を踏襲していると言えるのか。
古巣にいたことが問題なのではなく、そこを飛び出したことこそ重要なのである。

政府は脱官僚依存を掲げる以上、官僚を頼れない。だが霞が関のノウハウは政権運営に少なからず必要だ。そこで貴重なのが官僚OBの存在だが、今のところ予想よりダイナミックさに欠ける運営ぶりに「形を変えた官僚支配といえないのか」(官僚出身ではない民主党中堅)との声もあがる。

 こうした懸念に対し、藤井裕久財務相は7日の記者会見で「『過去官僚』とは、霞が関の中で今までの仕組みがおかしいんだということを強く感じた人のこと」と語った。その藤井氏自身も旧大蔵省主計局の主計官を務めている。


どうしても産経は民主党の足を引っ張りたいようだ。
そのぶれない姿勢には一定の評価を与えよう。

しかし、こういったからといってわたしは民主党の官僚OBという存在やシステムを肯定しているわけではない。
自らを”官僚”と呼んで恥じない連中には虫ずが走る。

官僚とは、

”官僚という語は法律用語ではないため明確な定義はなく、日常会話において「官僚」と言う場合、霞ヶ関の中央省庁で政策に携わる公務員を漠然と指すことが多い”

I種試験が採用時から上席の係員である主任クラスとして採用される。さらに、実際の任用後の運用においては各省庁ともI種採用者が規定上で最短の昇進速度によって早くに出世するエリートコースであるのに対して、II種採用者が本省の課長クラスまで出世できるものは少数であるという格差が存在する。
(ウィキペディアより)


”官僚”という言葉は、具体的には、国家公務員Ⅰ種試験合格者に対してだけ用いられている。
かれらには特別な昇進コースが用意されている。
たとえば警察庁の場合はもっともはっきりしているようだ。

警部補を初任とする国家Ⅰ種採用者(いわゆる「キャリア」)は採用7年目に無試験で警視に一斉昇任する。巡査を初任とする都道府県採用者(いわゆる「ノンキャリア」)で警視に昇任する者の数は少なく、最も早く昇任したとしても学歴に関係なく45歳程度であり、両者の格差は非常に大きい。

他省庁でも事情は似たりよったりである。
30歳になるやならずで、警察署長や税務署長を経験して、ひたすら特別なコースを歩み続けて偉くなってきたのが今残っている奴らである。
社会の実相を見ないまま、世間知らずの思い上がった役人ができあがっていく。
大学を出たばかりの一発の試験で終生のエリートコースが保証される。

官僚には法学部出身者が圧倒的に多い。
Ⅰ種試験合格者でも技術系は1ランク下に見られる。
文系、特に法学部出身者がすべての省庁で幅を利かせている。
(国交省は技術系でも次官になれる)
行政の専門分野の知識・能力よりも法律知識・立法能力のほうが重視されている。
行政と立法を実質的に抑えているのが官僚なのである。

その力を省庁の利益最優先で維持・拡大してきたのが官僚なのである。
いつの間にか国会は役人の作った法律の追認機関に成り下がってしまった。

わたしはもうこの辺で”官僚”という呼び方をやめたらどうか、と思っている。
単に”公務員”でいいではないか。
”官僚”などと呼ぶから、彼等は増長する。

わたしはブログのなかで”官僚”という言葉をよく使っているが、それは彼等を指すときに便利であるからに過ぎない。
そして常に嫌悪感をもって使っている。





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つるべ落としの落日・自民党の凋落

2009-10-11 15:49:04 | 自民党
見出しだけで笑わせてくれる記事があった。

自民、影の内閣見送り…“大臣”ポスト争い心配 (YOMIURI ONLINE 2009年10月9日)
自民党は8日、政策立案と国会運営との一体化を目指して新設する「政権政策委員会」の概要を固めた。
(中略)
谷垣氏は、政権奪還の決意を示す観点からも、「影の内閣」設置に意欲を示したが、「『影の大臣』と、『大臣』の名がつけばポスト争いが始まる」との異論もあり、構想を変更した。


貧すれば鈍す!
落ちれば落ちたものである。
影の内閣の大臣ポストが争いの種になるとは!

