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日本大学 vs 中央大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.09.24)の感想

2017-10-04 01:31:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


学生の卒業と入学で毎年のように選手が入れ替わる大学ラグビー。戦力を維持するのが難しいところがファンや首脳陣を悩ませる。しかしながら、毎年フレッシュな状態からスタートするからこそ面白いとも言える。かれこれ今年でリーグ戦G中心の観戦は21シーズン目を迎えるが、毎年のようにフレッシュな選手達と出逢えるのは大きな楽しみのひとつ。

そんなことを思うのも、今シーズンも既に有望な新人達がデビューを果たしているから。「大学ラグビーにロスはない」と言わんばかりに元気いっぱいのプレーを見せているひとりが中央大のSH成田。Jスポーツ・オン・デマンドの映像だったが、印象に残ったルーキー選手のひとり。また、本日スタメン出場を果たした中央大のSO侭田も1年生。対戦相手の日大も先発SOは1年生の齊藤(芳徳)だし、SHの控えにはこれまた1年生の濱端の名があるといった具合。

とくに中央大は卒業した浜岸が4年間SOを務めていて、SHも加藤がレギュラーを務めた一昨年のシーズンを除き4年間ずっと長谷川と住吉が併用されてきた。今季の中央大でもっとも「ロス」が心配されたポジションは4年間ほぼ固定だったHB団と言って間違いない。思えば上で挙げた選手達が颯爽と登場した4年前は新人SHの当たり年だったと思う。中央大の2人の他にも大東大には小山、東海大には湯本がいた。それに倣った訳ではないと思うが日大も同じ年に2人の1年生がレギュラーSHの座を争っていた。小山と湯本は揃ってトップリーグデビューも果たしているから、当たり年だったと言っても罰は当たらないだろう。

それはさておき、HB団が揃って交代となった中央大はそれでなくても不安いっぱいのシーズンインだったはず。対外試合自粛のため春シーズンに殆ど実戦経験を積めなかったことが尾を引くとみられていた。緒戦の拓大戦も最終的に勝利したものの、失点が多かった事など安定を欠くチーム状態だった。ただ、アタックでは過去の中央大とは違うというところを見せた。一方の日大も春の戦績を見る限り、上位進出は難しいと見られていた。しかしながら緒戦の東海大戦は最終的に大差の試合になったものの、序盤戦は五分の戦い。両チームにとって2戦目となるこの戦いは、ルーキーHB団対決だけでなく、お互いの状態を確認する上でも興味深いものとなった。



◆前半の戦い/幸先良く先制した日大だが、ミスを重ねて流れを中央に渡す

日大のキックオフで試合開始。相性と言っていいのか判らないが、この対戦は「何か」が起こる。その何かは日大ファンが畏れていることであり、逆に中央大ファンには幸運を感じさせるところ。そんな日大の中央に対する苦手意識も過去のものとなった感がある(と思っていた)。序盤から日大が快調に飛ばす。自陣からでもキックを使わずに前へ。気迫に押されたかのように中央大は後ずさりを余儀なくされる。「自陣からの継続」で思い出すのが、前任HCが就任初年度に徹底させたキックの封印。小川(当時はルーキーSO)を育てたとも言えるが、あまりにも無謀なアタックの連続にピッチは悲壮感に満ち満ちていた。そんな記憶も遠い昔のことのように思える。

話が逸れた。中央大は開始早々の1分に自陣のスクラムでコラプシング。日大はこのチャンスを活かしゴール前のラインアウトからモールを形成してぐいぐいと押し込み、あっと言う間にゴールラインに到達。日大は中央大のお株を奪うようなドライビングモールで7点(GK成功)を先制した。その後も日大の攻勢が止まないが、やってしまったダイレクトタッチ。この何でもないミスがすこしずつ中央大にゲームの流れを渡す序章となったことはあとから判る。10分、日大は追加点のチャンスを掴む。自陣からのラインアウトを起点としたハイパントをFB内海が確保に成功して前へ。左に完璧なオーバーラップができパスが渡ればトライ!という場面だったが内海はクラッシュしてボールを失う。さらに16分、日大は中央大ゴール前でキックチャージに成功するが、インゴールで一歩先にボールを押さえたのは中央大の選手。



渾身のキックチャージも実らなかった日大に「ラッキーバウンドはないのか?」と思わせたシーンがその直後にやってくる。中央大のドロップアウトに対し日大がノックオン、中央大はすかさずウラへキック。ボールを確保した中央大のWTB橋本が開いたスペースを走りきりゴールラインに到達する。GKも難なく成功して7-7の同点となる。時間をかけて攻めても一瞬の切り返しで失点してしまうのは理不尽に見える。でも、そんな理不尽なことが起こるのがこのカードの伝統でもある。その後も日大は攻め続けるが、アタックを全うしきれない。最大の原因は、中央大に粘られてブレイクダウンでことごとくターンオーバーされたこと。敵陣に入ればどんどんテンポアップして攻め込みたいところだが、逆に日大のアタックはスピードダウンする。中央大の懐が深いディフェンスを褒めるべきだが、肝心な所でプレーの精度を欠いてしまう「日大の残念」の方がより強く印象に残ってしまう。

