耳を疑った。ドイツは今年だけでも80万人のシリア難民を受け入れるそうだ。難民流入による負担予測はひとり約160万円。総額では1兆3200億円と試算されている。お金だけの問題ではない。永続する文化・社会への影響、負担は甚大だ。賛否両論が渦巻いているようだが、これこそ一流国の矜持と尊厳を示したものだと思う。二度の大戦を引き起こし、平和を誓った国として、ヨーロッパ全体が大変な時にあえて圧倒的な負担を背負うとは…。
「お疲れ様。私たちの国を希望の地と思ってくれてありがとう!」
そんな心からの笑顔と拍手、歌で迎えるフランクフルト市民の様子に目を奪われる。
シリア難民を拍手や歌で迎えるフランクフルト駅の人々
「安定を求めて怖い人々が流れ込んでくる」「将来雇用を脅かし、社会保障にタダ乗りし、我々の社会の治安と経済を脅かすお荷物だ…!」と思っている人たちも間違いなく多数いるはず。しかし、そんな声をピシャリと撥ね退けるリーダーとしての強さ。メルケル首相にはあっぱれと言うしかない。
ここでは砲撃や銃弾を聞かずにゆっくり寝られるよ。まずはゆっくり休んで自分らしい生き方を見つけて欲しい! アインシュタインだって難民だった。君たちも無限の可能性がある同じ人間だよ!
痛みを抱えた人々に寄り添う国家、そして市民の対応を私は心の底から尊敬する。独公共放送ARDが3日に発表した世論調査では、ドイツ国民の88%が難民のための衣類の提供や募金に協力すると答え、 ボランティアに協力するという回答も67%に上ったそうだ、
これはシリアの9歳の女の子が戦争に翻弄され、砲撃に震える様子を伝えるNGOの映像。何度観ても心に刺さる。これは将来誰の身にも起こりうること。私自身がカンボジアで、ボスニアで、パキスタンでその現場に立ちすくんだ現実であり、日本の七十数年前の現実でもある。そして、この子たちを救うための政治決断を率先して行うドイツ。体が震えてくる。
シリア難民少女の一年。戦争が破壊した幸せな日々
フランスとドイツはこれまで数百万人におよぶ対話を繰り返し、戦争で戦った相手を理解し、受け入れる試みを続けてきたと両国の大使に聞いた。隣人を、過去を乗り越えて受け止め、理解する努力を続けて来たドイツの強さと懐の深さがこんな対応になったのだろう。ベルリンの壁崩壊後は1700万人の東ドイツ市民を一気に受け入れ、一時の低迷はあったけれど経済を強くできた自信もあるのだろう。しかし、文化や人種が全く違う人々をこんなスケールで受け入れるとは…。
一方、日本の難民政策はお粗末そのものだ。申請した60人のシリア難民に対し難民認定はわずか3人。昨年度全体でも5000人の申請者に対して11人の難民認定である。同じ第二次世界大戦の敗戦国でありながら世界に尊厳を示せる国家とそうでない国家。どうしてこんなに差がついてしまったのか?
結局、過去に本当に真摯に向き合った国とそうでない国の違いなのかなと思う。
ベルリンでの日独フォーラムに与党議員の代表(民主党政権当時)として出席させて頂き、メルケル首相と対話