影の内閣設置はもともと谷垣自身が言いだしたもののようだ。
しかし、どこまで本気だったのか。

臨時国会前に「影の内閣」 (京都新聞 10/2)
自民党の谷垣禎一総裁は1日、京都新聞社など報道各社の共同インタビューで、設置の意向を示していた「シャドーキャビネット(影の内閣)」を臨時国会までに発足させる考えを明らかにした。さらに臨時国会の招集時期や八ツ場ダムについて鳩山内閣の対応を批判した。
 -「シャドーキャビネット」の構想と発足時期は。
 「民主の『次の内閣』のようなものだ。臨時国会前に発足させ、(影の内閣の担当者には)国会の常任委員会理事と党政務調査会の部会長を兼務させる」


谷垣は総裁就任後、党三役こそ早々と決めたが、その後は実にのろのろとした歩みが続いている。
これまでのところ大体この程度までが決まっているがこの先もまだ時間がかかりそうだ。
実際に動き出している民主党に比べると、その動きの鈍さには目も当てられない。

■総裁 谷垣 禎一(平成21年9月28日選出)
■幹事長 大島 理森(平成21年9月29日決定)
  幹事長代理 二階 俊博 園田 博之 長勢 甚遠 茂木 敏充
  副幹事長 (筆頭)
林 幹雄 村田 吉隆 古屋 圭司 西野 あきら 木村 太郎
竹下 亘 松本 純 江渡 聡徳 梶山 弘志 柴山 昌彦
■選挙対策局長 二階 俊博
■経理局長 山本 有二
■情報調査局長 村田 吉隆
■国際局長 河野太郎
■報道局長 茂木 敏充
■財務委員長 遠藤 利明
■組織運動本部長 石原 伸晃
広報本部長 小池 百合子
■国会対策委員長 川崎 二郎(平成21年9月29日決定)
  副委員長 (筆頭)浜田 靖一
  委員 伊東 良孝 小泉 進次郎 斉藤 健 橘 慶一郎

■総務会長 田野瀬 良太郎(平成21年9月29日決定)

■政務調査会長 石破 茂(平成21年9月29日決定)

……等々。


まだまだ埋めなければならないポストがある。
さて影の内閣を作ろうと思って党内を見回したら、もうろくな奴が残っていない。
残っている暇な連中で組閣しようとすると次のような内閣になる。

内閣総理大臣   谷垣禎一
外務大臣      武部勤  (偉大なるイエスマン・アメリカのご用聞きに)
財務大臣      鴻池 祥肇 (税金を女に貢ぐ色ボケじじい)
法務大臣      稲田朋美 (筋金入りの極右女・靖国法案成立を) 
総務大臣      鳩山邦夫 (亀井と競争で郵政いじめを) 
厚労大臣      福田康夫 (あなたとは違う厚労行政を)
国交大臣      古賀誠  (全国津々浦々に高速道路を)
文科大臣      麻生太郎 (漢字教育の推進)
経産大臣      中川 秀直 (議員収入トップ・金集めの才能を生かす)
農水大臣      加藤紘一 (裏切った元親分に総理からの恩返し)
防衛大臣      安倍晋三 (美しい国はまだ道半ば)
内閣官房長官    森喜朗 (象の巨体・ノミの心臓・サメの脳みその本領を)
国家公安委員長   平沢勝栄(ええこと言いのええ顔しい)

内閣総理大臣より偉そうな奴が多くなってしまった。
『みんなでやろうぜ』の超重量級内閣。
自民党の本質を国民に理解してもらうためには魅力的な内閣だと自画自賛するのだが……。

谷垣にすれば、どんな内閣を作っても、民主党内閣に比べようもないみっともない内閣になるのは目に見えている。
やめたのは賢明であった。

笑わせてくれる記事をもう一つ

【石原知事会見詳報(1)】五輪招致「夢のため決して間違いじゃない」 (産経ニュース 10/9)

すでに石原慎太郎の見苦しい言い訳は多くの人が批判しているが、わたしも一つ取り上げたい。

都議選での与党自民党の敗北。
築地市場移転問題。
新銀行東京問題。
三男宏高の衆院選落選。
そこにこのオリンピック招致失敗。

弱気を見せることは男の恥と思いこんでいるただの駄目オヤジ。
内心、度を失っているので、強気な口調とは裏腹に言うことは滅茶苦茶である。
本来は怒るところなんだが、怒る価値もない、老醜をさらし続けているみじめな存在に過ぎない。
笑ってやるほかない。

