阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

米軍の無人機による攻撃と民間人の犠牲ー2013年12月衆議院外務委員会での質問をもとに

2021年09月18日 09時52分37秒 | 政治
 アフガニスタン・カブールにおいて先月、米軍の無人機による誤爆で民間人10人が殺害された事件について、アメリカ中央軍のマッケンジー司令官は誤爆だったことを求め、謝罪するとともに賠償金の支払いを検討しているとのことです。

 2011年9月の同時多発テロ以降、アフガニスタン、パキスタンでの民間人の死者は7万1000人を超えています。特にドナルド・トランプ大統領が2017年に交戦規定を緩和以降激増しています。

 無人機による誤爆、そして民間人の殺害については、十分な調査、準備、そして正当性がない状態で殺害した場合を除き、作戦遂行者の結果責任が問われないことになっています。そして、被害の実態を検証・把握することが困難なこともあって、補償が行われることは極めて少ないのが実情です。

 私は無人機による攻撃の非人道性を身近に感じた経験から、2013年の衆議院外務委員会で、当時の岸田文雄外務大臣にこの点を質問しています。この問題についての政府の回答が非常に歯切れが悪く、逃げ腰であることが理解されると思います。当選できたら引き続き追及していきます。




ペシャワールからアフガニスタン国境に向かう途中の町・コハート。10歳と11歳の仲良しの同級生が異なる政党の投票所代理人を務めていました。









〇阪口委員 さて、アメリカの無人機について問題提起をさせていただきたいと思います。

 実は、私の個人的な経験もこの問題にはかかわっておりまして、二〇〇二年の秋から冬にかけて、ちょうど九・一一のテロが発生し、また、テロとの闘いが行われていた、当時のパキスタンのトライバルエリアにおいて、私は、選挙の監視、調査、そして報告をするという仕事を現地において行っていた経験がございます。

 当時は、オサマ・ビンラディンを初めとするアルカイダの一派が、まさにパキスタンの行政や警察権が及ばないトライバルエリア、部族支配エリアに潜伏をしている、このように言われておりまして、アメリカによる爆撃が行われておりました。大変な数の犠牲者が出ていると同時に、私も、現地で活動する中で、場合によっては攻撃に巻き込まれるリスクもある活動であるということを現地で認識しておりました。

 当時、少しでも現地の社会に入っていくためということで、私も民族衣装を着て、ひげを生やして活動していました。私の顔は、余りひげが似合う、立派なひげを蓄えるそういった顔ではないんですけれども、しかし、少しでも現地になじんで、奥深く入っていこうとすると、そういった攻撃を受けるリスクが生じ得るということ。

 また、よく聞かれたのは、日本政府の基本的な考えはどうなんだということなんですね。要するに、アメリカの側に立つのか、それとも、我々の側に立って、アメリカのこういった攻撃をやめさせる、あるいは何らかの問題提起をする意思があるのかということも聞かれました。

 このような、本当に現地に住んでいる人々、民間人の方々にとっては、突然ミサイルによって攻撃をされる、これは大変に大きなストレスを感じる、人道的な問題であると思います。

 こういった私自身の個人的な経験に基づいて問題提起をさせていただきたいと思うんですが、まず、二〇〇九年、オバマ大統領がノーベル平和賞のスピーチで述べた言葉、短い言葉ですので引用させていただきたいと思います。

 一定の条件が整ったときのみ戦争は正当化される、最後の手段として、また自己防衛のために、適切な武力で遂行され、民間人は可能な限り犠牲にしないという条件である。オバマ大統領は、スピーチの中でこのようなことを述べております。

 ところが、この十月、国連は、米国、英国などの無人機攻撃による各国市民の被害について報告を行いました。まさにパキスタンやアフガニスタンにおいては、二〇〇四年以降、市民四百七十九人以上が死亡したという結果を公表いたしております。そして、全体の死者は二千二百人であるということも述べております。

 そして、この市民の犠牲に対して責任がある国として、経緯を調べて公表する義務を負うと指摘、無人機攻撃の大半を実施している米国に対しては名指しをし、事実関係を明確にするように求めた、このような報道がなされております。

 また、ヒューマン・ライツ・ウオッチやアムネスティ・インターナショナルのような国際人権団体も同様の指摘を行って、この無人機による爆撃、そして、そこに一般人の被害が多数出ているということに対して、国際社会としては真剣に向き合っていかなければいけない、今そういう時期に来ていると思います。

