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「熱闘」のあとでひといき

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拓殖大学 vs 専修大学(第4回関東大学春季大会C-2015.5.10)の感想

2015-05-14 01:53:52 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学ラグビーは春季大会に突入し、3節目にしてすでに波乱含みの混戦モードに入っている。この大会の特徴は招待試合の場合を除き、原則として対戦チームのどちらかのホームグランドで試合が行われることにある。スタンドから観るのとは違った目線から、普段はホームチームの選手達がどんな環境で練習しているかを知る意味で貴重な体験ができる。そんな中で、私的春シーズンの開幕戦は、専修大学のグラウンドで行われる拓殖大学との因縁対決になった。奇しくも昨年末の入替戦で仲良く1部復帰を果たしたチーム同士の対戦とあって、選手達だけでなく関係者の気持ちも昂ぶっているはず。

その、専修大学グラウンドへのアクセスは、小田急線の伊勢原駅からバスに乗るのが一般的。しかし、地図を見たら歩けない距離でもなさそうに思えたので、早めに家を出て徒歩で試合会場に向かうことにした。途中、前方に新緑が拡がる風景はハイキングなら快適だが、どんどんキックオフの時間が迫ってきて歩くピッチも上がっていく。結局到着したのは開始5分前の滑り込みセーフになってしまった。とどめのような最後の階段はかなりきつかったが、緑一杯の天然芝のグラウンドを目にしたときは疲れが一気に吹き飛んだような気分になった。ちなみに、奥には人工芝のグランドもありラグビーに集中できそうな立派な練習環境だ。

キックオフまであと数分に迫る中、さて、どこで観戦するか。最初はメイン側の建物の屋上に設けられた座席がいいように思えた。しかし、実際には席の配置がフラットなため、後ろに座ると前方が見えないことが判明。方針変更で、バックスタンド側のピッチサイドで観ることにした。途中、ゴール裏の辺りで拓大のメンバー表には名前が載っていなかったシオネ・ラベマイを見かけた。足を引きずって歩いているので負傷による欠場。拓大にとってはピンチだが、逆にエース不在の状態でどこまで戦えるかが試されることになる。



◆前半の戦い/パワーに勝る拓大の前に劣勢を強いられた専修

試合が始まってから、ピッチサイドをHWL付近に向かって歩いていたら、観戦を通じて親しくなった拓大関係者の方に遭遇しその場に落ち着いた。熊谷ラグビー場から半年ぶりとなる挨拶もそこそこに、視線はグランド上へ。専修のダイレクトタッチでHWL付近でのラインアウトから拓大がオープンに展開し、右WTB谷川が右サイドを駆け抜けて鮮やかな先制トライが決まる。難しい位置からのCTB松崎のGKも決まり、開始1分にして拓大が幸先良く7点を先制した。

先制パンチで勢いに乗る拓大。リスタートの相手キックオフに対してカウンターアタックで攻め上がるが、HWL付近で惜しくもノックオン。3年間にわたり不動のFW第1列として拓大のスクラムを支え続けた岡部と川俣が卒業したとは言え、右PRに大学生最強の呼び声が高い具智元が居る。今シーズンもスクラムは拓大のストロングポイントになるはず。しかし、そのスクラムがなかなか決まらない。遠目には、拓大がスクラムをうまく組ませてもらえないようにも見えた。

すっかりじれてしまったのか、拓大が反則を犯す。と専修は間髪入れずにFKから一気に攻め上がる。FW戦での劣勢が予想された専修の狙いは、おそらく攻撃のテンポを上げること。そうなれば、セブンズ仕込みのBKによる展開力に自信を持つ専修ペースになる。ボールが小気味よく繋がり、最後はSO小田がウラに抜けてゴール中央に飛び込んだ。GKも難なく成功し専修が7-7の同点に追い付く。時計はまだ6分。得意のはずのスクラムが皮肉にも拓大にとっては鬼門となるが、それは後半に顕著となる。永らく1部リーグから遠ざかっていたはずなのに、チャンスをそつなく得点に繋げるあたり、なかなか専修は試合巧者だと思った。

しかし、序盤は、シオネ・ラベマイが不在で、小柄な選手が多いものの個々のパワーで勝る拓大のペースで試合は進む。FWでボールをがっちりキープされたら専修は苦しい。また、拓大はBK陣も1部に居た2年前に比べると確実にパワーアップしており、専修のような小技はなくてもボールを前に運ぶことができる。同点に追い付かれたものの、拓大応援席にはまだまだ余裕が感じられた。13分には専修ゴール前でのFWによる執拗な攻めから拓大に得点が生まれる。拓大のキープレーヤーは、昨年は主としてWTBを務めていたが、昨シーズン後半からはSOに固定された林謙太。WTB仕込みの身体を張ったプレーに小技が加わり、拓大のBK攻撃にアクセントを付け加える。