「私が就任したときはね、東京の貯金、積立金というのは200億しかなかった。もうまさにですな、土俵を割りそうで、東京はですね、国から援助をもらわなかったら立っていけない交付団体に転落する寸前でしたが、人員の整理をし、歳費をカットしてですね、これは組合もですね、議会も全面協力してくれまして、10年間で1兆を超す積立金をつくりました。その金利だけでも、これ、今、金利低い時代ですけども、数百億はあるでしょう。
(中略)
これはやっぱり膨大な経費がかかるんですよ。そういったものを加えるとですね、150億円使わざるを得なかった。しかし、これはわれわれが苦労してやってきたね、財政再建の1つの余剰の分でありましてね、これやることで東京の財政は痛くもかゆくもありません。そういうものは、ちょっとね、冷静に眺めた上でね、要するに150億円の支出についてのうんぬんをしてもらいたい」
(中略)
で、その結果失敗に終わった、それにかかった経費もね、かなりのもので、かなりのものだ。そういうこともあらんと思うから、こっちは一生懸命になって、議会も一緒になって財政再建やってきたんでね、その余剰の部分で、ま、こういう夢を見ようということでやったのは私は決して間違いじゃないと思う。それをただ支出というものがね、無駄に終わったという形でとがめればね、日本中でこれからオリンピック言い出す国は、町はないよ」


結局、『東京都の財政はオレが立て直した。
そのほんの一部を無駄遣いしただけだ。
文句あるか!』ということである。

もともと『他人(ひと)の手柄はオレのもの、オレの失敗は他人のせい』
を貫いてきた男である。
『オレの作った金をオレが使って何が悪い!』
この程度の開き直りはどうということない。

この男はこんな言い分が通ると本気で思っている。
反論することも馬鹿馬鹿しいほどの世迷い言(よまいごと)に過ぎないのだが……。
少なくとも”まだらボケ”の進行が相当加速しているのではないか、と東京都民のために心配する。
そして首都東京の在り方は日本全体に影響する。
わたしたち全部に影響することでもある。
東京都民以外の人にとっても他人事ではないのである。

この男は、善悪いずれにせよ、他人より大きな評価を受けたがっている。
”大善人”も”大悪人”も同じ褒め言葉なのである。
この男にとっての最大の侮辱は、『普通のアホ老人』と言われることである。

麻生太郎と石原慎太郎が、中央からそして地方から競うように自民党凋落を引っ張ってきた。
石原慎太郎には残りの任期をさらにがんばって貰おう。
もっと見苦しくジタバタを続けるように!





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共産党にすり寄.る自民党のみじめさ

2009-10-08 19:19:33 | 民主党
なりふり構わぬ自民党の無様な姿。
来る参院補選で早くも公明党は自主投票を決定。
公明党に逃げられて今度は共産党にすり寄った。

自民、共産に共闘呼びかけ…臨時国会早期召集で (YOMIURI ONLINE 10/7)
自民党の川崎二郎国会対策委員長は7日、共産党の穀田恵二国対委員長と国会内で初めて会談し、26日召集で調整中の臨時国会の召集前倒しを、自民、公明両党と共同で政府に申し入れるよう要請した。
 会談は共産党の控室で行われ、川崎氏が「自民党と共産党は政策論では違いがあるだろうが、早期に国会を召集すべきという点では違いがないのではないか」と“共闘”を呼びかけた。これに対し、穀田氏は「(召集時期より)審議の中身が大事だ」などと断った。


これまで目もくれなかった共産党が急に身近に感じられるようになったらしい。
しかし、共産党の言い分は尤もだ。

臨時国会召集の前倒しにはそれなりの思惑があるのだろう。
自民党としては静岡・神奈川の参院補選の前に臨時国会を開いて、派手に民主党追求を繰り広げたいのかもしれない。
追求の材料は山ほどあると思っている。

鳩山首相の個人献金問題
八ッ場ダム建設中止
亀井モラトリアム
インド洋給油問題での大臣・政務官の発言のズレ
補正予算の執行停止
等々。

彼等は十分つっこめると思っているらしい。
政界:「勝てる」小泉氏が激励 (毎日jp 10/8)
自民党の大島理森幹事長は7日、東京都内で小泉純一郎元首相と会い、就任のあいさつをした。小泉氏は、鳩山由紀夫首相の献金虚偽記載問題などを念頭に、「(衆参両院で)200人いる新党だと思ってどんどんいけ。徹底したスキャンダル追及と、国会論戦で絶対勝てる」と激励した。


