「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

大東文化大学 vs 山梨学院大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.10.5)の感想

2014-10-08 02:15:56 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンの私的注目チームとなった山梨学院の3戦目の相手は大東大。FW、BKともパワフルで突破力のある選手達が揃った超攻撃的チームだ。流経大とは5分に近い戦いができ、東海大も前半は圧倒されながらも後半は五分に近い戦いができた山梨学院だが、今回も難敵が立ちはだかる。はたして、この試合も前2試合同様に手堅いラグビーで行くのか、それとも何らかのチャレンジを試みるのか。台風の接近で生憎の雨の中、山梨学院が(勝負となるリーグ後半戦を見据えて)どんな戦いを挑むのかが私的着目点だった。



◆キックオフ前の雑感

開幕2連勝の大東大は、この試合も法政戦でケガをしたFB大道を除けばほぼ不動のメンバー。と言いたいところだが、キーポジションのSOが川向から碓井に替わっている。一昨年はルーキーながらレギュラーで活躍していた選手だが、昨シーズンは川向の台頭もあり、Aチームでの出場機会が殆どなかった選手だけに、大東大ファンにとっては一抹の不安を抱かせる起用と言える。ひとつ安心できる材料があるとすれば、希望的観測になってしまうが、青柳監督の選手起用はよくあたること。しかし、チーム全体としても不安材料がある。先だっての法政戦は最終的に圧勝になったものの、大東の組織的な積み上げを崩しかねない危うさが感じられた試合だった。一糸乱れぬ戦術で戦いを挑んでくる山梨学院に対して、どのように建て直しを図っていくのかが私的注目点になる。

山梨学院はスタメンのSOが川田から小川に替わるなど、数名の選手の変更はあるものLOトコキオやFL大石主将らを中心に据えたほぼ不動のメンバー。メンバーもさることながら、1戦目、2戦目とFWが2ユニットを組んでジグザグ走行し、SHのハイパントで前進という「9人ラグビー」と言えそうな固定された戦術で戦ってきた。流経大、東海大ともにリーグ戦Gでも強力なFWを看板としたチームを相手にゆっくりしたテンポでFW戦を挑むという勝算の薄いラグビーに徹してきた感がある。FWが強いという点では大東大も同じで常にターンオーバーの危険を伴う戦術と言える。果たしてこの試合はどんな戦いを見せるのだろうか。私感だが、山梨学院の(勝利への)チャレンジは次戦から始まると見ている。おそらくこの試合も基本戦術は変えないものと思われる。ただ、少しは変化技も試したいところ。リザーブを眺めると「秘密兵器」と目される1年生の選手が居る。試合の進み具合によるが、後半にはパウロの投入があるのではないだろうか。



◆前半の戦い/新戦術で臨んだ大東大が序盤から山梨学院を圧倒

殆ど無風状態ながら、やや強めの雨が降る中、山梨学院のキックオフで試合が始まった。ちなみに、両チームとも1stジャージの色がグリーン系で似かよっているため、大東大は白装束、山梨学院は濃いブルーのジャージで登場。大東大にとって白は鬼門だったのも昔話になった。むしろ白の方がモスグリーンよりも選手達が逞しく見えるから不思議。それだけ身体が大きくなり筋力アップしたとみて間違いない。昨シーズンから負傷者が飛躍的に減ったことでもそれはよくわかる。山梨学院のジャージも一際引き締まった印象を与える。

雨でスリッピーなコンディションということもあって、キックにより陣取り合戦が展開されることが予想されたが、大東大の蹴らずにパスで前進を図る戦術は変わらない。その大東大が、いきなりターンオーバーからの逆襲で大きくボールを前に動かす。山梨学院が自陣ゴールを背にしたラインアウトでノックオンを犯したところでスクラムのチャンス。ここから8→9→15の鮮やかなアタックが決まり、FB岡がスピードに乗ってゴールラインを越えた。碓井のGKも成功し大東大が開始2分にして幸先よく7点を先制する。大東大ファンにとて、まずは碓井のキックが健在なことを確認し胸をなで下ろしたことは間違いない。が、それだけではなかった。青柳監督が碓井を起用した意図がその後はっきり分かることになる。

大東大の目の覚めるようなアタックに出鼻を挫かれた山梨学院だが、反撃に転じる。6分、大東大陣10m付近のスクラムで大東大がコラプシングの反則を犯し、SOがゴール正面約43mのPGを鮮やかに決める。山梨学院が3点を返しビハインドは4点となる。大東大のリスタートのキックオフに対し、山梨学院は本日もすっかりお馴染みとなった戦術で前進を試みる。FWが2ユニットに分かれて大東大FWに身体をあてながらボールをジグザグに動かし、SHがハイパント。だが、2本目のハイパントのところで大東大のサウマキの強烈なカウンターアタックを浴び、自陣22m付近でオフサイドの反則を犯す。碓井が正面25mのPGを難なく決めて10-3と大東大が再びリードを7点に拡げる。