戦前の予想通りFW戦では劣勢を強いられた専修だが、BKを中心としたパス回しになると選手達は俄然元気になる。16分にはボールを左右に大きく動かす展開から拓大陣22m付近で相手の反則を誘いPKのチャンス。さて、どうするか?と思ったら専修はショットを選択する。FB田辺が正面25mのPGを確実に決めて3点を返し、ビハインドを4点に縮めた。さらに21分には劣勢のはずのスクラムで拓大をプッシュする場面も観られた。低い姿勢で堅いパックのスクラムが組めていたのは確かだが、拓大FWに少なからずショックを与えたように見えた。

といった具合に専修が健闘を見せるものの拓大の優位は動かない。前半の中盤以降は殆どの時間帯でゲームは専修陣内で行われることになる。27分、拓大は専修陣のHWL付近右サイドのスクラムからオープンに展開し、左サイドを抜けたWTB谷川からラストパスがNo.8の石田に渡る。GKは失敗するが19-10と拓大はリードを9点に拡げる。さらに32分、拓大は専修の反則により得た専修陣22m内でのラインアウトからモールを形成して前進し、石田が2つめのトライを挙げる。GKは失敗ながら24-10と拓大はリードを14点に拡げた。

ただ、優位に立って攻めている割に拓大の得点が伸びない。専修はFW戦で劣勢を強いられながらも、粘り強いディフェンスで失トライを2つに抑えたことが後半の戦いに効いてくることになる。また、拓大もリードしていながらプレーに落ち着きがなく、専修の低いタックルに対してノックオンなどのミスで得点機を逃し続ける。結局前半はこのまま24-10で終了。拓大がピリッとしなかったのでこの点差で済んでいるが、前半の専修の戦いぶりに対して「前途多難」の四文字熟語が頭に浮かんだ。



◆後半の戦い/粘り強さを見せた専修に対し、拓大は終盤にガス欠で失速

専修の抵抗に遭ったとは言え、拓大が優位に試合を進めた前半。このまま拓大は優位に立つFWを活かして「ライバル」を徹底的に叩いておきたいところ。しかし、キックオフ直後にこの試合のターニングポイントになったと思われる痛いミスが拓大に出てしまう。専修キックオフのボールは少し風があったとは言え、けしてキャッチングが難しいボールではなかった。しかし、連携が上手くとれていなかったため、ジャンプした選手が捕獲し損ねたボールを後ろに居た選手がノックオンする。不意に前に転がってきたボールを前に居た選手がよけきれず、ノックオンオフサイドとなる。

ちぐはぐなプレーに対して、拓大が3位の好成績を収めた2012シーズンのことを思い出してしまった。当時のチームもウヴェを除けば小柄な選手が多かったが、キックオフのイーブンボール確保を強力な武器としていた。相手ボールのキックオフの時はサポートプレーで確実にボールを捕獲し、マイボールの場合も逆サイドに走り込んだFL森が身体を張ってジャンプ一番でキャッチングに成功したシーンが何度もあったことをはっきり覚えている。工夫を凝らしてマイボール確保に執念を燃やしていた拓大は何処に行ってしまったのだろうか。結果論だが、何でもないプレーがこの試合の敗戦に繋がる致命的なミスになってしまった(ように見えた)だけによけいにそう感じた。

専修はここでも転がり込んできたチャンスを逃さず、PKは拓大ゴール前の絶妙の位置でタッチを割る。専修は拓大陣22m内でのラインアウトからモールを形成して前進し、パスアウトされたボールがショートサイドに走り込んだ左WTB上田へのラストパスとなる。GKも成功して17-24。じわじわと点差が縮まっていく中、拓大サイドの雲行きがだんだん怪しくなっていく。時計はまで2分を指していない段階での7点差は専修に十分過ぎるくらいの元気を与えてしまったようだ。それとは対照的に拓大の選手達はなぜか大人しい。前半も応援席からは叱咤激励の声(愛の鞭)が飛んでいて、後半はそのボルテージがだんだん上がっていくのだが(もどかしいくらいに)伝わらない。

ただ、拓大には不運な面があったことも否めない。専修陣で攻めているときに根付きの悪かった芝生が絨毯のようにめくれ上がり、選手が足を取られてチャンスを逃す場面もあった。ピッチサイドからは、「もう一面ある人工芝の方のグランドで試合をした方がよかったのに。」という声も聞かれた。それはさておいても、選手にとってケガに繋がりかねないグランドコンディションはちょっと気の毒な感じがした。