しかし、国民はスキャンダル追求などは望んでいない。
せっかく動き出した新政権である。
彼等の仕事ぶりを見まもりたい、というのが多くの国民の願いである。
確かに、「あなたは鳩山氏の個人献金についての説明に納得していますか」ときかれたら、「いいえ」と答える人が多いだろう。
よく知らなければ、納得しているとは答えられまい。

しかし、そんなことよりも新しい政治を推進する方がずっと大事だ、と考える人の方が圧倒的に多いだろう。
国民は自民党のネガティブ・キャンペーンにはうんざりしている。

そんなことより急がねばならないことがあるだろう。

自民党:静岡県連、三役そろって辞任 参院補選告示前日に、造反で条例可決され (毎日jp 10/8)
8日に参院補選の告示を迎える自民党静岡県連(会長・塩谷立前文部科学相)の幹事長ら、いずれも県議の「三役」が7日、県議会(定数74)の条例案採決をめぐる混乱から、そろって辞任を表明した。7月の知事選で民主党の推薦を受けて当選した川勝平太知事が提案した条例案に「反対」の党議拘束をかけたものの、造反が相次ぎ、可決されたため。

 自民党は先の衆院選で県内8選挙区で全敗。参院補選は県議中心で支援態勢を組むことになるが、主導するはずの三役が空席となる混乱に見舞われた。


これで選挙が戦えるのか?
自分の足下が崩れつつあるのだ。
小沢の方は全力投球の態勢で布陣を終えているようだ。

参院での安定過半数獲得が小沢の当面の目標であろう。
その為には絶対落とせない二議席である。
小沢は並々でない覚悟で臨んでいる。

以前小沢は次のように書いていた。
『少数党をなだめるために多数党が妥協するのはばかげたことだ』
(実は2・3日前にたまたま目にした小沢の古い文章にあった一節なのだが、今ソースがどうしても見つからない。民主党との合併以前の文章であったと思う)

小沢にとって今の三党連立は決して歓迎すべき状態ではないはずだ。
社民党・国民新党ともに小沢の腹の内は分かっているだろう。
両者ともに来夏の参院選のために独自性・存在感の誇示には力を入れざるを得ない。
国民新党の方は亀井党首ががんばっているからいいのだろうが、社民党の方は大変のようだ。

社民、初の党・閣僚連絡会議 週一回定例、党方針を確認 (asahi.com 10/5)
社民党の「重鎮」らが5日、消費者・少子化担当相として入閣した福島瑞穂党首が執務する内閣府の大臣室を訪れ、「党閣僚連絡会議」を初めて開いた。巨大与党・民主党中心の鳩山連立政権で、社民党から政府に入った議員らは押され気味。週1回の定例会議で「広告塔」の福島氏らに自覚を促すのが狙いだ。

 国土交通副大臣の辻元清美同党衆院議員も参加した。辻元氏は冒頭、「(予算を)切るところが多くて大変」と政府の一員としての忙しさを嘆いたが、会議に入るとテーマは社民党がどう独自性を発揮するかに集中。又市征治副党首らと、自衛隊海外派遣反対や緊急雇用対策など党が譲れない部分を確認した。

 衆参合わせた社民党の議員数は民主党の3%ほど。しかも民主党は政策決定を政府内の議員に一元化させる方針で、社民党は政権中枢から遠ざかる一方だ。党幹部は会議後、民主党の政策決定に「単独政権を想定している」と不満を漏らした。(高橋福子)


いわゆる”ネジを巻いた”ということか。
いくら民主党に尽くしても、自分たちの議席を減らしては何にもならない。
党に残った連中には亀井の暴れぶりと比べて福島党首が歯がゆいらしい。
そして副大臣になってはしゃいでいる辻本の姿も幹部たちの目には苦々しく映っている。

着々と我が道を行く民主党。
公明党に逃げられ、共産党には鼻であしらわれ、挙げ句に小沢の引き抜き戦法に怯える自民党。
存在感発揮に必死の社民党と国民新党。

参院補選は10月25日である。




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自民党は再生しない方がいい

2009-10-06 17:20:01 | 自民党
新総裁に谷垣禎一を選んだ自民党。
「みんなでやろうぜ」の谷垣と「腐ったリンゴを取り除け」という河野太郎、そして若いというだけの西村康稔という、不毛の選択肢のなかからの選択であった。
そして新総裁谷垣の選んだ新三役は、
幹事長  大島理森国会対策委員長(63)
総務会長 田野瀬良太郎政調副会長(65)
政調会長 石破茂前農林水産相(52)

