フジテレビで放映された「命の授業 豚のPちゃん...」は、12年前の話。小学校のクラスで豚を1頭育てて食っちゃおうという長期プロジェクト授業だったのだが、これは無茶くちゃだ。完全に豚に感情移入し、「殺す」とか「墓」とか「少しでも命を永らえさせて」とか、単なる観念上の混乱を引き起こしただけに終わっている。最後に食肉処理場のトラックに引き渡す時、皆で「Pちゃん~」とか叫んで嘆き悲しんでいた。
この授業は、最初から失敗していたとしか言いようがない。
当時の先生も生徒も、授業を肯定的にとらえていて、「考えさせられてよかった」みたいな事を言っている(あるいは、否定的コメントがカットされたのかもしれないが)。ペットと家畜では、その観念上の位置づけは全く異なる。これが大陸に行くと、ペットでも非常事態なら食べちゃうのだが(客が来たら、ごちそうのために、屠って食っちゃうことはあるようだが、それは韓国の犬の話か)、そこに妙な感情はない。日本に、そんな文化はない。だいたい、「殺す」とは何事か。食用として「屠る」ことは、「殺す」とは違うのではないか。それに、ちゃんとした遊牧文化圏なら、にあたって、宗教的儀礼を行う。そういうものが、日本には何もないし、先生にもそんな想像力はなかったみたいだ。食用家畜は、そういうシステムの中で飼わなければいけない。クラスのペットみたいにしてどうする。それが「追悼」とか意味不明の話を引き起こしている。
動物を家畜として飼うのであれば、まるまると育っていく様を、「おいしそう」と思わなければならない。そうでなければ嘘だ。この授業は、ペット化を容認し、放置した。先生は、命をもてあそんだだけだ。逆に「命の大切さを教えられた」とは言うが、そこでいう「大切な命」は意味不明である。そこに違和感を感じないのは、いかにも日本人的だ。文化の規範が、大事なところで喪われているか、壊れてしまっているようにしか見えない。
追記:2008年10月27日 ミヤネ屋が再び取り上げたようだ。実は映画化されたのだ。なるほど、再び関心が寄せられる訳である。
ブタがいた教室 2008年11月1日(土)より、全国ロードショー
愚かな企画である。
追記:『豚のPちゃんと32人の小学生 命の授業900日』を読んだ。100%、予想通りの内容であった。本稿の内容にも、まったく修正の必要がない(ただ、食うという方針は生徒の前では貫徹されていなかったし、曖昧なまま。そもそも養豚に関する知識ゼロで始めていたのだ)。ちなみにTV制作会社が作っていたドキュメンタリーはNHKで放送されるはずだったが、試写の結果、NHKに却下された。「間違った教育」だから、放映するわけにはいかないという激怒。結局フジテレビ系で放映されたのだが、これもキャスターがナレーションを付けるのを一旦拒絶している(最終的には協力したようだが)。理由はNHKと同じ。「先生」は今は大学で教えているが、未だに自分のどこが間違っていたか、分からないようだ。答えのない問題に答えを出そうとしてはいけないのだ。設問自体が間違えている。葛藤や悩みは、確かに人生の楽しみであり貴重な現実には違いないが、豚は半年で出荷すべきだったのだ。こんな問題を3年間引きずったのだ。
この授業は、最初から失敗していたとしか言いようがない。
当時の先生も生徒も、授業を肯定的にとらえていて、「考えさせられてよかった」みたいな事を言っている(あるいは、否定的コメントがカットされたのかもしれないが)。ペットと家畜では、その観念上の位置づけは全く異なる。これが大陸に行くと、ペットでも非常事態なら食べちゃうのだが(客が来たら、ごちそうのために、屠って食っちゃうことはあるようだが、それは韓国の犬の話か)、そこに妙な感情はない。日本に、そんな文化はない。だいたい、「殺す」とは何事か。食用として「屠る」ことは、「殺す」とは違うのではないか。それに、ちゃんとした遊牧文化圏なら、にあたって、宗教的儀礼を行う。そういうものが、日本には何もないし、先生にもそんな想像力はなかったみたいだ。食用家畜は、そういうシステムの中で飼わなければいけない。クラスのペットみたいにしてどうする。それが「追悼」とか意味不明の話を引き起こしている。
動物を家畜として飼うのであれば、まるまると育っていく様を、「おいしそう」と思わなければならない。そうでなければ嘘だ。この授業は、ペット化を容認し、放置した。先生は、命をもてあそんだだけだ。逆に「命の大切さを教えられた」とは言うが、そこでいう「大切な命」は意味不明である。そこに違和感を感じないのは、いかにも日本人的だ。文化の規範が、大事なところで喪われているか、壊れてしまっているようにしか見えない。
追記:2008年10月27日 ミヤネ屋が再び取り上げたようだ。実は映画化されたのだ。なるほど、再び関心が寄せられる訳である。
ブタがいた教室 2008年11月1日(土)より、全国ロードショー
愚かな企画である。