前半も終わりに近づいてきた27分、またしてもラッキーバウンドが中央大に味方する。中央大のSO侭田の絶妙なウラキックは、大きくバウンドしてチェイスしたNo.8牧野の胸にスッポリと収まる。牧野はそのままボールをゴールラインまで運び、中央大は14-7と逆転に成功。これで中央大が完全に乗った。日大は自陣でゴールラインを背負う背水の陣を余儀なくされ、何時失点してもおかしくない場面の連続。だが、ここは日大が(反則もあったが)粘り強く中央大のアタックを止め続け得点を許さない。前半も終わりに近づいたところで日大のアタックに勢いが戻る。しかし、ここも肝心な所でノックオンがあるなど、日大ファンが天を仰ぐ場面が目立つ。結局、このまま日大が攻めきれずに前半が終了した。やはり、取れるときに取るということはラグビーの鉄則だと改めて知る。



後半の戦い/完全にペースを掴んだ中央大が新境地も見せて勝利

ラグビーでやってはいけないミスは、1にキックオフのミス(ノット10mやダイレクトタッチ)、2にペナルティキックのノータッチ、そして3つめは何でもないミス。ホントに何でもないミスなのだが、味方選手の士気を落とすという意味では重大なミスに繋がることもある。その後の試合の流れを見れば前半のダイレクトタッチは(日大ファンにとって)残念だった。

さて、気持ちを取り直して後半戦。今度は中央大が攻勢に出て、日大は自陣深くからなかなか出られない苦しい状態が続く。そして6分、中央大は日大ゴール前でのラインアウトから得意のモールを押し込み前へ。日大のFWがモールに集まる状況をしっかりと見ていたのは最後尾にいたSHの成田。一瞬の間に出来たギャップを上手く突いてゴールに飛び込む。GK成功で19-7と中央大はリードをさらに拡げる。前半は守勢だった中央大だが、後半は完全にペースを掴んだ。両者、蹴り合いが多く、一進一退の攻防が続くものの、リードしていることもあり中央大の優位は動かない。日大にタックルの甘さが目立つ場面も続く。



後半も半ばにさしかかった19分、中央大はさらに7点を追加する。日大陣10m付近左サイドのラインアウトを起点としてオープンかつワイドに展開。大外までパスが回ったところでワンテンポ早くボールは内側にいたフォロワーに返されると日大のディフェンスは対応し切れない。前半の日大にこのアタックがあったらと思わせる鮮やかなトライだが、かつての中央大ではなかなかこのようなアタックは見られなかったように思う。緒戦の拓大戦でも変化が見られた中央大だがそれが確信に替わった瞬間。新しく今シーズンからスタッフに加わった中山コーチの手腕も確かのようだ。後半の中央大はブレイクダウンでボールを停滞させずに動かせていたことも印象に残る。

どんどん点差を拡げられていく日大だが、こちらにも期待のルーキーの濱端が居る。昨年は大東大に居て、今年日大に加わった選手だがフレッシュな選手であることに違いはない。この日は後半15分からの登場だったが、遅効だった日大のアタックが明らかにテンポアップする。濱端はFWのドライブも巧み。そんな1年生に刺激を受けたかのようにリスタートのキックオフ後は「日大の時間」となる。20分、日大は中央陣10m付近でのラインアウトを起点としてFWで前進しゴール目前まで迫るもののノットリリース。24分にもPR1の坂本のラインブレイクを起点としてボールを繋ぎ、ゴールまであと僅かのところでノックオン。丁寧にボールを繋いでいたら確実にトライだったので惜しまれる。

試合も終盤に近づいた36分、日大は中央大陣22mでのラインアウトを起点とした濱端の巧みなモールドライブから一矢報いる。右に左にとFWを誘導しながらドライブされたモールは最後にはランニングモール状態となる。決めたのはタテ長のモールの最後尾に付いた濱端だった。しかし、日大の反撃は遅すぎた。残り時間も少なくなったところで、自陣深くから反撃を試みるが22mラインの辺りでのブレイクダウンでまたしてもターンオーバー。中央大がウラに蹴ったところでチェイスしたFB八尾がボールを拾ってトライ。GKは失敗するが33-14のスコアで中央大が日大に勝利を収めて2連勝。チャンスからトライの場面で見せたここ一番の集中力は見事だった。



◆試合後の雑感/確かな変化(手応え)を感じさせた両チームの今後に期待

上でも書いたが、中央大は中山コーチの加入が早くも成果を挙げつつあるように見える。過去の印象ではせっかくボールをWTBまで展開してもフォローが追い付かないとか、2次攻撃の段階で既にBKラインに並んでいるのはFWの1,2列の選手ばかりという状況が散見されたのでそんな想いを強くする。BKに上級生が多いこともあるが、無理なくボールを繋ぎ、スペースがが出来たところで勝負するラグビーは理に適っていると思う。バックスタンドに陣取っていた部員達がもたらす一体感もすっかり板についた感じ。安定した侭田のキックを見ても、中央大はルーキーHB団とともにステップアップしていったら盤石のチームになるだろうし、またそうなって欲しい。

前半の圧倒的に攻めていた時間帯にトライを重ねられなかったことが返す返すも日大には悔やまれるところ。イーブンボールがことごとく相手へのラッキーバウンドになった感があるが、運のせいだけとは言いきれない。ブレイクダウンでスムースな球出しができず遅効になりがちだったことに対しては、FWをドライブできる濱端に期待したい。BKのアタックにしても、ここ一番の集中力にしても日大は相手に学ぶ点が多かったはず。あと、日大のプラス要素はFWの核でハイタワーでもあるLO孫の戦列復帰。何とかチームとして纏まって欲しいし纏まれると思う。そのためにも勝利が欲しいところ。「強力FWの日大」の復活を心待ちにしているファンは多いはずだから。

考えて強くなるラグビーのトレーニング―戦術アプローチに基づく練習プログラム
山本巧,藤森啓介
大修館書店

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