まったく意外性も、清新さもない、サプライズなき人選である。
あるいはサプライズがないのがサプライズと言うべきか。
特に総務会長の田野瀬良太郎などというわたしたち一般市民にはまったく馴染みのない「だれ、それ?」というような人物。
なんのことはない、谷垣の選挙責任者だとか。

そして選挙対策責任者が二階俊博。
しかし今度の総選挙で二階派12人のうち、本人以外の11人全員を落選させおめおめと自分一人が生還した人間。
どんな選挙対策を展開するのやら。
発想は、二階が小沢のやり口に詳しいから、というところらしい。

そして次は幹事長代理人事。
政務調査会と国会対策の担当として園田博之前政調会長代理
組織担当に長勢甚遠元法相
報道担当に茂木敏充元行革担当相
他に参議院から二人を予定。
二階には筆頭幹事長代理という重々しい肩書きがついた。

質より量ということらしい。

中川昭一元財務大臣の突然の死去で一段と大きくなったのが”保守”のかけ声である。
保守とは守るべき価値があってこその保守であろう。
中身の議論はいずれそのうち。
とりあえず保守。

政権与党という衣を取り去ったら、保守というもう一枚の衣が出てくる。
そしてその中身は極右。

日の丸君が代、再軍備
靖国、改憲、神の国

戦後65年。
国民の大半は新憲法の下で生きてきた。
彼等の目指す戦前の価値を直接体験として持っている人は少数になってきた。
彼等のあがめる価値はすべて間接体験からの絵空事であると言ったら言い過ぎか?

戦後65年の歴史は無視して、見たこともない戦前回帰が保守なのか?

自民党に期待するところはなにもない。
できることなら、このまま消滅するのが一番国民のためになる。
復活はあり得ないだろうが、たとえ万が一復活しても、この顔ぶれではこれまでと同じことを繰り返すのは分かり切っている。

「保守」のかけ声で駆け回るほど国民は甘くはない。

鳩山総理の政治資金問題を追求してやろうと手ぐすねを引いているようだが、そんなことが自民党最大の政治課題なのか。
検察が捜査を始めたらしいが、そんなことは検察に任せておいて他に仕事を探したらどうか。

政権交代によって多少なりとも政治がわたしたちに近づいてきた。
戦後、日本は経済を中心に動いてきた。
戦後とは経済の時代であった。
国民の幸福は経済によって実現される、と多くの国民が思いこんできた時代であった。
しかし、主役が変わった。
経済成長、経済的利益の追求だけでは幸福実現は不可能であるということが露わになったのが、小泉以後のこの国の現実の姿である。

経済を国民の幸福につなげるために政治が主役にならなければならない。
自民党にはその役割は果たせない。
経済から政治へ。

政治の時代の始まりである。
そして次の主役が現れるまで、民主党には走り続けて貰いたい。


”時代”とまではいかなくても、せめて「政治の季節」といえるぐらいの長さは続くことを願って、当ブログの名称を「政治の季節」と変更します。
政・官・業の一角が崩れだしていることもきっかけのひとつです。


「狐と狸とカラスどもに怒りを」改め「政治の季節」をよろしく。





政の次は官と財とマスコミと!


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わたしの亀井モラトリアム批判に対するコメントへの返事

2009-10-04 08:41:15 | 民主党
やはりまた皆さんからの批判を頂いてしまいました。
弱者救済、セーフティネットの拡充という視点からは亀井モラトリアムも肯定できるかもしれません。
行儀の悪い銀行に罰を与えることも必要でしょう。
わたしはそれを一つの政策でやることに反対したのですが。

ふと気がついたのですが、わたしは一つ大事なことを書き落としていました。
余りにも当然すぎることとして特に触れることもなかったのですが、どうもそこのところの認識が違っていたようです。

民主党は亀井モラトリアムに反対である。
あるいは、やりたくない。
そして民主党は亀井をもてあましている。


わたしはこれらのことを当然すぎる前提としていたのですが、そこのところを明示すべきだったかもしれません。
連立解消も考えよ
カミツキガメの危険な放し飼い…鳩山政権の火種

藤井財務相、返済猶予「聞いていない」 亀井氏と温度差 (asahi.com 9/18)
藤井裕久財務相は18日の閣議後会見で、銀行から借金している中小企業や個人を対象に、元本返済を猶予する制度(モラトリアム)の導入について、「まだ正式に聞いていない。確かに昭和初期にやっているが金融恐慌のときで、さてそういう状況なのかな」と消極的な姿勢を示した。


