阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

民主主義の蹂躙-今こそ国会議員のノブレス・オブリージュを考える

2015年07月15日 22時47分26秒 | 政治

昨日、衆議院平和安全特別委員会において、安全保障関連法案が強行採決されました。維新の党は独自の視点での対案を提出しましたが、わずか5時間の審議が行われただけでした。参議院の存在意義を無視し、60日ルールを使っての成立を目論んでいることは明白です。あいまいな説明に終始し、圧倒的多数の国民が反対する中での強行採決は民主主義を踏みにじる許しがたい暴挙です。

 紛争地における平和構築活動を行っていた経験から、日本だからこそ価値を最大化できる平和への貢献の在り方を国会で提言し、より良い方向へ導くことが国会議員を目指した最大の理由でした。自分自身が国会議員としてこの法案の審議に関わることができなかったことも痛恨の思いです。

 集団的自衛権として売られてもいないケンカに買いに行き、戦闘行動そのものである後方支援活動を行うことは、自衛隊員が戦争の当事者になることを意味し、間違いなく攻撃のターゲットになります。また、NGOなど紛争地域の現場で活動する日本人の命を危ういものにしてしまうこと、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 ここで改めて私の考えを整理します。

1.日本を取り巻く国際環境の変化を考えると、その脅威に対応できる法整備は必要

2.しかし、集団的自衛権の行使のために強引な憲法解釈の変更を行うことは憲法違反で行うべきではない。本来は憲法改正の国民的議論の中で国際社会に対する日本の貢献のあり方を考えるべき

3.従って、現状への対応は個別的自衛権の範囲内で行うべきであり、日本近海の脅威に対しては領域警備法の整備などで対応する

4.これらの考えに立った維新案を呑まない限り政府案には反対。ところが、維新案に対する審議時間はわずか5時間と不十分であり、国民の理解も深まっておらず、採決できる状況にはない。このような状況で日本の未来を決する重要法案を強行採決し、60日ルールで成立させる考えであれば、到底容認できない。

5.従って、昨日の平和安全特別委員会に出席して討論を行い、維新の党が提出した法案には賛成し、その後の政府案の採決に欠席したことは止むを得ない判断である


 ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)という言葉があります。貴人の義務と訳されるこの言葉。権力や社会的地位のある人間には責任を伴うことを意味します。

 貴族制度や階級社会が残るイギリスでは、上流階層にはノブレス・オブリージュの考えが求められていて、例えばフォークランド戦争にはアンドルー王子などが従軍しています。最近もウィリアム王子はチリで、ヘンリー王子がレソトの孤児院でボランティア活動に従事しています。

 国会議員が貴人かどうかはともかく、今回の法案成立に大きな責任を負うことになりました。私は国会議員こそ戦場に行くべきだと思っています。もちろん戦場で役に立つわけではありませんが、パフォーマンス的な『視察』ではなく、研修、そして知力、体力、精神力が問われる訓練を受けた議員が自ら前線に行き、一定期間行動を共にし、ありのままの姿を国会に報告をすることを義務とする。その内容を現地での活動内容や、撤退時期の国会での判断材料にする。せめてこのような形を作るべきです。『自分たちは安全なところにいて議論している』という批判、まっとうな感覚を持った国会議員にとっては耐え難いものだと思います。であれば、立法府の責任として、このような役割を自ら果たすことを検討してみてはどうでしょうか。どのような形態が可能であり、効果的なのか、是非真剣に考えるべきです。前議員にも同様の義務があるとの考えに立ち、私自身も自分ができることを追求していきます。



カンボジア内戦で心身ともに傷ついた除隊兵士が農村で生きるための職業訓練を行っていました。


除隊兵士への支援活動。この青年は手榴弾を受け、飛び出した内臓を自分で中に入れて戦闘を続けたそうです。