しかしながら山梨学院もしぶとく反撃。リスタートのキックオフに対する大東大のカウンターアタックの場面で強力なタックルを浴びせてスローフォワードを誘う。アタックではなかなか見せ場を作れない山梨学院のBK陣だが、組織的なスライドあるいはアンブレラ、そして低いタックルでスタンドを唸らせる。14分に大東大陣10m/22mの位置で得たPKは狙わずに大東大ゴール前でのラインアウトを選択。ここから山梨学院は得意とするモールで攻めたあと、FWのサイド攻撃でトコキオがトライを奪い試合を10-10の振り出しに戻す。山梨学院応援席は大いに盛り上がる。

強力な大東大に対し五分の戦いだできるかと思わせたのも束の間、山梨学院のキックがSH小山やWTBサウマキといった硬軟まじえたランナーが揃う大東大にカウンターアタックのチャンスを与えることになる。21分、山梨学院の自陣22mからのタッチキックがノータッチとなったところで大東大は小山からサウマキにボールが渡る。サウマキがパワフルなランニングを見せて山梨学院陣22m付近まで到達したところで、スペースに走り込んだCTBクルーガー・ラトゥに絶妙のラストパス。GKも成功し17-10と大東大が再びリードを奪う。今や11→13が大東大アタックのホットラインとなった。現在はCTBクルーガー、WTBサウマキだが、背番号を入れ替えてサウマキをペネトレーター役にし、クルーガーがフィニッシャーになるのが一番きれいなトライの形と言えそう。

大東大の攻勢が止まらなくなってきた。25分には今度はサウマキが相手タックラーを寄せ付けないパワフルなランでトライを奪う。GK成功で24-10と点差がどんどん拡がっていく。ディフェンスで健闘する山梨学院だが、2人がかりでも止められないサウマキは本当に厄介な存在と言える。ダブルタックルも少しでも時間差があるとシングル×2になってしまう。11番は付けていても、FWの近くに立っていたり、また時にはFWとしてラックでファイトしたりとWTBの枠に収まりきらない選手のプレーは観ている分には楽しいが、山梨学院の選手達はそんなことも言っていられない。

山梨学院もFWでボールキープしている間はゲームをコントロール出来ているが、大東大はFWにもNo.8テビタ、FL長谷川、LO鈴木といった強力な選手が揃っている。FWの遅効はターンオーバーと紙一重ということで、本日はとくにBDでボールを失う場面が散見された。30分のサウマキの連続トライは、そんなFW戦でのターンオーバーから生まれた。GKは失敗するものの、29-10と大東大のリードはさらに拡がる。ここまで見てきて、大東大がSOに碓井を起用した意図がはっきりわかることになる。春シーズンに圧勝した慶應戦ではアタックの起点はSH小山だった。FWとBKに複数のパスの受け手を作ることで自在なアタックを見せてくれたのだが、この日はFWのユニットがそのときよりも後ろにできている。

小山はいつもとは違って自分から仕掛けるよりもSO碓井にパスを渡すことにほぼ徹している。アタックを組み立てるのはSO。初期フェイズではFWのユニットにいったんボールを預け、相手の陣形を見ながらオープンに展開すると、そこにはクルーガーやサウマキ、そして進境著しい戸室らのランナー達がいる。法政戦で危惧された組織の乱れはどうやら杞憂に終わったようだ。春に比べても大東大のアタックはさらに進化したと言っていいだろう。碓井を起用したからこうなったのか、こうするために碓井を起用したのかだが、偶然性は感じられなかったのでおそらく後者。やっぱり今日も青柳マジックだったわけだ。19点ビハインドの山梨学院はよく食い下がっている(見方に寄ればサウマキにやられているだけ)と言って間違いないが、相手もさらに進化していたらお手上げになってしまう。大東大の新しい形のアタックが後半への余韻を残す形で前半が終了した。



◆後半の戦い/今期最高の出来の大東大の前に為す術のない山梨学院だったが

大東大の攻勢の前にも何とか一矢報いたい山梨学院は3分にSO小川がDGを試みるが外れる。後半も大東大の勢いが止まらない。9分には山梨学院陣22m付近のスクラムを一気に押し込みテビタがスクラムトライ。リスタートのキックオフに対し、カウンターアタックからFL長谷川がうまく内側に切り込んでパスを受け、そのままゴールへとまっしぐらに走る。得点は41-10となりあっと言う間に31点差に開いてしまった。長谷川が止まらない。16分には自陣で相手ボールのスクラムをターンオーバーに成功してFWで短いパスを繋ぎ、再び長谷川がフィニッシャーとなる。GK成功で48-10と、山梨学院の失点がどんどん増えていく。