平野官房長官の批判に対しても激しくかみついている。

返済猶予「私が担当」…亀井金融相、慎重論に反論 (YOMIURI ONLINE 9/25)
平野官房長官が24日の記者会見で制度導入に慎重な対応を求めたことに対し、「官房長官にああだこうだコメントされる立場にはない」と述べ、「私が担当大臣としてきっちり方針を出して法案を出していく」と強調した。
(中略)
平野官房長官は25日午後の記者会見で「(担当)大臣としての判断が基本だ」と矛を収めたものの、亀井氏の方は、鳩山首相が閣僚委員会で結論を出す考えを示したことにも「(首相がそう)言うわけがない」と譲らず、主張の食い違いが表面化している。

支払い猶予法案は「友愛」 「総理は更迭できっこない」 亀井金融相  (産経ニュース 9/27)
亀井静香金融担当相は27日、テレビ朝日の番組で、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済を3年程度猶予する「モラトリアム法案」をめぐり、政府内でも異論があることについて「(反対なら)鳩山(由紀夫)総理が私を更迭すればいい。できっこない」として猶予法案は与党三党の合意事項であることを強調した。


それ以前にも原口総務相が郵政問題で発言すると、郵政はわたしが担当、とかみついている。

閣僚達は恐れをなして亀井批判を引っ込めるありさまである。

鳩山首相「モラトリアムまで合意していない」 亀井金融相の主張拒否? (産経ニュース 9/28)
鳩山由紀夫首相は28日夜、亀井静香金融相が提唱している中小企業向け融資や個人向け住宅ローンを3年程度猶予する「モラトリアム法案」について「連立与党でモラトリアムまで合意しているわけではない」と述べ、亀井金融相の主張は受け入れがたいとの姿勢を示した。


産経の記事ではあるが鳩山首相は確かにそう言っている。

金融副大臣大塚耕平氏はテレビ番組で自民党の伊藤達也議員に
「ほんとは民主党もやりたくないんでしょう」と突っ込まれて苦笑し、
「支払い猶予ではなく条件変更ということです」と答えていた。
「支払猶予というより条件緩和」大塚金融担当副大臣 (ANNニュース 9/29)

もちろん亀井はこれについても早速かみついた。
副大臣「適切でない」発言に亀井反発 返済猶予でバトル (ZAKZAK 9/30)
大塚耕平金融担当副大臣は29日、亀井静香金融担当相が提案している返済猶予制度について、金融機関に返済期限の延長など融資条件の緩和を求めていくことを軸に10月の臨時国会までに新たな法案を検討する考えを示した。金融機関への適用義務付けは「難しく適切でない」との見解を明らかにした。

 大塚副大臣は「貸し渋り・貸しはがし対策」の検討会合後に記者会見した。新法案は民主党など与党3党が昨年12月に提出した法案を基に作成。新制度の対象は、希望する中小企業や住宅ローンを抱える個人に限定、金融機関には自主的な融資を促すための措置を講じる方向で検討する。

 金融機関への義務づけは「適切ではない」との大塚副大臣の発言に対しては、亀井氏が同日夕、「副大臣がそんなことをいうはずがない。彼にはそんな権限はない」と完全否定。作業が迷走する可能性もある。


また同じ記事の中では鳩山の言葉も記している。

また、この日は鳩山由紀夫首相が総選挙前の遊説で、猶予制度の導入に前向きな発言をしていたことも判明。鳩山氏は同日、「元本の返済は猶予するという法案を考えたいと(民主党)代表時代に言った。その思いは今でも持っている」とするとともに、「『あまりにもむちゃ』という話にならない形で最終的な仕組みを作りあげてもらおうと考えている」と述べた。

鳩山でさえ、『あまりにもむちゃ』な話と受け止めているのである。

マスコミは話題を大げさに取り上げて、内閣不一致という結論に持っていきたがっているのは間違いない。
わたしは民主党の本音は先にあげたように、「やりたくない」というものであると思っている。
亀井モラトリアム応援は、内閣不一致という印象を強め、逆に鳩山政権を追いつめることになる。

わたしの立場は、これまで当ブログを読んでくれていた人たちには明らかであろうと思うが、政権交代支持、反自民党政治であるが、突き詰めればまともな民主主義の実現を望んでいるということである。
そのためにはせっかく誕生した民主党政権には長続きして欲しいと思っている。