試合はタイトな7点差を保ったままで、時計はどんどん進んでいく。このように書くと緊迫した好ゲームが連想されるが、両チームともシーズンが始まったばかりのためかミスが目立ったことも事実。ただ、どちらかと言えば、後半はボールをテンポ良く動かすという明確なコンセプトで戦った専修がペースを握ったのは必然とも言える。拓大はFW、BKともパワーアップは感じられるが、秋のシーズンに対戦する相手のことを考えればパワフルなシオネが加わっても厳しい戦いを強いられることは間違いない。

さて、ゲームもいよいよ終盤。ここで拓大のFWを中心とした選手達の運動量が目に見えて落ちていき、7点のリードが風前の灯火のような状態になっていた。それとは裏腹に、フレッシュな選手を投入した専修は逆転に向けて意気上がるような状態。28分にトライを奪いGKも成功してついに同点になってしまった。拓大もウラに抜けてあと一歩でトライという場面が何度かあったのだが、フォローが追い付かない。もちろん、諦めずに追いかけてトライを阻止した専修の粘り強いディフェンスを褒めるべきなのだが、拓大ファンにとってはもったいない場面が続いた。

そんな拓大とは対照的に、専修は得点の匂いに対して敏感だ。ウラに抜けたら確実にトライに繋がるような状況にあって、ここ一番の集中力でボールをインゴールまで持ち込むことができる。めっきり拓大の選手達の運動量が落ちた状態で専修の逆転は時間の問題と思われた32分、専修が1トライを挙げてこの試合で初めてリードを奪う。このままでは終われない拓大も最後の力を振り絞って専修陣内で攻め続けるが、時計がどんどん進みそのまま専修が7点のリードを守る形で終戦となった。専修が勝ちを拾ったように見えた戦いだったが、冷静に振り返ってみれば、勝利に対する気持ちの面で上回った方のチームが順当に勝利を収めたと言える。



◆早くも黄信号が点滅の拓大に対し、光明が差した専修

シオネが不在でもパワーに勝る拓大が優位に試合を進めると予想していたし、前半はそんな流れで試合は進んだ。専修も秋の前哨戦のような戦いに臨むにあたって堅くなってのかも知れない。しかしながら、前半に得点を重ねてリードを奪いながらもどこかちぐはぐだった拓大に対し、チームコンセプトが明確だった専修が徐々にペースを掴んでいった。そんな両チームの戦いぶりを観て、拓大に対しては不安感が頭をよぎり、専修に対しては期待感が浮かんできた。

専修は2部に降格する前も組立を持ち味とする展開ラグビーを信条としていたチームという印象がある。おそらく緑と白のジャージにはそんな伝統が深く染みこんでいるに違いない。今シーズンのリーグ戦Gも昨シーズン同様に混戦模様となる可能性が高く、とくに中下位は熾烈なサバイバル戦となることは必至とみている。そんな中で勝ち残るチームの条件は、コンセプトが明確で一体感のあるチームだと思う。専修はどちらの条件も満たしていることが上で浮かんだ期待感に繋がっている。正直、拓大に比べると知らない選手が殆どの状態だが、専修がじっくり観ていきたいチームになったことは間違いない。

2部降格が決まった試合の時にも感じたことだが、拓大は原点を見つめ直して欲しいと思う。原点とは3位に浮上した2012シーズンを戦ったときのチームのこと。「やれることを確実にやる。」ということがモットーになっていたはずだし、キックオフでのイーブンボール確保の例を挙げるまでもなく、それができた工夫と一体感のあるいいチームだった。難しいことはできなくても、15人が明確な目標設定のもとでコミュニケーションを密にすることで結果が出るところがラグビーのいいところだと思う。2012のチームの一員でもあった今の4年生がリーダーシップを発揮してチームを盛り上げていって欲しい。

ラグビー「観戦力」が高まる
斉藤健仁
東邦出版

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (Unknown)
2015-05-14 10:31:49
拓殖大学ラグビー部に対し貴重なご意見を頂き感謝します。これからも拓殖大学ラグビー部頑張るところでありますので、今後も貴重なご意見よろしくお願いいたします。
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Unknown (オレンジ)
2015-05-18 20:01:56
確かに拓大は大人しかった気がします。元気よく仲間を叱咤激励するのが校風ですが、今年はいまのところ、あまり感じませんでした。
例年同様、選手層があまり厚くないのはしかたありませんが、拓大スタイルを確立することを期待しています。
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