追記:『豚のPちゃんと32人の小学生 命の授業900日』を読んだ。100%、予想通りの内容であった。本稿の内容にも、まったく修正の必要がない(ただ、食うという方針は生徒の前では貫徹されていなかったし、曖昧なまま。そもそも養豚に関する知識ゼロで始めていたのだ)。ちなみにTV制作会社が作っていたドキュメンタリーはNHKで放送されるはずだったが、試写の結果、NHKに却下された。「間違った教育」だから、放映するわけにはいかないという激怒。結局フジテレビ系で放映されたのだが、これもキャスターがナレーションを付けるのを一旦拒絶している(最終的には協力したようだが)。理由はNHKと同じ。「先生」は今は大学で教えているが、未だに自分のどこが間違っていたか、分からないようだ。答えのない問題に答えを出そうとしてはいけないのだ。設問自体が間違えている。葛藤や悩みは、確かに人生の楽しみであり貴重な現実には違いないが、豚は半年で出荷すべきだったのだ。こんな問題を3年間引きずったのだ。
思わずコメントしちゃいました。
私もPちゃんに限っては、あの番組構成に流されてました。
>食用家畜は、そういうシステムの中で飼わなければいけない。クラスのペットみたいにしてどうする。
そりゃそうだ。なんで気づかなかったんだ。。
>そこに違和感を感じないのは、いかにも日本人的だ。
ほんとすみません。。
>動物を家畜として飼うのであれば、まるまると育っていく様を、「おいしそう」と思わなければならない。そうでなければ嘘だ。
家畜を育てたことのない人だけがそういう嘘をつける。
あなたこそ、この授業をうけるべきだった。
あなたは間違っている
家畜を飼う人は、家畜を製品、商品として育てていると思います。製品の製造に、製作者(職人)として愛情に似た感情を込めるということは、あるでしょう。
家畜とペットの境が曖昧になるのは、畜産農家の家の子が、家の仕事に不慣れなうちにありうる話かとは思いますが、多分すぐに理解し、了解してしまうと思います。
つまり、必ずしも、動物を殺して食べなくてもいいのです。
倫理面から考えれば、人間は菜食主義への道をめざし、畜産は縮小していくべきだ、と考えます。
?
一度、畜産業に携わってみてはどうですか?
そんなこと微塵も感じたことはないですけど。
変な理屈つける大人がいるから「いただきます」を言えない子供が増えていく。
日本の文化でしょう?嘆かわしい限りです。
映画紹介のリンク先を読むと、「鶏をさばいて食べたり、ブタを丸ごと一頭食べる授業、通称”鳥山実践“で知られる教育者・鳥山敏子氏」の著作から影響を受けた小学校の『新米教師』が、深い考えもなく「やっちまった」ように思えます。
しかし・・・「当該教師:命の大切さを教えられた」とは、笑止千万ですな。
私も小学生時代先生に、『食べるのであれば生き物を殺したってかまわない』といってました。
生きるためにはしょうがないことですから。
だからこそ、食べるときにはその殺してしまった生き物に感謝して『いただきます』というのだともいっておられました。
でも、いくらそう思っていても、思い出の品がなかなか捨てられないように、Pちゃんも食べられなかったのでしょう。
まあ、最初に飼った家畜だからだと思いますよ。
次からはああはならないでしょうねぇ。
長文すみませんでした。
これだけだと、ちょっと誤解を招くかと思います。弱肉強食、食うか食われるか、みたいになっちゃいますから。「殺したってかまわない」は言葉として残酷です。
「殺す」と「」では意味合いが違うと思います。日本ではその辺の区別が曖昧なのが難点ですが、本来ならそこの区別を教えるのが「授業」の役割でしょう。しかしこの「授業」は、「1匹の子豚を買ってきて、長く世話して育てた後で、殺して食えますか? 食用だから食いますよね? 人間だから仕方ないですね」という方向性なんですよ。これはわざとらしい残酷さです。そして最後まで、「殺」と「屠」の違いは教えなかったようです。この授業の問題点は、まさにそこ。
違うと思いますよ。
確かに、スタート時点では『豚を飼って殺して食う』と事をゴールとしていたとようです。
また、ペットと家畜と混同してるのも明らかに誤りだとは思います。
しかし、三年経った時点での黒田氏のスタンスは「長く世話して育てた後で、殺して食えますか? 食用だから食いますよね? 人間だから仕方ないですね」では無いと思います。
黒田氏が書かれたは本はお読みになりましたか?
また、『「殺」と「屠」の違い』とは何ですか?
殺すとは生物の命を奪う事ですよね。
とは(主に)食用に家畜を殺す事ですよね。
つまり「」は「殺す」に含まれると思うのですが。
それとも、それ以上に何か違いがあるのでしょうか。
それから、『まるまると育っていく様を、「おいしそう」』との発言に違和感を覚えてる方が何人かいますが、私も同様に違和感を覚えます。
畜産業に携わったことがおありでしょうか。
また、実際にご自身で何らかの生物を屠った事はおありでしょうか。
差支えが無ければ教えてください。