亀井はその障害になる可能性があると危惧しているのである。
マスコミや自民党に政権批判の口実をいたずらに与えるような愚はさけるべきである。

来年の参院選を考えるとこれまでのところ亀井は大成功をおさめている。




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連立解消も考えよ

2009-10-03 21:55:31 | 民主党
「一フジ二カメ三ハトヤマ」

日本の株式市場の雲行きがおかしくなってきた。

藤井財務大臣の円高容認発言。
亀井のモラトリアム発言。
鳩山首相の発言ブレとCO2の25%削減。
(ただしいずれも経済的側面から、しかも短期的な観点からのマイナス評価である)

つまり、一フジ(藤井)二カメ(亀井)三ハトヤマ(鳩山)。
すでにこういうからかい気味の言い方までされている。

さらに前原国土相のJal再建問題での不手際。
早々とJALは潰さないと明言したために今後の自分の手足を縛ってしまった。

民主党ショックとの声もあがる株式市場の急変は、民主党の経済政策への疑念を産み、外国人投資家の日本株離れにつながっている。
いずれも短期的には景気回復への足かせになることは間違いない。

藤井財務大臣は、「円高容認なんてことは一言も言っていない」と弁解しているが、そう受け取られてしまったことが問題なのである。
それでも、この程度のことはそのうちなんとかなるものだ。

しかし、カメのモラトリアムは話にならない。
「角を矯めて牛を殺す」
賛成の向きも多いようだが、銀行バッシングと中小零細企業救済は切り離して考えるべきものである。
モラトリアムで苦しくなった銀行には公的資金で援助するなどと言うに至ってはなにをか言わんや、である。
銀行や大企業にばかり公的資金を注入して助けている、と言って非難していたが、これでは結局同じことを繰り返すばかりではないか。
鳩山までもが振り回されている。

今朝の日本テレビ「ウェークアップ」にでていたカメはひどかった。
ちょっと反論されただけで居丈高になる。
モラトリアムばかりではない。
「わたしは郵政を元に戻せなんてことは一言も言ってないよ!」と声を荒げていたが、以前郵政については、小泉・竹中のやったことと反対をやればいい、と言っていた。
小泉・竹中の逆と言えば、
民営→公団→国営、ということではないか。
一言も言ってないとは言えまい。
都合が悪くなれば恫喝まがいの物言いをする。

国民新党の政権政策というものを読んでみたが、確かに支払い猶予も掲げていた。
しかし同時に地方金融機関の活性化というのもある。
明らかに矛盾している。

経済政策として特に強調しているのがこれ↓

5カ年で200兆円(追加財政支出150兆円、減税50兆円)
 の積極財政により、経済成長と税収増を図り、民間投資と消費への
 刺激拡大を通じて経済の活性化を実現します。


いったいこの政党は、どこまで真剣に考えているのやら。

今度の選挙では、民主党もまさかの大勝で驚いたであろうが、だからといって連立はやめた、と言えないのが辛いところだろう。
しかし、こんなカメ一匹飼い慣らせないようでは四年間の政権運営はおぼつかない。

それができずに、このままずるずるカメに引きずられかき回されるよりは、早いうちに連立を解消するにこしたことはない。

社民党もごちゃごちゃとうるさいことをいっている。

社民幹事長、与党幹事長会談への小沢氏対応に不快感 (産経ニュース 2009.10.2)
社民党の重野安正幹事長は1日の記者会見で、民主党に与党幹事長会談の開催を申し入れていることについて「再三要請し続けているが、いつやるかも決まっていない。率直に言っていかがなものか」と述べ、小沢氏の対応に不快感を示した。

 重野氏は、小沢氏の秘書に電話で要請を続けていることを披露し、「小沢さんは直接電話はつながりません。あの人は偉いから」と述べ、不満を漏らした。


しかし内閣には基本政策閣僚委員会を設置し、三党首の協議ができるようになっている。それ以外なら国対委員長会談で十分であろう。
もともと鳩山は内閣と与党の一元化を言っている。
幹事長会談は、どうしても必要なものでもなかろう。
どうも小沢に無視されているようなのが面白くないのだろう。



