日々の逃避

ある大学教員の単なる独り言です。
バイオマテリアルとか高分子とかを研究している・・・かも。

「第2回ブレスト飲み会」を開催してみた。

2014年10月26日 | 日常

今日は、うちの研究室の特徴的な活動の紹介を。

ブレインストーミング(略して、ブレスト) ・・・ それは、脳(ブレイン)の中で嵐(ストーム)を起こすように議論しましょう、という方法だ。もうちょっと正確に書くと、「数名で集まって、1つのテーマに対してお互いにたくさんのアイディアを出して、問題の解決や発展に創造的に結び付ける手法」だ。自分がバイオマテリアルへ分野替えを決意した時の上司であるR研のMd先生からは、研究を進める上での脳内ブレストの大切さを教わった。当時の同僚のNkさん(現NIMS主任研究員)と、「『研究に関係ないかもしれない論文ネタ』を紹介し合う会」を昼食後に週1~2回開催していた。あれも一種のブレストだったと思う。その後に研究室として移ったKアカデミー時代にも、同僚のYmくん(現Q大客員准教授)と同じようなことをしていた。

自分が研究室を立ち上げた時に、「いつかドクターに進学する学生が出てきたら、酒を飲みながらブレストして、20年先の研究を議論しまくる飲み会を開催したい」と考えていた。ここ数年、学生さんたちが順調にドクターに進学してくれている。今年は、うちの研究室のメンバー14人のうち4人がドクターの学生だし、その4人とも(社会人ドクターではなくて)内部進学の学生さんだ。

そんなわけで、今年の3月に、浅草のどじょう料理のお店で「第1回ブレスト飲み会」を開催した。「日々の研究室の実験とかいろんなことを忘れて(つまり基本的に実験の話はしない)、非日常的な場所でやりたい」という自分の方針に基づいて、「いつもなかなか飲みに行かない浅草」「研究室飲み会ではなかなか行かないどじょう料理のお店」を幹事のUcくん(当時D3、現社会人)が探してくれた。ドクターの学生さんたちと未来の材料や技術を語り合ったあの会は面白かった。

実現しそうにない未来であってもいいので、未来を夢見る学生を育てたい、というのが自分の教育方針だ。5年後は誰でも語れるし、そんな近いことを考えていてもブレイクスルーは生まれない気がする。だからこそ、20年先の夢を見たい。夢を語れない教員には、夢を持った学生は育てられないと思う。さらに言うと、B4・M1・M2の研究姿勢をレベルアップするためには、その上のドクター学生たちが夢を語れる人にならないといけない。でもブレストは10数人ではなかなかうまく進まない。参加人数は、「1テーブルで収まる範囲」が適当なので、研究室全体でこの活動を実施するのはちょっと無理がある。というわけで、このブレスト飲み会は、うちの研究室のドクターの恒例イベントにしたいと考えている。

ちなみに前回の第1回ブレスト飲み会の様子はこちら。自分は、脳内をスキャンして視覚を画像化した専門分野外の驚くべき論文を紹介して、そんな技術を生体内にもし組み込めたらどうなるか?という未来像を語った。参加してくれたドクターの学生さんたちが、「ブレスト飲み会は面白かった」「またやりたい」と言ってくれていた。

あれから半年、第2回ブレスト飲み会を開催することにした。半年に1回ぐらいのペースがちょうどいい気がしている。

今回の参加者は、自分+ドクター学生たち(D3のTkくんとCkくん、D2のKsくん、D1のAzくん)+プレドクターの学生(ドクター進学を表明した学生。まだドクター入試を受けていなくて合格していないので、名前はいちお伏せておくけど)。それにしてもうちの研究室は、ドクター進学者が多いなぁ。

今回の幹事は、D3のCkくんに任せた。お願いしたのは、「前回の浅草のどじょうの店みたいに、いつもの研究室飲み会では行かないようなお店や場所だと、非日常的な行事の感じがして面白いかも。あと、いろいろ話すので、うるさくないお店がいい」ということ。そのCkくんが選んできたお店は、五反田の馬肉料理のお店「あぶみ邸」。五反田というなかなか行かない立地といい、馬肉という食材といい(ちなみに馬刺しは、好きな物のベスト3に入るかもしれないぐらい自分は好きだ)、完全個室で語りまくれそうだし、お店のセレクションばっちりです。

ちなみに今回、各自が人数分の配布物を持参するんだけど、その目安として次のようなメールを参加者に事前に流しておいた。

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印刷物は、論文、ネットの資料、会社のHP、新聞のコピー、雑誌のコピー、なんでもOKです。1ページだろうが、数ページだろうが、なんでもいいです。異分野ネタがいいです。面白いバイオマテリアルの報告例や面白い高分子の合成例、とかではなくて、まったくの異分野ネタを目指して下さい。そういうネタでわいわい話しながら、

「なんだこりゃ」
「何に使えるかよくわかんないけど、すごいね」
・・・(話しているうちに)・・・
「・・・あれ、もしかしたら、その材料をこんな風に使ったら、30年後に新しい医療用の材料とか技術になるんじゃね?無理かな?」

みたいな「遠い未来の話」ができれば最高です。
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こんな感じ。どんなネタでもいいんです。というわけで今日は、自分とドクター学生たちで、16:50に五反田駅改札に集合してみた。自宅を出たのは16:00ごろ。お店に到着してみると・・・



なんだか高級感あふれるお店だった。



メニューはこんな感じ。



馬のいろいろな部位。



馬刺し。美味。



馬刺しのお寿司。



馬刺しの唐揚げ(中身はレア)。



馬肉ご飯。



桜鍋(馬肉のすき焼き)。

この1次会で半分の人のネタが披露された。



2次会はワインバー。資料を見ながら議論中の風景。

この2次会で、残りの半分の人のネタが披露された。



3次会は全員で締めのつけ麺。

・・・食べ過ぎじゃね?まぁいいや。


0時過ぎに帰宅。かなり先に(10年、20年先に)実現したら面白いんじゃないか?という無茶な話を、全員できていた。こんな議論の積み重ねから、未来を切り開く力がある学生を育てていきたい。そんな学生をしっかりと育てて、ドクターを無事に取得させて、研究者として社会に送り出すことは、工学系大学教員の責務なんじゃないか、といつも思う。特に自分は、研究室に多くの内部進学ドクターを抱えている以上、意識的にこんな教育に取り組む必要がある。それが、ドクター進学先としてうちの研究室を選んでくれた学生さんたちに対する、教員としての誠意と責任なんだと思う。

「夢を語れない教員には、夢を持った学生は育てられない」・・・やっぱりこの意識をずっと心がけたい。これが自分の教育方針。

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