フランス人観察記録

日本人から見て解ってきたフランス人の考え方、行動についての覚書

フランス人形の初来日

2011年05月14日 | パリ12区

フランス人形の初来日

アビニョン駅からTGVでパリへ帰るときのこと。
乗ってすぐ自分の列車の号車を探していたら、丁度うまく車掌が来たので聞いた。

切符は?と言われフランスレイルパスを見せると「バリデ-ドしていないから、罰金10ユーロ」ときた。
こういう時言い訳してもガンとして聞かないのがこういう仕事の人。


そもそもギリギリに、あわてて飛び乗ったのが悪かったと諦めた。
まだこういうときうまく切り抜けるほど、旅の修行はしていない。
席について、しばしがっかりしていた。

ようやく気を取り直しふとすぐ前の席を見ると、すごくかわいい女の子がお父さんと乗っているではないか。
さては気落ちしている私を見かねて、神様がほほ笑んだのではないか。
早速折り紙の開始である。

例によって「鶴」をあげると、お父さんの方が喜んだ。
6歳とのこと、日本の「ハム太郎」を持っている
日本のマンガが好きで、特に「コナン」が好きだとか。

お父さんはこの可愛い娘に目がないようだ。
なんでも、今パリのメトロ1号線の「オテル・ド・ヴィル駅」のホームのオリンピック誘致のポスターにモデルとして出ているとのことだった。
その写真をデジカメカメラで見せてくれた。
(余談だが、そのカメラは日本製で私ものと同じ機種だった。日本はデジカメで世界制覇をしている事は間違いない。少なくとも今のところ。)

「パリに戻ったら、それを必ず見に行くよ。」と約束した。
もう罰金のことなど、どこかに吹き飛んだ。
こんな楽しい出会いはない。

パリ・リヨン駅に着くとお母さんが迎えに来ていて、事情を知らないお母さんは娘とさっさと行ってしまった。
                
タクシー乗り場で待っていると、さっきのお父さんが、「有難う。楽しかったよ。気をつけて、いい旅を。」と一人でわざわざ言いに来てくれた。

数日後、かのTGVの女の子のポスターを探しに、メトロの「市役所前駅」に降りた。
ちょうど向かい側のプラットホームに、ずらり並んだ大きなポスターの一枚に、まぎれもなくおかっぱ頭のあの子の、両手を挙げたポーズのを見つけた。
見たという証拠に写真を撮っておいた。



帰国後メールをやり取りし、二年後、彼らのアパルトマンにお邪魔した。
お互いの再会を喜び、優しい奥さんともこの時改めて親しくなった。
あまり時間がなくお茶だけ頂いたが、お父さんは日本の柔術をしているとの事。
白とか黒と言う日本のとは違う、カラーの帯を見せてくれた。

陶芸家だったというおじいさんのアトリエにあった古い浮世絵や、お父さんがフランスで買ったという日本刀なども見せてもらった。

そして女の子は、YAMAHAでピアノのけいこを始めたということで、そのYAMAHAのピアノによる初歩的な演奏も聞かせてくれた。

このように、私が登場する以前のとっくの昔に、既にこの家族と日本の縁は深いものがあったわけだ。


話は飛んで、その二年後の秋、彼女は作曲を認められ、フランスのYAMAHAの生徒の代表として招待され、東京での演奏会にやって来るとの知らせが来た。
勿論両親同行で、出来たら見に来てほしいということだった。
両親がもう舞い上がっている事は、明らかだ。

他の東京の知り合いのフランス人夫妻に会うことも兼ねて、奮発して出かけた。

演奏は大人のフランス人女性のバイオリニストとの共演だった。
演奏中、客席の私の横で見守っているお父さんが、もう本人の百倍緊張し、興奮し、はらはらし、そして喜んだ。

かくしてフランス人形のような可愛いあの子は、初めて日本に来たのだった。
その時は、わずか三日間の東京滞在で、一家は間もなく東京からパリに帰って行った。

きっといつか関西に、そして我が家にやって来るに違いない。



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