 まず、大臣にお伺いをしたいんですが、この数字、四百七十九人の民間人が巻き添えになっているということについて、これは数字の大小ではないと思いますが、この事実についてどのようにお考え、お感じでしょうか。

○岸副大臣 お答えを申し上げます。

 委員の御質問にもございましたとおり、アフガニスタン及びパキスタンにおきましては、テロとの闘いがいまだ続いております。その中で、無辜の民間人の方が多数犠牲になられている、このこと自体は大変痛ましいことだというふうに考えておる次第でございます。

○阪口委員 痛ましいことであると思いますという後に、もう少し言葉を期待したんですが、少し官僚的な答弁であったのかなという思いもいたします。

 では、大臣はいかがでしょうか。

○岸田国務大臣 もちろん、今、岸副大臣から答弁させていただきましたように、こうしたテロとの闘い等によってさまざまな地域において民間人の犠牲が出ていること、大変痛ましいことだと思います。

 そして、その実情や背景や理由につきましては、それぞれの地域において、場面において、さまざまなものがあります。やはり我々は、それぞれ個別に具体的に対応を考えていかなければならないと思いますが、基本的に、暴力の停止、そして非人道的な状況の改善、こういったものに対してしっかりと努力をしていく、こうした貢献を行うことは考えていかなければならないと思います。

○阪口委員 今、非人道的な状況の改善というお言葉がありましたが、まさに米国の爆撃によって非人道的な状況が生まれているということ、これはやはりしっかり認識をしなければいけないと思います。

 その上で、さらにお聞きしたいんですが、このようなケースにおいて、テロリストを殺害する上で、どうしても民間人の犠牲というもの、これは避けられていないというのが現実だと思います。

 民間人の巻き添え、被害というのは、これはもうやむを得ないものなんでしょうか。テロリストを殺害する、この大義のためにはいたし方ない犠牲であるとお思いでしょうか。あるいは、やはりこういった人道的被害というものは徹底してなくしていくという立場に立つべきだとお考えでしょうか。この点、お答えをいただきたいと思います。

○岸副大臣 先ほども委員からもお話ございましたけれども、現地で行われているテロとの闘い、これは我が国もテロとの闘いについては重視をしておるわけでございます。

 その中で、先ほどオバマ大統領のお言葉も引かれました。やはり、民間人がそういった攻撃に巻き込まれるということは極力避けていかなければいけないんだと思います。

 先ほど大変痛ましいという答弁をさせていただいたんですけれども、これは、無人機であろうと、いかなる攻撃であろうと、民間人が巻き込まれるということは極力避けなければいけないことでありますし、事実として犠牲者が出ているということについては大変痛ましいことである、こういうことでございます。

○阪口委員 国連は、責任がある国は経緯を調べて公表する義務を負うと指摘して、米国を名指ししているわけですが、基本的に、日本政府としては、国連を支持するのか、あるいは米国を支持するのか、どちらの態度を現状でとっているのか、今後とるのか、この点についてはいかがでしょうか。

○岸副大臣 戦闘の方法についてでございますけれども、いわゆる軍事的必要性と、また、文民及び民用物の保護という人道的な要請の、双方の要素を考慮しなくてはならないわけでございます。

 こうした観点に立ちまして、砲爆撃につきましては、軍事目標に限られるべきであるという区別原則等をしっかり考慮する必要があるものと理解をしております。

○阪口委員 まずは情報開示をするということが、仮にアメリカがみずからの正当性を国際社会に対して訴える場合においても、これは最低限必要なことだと思うんですが、アメリカ政府は、基本的に、これは秘密作戦であるということを理由に、国連や、そして遺族が求める情報開示には応じず、説明責任を果たしていないということであります。

 一度の無人機攻撃で何人の兵士が殺され、そして何人の民間人が犠牲になったのか、これは判断するのも大変に時間がかかります。何といっても、一万キロ以上離れた米国の本土において、そこで赤外線カメラによる情報をベースに攻撃をオペレーターが行うわけですから、現地における作戦と比べても、みずから検証すること、これ自体も困難が伴うものだと思います。

 しかし、民間人を結果的に殺しておいて、その事実を判明するための努力をしない、これは、これ自体、大変に人道的な問題をはらむものだと思いますが、この点について、どのようにお考えでしょうか。