大東大はさらに畳みかける。19分、山梨学院が自陣22m内のスクラムでノックオン。スクラムは大東大ボールとなり、前半のプレーの再現のような形で8→9→15とボールが渡り、岡がこの日2つめのトライを挙げる。ここで55-10。サウマキや長谷川の活躍が目立つ中で、テビタはむしろ地味な仕事人といった形でプレーしているが、パワーと柔軟性を兼ね備えた堅実なNo.8の存在は貴重だ。長谷川が自由に動けるのもテビタのおかげと言える。昨シーズンは2人の役割が被るような印象も受けたが、今シーズンはしっかり分担できているようだ。

大東大が得点を挙げるシーンが多く、山梨学院の奮闘ぶりについて書くスペースが殆どない。しかし、けして調子が悪かったわけではなく、東海大戦よりも若干だがアタックのバリエーションを増やしつつあるように見えた。FWがテンポアップする場面は殆どなく、SHが慎重にゆっくりとパスを渡す形。しかし、この遅攻に次戦以降のチャレンジに向けた意図が込められていると言ったら穿ち過ぎだろうか。FWのパス回しだけで抜けそうな場面も何度かあったのでそう思った。雨のスリッピーなコンディションだったことと、球出しが遅れてターンオーバーされたシーンが多かったのが惜しまれる。コンディションがよければBK展開の場面が増えたかも知れない。後半26分になってようやくパウロが投入されたが、見せ場を作ることなく終わった。むしろ「秘密兵器」のままで終わったことが次戦のことを考えると幸いだったのかも知れない。

28分、長谷川がPからGOでこの日3つめのトライを奪う。アスリート系の惚れ惚れするようなランニングだ。GK成功で62-10となる。一度はリードを奪った流経大戦や点数の上では五分の戦い戦いとなった東海大戦のように過去2戦では後半に強みを見せた山梨学院だったが、この試合では後半は結局無得点。しかし、繰り返しになるが、山梨学院の出来が悪かった訳ではないと思う。アタックでモデルチェンジした大東大の出来が予想以上によかったことで、山梨学院が殆どやりたいことをやらせてもらわなかったということになるだろうか。山梨学院の第3ステージは点差通りの完敗という形で終わった。



◆さらに進化を遂げた大東大のアタック

この試合のポイントは、やはりSO碓井の起用にあったといって間違いないだろう。得点者の名前だけなら、サウマキや長谷川やクルーガーといった強力なランナーの個人技に頼ったラグビーに見えてしまうだろう。しかし、本日の大東大はややもすれば粗いラグビーになりかけていた法政戦とは違う組織的なラグビーができていたと思う。SO中心の組立で終始した感があるが、当然今まで通りのSH中心の組立も併用できるし、FWには1列から3列までタテに強くハンドリングスキルもある選手が揃っている。山梨学院のアタックがこの日もシンプル(単調)だったため、ディフェンスの評価は難しいが、アタックを観る限りは(組織ありきだが)自由自在にアタックを仕掛けられる魅力たっぷりのラグビーが完成しつつある。タックルのいい川向とSO中心でアタックが組み立てられる碓井と2枚看板をどう使いこなすか悩ましいところだが、それは贅沢な悩みと言える。大東大のアタックからますます眼が離せなくなってきた。

◆いいところなく終わった山梨学院だが

後半のチャレンジシリーズ(仮称)に向けて最終テストを試みたと思われる山梨学院だったが、大東大のできがおそらく想定以上によかったこともあり、失点の多い試合になってしまった。ただ、山梨学院にとっては最初の3戦がFWの強いチームだったことが幸いするかも知れない。相手のディフェンスに穴が開けば、得点シーンはもっと増えるはず。山梨学院の強みは組織で守れる整備されたディフェンスだと思う。得点力はトコキオ頼みの部分があるが、ディフェンスがしっかりしていれば僅差のゲームに持ち込んで勝利を掴み取ることも可能なはず。何よりも、今後対戦する4チームに比べるとセルフコントロールがしっかりできている。悲願の1勝が今期中に達成されることを期待したい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 法政大学 vs 大東文化大学(... | トップ | 東海大学 vs 立正大学(関東... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

関東大学ラグビー・リーグ戦」カテゴリの最新記事