フランス人観察記録

日本人から見て解ってきたフランス人の考え方、行動についての覚書

「わがままジョルジュ」の奈良訪問

2011年07月23日 | パリ16区

さて「日本おたくのジョルジュ」の奈良訪問である。 

 

彼を11時に近鉄奈良駅で待っていると打ち合わせていた。

ところが11時になっても現れない。

彼は携帯電話を持っていないから、こちらからの連絡の取りようがない。

 

しばらくすると、私の携帯電話にJR奈良駅の観光案内所からS・ジョルジュと言う人が待っていると電話があった。

 

あわててJR奈良駅に迎えに行った。

日本通の彼も近鉄とJRの奈良駅が別の所にあると知らなかったみたいだ。昼ごはんは蕎麦屋さんに入った。京都では「権兵衛」に行っていると聞いていたからである。

彼はてんぷら蕎麦と、ご飯を注文した。ところがその店にご飯は無かった。

どうやら「権兵衛」でもそういう取り合わせで食べているみたいだった。

 

天ぷらもなく、野菜の揚げ浸しとおそばを頼んだ。

健康に気をつけている彼は野菜を取るよう心がけていて、この野菜浸しだけが気に入り、お代わりしたいと言った。本来はこれだけのお代わりは無いのだが特別に作っていただいて、ご満悦であった。

 

                                       

 

食後、一刀彫の作家の所へ案内しようとした。

事前に作家さんにお願いしておいたのだ。

ところが彼は「NotInteresting」と言う。

京都で一刀彫の話をしたし、案内すると言っておいたはずなのに「興味が無い」と言う。

 

これには参った。

すぐにその作家さんに御断りの電話を入れ陳謝した。

工芸品好きの彼に奈良の伝統工芸を見せたかったが、取りやめになった。

私はこのことで少々気分を害したが、無理に連れて行くこともできない。

それ以来、彼に秘かに「わがままジョルジュ」と言うニックネームを贈呈した。

 

まず正倉院展を見に行った。

日本の和紙の収集など、伝統工芸品に興味ある彼は正倉院の宝物を熱心に見ていた。

ただ経典にはあまり興味がないようだった。

 

1300年もの間、素晴らしい保存状態で残っている和紙に書かれているのだし、漢字にも興味を持っている彼にしては不思議な気がした。

まあ「わがまま」なのだ。

博物館を出たところで、天平時代の女性の衣装を着た若い女性がいたので、記念に彼とツーショットの写真を撮ってあげた。

 

                                     

 

意外と彼はシャイで、後で写真を見ると真面目な顔で緊張している風にさえ見えた。

フランス人ならもっと喜びを表現し、リラックスするだろう。

(フランス人らしくない行動だ。これは後で述べる。)

 

この後大仏殿に行った。

ひと通り大仏殿を見て中門の所にまで帰ってきて、彼は「やっぱり美しい。もう一度しっかり見ておこう」と言いながら、大仏殿を目に焼き付けるように振り返り、じっと見ていた。

 

                   

 それから、奈良ホテルに連れて行った。

日本の皇室に興味がある彼に、このホテルは皇室の方が来られたら必ず泊まられる格式の高いホテルだと説明した。

 

彼は気に入ったらしく、今度日本に来た時は泊ってみたいと言った。

そして夕食を一緒にしたが、仲居さんが愛想がよく、気に入ったようだ。

独身の彼にとっては、一つの楽しみのようである。

                                      

健康のため三条通りを歩いて帰るからと、足早にJR奈良駅に向かって一人で帰って行った彼はその時元気だった。

 

しかし彼からやがて「日本に行きたいのだが健康の問題で行けない」「こちらに来てほしい」という手紙やFAXが来るようになった。

 

この「わがままジョルジュ」が再び大仏殿を訪れ、奈良ホテルに泊まる日が来るのかどうか今のところ全く見通しが立たない。

 

                

それだからこそ無意識のうちに、彼は大仏殿を大切に目に焼き付けたに違いない。

 



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