今回は「日本おたくのジョルジュ」の続編である。
最初に出会った年から二年後の秋、彼は日本にやってきた。
春に渡仏の折にもパリの自宅へ行き、彼に会うのは三度目であるが、日本で会うのはもちろん初めてであった。
東京にそれなりのホテルに1カ月ほどいて、その後京都のウエスティン都ホテルに1カ月ほど滞在した。
都ホテルで滞在するときは、いつも見晴らしの良い同じ部屋をリクエストするそうだ。
昼は小泉首相も行ったという有名なソバ屋「権兵衛」に良く行くと言っていた。
私にはホテルのレストランでディナーを御馳走してくれた。
その時ちょっとした出来事があった。
訪れた都ホテル内のレストランで、彼は何時も食事しているようだった。
だがその日レストランの入り口に行くと、ウエイターが「今は満席です。」と、私達を断ったのだった。(行楽シーズンだった)
ジョルジュはその時怒った。
「それなら別のレストランに行く!!」と怖い顔で言い放った。
常連の彼が、私という客を連れてやってきたのに断わられ、彼の顔がつぶされたというわけだ。
その時、責任者らしい別のウエイターがすっ飛んできた。
「Sさん(ジョルジュの苗字)ごめんなさい。すぐに席を用意します。」と言った。
何回も日本に来て、今回もデラックスルームに長期滞在している彼はこのレストランの上客だったので、この責任者は名前を勿論覚えていたし、顔なじみだったわけだ。
驚いたことに窓際の席がすぐに用意され、私達はそこに座った。
ジョルジュのご機嫌はたちまちに直った。
どうやら入口で怒ったのも演技だったようで、こうなることを十分予測していたフシがあるとみた。何やらニヤニヤしている感じだからだ。
さて料理を注文する段階で、少し勉強になることが起こった。
私は料理を選ぶのも面倒くさいし、好き嫌いもないし、コース料理にしようとしたらジョルジュがそれはいけないという。
やはり自分の好みの料理を選ぶべきだと言う。
御馳走になる側の私としては、ジョルジュの言う通りにするしかない。
なんとか前菜やメインの一品料理などを選んだ。
食事にも自主性が大事で、あなた任せのコース料理をフランス人は好まないらしい。
さて先ほどの責任者も本気でジョルジュが怒っているとは思わなかったみたいで、その後二人は仲良く言葉を交わしていた。
その責任者から「これはシェフからのプレゼントです。」と前菜のさらに前に一皿に余分に来た。
大きなお皿の真ん中に、ちょこんと小さい料理が載っていた。
それをジョルジュも笑った。
食後彼の部屋で果物をいただいた。
入口の棚の上には彼の得意の折り紙が置いてあった。
京都で健康診断してもらい、医者が丁重だったことと、健康に問題ないとの診断結果を喜んで話していた。
健康に気を使っている様子が、その時ちらりと見えた。
京都の高島屋デパートで、形状記憶のワイシャツが気に入り、たくさん買っているのも見せてくれた。
パリに無いのだろうかと不思議だったが、きっと店員さんの応対がよかったこともあるのだろう。美人だったのかもしれない。
日本のデパートほどお客さんに親切、丁寧、礼儀正しいところはないと思うからだ。
彼はこの後、正倉院展に合わせ奈良にやってきたのだがその時のことは、次稿
に譲りたい。
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