○岸田国務大臣 御指摘の、パキスタンにおける米軍の無人機攻撃ですが、こうした個別の案件において、米国とパキスタンが、これまでどのような経緯を経て、そして、どのような背景のもとに、どんなやりとりをし、あるいは約束等があるのかないのかとか、さまざまな事情について、我が国としては詳細を知る立場にないものですから、その辺を確認できない立場から評価ですとかコメントするのは、ちょっと適切ではないのかもしれないとまず思っております。

 ただし、この無人機の問題は、国際世論の中で、さまざまな議論の中で、今大きく取り上げられようとしています。

 我が国としましては、一般論として、こうして大きな議論が起こりつつあるわけですから、こういった問題について、引き続き大きな関心を持って注視をしていかなければならない、これだけは間違いなく言えるのではないかと思っています。

○阪口委員 大臣がいろいろな意味で明快にはお答えしにくい立場であるということは、私もよく理解をいたしております。

 ただ、今大臣が答弁された内容の中に私は誤りがあると思います。

 この十月にパキスタンのシャリフ首相は訪米をして、オバマ大統領との会談の中で、紛争の当事国ではないパキスタンにおける無人機の爆撃は主権侵害であり、これは停止すべきだという表明を出しているんですね。にもかかわらず、米国は攻撃を続けている。これは大変に国際的にも大きな問題だと思います。

 米国がこの攻撃を続けている法的根拠、これはどこにあるんでしょうか。

○岸副大臣 米国政府によります無人機による攻撃、これも含めまして、あらゆる米国の軍事行動につきましては、関係法規に従って行われるということが説明されておるわけでございます。

 他方、米国のオペレーションの詳細につきましては、我が方が当事者ではございませんので、その詳細について知り得る立場ではないわけでございます。

 そういう意味で、なかなか確定的なコメントを申し上げる立場にはないということを申し上げさせていただきたいと思います。

○阪口委員 先ほど小川委員の問題提起にもありましたが、我々は人間の安全保障を実現する、そのためのリーダーシップをとっていくということを国際社会に対して約束している立場であります。そして、このような人道的な被害をもたらし、また今、国際社会における大きな問題になっているテーマについて、やはり他人事であるという態度は許されないと思います。

 特に被害を受けた方々、これは補償も全くされないんですよね。アメリカが情報をしっかり公開して、誤爆による、また巻き添えによる被害であるということを明確にして、そして補償する、これは起きてはならないことですが、少なくとも補償する、そういった態度を示さない限り、大変な憎しみ、テロの連鎖、これが起こり得ると思います。

 やはり、日本政府としては、この連鎖をとめるための努力をしていく必要があると思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

○岸田国務大臣 まず、先ほど委員の方からシャリフ首相の発言について紹介がありました。

 十月二十三日の米・パキスタン首脳会談共同記者会見におけるシャリフ首相の発言、私も承知をしております。

 ただ、その発言は承知しておりますが、先ほど言いましたように、これまでの経緯ですとか、背景に何があるとか、これは我々十分把握しておりませんので、我が国の立場から、ちょっと具体的にコメントは差し控えさせていただきたい、こういったことを先ほど申し上げた次第でございます。

 そして、こうした無人機の問題につきましては、先ほど法的根拠の御質問もございましたが、まず、今現在、保有ですとか使用を禁止する条約ですとか国際法は存在しないとは認識しておりますが、一般論としまして、武力紛争における戦闘の方法及び手段、これは国際人道法によって規制をされていると認識をしております。

 無人航空機が武力紛争において使用される場合も、同様に国際人道法の適用を受ける、これは当然のことだと認識をしております。

○阪口委員 今、国際人道法について御指摘がありましたが、米国の自由人権協会、これは米国における最も影響力のある人権協会ですが、この団体は、国際人道法は、個人が敵対行為に参加することを阻止する場合を除いては、標的殺害、つまり無人機によって、レーダーで誘導された爆撃によって個人を爆撃する、これは暗殺に近い手法だと思いますが、こういった標的殺害を禁じている。そして、米国が世界のいかなる場所でも疑わしい敵に対する無人機または他の手段による軍事力行使の正当性を主張するなら、他の国が米国内で同様の行為を行うことも正当化される、このように述べております。

