フランス人観察記録

日本人から見て解ってきたフランス人の考え方、行動についての覚書

鴨居に頭をぶつけた!!

2012年01月12日 | ラングドック・ルシオン

それは彼の帰国の前々日、金曜の夜のことだった。

 

八月の終わり、台風接近のニュースが飛び込んできた。

台風の進路予想図を見ると、ちょうど帰国日、出発時間の正午過ぎには、成田が暴風雨圏に入りそうだった。

 

彼の航空券は、関西空港羽田、成田パリだった。(羽田~成田は自力移動だった。なぜこんな航空券の取り方なのか、今更言っても仕方がないが、航空会社が可能と判断した範囲なのだそうだ)

航空会社(その時は破たん前の我が国の航空会社の航空券)に関西空港からの出発でパリまで直行便に変更可能かどうかを尋ねたら、「キャンセル・変更が一切きかないチケット」と言う答えであった。

 

彼は月曜から仕事に就かなければならない。

当初の予定では、土曜は我が家でもう一泊して日曜にこのように移動するはずだったが、「関西空港羽田のチケットをキャンセルして成田で泊まるほうが安心」とのことで成田のホテル予約を済ませた。

 

新幹線で成田まで行く方法を、品川駅の構内図もプリントして説明し、期せずして念願の新幹線に乗れるようになったと複雑な表情だった。

 

それまで奈良の滞在を楽しんでいた彼の表情が段々険しくなり「台風で飛行機が飛ばないなど、フランスではないことなので、どうしたらいいのか」と今にも泣きそうだ。

とりあえず、進路が変わるか、ゆっくり進むことを祈りながら、経過を見てまた航空会社と連絡を取ろうということで休むことにした

 

翌朝、私は関西~羽田までのキャンセルが本当に出来るのか心配になり、航空会社に尋ねたら、「もし関西~羽田をキャンセルしたら、その後の行程も無効になるとのこと」で、危機一髪、成田のホテルをキャンセルすることにした。(この時のホテルは当日のキャンセルにもかかわらず、事情を説明するとキャンセル料不要で快く応じてくれた)

 

しかしまたこれで、振り出しである。

とりあえず今夜は関空に一番近いホテルで泊まり、日曜の朝すぐカウンターでフライト情報を確認するという方法にした。

台風で成田からの便がキャンセルになると関西からの出発の可能性もわずかにある。それはフライトの直前までわからないということだった。

 

また良く見ると、羽田から成田の移動の時間がぎりぎりしかない。つまりもし関西からの飛行機が遅れたら、次の空港バスでは間に合わない可能性が出てきた。

航空会社が次のフライトで対応は出来たとしても、彼の場合、月曜からの仕事に支障があると困るのだ。何しろ軍人である。

「羽田から成田までタクシーで行くよ」と言ったが、「数万円はかかるよ」というと、「そんなにかかるの?」と青ざめていく。

 

昼食も夕食もほとんど受けつけず、出るのはため息ばかりの彼を見ていると、何とか励まそうと思うが難しい。

挙句には、長身の彼、鴨居に頭をぶつけてしまうほどだった。

 

滞在中は午後三時まで家でゴロゴロして、正直困ったなあと思うことも多々あったのだが、こうなると、何とかしてあげたい。

ましてや一人旅、こういうとき友人と一緒だと少し慰められたり、良い案も思い浮かんだりするだろうが、とにかく私との意思疎通も十分でないだろうし、彼の不安はいかばかりかと、可哀想に思えた。

 

それでもとにかく今夜は関空のホテルで翌朝の情報を待つしかないと送りだした。

空港バス乗り場へ送る道中も、彼はため息ばかりだった。

 

果たして彼は無事帰れるのか

 

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