亀井モラトリアムを支持する方も多いのですが、あえてまた反論を述べさせていただきました。
理由は二つあります。
モラトリアムに対する反対と、亀井のゴリ押しが鳩山政権の存立を危うくする恐れがあるという点です。
金融大臣はオレなんだからだれも口出しするな、という姿勢には賛成できません。

カミツキガメの危険な放し飼い…鳩山政権の火種




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消滅へ突き進む自民党

2009-10-01 18:23:40 | 政治
自民党総裁選がひっそりと終わった。
意外だったのは河野太郎が議員票では最下位だったこと。
まさか西村某に負けるとは本人も思っていなかっただろう。
35票という議員票獲得で河野太郎の商品価値は上がったのか下がったのか。
地方票109と合わせて評価の分かれるところかも知れない。

どこかのテレビで、小泉進次郎が新総裁に望むこととして三点を挙げていた。

「党を変える勇気。解党的な出直しをする覚悟。これでダメなら終わりだという危機感」

普通の人間ならそれ程駄目な政党にはわざわざ飛び込まないだろう。
まあ、口先だけのことである。
いちいち目くじらを立てていても仕方ない。

谷垣禎一総裁(64)
幹事長 大島理森国会対策委員長(63)
総務会長 田野瀬良太郎政調副会長(65)
政調会長 石破茂前農林水産相(52)

すでに自民党は、「終わりの始まり」ではなく、「終わりの八合目」あたりか。

大島氏、公明に補選の支援要請へ=自民新三役が就任会見 (jiji.com)
自民党の大島理森幹事長ら新三役は29日夜、党本部でそろって就任記者会見を行った。大島氏は10月25日投開票の参院神奈川、静岡両補欠選挙で公明党に推薦を含め支援を要請する考えを表明、「早急に(公明党側と)話し合いをして、協力を願えるよう努力したい」と述べた。
石破茂政調会長は「討論で自民党の言っていることが国民に正しいと思ってもらわなければ意味がない。ディベートに勝てる力を身に付けていかなければならない」と述べ、鳩山政権との政策論争に意欲を示した。田野瀬良太郎総務会長は「政権奪還に向け、党内を取りまとめるため、全身全霊で取り組む」と抱負を語った。
(2009/09/29)


自民・公明の野党連立は健在のようだ。
「解党的出直し」、「一からの出直し」といってもこの程度である。

政権与党というレッテルの剥がれた自民党とはいったいどんな政党なのか。
民主党政府のダイナミックな動きに比べると、自民党政府とは何もしない政府だったとつくづく思う。
財界の要求に応え、族議員の要求に応え、官僚の思惑にのり、アメリカの指示に従っていただけの存在ではなかったか。
何か問題が起こって騒がれたときだけ頭を寄せ集めて対症療法をひねり出す。
理念もなく、国の将来像もなく、政策もなく、国民への関心も同情心もない政治を惰性で続けていただけの政府であった。
関心は政権維持と議席の維持だけであった。

「政策論争」といい「ディベートに勝てる力」といっても、結局は相手のあら探ししかできなかったのが自民党議員達である。
民主党との政策論争より、まず自分たちの政策を作る方が先であろう。
そして政策の根本になくてはならない基本理念がその前にくる。
自民党のアイデンティティといってもよい。

公明党との選挙協力を就任会見で言う新幹事長。
大島氏本人はこれまで「解党的出直し」などと言っては来なかったようだからいいようなものの、新総裁や新役員その他の議員達も了解済みなのか?
自民党内で公明党との協力関係は継続するという合意はできているのか?
「みんなでやろうぜ」の”みんな”には公明党の”みんな”も含まれていたのか。
公明党との選挙協力に手をつけたらすでにアイデンティティの根本が制約される。
「一からの出直し」なんて噴飯ものである。

公明党も選挙で負けて、自民党との連携を続けるかどうか悩んでいるだろう。
もともと脛に傷持つ政党である。
強力政権与党となった民主党と正面切っての戦いには二の足を踏むだろう。
あの方達の国会への呼び出しなんてことになったら目も当てられない。
自民党の選挙協力呼びかけに喜んで応ずるか、迷惑顔で渋々応じるか、体よく口実を見つけて断るか。

テレビでも自民党の報道を目にすることもほとんどなくなってきた。
民主党の新大臣たちはよく働いているぞ!
中には働き過ぎの大臣もいるが……。

急に何にも仕事がなくなって、テレビをみているだけの暮らしになって、「おれたちもあんな事をやっとけばよかったなあ」、と思っている自民党議員もいるかもしれない。





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