 これは、解釈すれば、自分たちの国で他国がこのような行為を正当化するというようなことがあり得ない、あってはいけない以上、アメリカもするなということを米国内の人権団体が表明しているということだと思います。

 この点についてどのようにお考えでしょうか。

○岸田国務大臣 御指摘の国際人道法についてですが、まず、砲爆撃は軍事目標に限られるべきであるという区別原則、軍事目標主義、こういった考え方は考慮する必要があると考えております。

 いずれにしましても、個別の問題については、先ほど申し上げたとおり、ちょっとコメントは控えたいと存じますが、こうした大きな議論が今国際社会で起こっていることについては、しっかりと留意し、そして注目をし、そして我が国としても今後の対応について考えていかなければならない、このように思っています。

○阪口委員 この問題に対する日本政府の今後の方針、これはやはり国際社会の期待に沿うものでなければいけない。そして、その上でのリーダーシップをとっていくということが、私は、日本としての国際社会における存在感の一つの見せ方ではないかと思います。

 女性が教育を受ける権利を主張して、それゆえにタリバンの攻撃を受けたマララ・ユスフザイさん。彼女は、ノーベル平和賞の候補者にもなりましたが、テロリストによって攻撃を受けた立場でありながら、ホワイトハウスにおいて、オバマ大統領に対して、無人機攻撃がテロリズムをあおっている、先ほど申し上げたように、テロの連鎖を生み出しているということを強く訴えました。

 日本政府としては、この問題に真剣に取り組んで、国際社会を引っ張っていく、国際世論をリードしていく、そのような方向性をぜひ打ち出していただきたいと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

○岸田国務大臣 御指摘のマララさんですが、これは十月の十一日ですか、オバマ大統領一家と懇談をされ、そのやりとりの中で無人機攻撃に対する懸念を表明し、そして、罪のない被害者が無人機攻撃で殺されており、パキスタン国民の反発につながっています、こういった指摘をしたということは承知をしております。

 こうしたマララさんの発言も含めて、この問題について、今国際社会で議論が行われていると承知をしております。

 ぜひ、そうした中で、我が国としてどうあるべきなのか、真剣に考えていかなければならないと思っています。

○阪口委員 真剣に議論を行っていく上で、基本になる国際法、これを押さえておく必要があると思います。

 先ほど法的根拠ということをお伺いしたんですが、これはちょっと確認をさせていただきたいんですが、一九四九年のジュネーブ諸条約及び追加議定書によると、このようなことが述べられております。

 第一に、戦時に敵意を持った相手を攻撃することは認められているということであります。しかし、無人機攻撃は、敵意や武器の有無の識別が十分ではない可能性が高いこと、これが大きな問題であります。

 そして、仮に標的がテロリストであっても、このジュネーブ条約によると、敵対行為を行っている最中でなければ、過去の行いを理由に攻撃はできないということであります。

 また、テロリストへの攻撃は捕獲が難しい場合に認められていますが、その場合でも警告が必要で、それらの手順を踏まない攻撃は裁判によらない処刑であり得るということであります。

 無人機による攻撃は、当時は想定はされていなかったとは思いますが、このような、ジュネーブ条約に明らかに反すると思われる点を多々含んでいるということもございますので、これは繰り返しになりますが、日本政府として、この点において、人道的な見地から国際社会をリードしていく役割を果たしていただきたいと思いますし、そのことによって、平和に貢献をする、人道上の問題に対して果敢に挑戦をする日本という存在感をぜひ出していただきたいと思います。

 特に、この際に、日本が問題提起をする場は国連であると思うんですね。ぜひ、国連総会に対して、無人機攻撃による民間人の犠牲を懸念し、国際人権・人道法に違反することがない国際ルールの確立、そして、主要国による透明性のある調査、すなわち、無人機攻撃を行う国があったとすれば、まずはその国自身が責任を持って調査をするということを認めるべきであると思います。そして、犠牲者が生じてしまった場合、責任を持って補償をする、これも私は必要な態度だと思います。

 このような、国際ルールを確立するための働きかけをぜひ日本として行うべきだと思いますが、重ねて大臣の考えをお伺いしたいと思います。

○岸田国務大臣 まず、ジュネーブ条約との関係においての指摘につきましては、参考にさせていただきたいと存じます。

 そして、その上で、こうした問題に対する国際的な議論、しっかり注視をしていきたいと存じます。その上で、我が国の具体的な対応等についても検討していきたいと考えます。